G・Iの子   作:めーび臼

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襲撃

 

 マンションの非常階段をカンカンと硬質な音を立てながら登る。

 

 横目に地下競売が行われるセメタリービルが見えるが、旅団が来ると言うのに物々しい雰囲気をパッと見には感じる事が出来ない。

 

 「メンツか。そんなに重要な事かね」

 

 曖昧な記憶でだが、地下競売に参加する為にはチケットかなんかが必要だった筈だ。それに護衛を含めて三人までしか参加出来ず、武器の携帯も出来ないんだったか。あと、携帯電話などの外部との通話機器も。

 

 武器を携帯出来ないって念能力者にとっては恰好の狩場を提供しているだけに思えるな。

 

 ボルタスに聞いたのだが、幻影旅団へのマフィア側の認識は思った以上に甘い物だった。

 

 旅団に対してガチガチに備えるより大多数のマフィアはメンツを優先していつも通りの地下競売を望んだそうだ。

 

 てか、原作でもネオン=ノストラードの念で襲撃されると言う未来が確定していると言うのに、警備はザルだった。

 

 これは俺の予想でしかないが、十老頭は襲撃されても構わないと考えて居たんじゃないだろうか?

 

 十老頭はもちろん念の存在も知っているだろし。

 

 だからこそ。襲撃者、この場合は幻影旅団に敢えて地下競売を襲わせて、その襲った幻影旅団を自分たちの手駒の隠獣が捕らえる又は殺す事で他のマフィアに対して自分たちの力を誇示しようと考えていたのかもしれない。

 

 蜘蛛の力を紙面ごしにだが知っている俺に言わせれば、考えが甘すぎる。

 

 そして、多分だけど俺とハンゾーが噂を流したにも関わらずその甘い認識は変わらなかった。

 

 警備はホテルの外周を強化しただけ。街に居た何人かのブラックリストハンターを雇い入れて戦力を増強したに留まっている。

 

 街にいるハンターの中に幻影旅団を止められる人が居る事を願う事しか出来ない、いや、無理だな。

 

 俺の占いにも旅団の襲撃は成功する結果がはっきりと表現されていた。

 

 俺にとっては占いの結果で重要なのは、この襲撃じゃなかったってんだけど。

 

 あの一文を思い出すだけで、ドスンと内臓に重りを入れられたかのようななんと表現していいのか分からない胸糞悪い気分にさせられる。

 

 あの一文の出来事だけは、何がなんでも防がないと俺は自分がこの世界で生きる事を許せなくなるだろう。

 

 だからこそ、保険が必要だ。

 

 「お疲れ」

 

 屋上へ繋がる扉の取手に止まる一匹のハエに声を掛ければ、ハエの身体がオーラになって四散して行く。

 

 さてと、ここからが勝負だ。

 

 ふ~っと息を吐いて、吸い込み、深呼吸で気合いを入れてから俺は丸いドアノブを捻る。引いた扉を避けて屋上への出口へと体を滑り込ませた。

 

 その先に待っているのは、金髪の端正な顔立ちのクラピカと小柄な前歯が出っ歯になっている奇形の女性のセンリツである。

 

 彼と彼女は、ドアを開いた時点でこちらに気が付いていたのだろう、鋭い眼差しで出口から出て来る俺を見て警戒している。

 

 よし、ちゃんと居たな。この後に備えて最初にあった時点で念でマーキングしていたのが、ネオンの占いの結果が出た今、功を奏した。

 

 「こんにちは」

 

 あたかも、フラりと立ち寄ったみたいに軽い感じで話掛けてみたんだけど、やっぱり駄目みたいだ。

 

 「君はハンゾーと一緒に居たジバルか。こんな所になんの用だ?」

 

 俺に掛けられるクラピカの声は固く、研ぎ澄まされた刀みたいに鋭い。

 

 ハンター試験で共に突破したハンゾーと一緒に居ただけじゃ、まぁ信用は得られないか。

 

 「ちょっと、俺にとって不味い事が起こると分かりましてね。それについてクラピカさんに相談をしたいと思いまして、こちらに来ました」

 「本当よ」

 

 クラピカの横にいるセンリツがクラピカに俺の心音を読みとって、俺の言葉が本当かクラピカに伝える。

 

 てか、相対してみるとセンリツさんって交渉関係でチート過ぎるでしょ!?勝てる気がしないわ。

 

 だからこそ、今は馬鹿正直に行くしかない。

 

 「私に相談……君が?」

 

 クラピカの顔には困惑の色が浮かぶ。

 

 そりゃ、こっちは原作を通してクラピカの性格や生い立ちまで把握しているが、あっちとしては、突然、自分が探し求めていた緋の目を持って来た奇妙なガキでしかないものな。困惑するのも無理はない。

 

 「君は今の状況が分かっているのか?」

 「勿論です。旅団は確実にここにくるでしょう」

 「ならなぜ?」

 「ノストラードのお嬢様の占いは時間が週ごとにしか記されていない。だから、俺の占いに出た最悪の結末がいつ起こるのかも分からないんですよ」

 「本当よ。彼、かなり焦ってるみたい」

 

 俺はセンリツをチラリと見る。

 

 俺が焦っているのは本当だ。だが、それを他人の口から告げられるのはかなり心にくるものがある。

 

 「まるで貴方は大人みたい。責任感と不安。貴方はなにを背負っていると言うの?」

 

 こりゃまいったな。そこまで読み取られるとは思ってみなかった。 

 

 何を背負っているかか。そんなのは俺の勝手に作りだした重荷に過ぎない。

 

 ただ、ジンさんに救い出して貰った光を返したいだけだ。

 

 ジンさんにそんな事言ったら、逆に怒られそうだけど、それなら俺はジンさんの息子のゴンくんにでも勝手に返すだけだ。

 

 だからこそ、この先にゴンくんに危険が及ぶ可能性は出来る限り潰したい。

 

 そして、今回はゴンくんだけの事だけじゃない。

 

 俺が、俺である為の存在証明の危機が迫っているんだ。

 

 だから、その思いをダイレクトに伝わるようにセンリツを見る。

 

 彼女に伝えるのに言葉は要らないだろう、思うだけで十分過ぎる筈だ。

 

 俺の心音と眼差しを受けて、彼女は少したじろいだ。

 

 「彼はなんなの??そんな心音を子供の貴方から聞くなんて……」

 「どういう事だセンリツ?」

 「彼、本気よ。危う過ぎる。まるで幻影旅団の事を聞いた貴方みたい。命まで投げ出してしまいそう」

 

 「命」って単語はクラピカにとっても衝撃だったみたいだ。その鋭利ささえ漂う美貌が歪む。

 

 「クラピカ、話だけでもきいてあげた方がいい……待って!可笑しいわ!」

 

 突如センリツが空に顔を向けて狼狽し始める。

 

 可笑しいって言葉にクラピカは俺を睨むが、俺はなんもしてねぇぞ!

 

 俺は、クラピカの眼差しを受けてもただ困惑する事しか出来ない。

 

 「違う彼じゃない!飛行船よ。飛行船のプロペラ音がどんどん増えてる。こんな事ってありえないわ!」

 

 俺とクラピカも慌ててマンションの屋上で空を見上げて周囲を警戒する。

 

 プロペラ音が増えてるだって?

 

 ただ複数の飛行船がヨークシンの上空に近づいているって事なのか?

 

 いや、違う!そんな普通な事柄で彼女が狼狽するとは思えない。

 

 「あそこよ!見て!まるで飛行船が飛行船を生み落としていくみたいに増えているのよ!」

 

 俺は、屋上の出口から、走ってマンションのフェンスに飛び付くようにして、空を見上げる。

 

 センリツが指さす方を見る為にクラピカの横に並んで、屋上のフェンス越しに空を睨む。

 

 「ウソだろ……」

 

 そこにはセンリツの言った通りの光景があった。現実を見ても信じがたい。

 

 ヨークシンの上空を進む飛行船の横の空に突如として全く同じ飛行船が現れるのだ。

 

 生み出された飛行船は、そのまま重力に引かれてヨークシンのビルの中へ消えて行く。

 

 まるで、同じ物が量産されていく光景はパソコンで文章を書く時のコピー&ペーストみたい……ってそれは!?

 

 あり得ない光景を見て、ぐちゃぐちゃになりかける頭の中に一つの漫画の一場面が

 

 「コルトピか……」

 

 そう呟いた瞬間に身体に衝撃が走る!

 

 「コルトピ!?なぜ貴様が旅団のメンバーの名前を知っている!?」

 

 俺が視界がジェットコースターに乗ってる時みたいに揺れて、目の前にはクラピカの黄金の瞳が映る。

 

 しまった!クラピカは既に旅団のメンバーを知っていたのか!?

 

 揺さぶられる体と同じく、俺の心も揺れる。

 

 なんでだ!こんな未来俺は知らないぞ!

 

 だって、原作の漫画にも、いや、原作の流れは俺が噂を流して時点で変わってしまっている。

 

 それにしたって、俺はネオンの占いである程度確定している未来を知る事が出来てる筈なのに、こんな未来は占いになかった。

 

 違う違う違う!!

 

 俺は何を見落としてる。なんだ?何がおかしいんだ。なんで俺はこれを知る事が出来なかったんだ!

 

 もしかしたら、襲撃の時に俺は知ることがない状態で旅団を追っていたのかもしれない。

 

 なら占いの結果に載っていないのも必然だったのか?

 

 助けに行かなきゃ!

 

 今は、原因の究明なんてどうでも良かった。

 

 このコルトピの念で作られた飛行船がヨークシンに落ちたら、街は大参事になっている筈だ。

 

 焦る、俺は胸倉を掴んでいるクラピカを引きはがす為にオーラを込めて思いっきり蹴った。

 

 ドンって鈍い音が屋上に響く。

 

 蹴った勢いで俺はクラピカの手から投げ出される形になって、思いっきり肩おをマンションの屋上の床に叩き付けられて受け身も取れなかった。

 

 「クラピカ!」

 

 センリツの悲鳴が聞こえるが、今はそんな事に構ってやってる暇なんてない!

 

 視界の先でもうもうと立ち上る煙は俺の噂が原因で起こったんだ!

 

 噂を流さなければ、被害はマフィアだけに留まって、一般人には被害は出なかった筈なんだ!

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