G・Iの子   作:めーび臼

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救援の為に

 

 走り出したゴンくんに流されるままに俺も走る。

 

 どうしてこうなった?

 

 ゴンくんの強い眼差しを受けたら、俺は何も言えなくなったしまった。

 

、今になってやっとゴンくんが走る先にキルアくんとレオリオさんがいるのに気が付いた。

 

 キルアくんはゴンくんの強引さに少し呆れているようで、ポケットに手を突っ込んでこっちを見ている。

 

 レオリオさんはなにやら観察するようにじっくりと俺を見て首を傾げている。

 

 レオリオさんは何を疑問に思っているのだろうか?

 

 「さぁ行くよ!きっと困ってる人がいるんだ!俺たちが助けなきゃ!」

 

 散歩に浮かれた子犬みたいに俺を引っ張って走るゴンくんは現状がちゃんと分かっているのか?。

 

 まだモクモクと煙が上がるビルへと走る俺とゴンくんの両サイドには、キルアくんとレオリオさんが並走し始める。

 

 「お前がゴンたちが言ってたジバルか。言っちゃ悪いが、ゴンたちより強い風には見えないな」

 

 走りながらこっちを覗き込むように見て顎を摩るレオリオからド直球なセリフが俺に飛ぶ。

 

 ゴンくんとキルアくんに何を聞いたのか分からないが、さっきの観察するような視線はその所為だったみたいだ。

 

 だけど、レオリオさんは俺から目を離すと、すぐに前を見る。

 

 「まぁ今はどうでもいい。あそこで何が起こってるか分からねぇがケガした奴は俺は治療するだけだ」

 

 レオリオさんの右手には黒いトランクケースみたいな四角い鞄が握られていて、額には皺が寄っている。

 

 そうか。元々彼の生い立ちを考えれば、あそこでケガした人を一番放っておけないのはレオリオさんだったのかもしれない。

 

 彼は元々お金がなくて医者の診察を受けられない人を癒す為にハンターになった人物なんだ。

 

 この状況を見過ごすなんてあり得ないんだろう。

 

 それを思うとまたズキリと心が痛む。

 

 「それより、ゴンがジバルと話している時に見えたんだが、飛行船になんて言うかな鳥?いや、人か?なんか蝙蝠みたいな奴が向かって行ったぜ」

 「え!?なにそれ!」

 「それで、その蝙蝠どうなっんだ?」

 

 キルアくんは、この状況でも周りの事を冷静に見えている。そのキルアくんからの情報は青天の霹靂だった。

 

 蝙蝠?隠獣の蝙蝠か!俺はすぐに思いついたのは、あの漫画で一頁くらいしか出てなかった筈の蝙蝠みたいな隠獣のメンバーの一人だ。

 

 あの隠獣の蝙蝠が一人で旅団に向かっても意味ないだろ。

 

 確か、旅団のメンバーに倒されてしまう筈だし。

 

 「あぁその蝙蝠が飛行船に攻撃してるみたいに見えたよ」

 「うん!それで!」

 「あぁ、蝙蝠から逃げるみたいに飛行船がヨークシンの外に飛んで行ったんだぜ」

 

 飛行船が逃げた!?

 

 なんで?蝙蝠一人に襲われて逃げ出すほど旅団は弱くない。

 

 なにかあるのか?確かに空中戦は蝙蝠の領分だろう。けど、それだけで逃げるだろうか?

 

 「って事はもう危険はないんだよね?」

 「まぁな」

 「じゃあ、後は困ってる人を助けるだけだね!」

 

 猪突猛進っていうか、単純て言うか。俺には出来ない思考だ。

 

 それが、今はすごく羨ましい。

 

 ゴンくんの純粋な言葉に呆れた目で見ているキルアくんもこんな気持ちになるのだろうか?

 

 捻くれて、それでももがいている感じはもしかしたら、少し俺に似ているのかもしれない。

 

 いいや。原作の才能溢れるキルアに自分を重ねるなんて驕り過ぎだ。

 

 「ダメダメダメだよ!君たち!こっからは危ないんだ。野次馬なんて迷惑だから、すぐにこっから逃げなさい」

 

 俺たち四人が走っている前に、立ち往生している真っ赤な消防車とその前に逃げる人々を人々を誘導している装備を整えた消防員が居て、飛行船を落とされたビルへと向かう俺たちを止める。

 

 「かぁここで足止めかよ!俺がこの前歩いた時は、ここが一番の近道だった筈なんだよなぁ!」

 

 レオリオさんが、止める消防員を気にする事なく大声で嘆く。

 

 その言葉を聞いた消防員をレオリオさんに対して怒って顔を真っ赤にしている。

 

 「おい!こっち見てみろよ。この消防車、止まってる車が邪魔で通れないみたいだぜ!」

 

 俺が消防員の前で考えていた時にはいつの間にか、キルアくんは止まっている消防車をすり抜けて状況を確認している。

 

 消防員の人がキルアくんの声でやっとキルアくんが消防車をすり抜けている事に気が付いた。

 

 消防員の三人が怒鳴ってキルアくんを捕まえようとしするが、キルアくんはちょこまかと動き回り捕まえる事は出来ない。

 

 俺も少し横に移動して、道の先を見る。

 

 そこには、車を置いて逃げてしまったのどろう。放置車両が消防車の進路を邪魔していた。

 

 キルアくんを捕まえるのに必死な消防員さんたちは、この後のゴンくんの行動に反応するのが遅れてしまったんだろう。

 

 「ねぇレオリオ。消防士の人困ってるよね?」

 

 あまりのあっけらかんとそんな事言うのから、俺もレオリオもゴンくんの言葉に呆気に取られてしまった。

 

 レオリオさんが「おぉ」っと曖昧に肯定すると、ゴンくんは左の掌に右の拳をパンっと打ち付けて気合いを入れる。

 

 ゴンくんは立ち止まって動けない俺の目の前を腕を振ってズンズンと消防車の横を通り抜けて行く。

 

 我関せず堂々と進んで行くゴンくんを見て、慌てて着いて行くレオリオに着いて行くように俺も着いて行く。

 

 ゴンくんは路上駐車して、消防車を邪魔している自動車の横にゴンくんは仁王立ちすると纏っているオーラの量を増やす。

 

 「ちょ!君まで!危ないんだからな!」

 

 多分、消防員にはゴンくんのオーラは見えてないんだろう。

 

 でも、彼らも危険と隣り合わせの職業を生業にしているからなのか、彼もゴンくんに忠告はするがそれ以上は近づけないでいる。

 

 「行くぞ!」

 

 ゴンくんは気合い居れると、自動車の前にしゃがみ運転席側のドアの下を掴む。

 

 「せ~の!!!」

 

 掛け声と共にオーラを纏い車を持ったまま前進して、自動車をゴンくんが押す。

 

 中学生くらいのゴンくんが、ラグビー選手のように自動車を押す光景はあまりにも非常識な光景だろう。

 

 普通なら微動だにしない筈の自動車がタイヤを地面に擦って焦げ臭い匂い周囲に巻きながら横滑りして行く。 

 

 歩道まで進んだ時に手を離すと、持ち上げられていたタイヤの片輪が地面に当たって自動車を揺れていた。

 

 ゴンくんは、自動車から手を離して立ち上がるとふ~っと良い顔して額にかいた汗を袖で拭った。

 

 「あ、あ、あ、アガ……」

 

 念能力者には出来て当然の光景だろう。

 

 でも、ゴンくんを止めようとしていた消防員は顎が外れんばかりに驚いて、意味のない言葉をしか口から出ていない。

 

 そして、ゴンくんはその消防員に振り向くとビっと親指を立てて笑う。

 

 「消防士さん!これで通れるようになるよね!」

 「あぁ」

 「それじゃあ、レオリオもジバルくんも、それとキルア!皆で車どかそう!」

 

 レオリオさんの手が俺の肩をポンっと叩く。

 

 「おっしゃ!どんどん車退かすぞ!キルアいつまで遊んでんだ!それと……ジバルも手伝えよな」

 

 もう二台目に取り掛かってるゴンくんが車を動かす音を聞きながら、レオリオはニカっと笑い掛けながら言う。

 

 そして、親指を立てたその右手をクイクイって動かして、親指を指した方を見るように促す。

 

 そこには、どっちが多くの自動車を動かせるか競争している二人が居た。

 

 「持ち主に怒られなきゃいいんですけどね」

 

 浮かれてはいけないって思っている脳とは別に心が勝手に喋らせ、動かす。

 

 レオリオさんのそのポケットに手を突っ込み若干蟹股気味に歩くその背中を追って俺も自動車を動かす為に動き出す。

 

 

 

 「ありがとう!君たちが何者なのかは分からないけど、兎に角助かったよ!」

 

 真っ赤な消防車の助手席から俺たちを見下ろしてお礼を言いながら笑顔で手を振る。

 

 そのまま、消防車はエンジン音を響かせて、脇に避けられた自動車の間をモーゼみたいに走り去って行った。

 

 ゴンくんたちは去って行った消防車を見送った後に歓声を上げてハイタッチして喜びを分かち合っている。

 

 俺は、その光景を一人輪を外れた所から見ているだけだ。

 

 羨ましいって気持ちはあるけど、俺はそこに入っちゃダメだ。

 

 「ジバルくんもありがとう!」

 

 俺に笑顔を向けるゴンくんに上手く笑えない。曖昧に頷く事しか出来なかった。

 

 「よし、まだ先にはケガ人がいる筈だしな。早く行こうぜ」

 

 こんな時にも彼らと俺は圧倒的な差を感じてしまう。

 

 もしかしたら、旅団のメンバーが潜んでいるかもしれない所へ躊躇なく飛び込めるそんな人たち。

 

 本当に彼らは物語の主人公たちだ。今は念で俺が上回っているかもしれないけど、あっと言う間に追いつかれ追い越されて行くそんな感覚。

 

 俺には、このゴンくんたちが作った自動車が連なるこの道の先が、まるで日本の神話に登場する黄泉への道みたいに見えている。

 

 目に映る光景が景色が歪んで俺を呑みこんでいってしまいそうだ。

 

 「ジバル。早く行こうぜ。ゴンが早く行こうって五月蠅いんだよ」

 

 呆れた声を出すキルアくんの先には、ゴンくんがリュックを揺れないように手で押さえてながら足踏みしているしレオリオさんもニっと笑う。

 

 また、いや、ここまでずっとこの人たちは俺を引っ張って行く。

 

 自然と俺の身体は一歩踏み出して歩く。

 

 彼らは知らない、だから俺を迎え入れてくれるんだ。

 

 でも、真実を知っても今と変わらずに迎え入れてくれるかもしれないって淡い期待を抱いてしまう。

 

 本当の事話したらどんな顔するんだろうな。彼らは。

 

 

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