G・Iの子   作:めーび臼

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クラピカを追って

 「『探偵の七虫(バグズ セブン)』の3、追跡虫」

 「ほう。それがジバルの父親の念か」

 

 俺とハンゾーの周りを飛ぶ一匹のハエ型の念獣を見て、ハンゾーが興味深そうに目で追う。

 

 俺の親父はグリードアイランドに入る前はちょっとは名の知れた探偵だったらしい。

 

 探偵家業を行う中で念を知り、グリードアイランドを手に入れたそうだ。

 

 親父の話はまぁいいや。今はクラピカを追う事の方が重要だ。

 

 この念獣である追跡虫はマーキングした相手をフェロモンに誘われる虫みたいに辿り、どこまでもストーキングしてくれる訳だけど。

 

 「さて、追跡虫にクラピカを追わせる事は出来るけど、どうやって追いつこうか?」

 

 走って行くなんて事をしたら、着いた頃には全て終わった後なんて事になりかねない。

 

 俺が困ったように辺りを見渡す、しかし、キョロキョロと左右に振った頭をハンゾーの手が強制的に止めてある方向を向かせる。

 

 そこには、一台のバイクが転がっている。

 

 「バイク?」

 「あれで追うぞ」

 「鍵は?」

 「そんなのは忍者にかかればちょちょいのちょいよ」

 

 人差し指をクイクイって動かして、どや顔をするハンゾーに俺は呆れた視線を投げる。

 

 この世界の忍者はバイクドロボーの技術まで習得しているものなのか?忍者ってなんだよ?

 

 まぁ確かに日本のバイクにNinjaがあった気がするが、あれとこれは別だろう。

 

 ハンゾーは横転している真っ黒なバイクを起こして立たせると、ハンドルの下を懐から取り出した道具でカチャカチャいじりコードを取り出した。

 

 取り出した二本のコードをなんやかんやして接触させ、足でレバーをキックすればエンジンが唸り出す。

 

そのままバイクに跨るNinjaは座席の後ろをポンポンと叩き、後ろに乗る様に催促する。

 

 「怪傑ハゲライダーだな」

 

 俺は頭に思い浮かんだしょもない幻想を振り切って、ハンゾーが乗るバイクの後ろに飛び乗った。

 

 ハンゾーの忍装束の腰を掴めば、バイクが前輪を浮かして急発進する。

 

 コルトピがコピーした飛行船が衝撃でボロボロになって転がっている横を通って、追跡虫を追いバイクが走る。

 

 街の景色を見る度にキシキシと内臓の中の重石が揺れ、きしむ気がして眩暈を起こしてしまいそうになるが、俺は奥歯を噛んで耐える。

 

 まだ自分は許せないが、それでも進むと決めたのだから。

 

 自然にハンゾーを掴む手に力が入ると、それに気が付いたハンゾーがハンドルから片手を離して俺の頭をポンと叩く。

 

 街を抜け、人工物から辺りがゴツゴツとした岩が目立ち始める。

 

 だが、乾いた風からは鉄の匂いがしてくるような気がしている。

 

 人だったナニカが点々と転がる風景と壊された自動車は怪獣に踏みつぶされたように潰れ、人が乗ったまま上下に真っ二つにされていたりと様々だ。

 

 多分、幻影旅団を追ったマフィア、もしくは念能力者が挑んだ結果なのだろう。

 

 マフィアは幻影旅団を甘く見てると言ったが、甘く見ていたのは俺の方だった。

 

 数を集めればなんとかなるような存在じゃなかった。象に蟻が集っても無駄なんだ。

 

 隠獣クラス三人が毒って言う絡め手を使ってやっと行動不能に出来るレベル。

 

 隠獣は旅団に乾坤一擲にされたから強いイメージがなかったが、彼らだって大陸の裏を牛耳る十老頭の信頼を受けているの面子だ。

 

 念能力者としては、上位数パーセントに入っていても可笑しくはなかったのだろう。

 

 幻影旅団が強すぎたんだ。

 

 アイツらを殺すなら、毒、罠、念、全てを使っても足りないくらいだ。

 

 殺せるチャンスがあるなら、確実に殺さないとダメだ。

 

 「おい!ジバル、あれ見ろ」

 

 バイクが急に止まった為に思考にふけっていた頭をハンゾーの背中にぶつけてしまった。

 

 「なんだよハンゾー。頭打っちゃったじゃん」

 

 ぶつけた頭を摩りながら、背中越しに見たハンゾーの横顔は刀のように鋭かった。

 

 その視線を無言で追う、そこには翼の折れた飛行船とその前に横たわる一つの遺体。

 

 俺とハンゾーはクラピカの追跡を一時中断して、バイクを降りて飛行船へと近づく。

 

 多分、あれは旅団の誰かが乗っていた飛行船なんだろう。

 

 だったら、あの遺体はもしかしたら旅団の誰かかもしれない。

 

 だけど、淡い希望はやはりというか脆くも崩れ去った。

 

 近づいた時にその遺体の異常性に気が付いて、気分が悪くなる。

 

 その遺体は鼻の上がなく、腕やら足が捩じられて壊れたマリオネットみたいになっている。

 

 「どうやったら、こんな事になるんだ。これって旅団の仲間か?」

 「どうかな?多分、あいつらの仲間であるなら蜘蛛の刺青がどっかにある筈だけど」

 

 俺がそういうと、ハンゾーはなんの躊躇もなく取り出した短剣で捩じられた遺体の服を剥いで、刺青の有無を確認した。

 

 「ないな。旅団じゃないって事か。というか、こいつの周りの跡を見ると空から落ちて来たみたいに思えるんだが」

 

 空から?ここでやっと、レオリオの言葉を思い出した。

 

 確か、レオリオはコルトピが乗っていた飛行船を蝙蝠みたいな者が追ったと言っていた筈だ。

 

 て、事はこいつは隠獣の蝙蝠……で、俺が知っている中でだけどこんな殺し方が出来るのは、マチ?

 

 念糸だったら、出来ない事もないんじゃないかな?糸をピアノ線みたな極細にしたら顔をスッパリ断ち切る事も……。

 

 「もう行こう。旅団じゃないなら、まだこの先で戦闘が起こってる可能性が高い筈だよ」

 「そうだな。クラピカもまだ先だろうしな」

 

 ハンゾーが待機していた追跡虫を見て言う。

 

 ここまでの展開だと、原作の時以上に悲惨な事がこの先に待ち受けている可能性も大きい。

 

 もしかしたら、クラピカも無謀に突っ込んで死んでるかもしれない。

 

 いや、クラピカの能力だったら何人か道連れに出来るか。

 

 分からない。やっぱり、行って自分で確かめるしかない。

 

 俺とハンゾーは再びバイクへ跨ると、一路クラピカの後を追跡し始める。

 

 

 

 追跡虫を追って30分、今は道を外れてバイクは道なき道を走っている。

 

 崖が連なるように現れる荒野の岩影から一人の男が走って来る。

 

 「た、助けてくれ!殺される!」

 

 男は、ダークスーツを着ているが、走って来た為か皺がより所々に地面で擦ったような後があった。

 

 「ハンゾー」

 

 俺がハンゾーに声を掛けると、ハンゾーはバイクを横滑りして止める。

 

 俺とハンゾーは一見してマフィアと思わしき男の登場に緊張感を高め、警戒しつつバイクから降りて身構える。

 

 鼻水に涙と穴と言う穴から体液を垂れ流したマフィアの男が十メートルくらいの距離まで近づいた時に、ハンゾーが静止の声を掛ける。

 

 「止まれ!」

 

 多分、味方だと思った俺たちが鋭い声を上げて身構えてるのを見て、俺たちの事を旅団の仲間だと勘違いして、男は腰を抜かしてその場で尻もちをついて命乞いを始める。

 

 その姿を哀れに思うが、俺達が警戒を緩める事はない。もう失敗は許されないんだ。

 

 ハンゾーと俺はチラリと目くばせすると、俺はオーラで鳥を描き自分の周りに飛ばす。

 

 一般人にはオーラが見えない為にオーラの鳥に反応しないが、念能力者が一般人に化けてた場合でも、念能力者の性(さが)でオーラに変化があればつい目で追ってしまうはずだ。

 

 「普通のマフィアみたいだな」

 

 ハンゾーの言葉に、俺もハンゾーと一緒に警戒心を一段階下げる。

 

 「俺たちはゼンジファミリーに雇われて来た。この先で何があった?」

 

 混乱しているマフィア分かるに大声でハンゾーが問えば、頭を抱え命乞いを繰り返すマフィアも顔を上げる。

 

 「ほ、ほ、本当にゼンジのとこ組員なのか?」

 

 涙で濡れた頬はさっきの命乞いで地面に顔を擦りつけていたためか、土が着いて汚れてしまっている。

 

 組員って訳じゃないが、ハンゾーは一度頷くとマフィアはほっとして近づいて来ようとするが、再度ハンゾーがその動きを声で押しとどめる。

 

 「お前が味方か分からん。取りあえずどこの組の者だ?」

 「俺はドッジロールファミリーだ!頼む!助けてくれ!俺たちが追っていたのは化け物だ!あんな奴らを殺せる訳がねぇ!」

 

 化け物ってのは十中八九、蜘蛛のことだろう。

 

 まだ隠獣は蜘蛛と交戦してないのか?

 

 「ハンターはどうした?あいつらも追っている筈だ」

 「ハンターでも相手にならねぇんだよ!人が紙くずみたいにパンチ一発で吹き飛んで行くんだぞ!ロケットランチャーさえ効きやしないなんてあり得ねぇだろ!あいつ等は人の皮を被ったマジな化け物だ!」

 

 パンチって事はウボォーギンがいるのは確実か。

 

 「奴らは何人だ?」

 「八人だ!もういいだろ!助けてくれよ!」

 「これ以上は時間が掛かり過ぎる。時間がないのは確かだよハンゾー」

 

 ハンゾーには俺が何かしたいのかのあらましを伝えてある為に素直に頷いてくれた。

 

 ハンゾーはここからは自分の足で移動した方が良いと判断したみたいだ。

 

 「おい!あのバイク使えよ」

 

 ハンゾーは親指でバイクを使うようにマフィアに合図すると、マフィアはヨタヨタしながら走って俺たちの後ろにあるバイクに跨る。

 

 そのまま、マフィアは自分の心情そのままみたいな危ない運転で荒野を疾走して行って消える。

 

 「ハンゾー、近いみたいだね」

 「あぁ、ここからは気配を消して行く。一瞬の油断が死に繋がると思えよ」

 

 俺は無言で頷き、漏れるオーラを体の中に収納する。

 

 俺は、砂地で足音の一つも立てないハンゾーの背中を追って、移動を再開する。

 

 戦場は近い。

 

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