G・Iの子   作:めーび臼

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不退転の決意

 「おいジバル。クラピカめっちゃキレてたぞ」

 「言わなくても分かってるよハンゾー」

 

 俺はクラピカから見えない位置に移動させたヒソカを立体的に描いたオーラを元の緑のオーラに戻して身に纏う。

 

 しかし、これはしんどいな。オーラの形を変えて絵を描くのは日常的に行っている事だが、本物と見間違うレベルで形を作りオーラを着色するのは、オーラの一部を変化させるよりも何倍もの精神力を消費する。

 

 よく見れば、オーラって気付けた筈だけど。悲願の一部が叶いそうな瞬間に邪魔されたクラピカの精神状態なら騙しきれただろう。

 

 「ジバル、マジでこれで良かったんだよな?」

 「うん。蜘蛛の戦闘員を一人捕まえたくらいで、あいつ等が止まるとは思えないし、それどころかアイツ等に暴れさせる口実を作るだけだよ」

 「お前がそう言うなら、そうなんだろうな」

 

 ハンゾーには俺の予測って事で原作で起こった出来事を話しているから、幻影旅団の助太刀みたいに見えるこの行為も許容してくれた。

 

 原作では、ウボォーギンを捕まえ殺したクラピカに対して幻影旅団のメンバーは執着して追う事になる。

 

 その流れにゴンくんたちも、次第に引き込まれて行って蜘蛛に拘束された筈だ。確か。

 

 だから俺は、クラピカの想いを踏み躙ったってこの分水嶺を自分の手で舵を切る事に決めた。

 

 ハンゾーにも協力して貰い、トランプを投げてクラピカの鎖を断ち切ってもらった。

 

 結果は予想通りで、心底ホッとした。

 

 クラピカの中指の具現化した鎖は、幻影旅団に対しては絶対の力を発揮するが、自分の命を消す制約が課されている。

 

 だから、思ったんだ。

 

 旅団以外の人物からの横やりなら通用するんじゃないかって。

 

 結果は見ての通り、ノブナガの刀では切れなかった鎖がハンゾーの投げたトランプで破壊出来た。

 

 最初は自分でトランプを投げるるつもりだったんだけど、俺は放出系ってあんまり得意じゃないからハンゾーに投げてもらって正解だった。

 

 「怒られるならハンゾーも一緒だな。なんせ共犯者なんだから」

 「ちょ!おまえなぁ!」

 

 俺を焚きつけた時に、ハンゾーがあの時そう言ったんだから俺の罪も半分持って貰う。

 

 俺はその分、仲間に一緒に背負わせって貰う覚悟を決めた。

 

 崖から見下ろす広場では、幻影旅団のメンバーがウボォーギンを浚われそうになった隙を、残りの隠獣と隠れて好機を待っていたハンターたちが襲い掛かった。

 

 蜘蛛としては、ウボォーギンを守りながらの戦いになるし、襲い掛かったメンバーはさっき戦った人たちより実力があるみたいだ。

 

 だけど、それでも初撃でフランクリンの片耳を飛ばした所がピークで、こっからは打ち止めかな?多分。

 

 「もういいや。ハンゾー行こう」

 「なんだ決着まで見ないのか?」

 「クラピカは逃げられたと思うし、決着まで見てたら俺たちが逃げ損なうよ」

 「それも。そうだな」

 

 崖を気配を消しながら、ハンゾーと二本の線を付けながら崖を滑り降りて行く。

 

 「そんで、これからどうする?十老頭との契約はまだ期間があるだろ」

 「あぁブッチギるには、流石に代償が大きすぎるしね。それに……」

 「それに?」

 

 ハンゾーは崖の下に立ち止まって俺を見下ろす。この身長差はいつ頃縮まるだろう。

 

 「この期間で、やる事をはっきりと決めたよ」

 

 そこで、ハンゾーはキョトンとする。俺が自分の意思を素直に言い出したのがそんなに不思議か。コノヤロー、

 

 だから、俺は意地悪して、ハンゾーの視線を気にする事なく歩き出す。

 

 「おい、ジバルここまで来て秘密ってのはなしだぜ」

 

 分かってる。分かってるさ、ハンゾー。

 

 今更、俺一人でやろうなんてそんな我儘な事言えないよ。

 

 「そんな訳ないじゃん。勿論協力してもらうよ。今更逃げられないぜ」

 

 俺は、ハンゾーに振り返って精一杯生意気そうにニカって笑ってやる。俺が笑えば、ハンゾーもシシシっと忍び笑いで、俺の横に立って肩をやや強めにポンっと叩く。

 

 「聞かせろ、聞かせろ。今更の無茶の一つや二つ俺が聞いてやるよ」

 「そうか。じゃあ、幻影旅団の団長クロロ=ルシルフルを殺すよ」

 

 ハンゾーの笑顔が固まった。流石にはっきりとぶっちゃけ過ぎたか……。

 

 僅かに俺の背に冷たい汗が流れるが、ここでイモ引く訳にはいかない。

 

 俺はすました顔を作ってハンゾーに問う。

 

 「怖い?俺は一人でもやるけど?」

 

 そう言えばハンゾーの顔は明らかに不機嫌そうな顔で、むくれる。

 

 「誰が怖いってジバル?あぁやってやる。やってやるよ!そういうお前に勝算はあるんだろうな?ここに来て思いつきなんて言わせないぜ」

 

 ネオン=ノストラードの占いを見た時からずっと考えてた。ただその時はどうやって逃げるかしか考えなかったが、今は違う。

 

 「勿論。確実に息の根を止めてやる」

 「そうか……お前が言うなら、しゃないな。やれよ。この俺様が手伝ってやる」

 

 今度は俺が硬直する番だった。

 

 こんな荒唐無稽な提案を詳細も聞きもしないで、あっさり承諾するとは思わなかった。

 

 ハンゾーは俺の顔を見て、頭をポンポンと叩き、一本とってやったみたいな、どや顔をして見せる。

 

 今は、何よりその忌々しい顔が心強い。

 

 「じゃあ、まずはヨークシンに戻ったらクラピカと話ししなきゃな」

 「はぁ!?お前今、クラピカの邪魔したばっかりだぞ!」

 「い~の。い~の。それはそれ。これはこれだから」

 「馬鹿!あの堅物にそんな理論通じる訳あるか!」

 

 うん。俺もそう思うよ。けど、俺の計画にはクラピカの協力も必要なんだよ。

 

 立場、実力を考えるとクラピカ以外にはあり得ない。

 

 それは、原作知識でもなんでも使ってこちらの要求を確実に飲んで貰うしかない。

 

 「それにお前、ヒソカに全部クラピカを邪魔した件を全部おっ被せただろ!」

 「それも……それだから……」 

 「はぁ!?あいつにこそ、そんな事通じるか!殺されるわ!」

 「大丈夫。大丈夫。どうせすぐに俺らの前にあのピエロくるから」

 「マジか……」

 「大マジだ」

 

 冷や汗を額からダラダラと垂らすハンゾーは真っ赤になったり真っ青になったり忙しく、顔も万華鏡みうに色々変化しまくって混乱の極みに達している。

 

 そんなハンゾーを尻目に、俺は占いの結果の一部を思い出す。

 

 ”道化師が災いの訪れを告げる。全てを捨てて形振り構わずお逃げなさい”

 

 ”蜘蛛の頭は見つめ、糸を吐く。貴方は羽を捥(も)がれて、二度とは飛べぬ”

 

 どうせ狙われるなら、それを機に俺が逆に食らい尽くしてやる。

 

 「ハンゾーどうする?止める?」

 「止めるか!こうならトコトン付き合ってやるよ!」

 

 やけっぱちに叫ぶハンゾーに俺は満足げに笑う。

 

 二人で笑いながら荒野をヨークシンに向かって駆ける。

 

 俺たちの地下競売一日目はこうして、終わった。

 

 




ここでヨークシン編一区切りです。
次の話を投稿するまで、少し間が開きます。
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