G・Iの子 作:めーび臼
「あぁ。痛っったいわ」
一方的に殴った筈なのに、俺の肩の方がズキズキと痛む。
ズシくんを殴った反動を逃がしきれずに、反作用で肩をちょっと痛めてしまった。
ゴンくんとかキルアくんならどうだったかな。キルアは暗殺術とか修めてるから、殴って痛めるとかのヘマはしないか。ゴンくんは……。
なんかよく分からない身体感覚とか身体能力とかで上手く力を逃がしちゃいそうだよな。感覚で。
グリードアイランド内にいる両親も武術と言った体系化された技術に優れた人たちじゃなかったからな。体術はなんとなくの我流でやっていくのも限界だな。
「やっぱ戦闘とかムリムリ」
思わずハンター×ハンターの世界の醍醐味を真っ向から否定してしまう言葉が口から漏れ出してしまう。
「おっと!ズシ選手、あのジバル選手の強烈な一撃を受けて、フラつきながらもまだ立ち上がる!なんと言うガッツでしょうか!?今の彼には不屈と言う言葉が正にピッタリです!」
流石10万人に1人の逸材。いや、天才か。
俺の拳が当たる瞬間に鳩尾に周囲から一気にオーラを集めて防御してたからな。
おかげで慌ててオーラを移動させたけど間に合わなかった。
あれは頭で理解してやったんじゃない。本能ってやつで出来てしまうんだから、末恐ろしい。
嫉妬しちゃうぞ全く。
「自分はまだやれるっす!」
フラフラのズシの目は一切の輝きを失っていない、どころか輝きを増しているように見える。
本当に大丈夫かどうか、ズシくんに確認しにいった審判の方がズシくんの気配に気圧されてるくらいだ。
ズシくんを降参させるのを諦めた審判がリングの中央に戻る。
「お待たせしたっす!」
ズシくんは殴られた腹を押えていた右手を離すと、ダメージを負っているとは思えないくらいの綺麗な構えを取る。
その構えに思わず惚れ惚れと見入ってしまうが、俺も俺なりに腰を落として構えズシくんに対峙し直す。
「ズシくん。俺は君の才能に嫉妬してしてるよ」
ズシくんは俺の言葉に動揺しそうになって一瞬目が泳いだが、構えは崩れない。
「何を言ってるんすか。自分なんか同じくらいのジバル君に手も足も出ないのに」
俺は言葉を掛けながらジリジリと間合いを調整する。
「俺のはただの力押しだからね。もし、念の技術が同じならこっちが手も足も出なかっただろう」
これは本音。
念は身体能力や感覚などを強化してくれるが、発以前の三つはただの加点に過ぎない。
基礎値が高い人間に同じだけ加点されたら負けるのは当然に基礎値が低い方だ。
だから、筋肉をつけたり武術を学ぶのはとても大切な事だし。その努力や技量が自信に繋がりさらに強いオーラを生む事になる。
結局、努力も出来ない心の弱い人間はそれだけオーラも弱くなってしまうって事だ。
念を学んで習得した人間に心が弱い人間なんてあんまりいないと思うけど。
俺は、精孔から出るオーラ量を増やして纏(れん)で纏う量を増やしオーラに想いを込める。
それだけで、ズシの額からは大量の汗出て頬を伝う。
「ズシくん。顔引きつってるよ。今から俺の発(はつ)を見せる覚悟はいい?」
念の四大行に置ける発(はつ)とは一種の集大成。
要するに本気の本気を見せるって事を意味している。
俺の言葉にさっきまで引きつった顔をしていたズシくんも覚悟が決まったのだろう。一言「オス」っと力強く答を返してくれる。
「いくよ」
まぁ普通は合図なんてしない。
俺は構えている右拳に凝の要領でオーラをワザとゆっくり集める。
「これが俺の発だ!!!」
集めたオーラを一気に自分とズシくんに向けて放出した。
俺はフッと笑う。
それだけで、ズシくんの鼻からは鼻血が飛び出し、見守っていたウイングさんは口をあんぐりと開けて呆然となり、見守っていたもう一人のハゲの念能力者の頭上にはビールの水柱が噴出した虹を作った。
「な、ななな。またっすかぁあああ!!!!」
「なんとジバル選手が手を前に突き出しただけでズシ選手の鼻から血を流した!高速で突き出した拳が衝撃波を生んだと言うことでしょうか!私には分かりません!」
衝撃は?違うさ!俺はオーラで描いた美女のセクシーショットをズシくんの目の前にお見舞いしてやったのだ。
発?あんなのは嘘だ!騙し合いだって戦術でしょ。
セクシーバニーがそのボンテージ風の衣装を自ら恥ずかしがりながらお胸様をポロリとするエロ動画に加え、これを見て興奮しろ!って思いをオーラに込めてズシくんにぶつけた効果は抜群だった。
ズシくんは羞恥心に顔を真っ赤にするが、すぐに違う意味で頭に血が上ってしまったようだ。
「も、もう怒ったっす!真面目に戦うっす!!」
鼻血を流しながらズシくんは赤面して拳や蹴りを放つが俺は笑いながら避けてセクシーショットをズシくんの周りに描いていく。
ほれほれ、バニーちゃんだけじゃないぞ!HENTAI大国ニッポンで育った俺のエロストックをたんと食らうがいい!
ズシくんは、必死に戦いに集中しようとするが10万人に1人の才能の動体視力と初心な好奇心は視界にチラリチラリとチラつくザ・エロを無視出来ていない。
「ジバルくんのバッカヤロー!!っす!」
ズシくんの自分の煩悩を蹴散らすように渾身の飛び蹴りが、手ぶらで投げキッスを繰り出している俺の美女オーラを突き抜けて迫ってくる。
怒りとエロへの好奇心でその飛び蹴りは単調で見え見えだ。
俺は余裕を持ってしゃがんで蹴り足を躱すと、両手で自分のオーラを握る。
「ふふ。これが本当の発だよズシくん」
俺はズシくんを見上げて呟くと、ズシくんが目を剥いて驚いている姿が瞳に映る。
俺の手の中には巨大なハリセンが握られている。
俺がそのハリセンにオーラを注げば紫色に禍々しく輝きだして、このハリセンに込められた危険な思想を主張する。
「安心したまえ、体には害はない」
地を蹴ったズシくんの体の勢いが不自然になくなり、一瞬空中で止まるとその体はハリセンに引き寄せられる。
「クレイジー・イン・ラブ(行き過ぎた過剰な愛)」
俺が振り抜いたハリセンが頭から引き寄せられたズシくんの側頭部を打つと、体に纏っていたオーラが花火みたいに四散して根こそぎ弾け飛んで、ズシくんを空中へ打ち上げた。
打ち上げられたズシくんは、5メートルくらい闘技場の上空まで上昇すると自由落下を開始する。
ズシくんはさっきの一撃で意識も吹き飛んでしまったのだろう、空中でぐったりとしている。
オーラをなくしたズシくんがこのままでは危ないので、俺は適度にオーラを纏って落ちて来たズシくんをキャッチすると、会場が静まり帰っていることに気が付く。
まぁほとんどの観客には今何が起きたか見えていなかっただろうから、静まり帰ってしまうのはしょうがないか。審判さんも同様だ。
『クレイジー・イン・ラブ(行き過ぎた過剰な愛)』
は、対象の抱いている性欲に反応して威力とハリセンの大きさが変わる念能力だ。
。
対象のエロスが強ければ強い程、具現化したハリセンは大きくなり相手に与える衝撃も強くなる。
追加効果で相手のオーラも衝撃力に比例して強制的にふっ飛ばす事が出来る。オーラをふっ飛ばされて枯渇したら今のズシくんみたいにグロッキー状態に追い込む事が出来るその性能は身震いを感じる程だ。
男にとっては、最悪に近い能力だと思う。それに衝撃は与えるが相手に身体的損傷を一切与えない所がまた、生み出した本人の危ない思考を反映していると俺は思っている。
俺は気絶したズシくんをゆっくりとリングに降ろすと、試合は終わったと審判を見る。
審判は俺を見下ろしてなぜかワナワナしている。
「ジバル選手。そのハリセンはどこから?」
あぁ審判も念能力知らないから、混乱するのも無理ないね。でも、あえて教える訳にもいかないしなぁ。
「えっと、秘密です」
そう答えると審判は頭に手で押えて深い溜息を吐く。なぜだ!?そんなに俺の返答が気にくわなかったのだろうか?
「ジバル選手。200階まで武器の使用は禁止だ」
「え?」
「よって、武器使用によりジバル選手は反則!勝者ズシ!!!!」
俺のどや顔が一瞬で引きつって、膝から崩れ落ちた。