【クロス】艦隊これくしょん×仮面ライダー龍騎【完結済】 作:焼き鳥タレ派
また、今回は不快な思いをする可能性がある描写がございます。ご了承ください。
これは、城戸真司達ライダーらが現実世界に戻っていた時の物語。
──城戸鎮守府 本館前
「ふん、ふふん、ふふ~ん♪」
三日月は鼻歌を歌いながら本館前の入り口の掃き掃除をしていた。
真司さん、外の世界の用で1週間ほど出かけるそうです。
でも、早く帰ってくるかもしれないから、いつでも気持ちよくお出迎えできるように、
綺麗にしておかなきゃ。そして彼女は掃除を続ける。
その時、海から桟橋に上がり、本館に向かう複数の人影があった。
「……懐かしいわね」
ゴトゴトと木の床を鳴らしながら“彼女達”は歩く。
本館前に三日月の姿を見ると、ゆっくりと彼女に近づいた。
そして優しく声をかける。
「ただいま、三日月ちゃん。元気だった?」
不意に呼ばれ、振り返る三日月。しかし、声の主の姿を見て、思わず箒を落とす。
「あ、あ……」
胸の底からこみ上げてくる感情を抑えきれず、言葉にならない。
ただ、気がついた時には三日月は彼女達に向かって駆け出していた。
──高見沢グループ本社 応接室
「では、納入品は我が社の最新旅客機の外壁に使用する板金。
納期は来年3月末ということで」
「はい、ありがとうございます!」
巨大企業高見沢グループの本社で、高級な革張りソファで向き合い、
社長の高見沢逸郎と町工場の社長らしき作業服を着た男が商談を行っていた。
男はハンカチで薄い頭の汗を拭いながら、恐る恐る申し出た。
「あの、それで折り入ってお願いがあるのですが、今回も……」
高見沢は柔らかな笑顔を浮かべて手で制する。
「まぁまぁ、そう改まらないでください。
今回も契約金の半額を前払い、ということに致しましょう」
「いつもいつもありがとうございます!
いや、弊社のような零細企業はなかなか運転資金を銀行から借りるのも難しくて……」
作業服の男は何度も高見沢に頭を下げる。
「いやいや、日本を支えているのは、貴方がた創意工夫で独自の技術を成長させている
中小企業ですからね。我が社はそんな日本経済の原動力となる貴方がたを
微力ながら応援したいと思っているんですよ。
それに御社からはいつも良い品を納品して頂いていますからね。信用していますよ。
さて、無事契約も成立したところです。お見送りしましょう」
高見沢ドアを開けて防音カーペットの敷かれた廊下へ男を促した。
「お気をつけて」
退室した男は高見沢に頭を下げながら去っていった。高見沢も笑顔で見送る。
そして笑顔のまま小声でつぶやく。
「……クソ貧乏人が」
商談を終えた高見沢が社長室に戻ると、頭に耳慣れた金属音が響いた。
大きなため息をつくと、誰もいない部屋に誰ともなく声を掛けた。
「おいコラ神崎、どこにいやがる」
「俺はどこにでもいる。お前はこんなところでまだ社長仕事か。
よほどライダーバトルに嫌気が差したと見える」
「出てこいっつってんだウスノロが!俺はてめえと違って忙しいんだよ!
スケジュールってもんがあんだスケジュールがよぉ!!」
高見沢は高級木材でできたテーブルを思い切り蹴る。
テーブルのそばに神崎の姿が徐々に浮かび上がってきた。
「仕事も結構だが、もうこの世界にライダーは殆どいない。
呑気に構えている余裕はないと思うが」
「うるせえぞ!てめえが面倒くせえミラーワールド選ばなきゃな、
今頃とっくに俺が頂点に立ってたんだよ!
なんで俺がガキのオモチャで遊ばなきゃならん!」
「10分しか戦えないミラーワールドの方がよほど面倒だと思うが」
「黙ってろクズが。こっちはもうSons of Daidalosの残党から
“鍵”も、武器も、情報も!勝つために要るものは全部調達してあるんだよ!
“鍵”はうちのIT系子会社に改良させた。何も問題はない。今日“挨拶”に出発する」
「急いだほうがいい。既にライダーバトルは進んでいる。
新たな力を手に入れたライダーも存在する」
「俺に指図するな。もういい、とっとと消え失せろ」
神崎は何も答えず、ゆっくり部屋の明かりに溶け込むようにその姿を消した。
高見沢は凝ったデザインのデスクに着くと、パソコンを起動し、
隠しフォルダーを開いてアプリケーションを開いた。
電卓のような番号を入力するプログラムが表示されると、高見沢は暗証番号を入力。
すると、壁に飾られていた絵画がスライドして、中からジュラルミンケースが現れた。
彼はケースを持ち出すと、再びパソコンを操作し、今度はブラウザを立ち上げた。
そしてDMM.comにアクセスする──
Login No.008 高見沢逸郎
……ここか。高見沢はデスクや本棚など、
最低限の調度品が並べられた執務室に降り立った。窓を開けゆっくりと外を眺める。
造船所らしきクレーンや倉庫が並んでいる。
ふん、ブルーカラーの巣窟を絵に描いたようだ。ダイダロスの連中の話によると、
もうすぐ迎えが来るそうだが。そう思っているうちに小さな足音が近づいてきた。
気づくと同時にノックもなしにバタン、とドアが開く。
振り返ると背中に何やらゴテゴテした機械を装備した
薄青色のロングヘアの少女が立っていた。
「と、特型駆逐艦、5番艦の叢雲よ!あんたが新しい司令官ね。
この世界のナビゲーションをしてあげる。感謝しなさい!」
所詮ブルーカラーはブルーカラーか。ろくに口の利き方も知らんクズが舞い込んできた。
それでも高見沢は作り笑いを浮かべ、
「そうか。ここが艦隊これくしょんの世界なんだね。おじさんは高見沢逸郎。よろしく」
叢雲に手を差し出す。叢雲は照れているのか顔をそらしながら手を握り返した。
「じゃあ、早速工廠から案内するわよ、急ぎなさい!」
「どんなところか、楽しみだよ」
要するにテメエらの処刑場だろう。ここの情報は入手済みだ。
面倒くさいが、往復パスが1つは欲しい。付き合ってやるか。
高見沢はジュラルミンケースを持って叢雲と本館から外に出た。
「……で、工廠の向こうに見えるのが装備換装なんかをする改修ドッグね。
それから左手のあそこ。あれが私達艦娘の宿舎。
戦闘で受けた損傷を癒やす“お風呂”があるんだけど、
……毎回変なこと考える馬鹿がいるのよねぇ。
そいつらがどうなったかは、言うまでもないでしょ?」
叢雲は背中の艤装を操作し、高見沢を指差すように砲を向けた。殺すぞクソガキ。
まぁいい、それは後でもできる。
情報通りこいつらがハッタリをかましてきたってことは、
やっぱりこの世界では俺の言葉が絶対になるってことになる。
後で震え上がらせてやるほうが面白そうだ。
「大丈夫。おじさんは……っと!紳士だからね」
高見沢はその場で一回くるっと回り、右手を左肩にかざし、
西洋風のおじぎでおどけてみせた。
「ならいいけど……次は作戦司令室ね。
あそこに基本いつも司令代理の長門さんか補佐の陸奥さんがいらっしゃるから、
出撃したり、部隊編成するときは伝えるといいわ」
「なるほど。戦いに赴く時はあの建物、だね」
その後も二人は1時間ほどかけて鎮守府全体を回っていった。
「……とまぁ、鎮守府の主な施設はこんなとこね。じゃ、あそこ見て」
鎮守府のナビゲーションを終えた叢雲と高見沢は本館の執務室に戻っていた。
彼女が指差した先には01ゲートが。ふん、あれが出口ってわけか。
「誰が名付けたかは知らないけど、通称01ゲート。現実世界に繋がってる。
この世界に興味がないなら別に帰ってもらってもいいから。
うぅ~ん、お仕事終わりっと!じゃあね」
と、伸びをしながらも退室しようとしない叢雲。
適当に視線を泳がせるふりをしてチラチラと高見沢を見ている。
高見沢は“こんなゴミ溜めに誰が住むか”と言ってみたい気持ちを
押さえるのに苦労した。
「ここで戦うよ。そのためにここに来たんだ」
「そ、そう!……あ、いや、そうしたいなら好きにするといいわ。
なら、これからあんたが司令官ってことね。ま、せいぜい頑張りなさい。
それと、私、あんたの秘書艦になることになったから。
あんまり世話かけさせないでよね」
無意識に腕を組んだ体をモジモジしながら無愛想を装いつつ、
彼女なりの歓迎を述べる叢雲。
「そうか、君が私を補佐してくれるんだね!
じゃあ、早速お願いしたいことがあるんだけど」
「なによ」
「この鎮守府にいる全部の艦娘を集めて欲しいんだ。
ほら、案内の途中に大きなホールがあったじゃないか」
「全員?なんでまた」
「ここで君達の命を預かることになった以上、直接みんなに挨拶しておきたいんだ。
忙しいのに無理を言って済まないが、頼むよ」
「まぁ……そういうことなら」
──高見沢鎮守府 多目的ホール 大ホール 舞台裏
30分後、あの後叢雲が長門に連絡を取り、長門が全艦娘に司令を送る、という形で
この大ホールに高見沢鎮守府全ての艦娘が集められた。
急に呼び出された理由が既に分かっている艦娘たちは落ち着きなくガヤついている。
叢雲と高見沢はステージ裏で身支度を整えていた。
「みんな集まったわ。支度はできた?」
「ありがとう。こっちは大丈夫。じゃあ、さっそく行こうか」
二人はステージに上がり、高見沢は中央の演説台に付いた。
ガヤガヤした空気がしんとなる。
「皆さん、初めまして。私は仮面ライダーベルデこと、高見沢逸郎です。
この度、この鎮守府の提督となることが決まりました。
至らないところもあると思いますが、以後よろしくお願いします」
仮面ライダーベルデ。叢雲も知らされていなかった事実に衝撃を受ける。
それは聴衆も同じことだった。
「いや、驚かせて申し訳ない。なにぶん言い出すタイミングがなかったもので。
まずは簡単な自己紹介を。私は外の世界では高見沢グループという会社の
まとめ役をしているのですが……まぁ、ここでは話しても仕方ありませんね。
この度、皆さんをミラーモンスターやイレギュラーなる無法者から
お守りする役目を受け持つことになりました。
私は皆さんが安寧に満ちた生活を送れるよう、粉骨砕身の努力を……」
その時、聴衆の中からヤジが飛んだ。
“ふざけないで!誰のせいだと思ってるの!”
“そうよ!イレギュラーが流れ込むようになったのは、
ライダーのせいらしいじゃない!”
誰だ人が喋ってる時にぶっ殺すぞ!!
全ての艦娘がライダーに対して好意的、というわけではないらしい。
“人間はいつもそうよ!私達を道具のように!”
“ライダーバトルなんかに巻き込まないで!“
“そうよそうよー!!”
“死んでいった先輩達を返して!”
高見沢に向け口々に怒りの言葉をぶつける艦娘たち。
もう神崎の野郎が知れ渡ってるのか。
うんざりだ、というように一つ溜息をついた高見沢はマイクを投げ捨てた。
「気取って話す必要もねえな……黙れ、クズ共!!」
これまでの紳士的な語り口から一転、ドスの利いた声で放たれた暴言に
艦娘たちが戦慄した。叢雲も唖然として口が動かない。
ステージの端に立っていた長門は黙って様子を見ている。
「甘えてんじゃねえ!人間はてめえらの創造主だ!道具として使い捨てて何が悪い!
そういえばさっき、宿舎の近くを通ったときに雑巾で窓を拭いていた奴がいたな。
そいつが雑巾のために命をかけたり奉仕する必要があると思うか!?
寝ぼけるのも大概にしろ!ライダーバトルはいやだ?
その見返りにてめえらは流れ者のクズどもから守ってもらってたんだろうが!
ちょっとやそっとの巻き添えが何だ!殺し合いにルールなんかねえんだよ!」
マイクが無くてもホール中に響き渡る声で暴論を吐き続ける高見沢。
叢雲はどうしていいかわからず、戸惑っている。長門は相変わらず無言のままだ。
聴衆の中にはすすり泣く者もいる。
「今日からは俺がお前達に使い道を与えてやる!
俺は艦これなんぞというお遊びに付き合うつもりはねえ。
このサイバー空間を制圧し、タイムワープの技術を手にしたら、
全世界の歴史を俺が支配する歴史に塗り替える!その為にお前達は奉仕しろ!
今からこの磯臭い鎮守府を一旦更地にし、高見沢グループの研究施設を設置する。
土方を雇うにも金が必要だ。力仕事を手伝うか……こちらの野郎共の“相手”をするか。
好きな方を選べ。この条件を飲む者は
イレギュラーやミラーモンスターから守ってやろう」
当然聴衆からブーイングが巻き起こる。
“ふざけないで!あんたの欲望のためにこの世界を差し出すもんですか!”
“最低!帰れイレギュラー!”
“ライダーの言う事なら何でも聞くと思ったら大間違いよ!”
口々に高見沢を非難する艦娘達。
だが、高見沢は鼻で笑い、足元のアタッシュケースを開けた。
中に収められた、木製のグリップが特徴的な筒型の物体と弾薬箱を取り出す。
「おっと言い忘れてたな。俺に協力しないもの、抵抗するものは……こうなる」
そして、高見沢はM79グレネードランチャーを聴衆に向け、躊躇いなく発射した。
密集してパイプ椅子に座っていた艦娘達に40x46mm榴弾が着弾、炸裂した。
ホール内に轟音が響き、一斉に悲鳴が上がる。
硝煙が晴れると、血だらけになった幼い駆逐艦達が立ち上がれずに手を伸ばし
助けを求めている。
“いたい……いたいよー!”
“ゲホゲホッ……いや……鉄が刺さってる!誰か取ってぇ!!”
“たすけて金剛さん、扶桑さん……だれか、お風呂につれてって……”
「貴様、何をしている!」
ここで初めて長門が高見沢に飛びかかろうとした。
だが、その手が届く前に高見沢が告げる。
「提督権限、“俺に触るな”」
「くっ……卑怯者!」
彼は何も言わず、嘲笑いながら次弾を装填。
今度は駆逐艦たちの救助に向かった上位艦娘達に榴弾を放った。
またしても、悲鳴、流血、涙。流石に戦艦には殆ど効果がなかったものの、
装甲の比較的薄い空母が僅かに出血……そして駆逐艦達は意識を失った。
「ハハハハ!逃げろ逃げろ!」
高見沢はその後も榴弾を撃っては装填、撃っては装填、を繰り返し、
会場の艦娘達をパニックに陥れた。
戦艦や重巡が、駆逐艦や装甲の薄い者を身を呈してかばう。
「いい加減に、しろおおお!!」
理性のはちきれた叢雲が高見沢に向かって走り出す。しかし、やはり彼は余裕の表情で、
「お前に言い忘れたことがある。俺はな……ガキが嫌いなんだよ」
背広からカードデッキを取り出すと、演説台に置かれたガラスの花瓶にかざした。
高見沢の腰と花瓶に映り込んだ姿に変身ベルトが現れる。
そして、パチンと指を鳴らしカードデッキを装填。
「変身」
高見沢に反射で出来た鏡像が重なり合い、仮面ライダーベルデへと変身した。
「お前なんか、お前なんか!!」
なおも叢雲はベルデに向かってくる。
しかし、変身して駆逐艦を上回る力を手に入れたベルデの反撃を食らう。
「ハッ!やる気あんのか?」
掴みかかろうとした叢雲をひらりとかわし、すれ違いざま、
彼女の腹に手加減なしの膝蹴りをめり込ませた。足から力が抜け、息ができない。
「ぐあっ!……か……」
そしてベルデは彼女の髪をつかみ、無理矢理顔を向き合わせる。
「ううっ……」
「ふん。おいコラ、てめえ目上のモンに口の利き方がなってねえんだよ。
俺が躾けてやろう」
ドゴォ!と今度は強烈な右フックを叩き込む。
倒れた勢いで滑るようにステージを後退する叢雲。
ベルデは彼女が立ち上がるのを待ちながらカードを1枚ドロー。
叢雲は立ち上がるが、切った口から血を流し、その端正な顔は無残な痣ができている。
しかし、その目の怒り、闘志は潰えていない。またベルデに殴りかかろうと走り出す。
「うああああ!!」
「バカが」
ベルデはカメレオンの舌のように伸縮する紐で繋がれたクリップにカードを挟み、
手を離す。瞬時に縮んだ紐は左腿のカードリーダー・バイオバイザーへと収まった。
『FINAL VENT』
すると、完全に周囲に擬態していた
ベルデの契約モンスター、バイオグリーザが姿を現し、勢いをつけて
その長い舌を飛ばした。舌が天井の梁に一度巻き付いて経由し、ベルデへと飛んで行く。
ベルデはジャンプし舌を足に巻きつけると、振り子のように
叢雲に向かってスイングする。
「危ない!」
だが、本能的に危機を察知した長門が叢雲に体当りして彼女を押し出した。
ベルデはそのまま長門の両足を掴み、そのままの勢いで
天井近くに舞い上がったところで何回転もし、長門の頭を地面に向けて落下した。
ベルデのファイナルベント「デスバニッシュ」によって、鋼鉄の装甲を持つ長門は
致命傷には至らなかったものの、頚椎を骨折し、動かなくなった。
床に転んだ叢雲が見たものは死体のようにピクリとも動かない長門。
這うようにして彼女に近寄る叢雲。
「長門さん……長門さん!返事をしてください!」
「……」
「いやあああ!!」
悲痛な叫びを上げる叢雲をよそに、ベルデは勝利を宣言するように両腕を広げる。
そして、再びマイクを取り、全員に告げた。
「期限は明後日。明後日にまた来る。
それまでに降伏か戦争か、身の振り方を決めておけ。次はこんなもんじゃ済まねえぞ。
こっちにゃな、やろうと思えばお前らごと鎮守府灰にできる兵器があんだよ。
信じねえのは勝手だが、あの世で後悔するのはお前らだ」
そしてベルデは、今だパニック状態の艦娘達を押しのけてホールから去っていった。
後に残されたのは救護班の怒号、消火活動を行う艦娘、
そして、動かない長門の手を握る叢雲の涙だった。
「……」
その時、喧騒の中、拳を握りしめていた一人の艦娘が、
ダッとホールを飛び出し、作戦司令室に飛び込んだ。
大淀は椅子を引き出すのももどかしく、コンソールにすがりつくように、
他鎮守府への緊急回線を開いた。
「こちら高見沢鎮守府、秋山鎮守府応答願う!イレギュラー発生!
SOS!秋山提督の救援を!」
“何ですって!?提督は現実世界の用で1週間は帰ってこないわ!
とにかく、すぐ他鎮守府に救難信号を出して!”
どうして、どうして私達は。
「こちら高見沢鎮守府!コード9037!至急ライダーの救援乞う!」
“何があったの、”私“!?手塚提督は今、占い専門学校の非常勤講師で……”
返事を待たずにダイヤルを回す。視界が滲む。
「北岡先生!助けてください!」
“どうしたの、いきなり何?北岡提督なら外の世界で証人尋問があるとかで……”
結局、私達は、ヒトが作った人形。
どんなに“生きているんだ”と叫んだ所で、命を積み上げた所で。
「お願い……返事して、城戸鎮守府。私達、殺される……」
“殺される!?何言ってるの”私“!とにかく状況を!
城戸提督は秋山提督と……ブツッ……”
いつか、全てが、奪われる。
私は作戦司令室を飛び出し、目的もなく海に向かって駆け出していた。
遠くから救護班の困惑と負傷者の悲鳴が聞こえてくる。
“痛いー!誰かあああ!早くお風呂に入れて!!”
“ごめんね!もう少しだけ我慢して!
他の提督がお戻りになればすぐに入れてもらえるから!”
“麻酔薬と鎮痛剤は!?”
“もうないわ!”
だが、私にできることはないし、誰かに構っている余裕もなかった。
桟橋の近くで足がもつれて転んでしまう。
立ち上がる気力もなく、私はただ地に手をつき、石畳を見つめていた。
眼鏡を濡らした涙が滴り落ちる。思い描いていた“ライダー”の姿が崩れ去っていく。
私は休みの時間に、こっそりライダー鎮守府の“私”に、普通と違う、
変わった提督のいる鎮守府の話をせがんでいた。
ちょっと抜けてるけど、何事にも真っ直ぐな城戸提督。
無愛想だけど加賀さんにも実力を認めさせるほど強い秋山提督。
不思議な占いで何でも言い当ててしまう手塚提督。
悪人かもしれないけど、自分より弱い者に手を上げることはなかった浅倉提督。
みんな、かつてのヒーローを名乗るに相応しい存在だった。そう思ってた!!
でも、ライダーバトル。……結局みんな、そのために戦ってるってこと忘れてた。
さっきの高見沢の姿は結局仮面ライダーみんなの薄皮を剥がしたものに過ぎないんだ……
いい年して存在すらしないヒーローに夢中になるなんて、バカみたい。
ずいぶん座り込んでいた私は起き上がろうと手に力を入れる。
ポン……
その時、私の肩に小さな手が置かれた。見上げるとそこには瞳の黄色い女の子。
「諦めちゃ駄目です!戦いましょう!」
「無理よ……どの鎮守府の提督も1週間は帰ってこない!あいつは明後日戻ってくる!
そうしたら、みんな奴隷にされるか、殺される!間に合わないよ……」
「涙を拭いて胸を張れ。それでも軍艦の魂を継ぐ者か」
ハッと声の方向を見ると三日月に遅れて7人の艦娘達がやってきた。
大淀は涙を拭くと立ち上がり、改めて彼女達と向き合った。
一人は知ってる。城戸提督の秘書艦、三日月ちゃん。でも、後ろの人たちは……!?
その時、大淀は異変に気づいた。7人の艦娘の体に
時折ブロックノイズやゴーストが走る。無意識のうちにその疑問を口にしていた。
「あの……貴方達は一体どなたですか?」
その時、7人の中から一人が進み出て答えた。
ブラウンのショートカットに大口径砲をいくつも装備した艦娘。
「私は戦艦・日向。だが我々は既に艦娘であって艦娘でない。
……言うなれば、“x029785の悲劇”、その亡霊だ」
「亡霊って……?」
「話すと長い。どこか落ち着ける場所はないか?」
「落ち着ける場所なんて……なくなっちゃいました」
そして大淀はまた涙ぐむ。しかし日向は彼女を叱咤する。日向の頬にノイズに走る。
「しっかりしないか!侵略者を撃退するのは手足が無事なお前達しかいないだろう!」
「そんなこと言ったって……奴が提督である限り、
あいつが一言“死ね”って言ったら私達はお終いなんですよ!?」
「それについては心配いらない。もう一度聞くぞ?
落ち着いて話し合える場所を教えてくれ」
「ぐすっ……北西の多目的ホールに会議場があります。
もう負傷者の搬送も終わってるから、救助活動の邪魔にはならないかと」
「決まりだな。そこまで案内してくれ。私が生きていた頃は行く機会がなかったのでな」
「はい……」
「大淀さん、元気を出してください!きっと皆さんの話を聞けば希望が湧いてきます!」
三日月が大淀を励ます。黙って頷く大淀。
そして全員多目的ホールに向かって歩きだした。
──高見沢鎮守府 多目的ホール 第1会議室
多目的ホールの中でも十数名での会議を想定したその会議室は、
大淀、三日月、謎の艦娘が入っても十分な広さがあった。
謎の艦娘達はそれぞれ好きに席に着く。
大淀も緊張しながら三日月の隣に座り、彼女に尋ねる。
「ねぇ三日月ちゃん。あの方達は?」
「少し事情が込み入っているので、皆さんが直接説明してくださいます。
もう少しお待ち下さい」
「ええ……」
仕方なく大淀はそれ以上の質問をやめ、待つことにした。
すると、謎の艦娘の一人が立ち上がった。
「大淀さん、まずは今の状況を知りたいのだけど、
先に私達の自己紹介が必要ですよね」
「はい。貴方がたは一体どちらの鎮守府所属なんでしょうか……?」
彼女は静かに首を振る。
「私達はもう艦娘であって艦娘でない存在。
そう、“x029785の悲劇”による大量削除で艦これの世界から消えた、元艦娘です」
「……!!」
言葉を失う大淀。しかし、元艦娘は言葉を続ける。
「どうして死んだ艦娘が生きているのか、ですよね?
これは私も削除されて初めて知ったのですが、ゲームのシステムがもたらした
運命のいたずらです」
「ゲームの、システム……?」
「はい。確かに私達はあの日、イレギュラーの手によって削除されました。
しかし、実際に艦娘を削除しても、工廠の溶鉱炉で
艦娘の肉体を溶かしたり打ち直したりして資材に変えているわけではないのです。
まず、溶鉱炉に艦娘が入ると、とりあえずその娘に見合った資材が算出され、
ゲームシステムがコンベアで排出します。
じゃあ、艦娘はどこに行ったかというと、アーカイブ化されて
サーバーの削除候補の一番後ろに並びます。
何しろ無数の提督が、これまた目当ての艦娘を引き当てるために建造・削除を
何度も繰り返しているのですから、私達はずいぶん後ろでした。
たっぷり一月以上待ちです」
「つまり、三日月が見た艦娘大量削除の工程は単なるゲーム上の演出。
あの時点では私はまだ完全には消滅していなかったということだ。
サーバー内では膨大な回数の削除処理をその都度行うのではなく、
おそらく数千件ごとのグループに分け、順番に消去していっているのだろう」
「それじゃあ、貴方がたは、あの鎮守府の……!」
「そう。サーバーの中で眠っていたときに君の願いが聞こえてな。
ちょっと順番待ちの間に抜けさせてもらった。
言わば私達は“正常に動くバグ”だ。
……三日月に聞いたが、私達が眠っている間にいろいろあったそうだな。
仮面ライダーなる者達が艦これの世界を戦場にしていること、
彼らに紛れて入り込んだ無法者が“提督権限”を悪用して
我々艦娘を玩具のように扱っていること。だが心配ない。
既に艦娘でなくなった私達に提督権限は通用しない」
日向の言葉に、絶望に満ちた大淀の心が晴れる。
「私達が戦う。でも、みんなの協力も必要よ」
「え?でも提督権限で縛られてる私達にできることなんて……」
「でへへ。それに関しても抜け穴があるんだな~。でもまずは自己紹介始めようぜ~
全員名無しのごん兵衛じゃつまらないからさぁ……。
あたしは軽空母・隼鷹。ひゃっはぁー!」
「そうですね。私は正規空母・赤城。これから具体的な作戦を練りましょう」
「戦艦・日向だ。今度こそ戦いの意味を見極めるつもりだ」
「戦艦・長門。よろしく頼む。この41cm砲なら長距離射撃も外さない」
長門が自己紹介したところで大淀がうつむいてその表情が暗くなる。
「どうかしたか?」
「いえ、なんでも……」
「軽巡洋艦・球磨だクマ。オールラウンドな能力に期待して欲しいクマ」
「駆逐艦・夕雲です……フフ、早撃ちには自身があります」
「重雷装巡洋艦・北上改。
まー海から攻めてこないとも限らないからね。一応見張っとく」
全員が自己紹介を済ませた所で、赤城が大淀に現状確認をした。
彼女の姿が一瞬モノクロのゴーストになる。
「大淀さん、辛いだろうけど、
事件の詳細とイレギュラーについて詳しく教えてくれないかしら」
「はい……」
大淀は、高見沢がホールに全員を呼び出し、演説中に突然態度を豹変させ、
この世界を我が物にすると宣言。
続いていきなり駆逐艦や助けに向かった戦艦空母に向け、榴弾砲を発射した。
そして、変身した高見沢に立ち向かった叢雲をかばって長門が攻撃を食らい、
頚椎を損傷し、人事不省となったこと。全てを話した。
「奴は……あの悪魔は、幼い駆逐艦達をまるで狩りを楽しむように狙い撃ったのです!
助けに行った皆さんも標的にされ、結果駆逐艦達は重傷。
今もお風呂にも入れず痛みに泣き叫んでいます。
長門さんは……叢雲ちゃんをかばって頚椎損傷。今なお身動きが取れない状態です」
「なるほどそれで……」
長門は先程の大淀の変化に得心が行ったようだ。
「現状については把握できました。まさかそんなひどいことになっていたなんて……。
でも、大丈夫。さっきも日向さんも言いましたが、私達はもうバグでしかない。
提督権限は通用しません。それに繰り返しになりますが、皆さんの協力も必要です」
「でも、提督の言葉一つで貴方がたの敵にもなってしまう艦娘の我々に、
何が出来ると……?」
その時、隼鷹が一升瓶を赤子のように抱きしめながら発言した。
彼女の肩が一瞬ブロックノイズ化する。
「そいつぁ~ちょっとした抜け道があるんだよねー……。
あ、思いついたの、あたし!あたし!」
「それは何度も聞いたからみんなに説明して欲しいクマ……」
「あはは、悪りぃ悪りぃ。つまりだな、提督権限には発動条件があんのよ」
「発動条件、ですか?」
「そ。あの日、あたしらを削除した親父が律儀にコンソールで
ポチポチ削除対象選んでたじゃん?それであたしピーンと来たわけ。
提督は最低でも“艦娘の姿”と“名前”を認識しないと
提督権限を発令できないんじゃないかってさ。
もし提督権限が射程無限の万能兵器だったら、あの時コンソールいじらなくても、
“全員死ね”って叫べばそれで済んだじゃん?」
そして日本酒を瓶から直接一口煽る。
「でもそれに関しちゃ結構賭けなんだよねぇ。あの日、この世界に来たあのオヤジ、
ろくに三日月ちゃんの説明聞いてなかったらしいじゃん。
それってつまり提督として正式に登録されてなかっただけなんじゃないかって
北上さんは思うわけですよ」
ぐで~っと顎を長机に乗せて語る北上。今度は球磨が割って入る。
「球磨が思うにそれは大丈夫だと思うクマ。
自分が艦これになったつもりで考えて欲しいクマ。
外見のデータも名前も不明な状況で命令だけ下されても、
誰にどうしたらいいのかわからないクマ」
「球磨先輩の言うとおり……ここの皆さんにはマスクか何かを着けてもらいましょう」
夕雲が球磨の意見を支持した。
「私達が戦える理由についてはこんなところね。後は大淀さん、貴女次第よ」
「私、ですか?」
急に自分に話題を向けられ、戸惑う大淀。
「私は……一体何をすればいいんでしょうか」
「さっきも言ったけど仲間が必要。貴女に決起を呼びかけて欲しいの。
ずっと鎮守府でアナウンスを務めてきた貴女の声なら、
きっとみんな耳を傾けてくれるはず」
「私に、できるでしょうか……」
「出来るかどうかじゃない。やるんだ。お前はこのままでいいのか?
ここで退けば、我々はずっと人間に利用されるまま。
今日のような暴虐を受けても何も言わずに諦めるしかなくなるんだぞ!」
日向の問いかけに、大淀はしばしの沈黙。そして、意を決して答える。
「やります!どこまでできるかわからないけど、絶対皆さんを集めてみせます!」
そして。鎮守府全体に大淀の聞き取りやすい声が響いた。
“陸奥司令代理、まずは独断専行をお詫び致します。
ご処分はこの危機が去ってからお受けします。
そして、この放送を聞いている全ての方にお願いです。共に戦ってください!
確かにイレギュラーの仮面ライダーは強大な敵です。でも、どうか諦めないでください。
ここに提督権限に縛られない7人の援軍が来てくれました。
彼女達はかつて“x029785の悲劇”で命を落とした練度の高い艦娘達です。
……信用できないのも無理はありません、ですが、
彼女達はゲームシステムの隙を突いて艦これの世界に戻ってきてくれたのです。
我々は侵略者と戦うつもりです。そして、それには皆さんの協力が必要です!
力を貸してくれる方は、どうか本館前広場にお集まりください。
皆さんの勇気を信じています。以上”
作戦司令室でアナウンスを終えた大淀はマイクを放した。彼女の肩に手が置かれる。
日向がかすかな笑みを浮かべて彼女を見ていた。
「では、私達も行こうじゃないか」
「でへへ、お化けだぞ~ってか」
「ふふ。実際そうですから可笑しいですね」
本館前広場。そこに肩に掛ける大型メガホンを持った大淀、三日月、
そして蘇った7人の艦娘達がいた。
先程の放送で集まった者、たまたまそこにいた者、皆彼女らの姿に驚く。
“どうして!?長門さんは今……”
“生き返ったって言われても……”
大淀は再びメガホンに接続されたマイクを持つ。
「皆さん、ここにいてくれてありがとうございます!
この非常時に更に混乱を招くようなことをお伝えしなければならないことは
申し訳なく思っています!
でも、彼女達がデータの海から私達を助けに来てくれたのは事実なんです!」
隼鷹が前に出る。そして、ニコニコ笑って、お~い、と大きく手を振った。
徐々にその手がテレビの砂嵐のようなノイズに変わる。
また周囲の艦娘の驚きの声が上がる。隼鷹は大淀からマイクを借りて語りだした。
「見ての通り、あたしらはもう艦娘であって艦娘じゃない、
よくできたバグなんだよねぇ。
だから提督権限にも縛られずに遠慮なくイレギュラーとやらをぶっ潰せる。
でもやっぱ7人じゃ限界があるんだ~。協力してくれたらオネーチャン嬉しっ!
な~んて、アハハ」
その姿を見ていた観衆達は、やがて互いに頷き合い、そのうちの一人が手を上げた。
「何をすればいいんですか!?」
“倉庫にこんなものがありました!何かに使えませんか?”
“これは兵器というより骨董品だが……いや、明石に専用の徹甲弾を作ってもらえば!”
“ここにもバリケードを!敵の機動性を奪うの!”
“誰か、鋼材を持ってきて!”
“皆さん、いいですか?大きめの布巾やバンダナで顔を隠して。なるべく姿を隠すの”
“わかりました!”
“全員補給は済んだか?済んだら燃料・弾薬は全て放棄しろ。
引火したら戦う前にお陀仏だ”
“総員の補給を確認、これより撤去作業に入ります!”
“負傷者の移動は終わったクマ?奴らの兵器に巻き込まれない場所へ移すクマ”
“昔作られた地下壕があったから、今搬送中!”
……
………
あの放送の後、協力者が続々と集まり、
結局怪我人の看護担当以外は全員が戦いに参加することになった。
もう日は暮れたが、まだ続いている戦いの準備の様子を
本館のテラスから眺める隼鷹と日向。隼鷹はすっかり出来上がっている。
「明後日の今頃、我々はどうなっているのだろうな」
「だはは!死んでんじゃね?」
「かもしれんな。……隼鷹、お前は何のために戦っている?」
「う~ん、あたしゃ艦娘だしぃ……そうだ!戦の後の一杯は格別だからだー!イェイ」
そしてまたガバガバと一升瓶から酒を煽る。
「ふふ、お前らしいな。私は結局戦いの意味を見いだせないまま死んでしまったが、
ここで彼女達と共に戦うことで何がしかの答えを得られるのだろうか」
「日向は生真面目過ぎなんだよぉ。
ほら、あんたも飲め、飲めばどんな悩みも一発解決ってなもんよ!」
「ふっ……もらおうか」
日向は一升瓶を受け取り、一口飲んだ。ぽっと体が熱くなる。月の明るい夜だった。
さざなみの音に耳を澄ます。また、こうして海を眺める日が来るとはな。
ふと、手のひらを見る。ぼやけて二重に見える。……間に合えばいいが。
隣では隼鷹が座り込んで意味もなく笑っている。彼女も分かっているはず。
私達に時間がないこと。せめて今を生きる艦娘達に何かを残せる事を祈ろう。
日向はまた大海原に目を向けた。
二日後。鎮守府北に巨大な時空の穴が空き、
戦車や巨大な兵器を積んだトラックが木々をなぎ倒しながら強引に森を突破してきた。
その様子を観測した赤城の偵察機が彼女の元に戻っていく。
工廠の屋根に登っていた彼女が携帯式電波通信機で各員に通達する。
「皆さん、聞こえますか、敵襲です!総員、戦闘用意!」
“了解!”
数の限られている電波通信機全てから応答が返ってきた。超大型車両の排気音が迫る。
今、艦娘とライダーの戦いの火蓋が切って落とされた。
*パクリ……もといオマージュ元の映画は「マグニフィセント・セブン」です。
ビリーのナイフさばきが見どころなのでレンタル屋で見かけたら是非。
言い訳させていただくと、バトル描写の割合が、龍騎に偏ってる気がしたので、
一度艦娘メインの戦いを書きたかったんです。
そう思ってたときにメチャカッコいい西部劇に出会ったので
影響を受けずにいられませんでした。……すみません。