【クロス】艦隊これくしょん×仮面ライダー龍騎【完結済】   作:焼き鳥タレ派

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第17話 House of the Rising Sun

多数の戦車に大型車両、物資・兵員を乗せたトラック、

荷台が巨大な兵装となっている特殊車両、そして最後尾には

軍隊にふさわしくない黒塗りのベンツが、隊を成して鎮守府北西に展開した。

トラックからすぐさま分厚い防護アーマーを着た兵士達が物資を運び出し、

ベースキャンプを構え、何やら不気味な兵器を組み立て始めた。

ベンツに乗っている高見沢は助手席の兵士に指示を出す。

 

「妙に静かでいやがる。お前ら、行って様子を見てこい。

降伏かやり合う気なのか確かめる」

 

「はっ!」

 

兵士はベンツから降り、部下2名を引き連れ、

グレネードランチャーを構えて南の倉庫区画へ向かった。

 

 

 

──倉庫区画

 

 

6つの赤レンガの倉庫が3つずつ2列に並んだエリア。

鉄骨で作ったバリケードがいくつもある。こりゃなんだ……?

どうやら連中は抵抗するつもりらしいが、誰もいない。

が、兵士は十字路で緑髪の少女を見つけた。彼は部下に手でサインを出し、東から侵入。

グレネードランチャーを向けながら無遠慮に声をかけた。

 

「おい、ガキ。武装解除して壁に手を付け。他の連中はどこだ」

 

「うっふふ……こんにちは兵隊さん」

 

「言われたとおりにしろ。ガキなら殺さないとでも思ってるのか?」

 

夕雲は左右に視線を走らせる。

ロケットランチャーを構えた兵士が南北にそれぞれ1人ずつ。視界の中に味方はいない。

今のところは。……大丈夫。

 

「あのね、兵隊さん、兵隊さん、夕雲はね」

 

「さっさとしろ」

 

夕雲は静かに深呼吸する。照りつける太陽。熱い潮風が吹き付ける。

 

「……とっても早撃ちが得意なの!」

 

 

ダァン、ダァン、ダァン!!

 

 

次の瞬間、彼女は右腕を添えた左腕を構え、

前方、右、左の兵士に12.7cm連装砲を放った。

バネのような身のこなしに油断していた兵士達は反応できず、直撃を食らった。

対艦用としては決して強力な装備とは言えないが、

生身の人間には十分過ぎるほどの威力で、アーマーを着た兵士を撃ち抜いた。

至近距離にいた前方の兵士は腹に穴を開けられ即死。

南の兵士は頭部を吹き飛ばされ絶命。

左側の手足を失った北側の兵士がかろうじて生き延びた。

 

「こちら、アルファ1……敵の攻撃を受け、2名、死亡……

残りは、エリア内に、潜伏……」

 

インカムで報告を残した兵士は大量の血しぶきを撒き散らしながら事切れた。

兵士達の死体がグリーンの0と1に分解され、宙に消える。

夕雲は電波通信機で味方に呼びかける。

 

「本格的な攻撃が来るわ。みんな、備えて……」

 

 

 

 

 

「社長、偵察部隊、全滅です!次の指示を!」

 

「……」

 

ベンツの中で報告を聞いていた高見沢は、しばらく黙っていたが、

目を閉じたまま次の指示を出した。

 

「……病院を焼け。クズ共を殺せ。とにかく殺せ」

 

「はっ!MLRSに告ぐ、射撃用意!目標、東エリア木造家屋!」

 

 

 

──ベースキャンプ

 

 

そして、指示を受けたM270多連装ロケットシステムの乗組員が、

キャビン内で射撃準備を開始した。

 

「射撃管制装置オンライン、目標捕捉、諸元入力完了、発射指示を乞う」

 

待機していた装甲車に積まれた巨大なコンテナが斜めにせり上がり、

目標に向けて方角を変える。搭載された2×6、合計12発のミサイルが

魔物の目玉のようにギョロギョロと動き、停止した。

 

「よし、総員衝撃に備え!」

()っ!」

 

 

ドォン!シャアアアッ!

 

 

ミサイルの発射音と空を切る音が鎮守府に響く。

ミサイルは艦娘達の宿舎へ正確に飛行し、宿舎上空で炸裂。

広範囲に無数の小爆弾をばらまく。それらは一気に爆発を起こし、

木造の宿舎を粉砕、火の海にした。だが、事前に負傷者を移動させていた宿舎は無人。

今の時点で艦娘の被害は皆無。戦いは始まったばかりだった。

 

 

 

──出撃ドッグ

 

 

球磨と北上改は海上警備のため、地下の出撃ドッグへ続く階段を降りていた。

 

「やっぱり最初にお風呂を狙ってきたクマ。最低クマ」

 

「なんか敵さん手段選ばないっぽいね。

もう海からは攻めてこないって考えるほうが無理だし、あたしら出といた方がいいよね」

 

「海上からの攻撃は球磨に任せるクマ。北上は魚雷攻撃で一撃必殺を狙ってほしいクマ」

 

「了解~っていうか魚雷しかないんだけどね」

 

「それじゃあ、お互い」

 

「グッドラック」

 

最下層に着いた二人は、拳を突き合わせると、

「出撃」と書かれた丸いパネルに飛び乗った。

 

 

 

──ベースキャンプ

 

 

「全員聞け!社長からの司令!戦車、ヘリコプター部隊は全軍出動、総攻撃開始!

特殊兵装部隊は待機、拠点防衛に務めよ!」

 

“イエス、サー!!”

 

隊長の指示と同時に、総員が各自の戦車、ヘリに搭乗する。

重戦車メルカバMk4のキャタピラが唸りを上げ、

攻撃ヘリAH-64アパッチのローターが徐々に回転音を上げ、

ふわりとその重装備の巨体を浮かせた。

メルカバは鎮守府西側を迂回するように縦列で進軍し、アパッチは東側エリア、

つまり工廠と倉庫区画に潜む艦娘をレーダーで探すべく飛び立った。

ガンナーがいつでも30mmチェーンガンを発射できるよう、トリガーに指を掛ける。

 

 

 

ベンツの中では高見沢が退屈そうに足を組みながら無線から流れる報告を聞いていた。

運転席の兵士が尋ねる。

 

「社長、まだM270の弾数には余裕があります。いっそ建造物を全て爆破しては?」

 

「バカ野郎、軍港の倉庫には燃料・弾薬が山ほど積んであるんだよ。

奴らも多分アホじゃねえから撤去はしてるだろうが、想像以上のアホだったらどうする。

大爆発で俺達に余計な損害が出るだろうが間抜け!」

 

「も、申し訳ございません、出過ぎたことを……」

 

「チッ、どいつもこいつも……まぁ、真ん中のデカブツが少々邪魔なのは確かだな。

追って指示を出す」

 

 

 

──本館屋上

 

 

「よぉっし!ど、れ、に、し、よ、う、か、なっと」

 

屋上であぐらをかき、敵部隊進撃の様子を見ていた隼鷹は

紙を切り取って作った式神を選んでいた。

酔っているのか、既にアパッチが迫っているが呑気に独り言をこぼしながら

艦載機を象った紙細工を、ああでもないこうでもないしていた。

 

「おっしゃ、キミに決めた!」

 

が、その瞬間、隼鷹は今までののんびりした動きから想像もできない速さで、

飛行甲板が描かれた巻物を広げ、右手から霊力を込めた式神を滑らせた。

飛び立った式神達は空中で戦闘機・烈風に変形し、

アパッチの群れ、一番先頭に襲いかかる。

 

 

 

一方アパッチも敵機の襲来に気づいていた。

 

「レーダーに感あり。西方向より敵機襲来!」

「機銃ロック解除、目標ロックオン!射撃開始!」

 

機体前方下部に取り付けられたチェーンガンが回転し、烈風の群れに狙いを付ける。

ドガガガガァ!とアパッチが30mm弾を放つと同時に、

烈風部隊もアパッチに機銃掃射で襲いかかった。

全機、九九式20mm二号機銃四型の弾幕を張る。

 

時代を超えた高性能航空機の対決が始まった。

 

30mm機関砲の精密射撃に次々と撃墜される烈風。

しかし、統制の取れた烈風部隊もアパッチに20mm機銃を浴びせる。

アパッチのコクピット内で凄まじい金属音が鳴り響く。

 

「何をしている!被弾しているぞ!」

「数が多い。後続に援護を要請してくれ!」

「こちらアタッカー1。援護を頼む。敵航空機を掃討してくれ」

“アタッカー2了解”

 

2機目のアパッチが烈風に向けてチェーンガンを放つ。

2台の最新鋭機関砲の精密射撃を受け、隼鷹の烈風部隊が全滅した。

 

 

 

「ああ~また紙切らなきゃあ~」

 

自慢の高性能機を撃ち落とされ、肩を落とす隼鷹。しかし、電波通信機から声が届く。

 

“手を止めないで!烈風で落とせないほど装甲が厚いなら爆撃機を、二人で!”

 

「赤城か、おっしゃ!見えてるだろうがあの変な航空機があんたのとこに行ったよ!」

 

“わかってる!一度屋上から降りるから、私の航空機を合図に第二波を!

それまで烈風を用意しててください!”

 

「ああ、わかったよ!……ん、何だあれ?」

 

隼鷹はベースキャンプの方角に妙な物を見た。

 

 

 

──第一倉庫

 

 

扉を閉じて薄暗い倉庫の中で、三日月を始め、

あの日難を逃れた駆逐艦達がその時を待っていた。

その時、携帯式電波通信機に着信があった。

 

“今、戦車が西側から単縦陣で接近中だ。お前達の出番だ、友の仇を討て!”

 

「はい、長門さん!」

 

三日月は工廠の影から外の様子を窺っていた長門からの通信に答えた。

そして、周りにいる駆逐艦達に呼びかける。

全員、ゲリラのように三角巾やバンダナをマスクにし、顔の下半分を隠している。

 

「みんな、敵が横腹を見せてるわ!今がチャンスよ」

 

“わかったわ!” “徹甲弾は?” “装填済み!” “3、2、1で扉を開けて!”

 

そしてスライド式の台座に乗せた“それ”に手をかけ、皆カウントダウンを始める。

 

“……3,2,1,突撃!”

 

ドアを開け、全員の力で一斉にそれを外に押し出す。

 

 

 

メルカバ戦車部隊は苦戦していた。

あちこちに設置されたバリケードを踏み潰しながら進軍しているため、

なかなか前に進めない。

 

「前方にバリケード、左に迂回せよ!」

「くそっ、面倒なことをしやがる!」

「まだ倉庫に着かないのか!」

 

戦車は複数人で運用するが、車長しか車外の様子がわからない。他の乗員が苛立つ。

 

「ん?ありゃ何だ」

 

車長が倉庫から奇妙な物が現れるのを見た。

 

 

 

「点火!」

 

ドゴオォ!

 

三日月の合図で、他の艦娘が“カロネード砲”を発射した。

カロネード砲。18世紀に発明され、19世紀まで使われた、

本来は鉄球を撃ち出すだけの単純な砲。

しかし、専用の徹甲弾を作成すれば駆逐艦でも強力な砲撃が可能とした判断した長門が、

倉庫の奥に眠っていたものを流用したのだ。

カロネード砲から放たれた高速徹甲弾が空を裂き、回転しながら先頭のメルカバに迫る。

次の瞬間、ガン!と戦車の側面装甲にきれいな穴を開けた。そして、一拍置いて、爆発。

砲塔が空高く舞い上がり、キャタピラの残骸だけが残された。

 

「命中!」

 

望遠鏡で先頭車両が大破し、列が乱れるメルカバ部隊を見た三日月が叫ぶ。

 

「やったぁ!」

「次弾、装填してください!」

「焦らないで!落としたら大変よ!」

 

歓喜に湧く駆逐艦達。次弾装填を完了し、三日月が再び号令を出す。

 

「……仰角32度、方位そのまま、点火!」

 

ドゴオォ!

 

再び徹甲弾が大量の硝煙を吹き上げ、戦車部隊に飛んでいく。……が、今度は命中せず。

 

「外れた!すぐに次弾を……」

 

“深追いはよせ!お前達は地下に避難しろ!”

 

次弾装填を指示しようとした三日月に、再び長門から通信が入る。

 

“敵がお前達に砲を向けてる!急げ!”

 

望遠鏡を覗くと、メルカバが皆、こちらに51口径105 mm砲を向けている。

すかさず避難命令を出す三日月。

 

「みんな、地下に逃げて!早く!」

 

皆、一斉に地下室に逃げ、ハッチを閉めた。

その直後、無数の砲弾が倉庫を襲い、レンガ造りの建物は完全に崩壊した。

避難場所の地下室で、駆逐艦の一人が不安げに三日月に尋ねる。

 

「三日月ちゃん、大丈夫……?」

 

「大丈夫、ここは広いから酸素も丸一日以上保ちます。後は……皆さんを信じましょう」

 

 

 

──ベースキャンプ

 

 

「攻撃指示!目標、エリア中央、建築物!発射弾数5発!」

 

再び多連装ロケットシステムのコンテナが、

重量に似合わぬ滑らかな動きで標的の方角にロケットを向ける。

 

「諸元入力完了、発砲許可、願います!」

「総員衝撃に備え……()っ!」

 

シャアアアッ!!と燃える燃料と風を切る音が5回続く。

そして、鎮守府本館へと飛んでいった。

 

 

 

──本館屋上

 

 

「ちょっきん、ちょっきん、ちょっきん、の!っと」

 

呑気な独り言を漏らしながらも、急いで紙を切り抜き失った烈風を補充する隼鷹。

だが、その時、不穏な気配を感じて空を見た。

先程宿舎エリアを吹き飛ばしたミサイルが向かってくる。しかも5発!

 

「ええええ!?こんなのやだぁ!!」

 

隼鷹は慌てて適当な1機を実体化させて飛行させ、片手でぶら下がりながら

飛んで本館から離れた。次の瞬間、ミサイルは本館の屋上に着弾。

爆弾と衝撃波を撒き散らし、1階部分をかろうじて残し、ほぼ完全に本館を粉々にした。

間一髪直撃は免れたが、爆風で煽られ、地面に放り出された。

 

「ごほっ……ああ、今日は厄日だ、早く終わらせて飲みたい……」

 

よろけながら立ち上がる隼鷹。しかし、まだ彼女の受難は終わらない。

 

“いたぞ!敵兵発見、撃てぇー!!”

 

メルカバ部隊が隼鷹を捕捉。一斉に砲撃を開始した。

強烈な砲撃音を叩きつけながら次々と105 mm砲を放つ戦車。

隼鷹はジグザグに走りながらなんとか倉庫エリアにたどり着き、

倉庫の一つに逃げ込むことに成功した。

なんとか持ち出した電波通信機のチューニングを合わせる。

 

「ああ、赤城?悪いけど作戦無理!っていうか助けて!」

 

“無事でよかった!爆発を見ました。退避できたんですね?いまどちらに?”

 

「第三倉庫。烈風はまたいくつかこしらえたけどさ、

戦車に狙われながら発進とか無理だよ~」

 

“戦車は長門さんと日向さんが引き受けてくれます。

裏手の第六倉庫まで来てください。私はここです”

 

「いよおっし!二人ならあの変な航空機ぶっ潰せるぜ。今から行くから!」

 

隼鷹は隙を見て倉庫から脱出し、全力で裏の第六倉庫まで走った。

 

 

 

戦車部隊は、とうとう東へ向けて進軍を開始した。

大破した本館を横目にメルカバ9両は工廠・倉庫エリアを目指す。

が、突如飛来した35.6cm砲弾が先頭車両に命中、分厚い前装甲を突き破り、大破させた。

被弾した車両は炎上、爆発。

 

「お前達は、何の為に、戦っている。金か、家族か、それとも、高見沢の為か?

命を掛けるにはあまりに惨めだ」

 

日向の砲撃だった。隣には長門もいる。後続車両の車長が叫ぶ。

 

「全車両に通達!前方に敵兵2名!2列に分かれて集中砲火!」

 

そして車両は車内に戻ると、無線で連絡した。

 

「アパッチ部隊に援護要請!現在敵兵と交戦中!援護射撃乞う!」

“アタッカー1から3、了解”

 

上空から艦娘の索敵に当たっていたアパッチが方向を変え、本館前に向かう。

つまり、隼鷹、赤城からは背を向ける格好となった。

 

「準備はいい?」

 

「いつでもいいぜ!」

 

二人は頷き合うと、弓、巻物、それぞれの艤装で爆撃機を真上に放った。

 

 

 

そして、日向と長門は戦車部隊と砲撃戦を繰り広げていた。

巨大な艤装を装備しながらも、鮮やかなステップで敵弾を回避しつつ、

41cm砲で1両を撃破した長門。続いて日向も左腕の35.6cm砲で

正確に残る戦車を迎え撃った。残り6両。敵の一斉射撃が迫る。

とっさに回避行動を取る二人。長門は回避に成功したが、

日向に砲弾がかすり副砲を損傷。

 

「くうっ……!」

 

「日向、大丈夫か!?」

 

「ああ、副砲が潰れただけ……長門、後ろだ!」

 

気づいた時には遅かった。

長門の真後ろにアパッチがローター音を響かせながら狙いを着けていた。

そして、右ウィングに搭載されたヘルファイアミサイルを発射。

空をゆらゆらと舞いながら黒い誘導弾が接近。鋭く空を裂く音と共に長門に迫る。

 

「間に合え……!」

 

すかさず日向が長門に飛び掛かり、直撃寸前でミサイルの着弾地点から押し出した。

轟音が響き、二人に熱風と砕けたコンクリートが叩きつけ、

辺りが硝煙、砂埃で包まれる。

 

「すまない!早く体勢を立て直さなければ」

 

「ああ……また来るぞ!」

 

二人が立ち上がろうとしたところをメルカバから砲撃を受けた。

また転がりながらなんとか避けたが、地上と空から攻められ続けては

反撃すらままならない。どうにかしなければやがて直撃を受ける!

二人に僅かな焦りが生まれる。

しかし、その時、ドォン!という音と共にアパッチが揚力を得るためのローターを失い、

横に回転しながら本館前広場に墜落。爆発炎上した。

上空には爆撃機・彗星の編隊が舞っていた。

赤城と隼鷹の部隊が、ヘリの弱点とも言えるメインローターを爆撃で破壊したのだ。

 

 

 

「アタッカー1がやられた!アタッカー3、敵兵の戦闘を中断、

敵機の殲滅に目標を変更!」

「ラジャー」

 

その頃、第六倉庫の影で隼鷹と赤城が上手く行った、と喜んでいた。

 

「いよっしゃ!デカブツ沈めてやったぜ!」

 

「でも、まだ2機残っています。

それに敵の機関砲に全て落とされる前に決着を着けないと!」

 

「ああ、どんと来いってんだ!」

 

そして、二人は彗星を急上昇させ、再度アパッチに攻撃を仕掛ける。

やはり30mmチェーンガンは強力かつ正確だったが、

数で勝る彗星を全滅に追いやるのに手間取っているようだった。

しかも、スピードでは彗星が上回っており、大きく旋回して爆撃を回避しようとするが、

ぴったり張り付いて離れない。

 

「よーしみんな、いっけー!」

 

彗星が再度アパッチの頭上から爆弾を降らせる。今度はローターヘッドに直撃。

根本を失ったメインローターが散り散りに飛んでいく。

 

「残り1機です!頑張りましょう!」

 

赤城が再び弓を構え、空を射た。

 

 

 

──ベースキャンプ

 

 

「アパッチ2機ロスト!ローターが狙い撃ちされてます!」

 

「くそ!最後の1機は下がらせろ!」

 

その時、隊員の一人が隊長の元へ駆けつけた。

 

「隊長、社長からの指示です!“あれ”の使用を許可するとのことです!」

 

「そうか!おい、あれの火器管制システムは?」

 

「スタンバイ済みです!砲弾も装填済み!いつでも撃てます!」

 

「よし、敵機の群れに仰角を合わせろ。あれなら狙わなくても当たる」

 

 

 

時を同じくして、第六倉庫。

隼鷹と赤城は最後のアパッチを撃墜すべく、一度補給に戻した爆撃機を再度発艦させた。

あいつを仕留めれば、みんな地上での攻撃に専念できる!

二人は気合を高めて爆撃機を空に放つ。が、

 

ダララッ!……ガシャアッ!

 

一瞬の銃声、その後、放った爆撃機は全て粉々になった。

はらはらと舞い落ちる爆撃機の残骸。二人共、状況を飲み込むのに時間がかかった。

 

「何があったのか、あたしに教えて?みたいな……」

 

「敵の兵器には間違いないようですが……

これまでのミサイルとも全く違うものであることは確かです!

もう一度、今度は戦闘機を出しましょう!

せめてどこから撃たれてるか突き止めないと!」

 

「あ、ああ!わかったぜ!」

 

今度は二人共烈風を空に放つ。

だが、再び一瞬銃声が鳴ったと思ったら撃墜、というよりかき消された。

 

「北の方角に僅かな硝煙が見えました。でも、攻撃の正体がつかめません!

このままでは航空機を出しても無駄になるだけです!今は機会をうかがいましょう!」

 

「ちっきしょー、一体何が起こってるんだ!?」

 

何もわからない。しかし赤城は、ベースキャンプがある方角から、

何か禍々しい気配を感じざるを得なかった。

 

 

 

──海上

 

 

一方、球磨と北上は水上を駆けながら、次々と現れるミサイル艇と戦っていた。

沖に鎮守府北と同様、巨大な時空の穴が開き、

中からミサイルを積んだ軍艦が押し寄せてくるのだ。

 

「あの艦が積んでるのは対艦ミサイルクマ!絶対撃たせちゃ駄目クマ!」

 

球磨が、敵艦甲板に露出したミサイル発射台や機銃を14cm単装砲で潰しながら、

北上に呼びかける。

 

「わかってますよ~。ほら、北上さんからプレゼント」

 

北上は背を低くして、網目状の回転式レーダーが特徴の旧式ミサイル艇に魚雷を放った。

近距離で放たれた魚雷に敵も気づいたが、回避できず、被雷。

大爆発を起こし、舷側が吹き飛び轟沈した。

 

「はい、1ポイント。しっかし、なんでこんなに沢山くるかなぁ」

 

「多分、治安の良くない国の軍から払い下げ品を大量購入してるクマ」

 

「くまちゃん意外と物知りなんだね」

 

「“意外”は余計クマ!……おしゃべりはここまでクマ。ヤバいのが来たクマ」

 

「なに~?」

 

球磨が指差すと、

次元の穴から船体に3桁の数字がペイントされた巡洋艦クラスの艦艇が現れた。

 

「“フリゲート”クマ!球磨達もみんなも危ないクマ!みんなに知らせるクマ!」

 

 

 

同時刻。

 

「日向、赤城達から連絡があった!正体不明の兵器で航空機が一瞬で落とされる!」

 

「やむを得ん!長門は対空砲火を任せる、私は戦車を叩く!」

 

戦車は残り6両、アパッチは最後の1機。しかし、その1機を叩く有効な手段がない。

三式弾があれば話は別だったが、残念ながら彼女は持ち合わせていなかった。

背中を日向に任せてひたすら空を撃つが、

ひらひら高高度を飛ぶアパッチに弾道を読まれ、直撃に至らない。

その時、足元の電波通信機から切迫した通信が飛んできた。

 

“長門さん達気をつけてクマ!陸海空に誘導弾を放つ敵艦が現れたクマ!

球磨も全力を尽くすけど、全部撃ち落とせる自信がないクマ!”

 

「くっ……了解!」

 

返事をした矢先にアパッチの蜂の巣のようなポッドから

細身のハイドラロケットの連射を食らう。

ヘルファイアより高速なハイドラを避けきれずに直撃を受け、

重装甲の戦艦も耐えきれず思わず膝を付く。

 

「あがっ……ごふっ、ゲホゲホ!」

 

「しっかりしろ長門!」

 

戦車部隊の反撃の予兆を感じた日向は長門に肩を貸し、

第二倉庫の裏を目指し、後退する。

だが、退避の途中、メルカバが放った6門の砲撃で倉庫は崩壊。

遮蔽物を失い追い込まれる二人。

 

 

 

そんな彼女達を見ていることしかできない状況に歯噛みしていた隼鷹は、

ある決意をする。

 

「なあ、赤城、頼みがある。……ちょっと行くとこあるからさ、援護を頼む。

烈風で奴の気を逸らしてくれ」

 

「何をする気なの!?」

 

「いいから!」

 

隼鷹は倉庫エリアから駆け出し、まずは廃墟となった本館に隠れようとする。

倉庫から本館へ向かってジグザグに走る隼鷹。

しかし、それをアパッチとメルカバが見逃すはずがなく、

30mmチェーンガンと105 mm砲が牙を剥く。

赤城が烈風隊を放ち、アパッチに機銃掃射を仕掛けるが、

搭乗員は味方を撃墜した敵兵の始末を優先したようだ。アパッチは隼鷹に機体を向ける。

全力で走る彼女。戦車砲はどうにか避けられたが、

弾速が桁違いのチェーンガンを背中に一発被弾してしまった。

 

「がはっ……!」

 

一気に吐血。純白のスーツと口が血に染まる。

肋骨が何本か折れ、内臓を傷つけたようだ。

しかし、なんとか本館の影まで逃げ延びることができた。

あとは……正体不明の兵器をなんとかすれば!

隼鷹は全身の痛みと荒れる呼吸に耐え、一歩ずつ前に進む。

後ろは見るな、戦車隊もアパッチも本館の向こう。

敵の基地は目の前、みんなのために、どうにかしないと。

ベースキャンプ前まで来ると、兵士達が

ロケットランチャーやグレネードランチャーを持って彼女の前に立ちはだかった。

 

「止まれ!両手を頭の後ろに回せ!」

 

「わかってる……ごほっ!」

 

隼鷹は言われたように手を頭に回した。そしてベースキャンプを見渡す。

あの変なもん積んだデカい車は……違う。あの攻撃の速さの説明が付かない。

きっと宿舎や本館を爆撃したやつだと思う。他には……多分あれ。

3×4、合計12門の小口径砲が2基。隼鷹はそれに向かってゆっくり歩を進める。

 

「はは……なにそれ、すごい兵器じゃん。お姉さんに、見せてよ……」

 

「動くなと言っている!」

 

「はぁ…はぁ…こんな兵器があればさぁ、どんな戦いも楽勝なんだろうねぇ……」

 

それの前で足を止めた隼鷹。隊長が彼女をじっと見る。

 

「……冥土の土産だ。おい、見せてやれ」

 

「はっ!」

 

兵士がそいつに接続されたパソコンを操作する。そして、射撃命令を入力すると、

 

ダララ!!

 

30mmチェーンガンも比較にならないほどの弾速で、榴弾が全門発射された。

全身に40mm榴弾を浴びた隼鷹のダメージは既に致命傷。

左腕がもぎ取られ、腹が破けて出血が止まらない。右目も潰れている。

 

「いたいよ……。やだなぁ……やめてよ。装甲薄いんだからさぁ……」

 

そして力尽きた彼女は、その場に膝を折って座り込み、

腹を抱えるように前のめりに倒れた。その様子を見守る隊員たち。

互いに顔を見合わせていると、隊長が隼鷹に近づいた。

 

「まぁ、メタルストームのガンポッド浴びて、

ちょっとでも生きてたのは凄いと思うぜ?マジで」

 

メタルストーム。コンピューター制御で

1分間に数百万発以上という恐るべき発射レートを誇る武器の総称。

一瞬トリガーを引くだけで無数の弾丸を撒き散らすこの銃火器を

弾切れまで撃ち続ければ、当然その威力は破滅的なものとなる。

隼鷹達の航空機はこのメタルストームから放たれた榴弾に撃ち落とされていたのだ。

 

「おい、誰か死体を……」

 

だがその時、死んだと思われた隼鷹がむくりと上半身を起こした。

血まみれの顔でニヤリと笑う。

 

「ふっ……ここで全力で叩くのさ……」

 

そして懐から取り出した1枚の式神に僅かな霊力を込め、指先でピンと弾いた。

式神は1機の攻撃機となり、M270多連装ロケットシステムのロケットへ飛んでいく。

 

「おい!それを撃ち落とせ!」

 

事に気づいた隊長が攻撃指示を出すが、

魚雷を抱えた攻撃機がロケットへ体当たりするほうが早かった。

……あまりの轟音にその場にいた者には何も聞こえなかったという。

大爆発を起こしたM270がベースキャンプにあった全ての銃火器、弾薬類に引火し、

北部は完全に焼け野原となった。

 

 

 

「隼鷹さん……どうして!!」

 

巨大な爆発を見た赤城は、艦娘同士の波長が北で消滅するのを感じた。

遅れて大きな爆風が叩きつけてくる。しばらく目を開けられなかった。

だが、風が過ぎ去っても、赤城はしばらく立ち尽くすしかなかった。1名戦死。

上空でアパッチのローター音が響いても、その事実を受け入れるのに時間がかかった。

足元の電波通信機が叫ぶ。

 

“赤城!隼鷹の覚悟を無駄にするな!

ここで負けたら、あいつは何のために戦ったんだ!”

 

はっとなる。そうだ、もう航空機を遮るものは何もない。

隼鷹さんのくれたこのチャンス、十二分に活かさせてもらいます!

赤城は再び大空に弓矢を放つ。3本を束ねて弓を折るほど弦を引く。

空を切り裂く弓は上空で炸裂し、爆撃機に変化。

 

「全機発艦!絶対あの航空機を落として!」

 

 

 

その頃、日向と長門は戦車砲から逃れながらなんとか反撃をしていたが、

長門を抱えながらの戦いは困難を極めた。

 

「済まない日向、私のせいで……」

 

「今は目の前の敵に集中しろ!ほら、赤城の航空機だ」

 

「あ……」

 

長門が空を見ると、大量の爆撃機がアパッチに群がっている様子が見えた。

上空でチェーンガンの凄まじい銃声が続くが、

高速で接近して爆弾を落とす彗星に苦戦しているのは明らかだった。

彗星の後に烈風も続く。20mm機銃で確実に空飛ぶ戦車にダメージを与え、

パイロットの混乱を誘う。

そして、とうとうその隙を突いて爆撃機がアパッチのローターに爆弾を落とした。

急速にバランスを崩すアパッチ。そして完全にバランスを失い、本館前に墜落した。

残骸が戦車に激突し、砲身が折れ、完全に走行不能になった。残り5両。

 

「やったぞ、隼鷹の覚悟が実ったぞ」

 

長門に語りかける日向だが、その声を電波通信機が遮った。

 

 

 

遡ること10分前。

 

フリゲート艦尾に据え付けられた、

白い繭のような物体の下に装備されたガトリング砲が一瞬空転。

直後、凄まじい弾速で破壊力の高いタングステン弾を叩きつける。

 

「あああっ!痛いクマー!」

 

「球磨、大丈夫!?」

 

ミサイルの迎撃を想定したCIWSの集中砲火を浴び、腕や腹の肉を削られた球磨。

 

「大丈夫クマ。それより早く沈めないとまずいクマ!」

 

「それはわかってるんだけど……」

 

艦首に備えられた、やたら命中率の高い127 mm単装砲の砲撃を何度も食らい、

球磨も北上も中破状態だった。

 

「あっ!」

 

突然球磨が驚きの声を上げる。

後部甲板のVLSから、一際大きなミサイルが垂直に噴射された。

一旦空に舞い上がったミサイルは鎮守府へ向けて飛翔する。

球磨はすぐさま携帯式電波通信機を手に取り、長門の周波数にチューニングを合わせた。

 

 

 

“トマホークが飛んでいったクマ!艦が食らったらお終いクマ!

誘導性能が付いてて避けられないからなんとかしてクマ!”

 

「何っ!」

 

海を見ると、ミサイルが炎を吹き出しながらこちらへ向かってくる。

確かに軌道にブレがない。迷わずこちらに飛んでくる。

赤城の烈風が迎撃に当たっているが、あのスピードに追いつけないようだ。

あと十数秒で私はあれを食らうのだろう。ならば。

長門は日向から身を離し、本館前の敵陣に飛び込んだ。

 

「おい、何をしている!?」

 

「日向、後は頼む。必ず高見沢を倒してくれ!」

 

長門はメルカバの砲撃も意に介さず、目につく者全てに41cm砲を叩き込んだ。

遠くから飛んできた砲弾が彼女の右肩を潰す。構うな!もう一本腕はある!

2両、3両と戦車部隊相手に大立ち回りを繰り広げる長門。

 

「はぁ、はぁ、次弾……装填。発射!」

 

残る左腕の1門の砲でメルカバを撃破。同時に敵から放たれた2門の砲が長門を直撃。

1発は彼女の左足をもぎ取り、1発は腹に食い込んだ。

 

「がはぁ……!!」

 

口と鼻から大量出血し、全身の裂傷から血が止まらない。

腹に直撃を食らい、意識を失いそうになるが、彼女は何を思ったか、その場に座り込む。

ああ、やはりこの方が安定する。固定砲台として終わるのも悪くない。

彼女は残る2両に砲弾を放った。命中、撃破。あと1両。

メルカバが砲身を長門に向ける、トマホークが彼女に迫る。長門が最後の41cm砲を放つ。

すべてが、同時だった。

 

「長門オォ!!」

 

物静かな日向が大声で叫ぶ。爆炎が晴れるのにどれくらい待っただろう。

どうか、いてくれ。しかし、風が全てを運び去った時、

そこには戦車の焼けた残骸が残るのみだった。

 

 

 

「駄目だったクマ……間に合わなかったクマ!!」

 

鎮守府の様子を海から見ていた球磨が、大海原の真ん中で叫びを上げる。

 

「球磨のせいじゃない!私達も、最後の敵を倒さなきゃ!」

 

そう、残るは目の前のフリゲート。あれのミサイルがあと何発あるのか知らないが、

もう誰もやらせはしない。しかし、再びフリゲートの攻撃が始まる。

ASROCランチャーが上を向き、対潜ミサイルを発射した。

シャァァッ!シャァァッ!と2発連射された対潜ミサイルは

球磨達の付近でパラシュートを開き、着水。

その後誘導魚雷となり彼女達に高速で忍び寄ってきた。

 

「2発ならなんとかあしらえるクマー!」

 

14cm単装砲で慎重に狙いながら魚雷を迎撃する球磨。

幸か不幸か酸素魚雷ではなかったため、航跡がはっきりと見え、狙いが付けやすかった。

しかし、再び発砲音2つ。時間差で撃つことで撹乱するつもりらしい。

 

「まだ3つ……3つなら……」

 

緊張と僅かな恐怖を抑えながら、球磨は何度も砲を撃つ。また1つ迎撃に成功。

爆発が起き、海面が爆ぜる。だが、まだ危機は去っていない。

球磨は必死の形相で白い魔の手に立ち向かう。

 

「……」

 

そんな彼女の様子を見ていた北上が告げる。

 

「ごめんね。わたしが魚雷しか持ってないせいでさ」

 

「大丈夫クマ、これくらい!」

 

「……まだ何発も抱えてるっぽいし、元を断つのは早いほうがいいよね~」

 

「何言ってるクマ!」

 

その時、フリゲートが全てのASROCとVLA(垂直発射魚雷)を発射した。青くなる球磨。

 

「あ~、なんか別働隊が全滅したの知ってやけになったっぽいね。

今ならまだ誘導機能切れるかも……じゃあ、行ってくるね。どっこいしょっと」

 

北上は装備していた魚雷を全て背負い、フリゲートに向けて泳ぎだした。

 

「何するつもりクマ!」

 

「わたしクロールには自信があるんだ~機関砲もこの角度なら狙えないだろうし」

 

あくまでマイペースに応える北上。やろうとしていることは明白だった。

確かに彼女の泳ぎは早かった。白い繭が北上に気づいて銃身の向きを変えたが

一瞬遅かった。耳を突き刺すような銃声が響くが、すでに北上が懐に入っており、

狙いを付けられない角度に入ってしまっていた。

 

「……重雷装巡洋艦の最後の仕事、仕上げにかかりますかね」

 

そして彼女は背中の魚雷一本を手に取り、じっと見つめる。

 

「球磨ちゃん、最後だから言っとく。……楽しかったよ」

 

北上は船体に描かれた3桁の番号に思い切り魚雷を叩きつけた。

 

 

 

球磨は自身に迫る魚雷の存在も忘れ、その大爆発に見入っていた。

 

「北上ちゃああん!!」

 

右舷を食い破られたフリゲートは瞬く間に海に飲み込まれていく。

空からフリゲートが放ったいくつもの黒い物体が降ってくる。

同時に巨大な爆発で海水が打ち上げられ、雨のように降り注ぐ。

 

「……」

 

たくさんのパラシュート。兵器でさえなかったら、

きっと美しいとすら思えたことだろう。

球磨は迎撃を止め、雨の中、北上が咲かせた沢山の花を眺めることを選んだ。

 

「北上ちゃんの花、とっても綺麗だクマ……」

 

幾筋もの白い線が四方から球磨に迫る。

しかし、彼女は最後まで恐れを抱くことなく、静かに目を閉じた。

 

 

 

──本館前

 

 

その大きな爆発に続くもう一つの爆発は鎮守府にもこだました。

同時に2つの命が尽きたことも彼女達は知っていた。

 

「球磨、北上……お前達が戦いに殉じたその意味は、私が受け継ごう」

 

「みんな、みんな、最後まで戦いました。私は、そのことを忘れるつもりはありません。

時が来るまで」

 

戦死者4名。

あまりにも大きな代償に、彼女達はしばらく風に吹かれて

湧き出る感情を整理することしかできなかった。

 

 

「結局、この俺が最終兵器ってことか」

 

 

その時、ベースキャンプ跡から歩いてきた高見沢の声が沈黙を破った。

 

「ったく、わざわざ大金はたいてイスラエルやらアラブから仕入れた軍隊が、パーだ!

ハッハッ」

 

高見沢は他人事のように笑いながら両腕を広げる。

 

「笑っている場合か?大砲を持った人殺しがお前の命を狙っているというのに」

 

「まぁ、雑巾にしちゃあよくやったと思う。愉快なショーを演じた褒美だ。

仲間の手で眠らせてやる。提督命令、“仲間同士で殺し合え”」

 

静寂。夕暮れ時の鎮守府が赤く染まる。晩秋の冷たい風が吹く。ただ、それだけだった。

 

「おい、てめえら何やってる。殺し合えって言ってんだ!」

 

「ふっ、残念だが我々は艦娘であって艦娘でない。提督権限など知らん」

 

「どういうことだ、説明しろ!」

 

「今から死ぬ者が知る必要はない」

 

日向が35.6cm連装砲を高見沢に向ける。

 

「……裁きを受けてもらいます」

 

赤城が弓を引き絞る。

 

「さあ変身しろ。長門を瀕死にしたお前を倒さなければ意味がない」

 

「調子に乗りやがって……!

つまらんこだわりでチャンスを捨てたアホが。死んでから後悔しろ!」

 

高見沢はベルデのカードデッキを内ポケットから抜くと、

元本館に残されたガラス窓にかざした。

ガラス窓に映った象と、実体を持つ高見沢の腰にベルトが現れる。

彼は指をパチンと鳴らし、

 

「変身」

 

デッキをベルトに装填した。

輝くライダーの鏡像が高見沢を包み、仮面ライダーベルデに変身した。

 

「決着を着けよう、高見沢逸郎……!」

 

「ハッ、勝てると思ってんのか?」

 

ベルデはカードを1枚ドロー。クリップに挟み、手を話した。

 

『HOLD VENT』

 

するとベルデの手にヨーヨー型の武器、バイオワインダーが収まった。

 

「行くぜおい」

 

ベルデはバイオワインダーの紐を持ち、ぐるぐる回しながら近づいてくる。

 

「覚悟なさい!」

 

赤城が空に弓を放つ。矢は空中で炸裂し、烈風に変化。

編隊を成してベルデに襲いかかる。5機の烈風が20mm機銃を叩きつける。

 

「ぐおっ!」

 

凄まじい機銃掃射に思わずのけぞるベルデ。

ふらつきから立ち直った瞬間、足元で砲弾が炸裂する。

 

「……夾叉か。次は当てる」

 

日向の35.6cm砲に隙を突かれた。ちくしょう、あの女の航空機は厄介だ。

一番、二番倉庫は既に崩壊。隠れる場所があるのは工廠か四番倉庫の影!

ベルデは突然後ろに走り出した。

 

「待て!逃げるな卑怯者!」

 

ベルデは工廠の中に入ると、すぐさまカードをドロー。クリップに挟んで放す。

 

『CLEAR VENT』

 

カードの能力が発動すると、ベルデの姿が完全に透明になり、

直後に日向がすぐそばを通り過ぎた。彼を探す日向の後ろ姿を見てほくそ笑む。

ベルデは再びカードをドロー、バイザーに装填。

 

『COPY VENT』

 

こいつで死んでもらおうか。さて、あの女はどこだ。

工廠から出ると、赤城が本館前でベルデの姿を探していた。

相変わらず航空機を飛ばして攻撃の機会を窺っている。

ベルデは赤城に歩み寄り話しかける。

 

「あいつは見つかったか?」

 

「いいえ!偵察機からも報告がありません、一体どこに……」

 

「そう。あ、ちょっと後ろを向いて。今、何か付いた」

 

「はい?虫でしょうか」

 

赤城が後ろを向く。ベルデは日向の姿で邪悪な笑みを浮かべる。

 

「べったりくっついてるよ……死神がなァ!」

 

ドゴオオオオォン!!

 

そして至近距離で35.6cm連装砲を赤城に発砲。鋼鉄の牙と衝撃波が赤城に食らいつく。

 

「!!!?」

 

体がバラバラになりそうなダメージに悲鳴すら出せず、

20メートル近く吹っ飛ばされる赤城。

“COPY VENT”のカードの効果で相手の姿形や装備をコピーしたベルデは、

赤城を油断させて接近したところで、大口径砲の至近弾を浴びせたのだ。

 

「あ……ぐふっ、なん……で?」

 

“COPY VENT”の効果が切れたベルデが赤城に近づく。

 

「ハッハァ!こういうカードもあるってことだ、間抜けめ!」

 

「赤城!?どういうことだ!」

 

砲声を聞きつけた日向が駆けつけてきた。

視線の先には大破状態の赤城が横たわっている。思わずそばに行こうと走り出した瞬間、

目の前に円形の物体が飛び込んできた。

ベルデが勢いをつけてバイオワインダーを日向の顔面に叩きつけた。

ライダーバトル用の100tに及ぶ威力の武器が顔面を強打し、

戦艦の重装甲を持つ日向の脳を揺らす。日向の視界が回転し、

気分の悪さに耐えられなくなり、彼女はその場で後ろに倒れ込んだ。

 

「あ……あ……」

 

「ハハハ、ほらほらどうしたァ!」

 

ドゴォ!

 

ベルデは倒れて苦しむ日向の腹に、バイオワインダーをスイングを付けて思い切り放つ。

 

「かあ……っ!!」

 

「どうした、てめえらバトルシップなんだろう?

ヨーヨーで死んでんじゃねえよ、ハハッ!」

 

再度ベルデは頭上でバイオワインダーを回転させ、次の攻撃に備え威力を溜める。

 

 

「……」

 

 

「ほら、もう一発だ!内臓潰れるまで続けるぞ、そら!」

 

ダァン!

 

バイオワインダーがまたも日向の腹部を直撃しようかと思われた瞬間、

銃より重く、砲には軽い発砲音が響いた。

バイオワインダーは命中することなく、何かに弾かれ、

糸が千切れて使い物にならなくなった。

 

「なんだ!何が起こった!」

 

辺りを見回すベルデ。すると工廠の屋上に小さな人影が。

 

「夕雲ね、狙撃も得意なの……ウフフ」

 

駆逐艦・夕雲が12.7cm連装砲を構えて立っていた。

 

「あのガキ……!」

 

「待ち、なさい……」

 

振り返ると、口を血だらけにした赤城がベルデを弓で狙っていた。

 

「それで俺が死ぬとでも思うのか?」

 

「いいえ、ただの時間稼ぎです」

 

シュッ……ドッ

 

矢は確かにベルデに命中したが、大破状態で航空機を放つ霊力がない赤城の矢は

ベルデにダメージを与えることはできなかった。

 

「時間稼ぎだぁ?バカが!まだ援軍期待してるならイカれてるぞお前」

 

ダァン!

 

今度は背中からダメージ。わずかながらベルデの気を引くには十分だった。

 

「ウフッ……また、命中……」

 

夕雲の12.7cm砲。両手を上げて呆れ返るベルデ。

 

「悪あがきも大概にしろ。

カードがなくてもライダーのパンチやキックがどれくらい……」

 

がしっ!!

 

その時、ベルデの足を倒れていた日向が掴んだ。

2人は彼女の意識が回復するのを待っていたのだ。

 

「逃が、さない……絶対に!!」

 

必死の形相でベルデを睨み、35.6cm砲を向ける。さしものベルデも焦る。

 

「離せ、離せクズ!」

 

何度も彼女の顔を蹴るベルデ。しかし日向は必死に砲門をベルデに向け、次の瞬間、

 

ズドガアアアアァ!!

 

今度は自分自身が35.6cm砲を食らい、アーマーの防御力を超えるダメージを受ける。

 

「うごあああっ!!……あああ!ううっ、ああ!」

 

本館の壁に叩きつけられ、立ち上がれないベルデ。

致命的損傷を受けたアーマーが暴走を起こし、連続して火花を散らす。

 

「いけない!」

 

赤城は軽い身のこなしでベルデに飛びかかるように近寄り、カードデッキを引き抜いた。

変身が強制解除され、生身の高見沢逸郎が姿を現す。

 

「て、めえ……返せコラ」

 

赤城はデッキを放り投げると、弓を構え、高見沢の脛を射た。

 

「ぎゃああああ!!ああっ……てめえ、ふざけんじゃ……!」

 

赤城は無視して今度は左腕を射る。

 

「いでええぇ!何考えてやがる!!

俺は、人間だぞ、命がある、てめえに奪う権利が……」

 

パァン!

 

赤城は高見沢の頬を張った。

 

「は……?」

 

攻撃とも言えない彼女の意外な行動に、高見沢はキョトンとする。

 

「……その痛みは、あなたが面白半分で傷つけた娘達の痛みです。

存在を創り出すものが肉体であろうとデータであろうと、

心がある限り、その命の重さは変わりません。

それがわからないあなたに、命の尊厳を語る資格はありません」

 

そこに、完全に意識が戻った日向がゆっくりと歩いてきた。

 

「お前に反省や謝罪など求めていない。ただ命令を聞け。

この紙に書いてある文章を読み上げろ」

 

日向は高見沢に1枚の紙を投げて寄こした。高見沢は何も言わずに紙を手に取る。

そしてボソボソと読み始めた。

 

「提督権限、“再起動実行”……」

 

赤城達の空間が真っ暗になり、遠くに白い艦船のシルエットが浮かぶ。

約10秒で鎮守府を構築するデータが読み直され、

破壊された倉庫や本館、お風呂がある宿舎等、全てが元通りになった。高見沢は続ける。

 

「提督権限、“全ての艦娘は治療施設の使用が可能”……」

 

鎮守府全体にシステム変更のシグナルが発信される。

すると、第六倉庫の地下にあった地下壕から、担架で怪我人が次々と運ばれてきた。

 

“お風呂が解放されたわー!”

“怪我の酷い子にはバケツを!5つあるわ!”

 

あの日負傷した駆逐艦達が、重傷者から順にお風呂に入れられていった。

そして高見沢は最後の一行を読んだ。

 

「“わたくし、高見沢逸郎は、鎮守府における全ての権限を艦娘に譲渡する”」

 

読み終えると、日向が紙をひったくった。

 

「もうお前に用はない。さっさとこの世界から出て行け、イレギュラーめ!」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!せめてデッキは返してくれ!

外にはミラーモンスターがうようよいる!変身できなければ殺される!」

 

「知った事か。身から出た錆だろう」

 

高見沢は今度は赤城に懇願する。

 

「頼む、許してくれ!いや、待て。そうだ……俺が死んだら、フェアじゃない!

確かに俺はお前達の仲間を傷つけた。でも、一人も殺してはいない!

そうだ!俺だけ殺されるのはフェアじゃない!」

 

「貴様!言うに事欠いて……!」

 

「待ってください」

 

「赤城!こいつの屁理屈を認めるのか!?」

 

赤城は目を閉じ静かに首を振った。

 

「私達艦娘の本懐を忘れてはならない、それだけです。

私達は人々を守るために造られた存在。

例えこの男がどれだけ卑劣な男でも、助かる術を奪い、死を願う。

戦いに殉じた長門さん達はそんなことの為に命を賭けたわけではないはずです」

 

「……甘いやつめ。だが、全く筋が通らないわけでもないな。

おい、貴様。この世界で生き延びたければ今後の生き方に気をつけろ。

このデッキは預かっておく。他の提督達も欲しがるだろうな。

ミラーなんとかから助けてほしければ、自分で他のライダーにお願いしろ。後は知らん」

 

「そんな……待ってくれ」

 

「他の提督方が戻られるまでの処遇は、ここの艦娘の皆さんに任せましょう。

今日はとりあえず座敷牢に入れておくということで」

 

「まぁ、いいだろう……おーい夕雲。そろそろ降りてくるんだ」

 

“は~い……”

 

夕雲は屋根から飛び降り、こちらに走ってきた。

 

「よくやってくれた。助かったよ」

 

「うふふ、どういたしまして……」

 

そして、皆が気づく。図らずも生存者が全員集結したことに。7人の仲間は3人に。

あまりにも大きい勝利の代償だった。

 

「皆さん、先に向こうに旅立たれただけですよね。お別れはよしましょう」

 

「ああ。じきに私達も彼女達の元へ行く。

今だけは、ここでかつての思い出を噛みしめるとしよう」

 

「あんまりお役に立てませんでしたが、

また皆さんのお顔を拝見できて、嬉しかったです……」

 

もう日が沈む。三人は高見沢の連行を他の艦娘に任せて、懐かしい本館へ入っていった。

 

 

 

 

 

──三日月の日記より

 

 

あの日の翌日。

バケツと夜を徹してお風呂をフル稼働して、ほとんど全ての怪我人が治りました。

また細々としたキズのある人もいますが、長門さんもピンピンしてます。

叢雲ちゃんとずっと手を繋いでます。

 

明け方、鎮守府の皆さんと一緒に、赤城さんたちとお別れしました。

皆さんが存在できるのは今日まで。

赤城さん達が割り当てられた、サーバーが削除するデータのグループの順番が来たとか。

知らされていなかった私達はとっても寂しかったです。

でも赤城さんがこうおっしゃいました。

 

「皆さん、どうか悲しまないでください。

一度削除されて、ただのデータに戻ってわかったことがあるんです。

私達の体を構成するのは0と1でしかありません。

でも、たったそれだけでこうして艦これの世界に生まれてきたり、

一度別れてもまた巡り会えたりしたじゃありませんか。

姿形は変わっても、記憶はなくっても、きっとまた会える日が来ます。

だからさよならは言いません。皆さん、お元気で」

 

きれいな黒髪を潮風になびかせながら語る赤城さんはとても素敵でした。

 

「……まぁ、大体言いたいことは赤城と同じだ。

人間もその体を構成するのはほぼ水分とタンパク質だと聞く。

だが、日々生まれては死に、出会いと別れを繰り返している。

つまり我々と変わらないということだ。……結局赤城と言ってることは同じだな。

やっぱりこういうのは性に合わん」

 

言い終わると、あまり感情をお顔に出されない日向さんがそっぽを向かれました。

少し照れているように感じたのは私だけでしょうか。

 

「はぁい、それでは皆さんお元気で。

小さくてもやる時はやる、夕雲が駆逐艦の広告塔になれたなら幸いです」

 

夕雲ちゃんは間違いなく私達駆逐艦の誇りです!

 

……そして、赤城さんが集まった人たちの中の一人に近づいていきました。大淀さんです。

赤城さんは大淀さんの手を握り、優しく話しかけました。

 

「今は心が痛むでしょうが、どうか、人間を諦めないでください。

艦娘も人間も手を取り合って生きていける。私はそう信じています」

 

「……っ、はい!」

 

大淀さんはまた涙ぐみながら返事をされました。

いつか大淀さんも素敵な人間の方に出会えるといいですね。

 

朝日が昇り、鎮守府を温かく照らします。そろそろお別れの時間です。

赤城さん達が砂浜に向かいます。皆さん一度振り返り、赤城さんが一言。

 

「それでは、皆さん、またいつか!」

 

赤城さん、日向さん、夕雲ちゃん。みんなが海の上を歩いていきます。

やがて、階段を降りるように、少しずつ、少しずつ、海の中へと還っていきました。

皆さんの姿が見えなくなっても私達は、ずっと見守っていました。

また会えることを信じて。

 

 

 

>仮面ライダーベルデ 高見沢逸郎 脱落

 

 




*オマージュした割にこの程度かよ、というご批判はごもっともです……。
よく考えたら3作品クロスという大それた事をしていることに
16話を書き終えた時点で気が付きました。
はぁ、映画の爽快感全然再現できてない……。以後反省
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