【クロス】艦隊これくしょん×仮面ライダー龍騎【完結済】 作:焼き鳥タレ派
コンコン。小さなノックで目が覚めた。
“五月雨です。提督、入りますよ”
須藤は一つ大きなあくびをしてから返事をした。
「いいよ、入って」
カチャ、とドアが空き、五月雨は須藤に丁寧なお辞儀をした。
「おはようございます。昨日は良く眠れましたか?」
「うん……そのことなんだけどね。ここ、ベッドとかはないのかな?
昨日聞きそびれてしまった」
「あ、すみません……本来人間の方が来ることを想定した作りになっていないので、
基本的には今ここにあるもの以外ベッドや布団はないんです。
導入するにはメダルで購入していただかないと……」
「メダル?」
「はい、遠征やクエストのクリア報酬でたまに手に入る通貨で……」
「ごめん、もういいや。このソファも悪くない寝心地だったし。
ちょっと身支度をするから待っててくれるかな」
「どうぞ、ごゆっくり」
この世界に面倒なゲーム性は求めていない須藤は早々に諦め、
給湯室で顔を洗い、歯を磨いた。流石にタオルは置いてあったので安心したが。
執務室に戻ると五月雨が笑顔で待っていた。
「お待たせ。それで何かな、用って」
「ライダー提督の皆さんにお配りすることになった、各鎮守府の一覧です。どうぞ」
「ありがとう。どれどれ……」
五月雨から貰った資料に目を通す。
そこにはライダーが担当する鎮守府の情報がずらりと並んでおり、
各ライダーの戦闘記録や主だった出来事も記載されていた。
横線で削除された鎮守府が2つある。おそらくバトルに敗れて脱落したのだろう。
肝心の浅倉は……あった。なるほど、ここでは割りと古株のようですね。
ええと、ここに来るなり1人殺している。相変わらずというか何というか。
あとは……仮面ライダーガイとやらとの戦いで何やら面白い事をしていますね。
戦力強化に使えそうです。
やはり他のライダーより先に浅倉を倒したほうがいいでしょう。
「あの、提督?」
「ああ、ごめん。すっかり夢中になってしまった。他に何かな?」
いつの間にか一覧を読みふけっていたことに気づく須藤。
「朝食の準備ができています。1階の食堂までお越しください」
「わかった、ありがとう。すぐ行くよ」
「では、失礼します」
五月雨が退室した。さて、食事の前に準備を済ませておきましょうか。
須藤は01ゲートをくぐり、一旦自宅に戻った。もう、浅倉はいなかった。
須藤は職場に電話し、インフルエンザに罹り、
どうしても出勤できなくなったと仮病を使い、休職の連絡を入れた。
そして再びパソコンを立ち上げ、執務室にとんぼ返り。
朝っぱらから慌ただしいが、いきなり失踪しては余計な注意を引き、
今までの自作自演が無駄になるというもの。
そして艦これ世界に戻った須藤は朝食をとるため1階に向かった。
──第一浅倉鎮守府
その頃浅倉は、足柄が持ってきてくれた朝食のパンをかじりつつ、何かを呟いていた。
「……来い……来い」
彼の意味不明な言動に慣れた足柄が、散らばったダンボールを隅に寄せながら尋ねる。
「どなたかとお約束でも?」
「……女、他のライダーは来てねえのか」
「足柄です。……はぁ、どうせ提督に隠してもすぐバレるでしょうから言いますが、
昨日新しいライダー提督がおいでになりました。
それに伴い、須藤鎮守府が設立されたということです」
「よし……」
「お知り合いですか?」
「共犯者だ」
「何の共犯かは聞きません。というか聞きたくありません。
とにかく、今度現実世界に外泊なさる時は私に一言いただくか、
紙切れ一枚でいいのでメモを残しておいてください。
もう艦娘総出で提督を探し回るのは御免被ります。芝浦君も怯えていましたし」
「うるせえ……!須藤の野郎が来たらすぐに知らせろ。……芝浦って誰だ」
「提督が倒したライダーでしょう!
あなたが時々無意味な重労働をさせている彼ですよ!」
「終わった戦いには興味ねえ。今は須藤だ」
「……また、ライダーバトルですか。もう貴方がたに戦うな、とは言いません。
せめて艦娘に被害が及ばない程度でお願いします」
「フッ、クカカカ……」
聞いているのかいないのか。浅倉は何がおかしいのか笑い声を上げるばかりだ。
呆れた足柄はそれ以上の会話を諦め、食事のトレーを下げて退室していった。
後に一人残された浅倉はデッキを取り出し、手で弄びながらしばらく眺めていた。
──須藤鎮守府
その頃、須藤と五月雨は待ち合わせていた桟橋の転送クルーザーのそばにいた。
「お食事はいかがでしたか」
「うん、美味しかったよ。ゲームの中とは思えない」
「フフ。気に入っていただけたようで何よりです。それでは、ご案内しますね」
「よろしく頼むよ」
「あの……」
須藤がクルーザーに乗り込もうとした時、五月雨に呼び止められた。
彼女は不安げな顔で須藤を見ている。
「どうかした?」
「どうか……どうかくれぐれも無茶はなさらないでくださいね!
提督方の事情はうかがっていますが、死者を出さずに勝敗が決した例もあります!
だから……!」
すると、須藤はポンと五月雨の肩に優しく手を置いた。そして彼女の目を見て答える。
「安心して。私は浅倉を逮捕するためにここに来たんだ。
君が心配しているような事態にならないよう最大限努力する」
「はい……提督のお力を、信じています!」
「じゃあ、そろそろ出発しようか。操縦、お願いするよ」
「任せてください!」
二人はクルーザーに乗り込むと、須藤は座席に着き、
五月雨は操縦席に着いて舵を握った。そして、彼女が早口で音声コマンドを宣言すると、
周囲の景色がクルーザー以外存在しない白の世界に変貌。
須藤は一瞬混乱し、周りを見回すが、すぐに先程まで見ていた桟橋の景色に戻った。
「着きました。ここが浅倉提督が統治されている鎮守府ですよ!」
「ちょ、ちょっといいかな?今の何だったの?」
この世界に慣れておらず、てっきり海を進んで鎮守府間を移動するものだと思っていた
須藤は、五月雨に今の奇怪な現象について尋ねた。
「サーバー内に存在する鎮守府の移動プロセスです。
鎮守府間だけなく各海域に移動する際も、現実世界のように海を渡るのではなく、
地図を取り出すように、目的地のデータをダウンロードして読み込むという
手順を踏んでいるんです」
「そ、そうか、ありがとう。いきなり世界がなくなったから驚いたよ」
「ここがあくまでデータで構成された世界だということを覚えておけば、
すぐに慣れていただけると思いますよ」
「わかった。それじゃあ、行ってくるよ」
「待って!私も行きます!」
ゴトゴトと木の床を鳴らしながら、本館に向かおうとする須藤を
五月雨が追いかけてきた。驚く須藤。
「どうしたの?危険だから駄目だ。
これから私がやろうとしていることは、知っているだろう?」
「お願いします、戦いの邪魔はしません!
ただ、提督が命を賭けて戦うのをここでただ待っているは嫌なんです!」
須藤は内心舌打ちした。
今後の戦いのことを考えると、あまり味方に見られたくはないのですが……。
あまり無碍に断っても怪しまれるでしょう。
「……安全な離れた場所で見てるんだよ?」
「はい!」
やれやれ、とんだ邪魔が入りました。須藤は五月雨を連れて浅倉のいる本館へ向かった。
──浅倉鎮守府
「ハァ、来やがったぜ!」
執務室の窓から桟橋を見ていた浅倉は乱暴に執務室のドアを開け、1階へ駆け下りる。
そして、ついに待ちきれなくなり、玄関ドアは思い切り蹴った。
ガァン!と、開けようとした木製のドアが内側からいきなり蹴破られ、
須藤も五月雨も面食らった。扉の向こうから現れたのはもちろん浅倉。
「待ちわびたぜ、
「浅倉威……君には今度こそ拘置所に戻ってもらいましょうか。
それで完全に私は潔白な人間になる」
「あなたが、浅倉提督なんですね……。
提督、潔白になるってどういうことなんですか?」
落ち着きを取り戻した須藤は浅倉と対峙する。
事情を知らない五月雨は須藤に言葉の意味を問う。
「危ないから離れてて!浅倉は何をするかわからない!奴は私が取り押さえる!
君はここの作戦司令室の人に危険だから誰も近づけるなと知らせてくれ!」
「え、あ、はい!」
須藤は彼女の疑問を無視して遠くに追いやる。
そして二人の声が聞こえないところまで離れたところを確認すると浅倉に話しかけた。
「しばらくぶりですねえ。と言っても、一日二日ですが」
「黙れ……こっちはライダー目の前にぶら下げられてイライラしてんだ。やるぞ」
「せっかちな人ですね。……ではお望みどおり始めましょうか!」
二人はガラス窓の前に立つ。腰にデッキを装填するベルトが現れる。
ガラスに反射した光が浅倉の微かな笑みを浮かび上がらせた。
そしていつものように右腕をコブラの食いつきのように素早く動かし、
「……変身!!」
デッキを装填し仮面ライダー王蛇に変身。
続いて同じようにベルトを具現化させた須藤も、左腕を伸ばし、
右腕をハサミに見立てて素早く開閉。
「変身!」
デッキを装填すると、須藤が回転するライダーの鏡像に包まれ、
仮面ライダーシザースに変身した。
「では、やりましょうか。フフフ……」
不敵な笑い声を上げるシザースと王蛇は本館前広場中央に移動した。
「それでは、まず……」
シザースはカードを1枚ドロー。左腕のハサミ型バイザー・シザースバイザーを閉じ、
現れた接合部に装備された挿入口に装填。そしてハサミを開き収納した。
『STRIKE VENT』
シザースの右腕に、シザースバイザーより二回り以上大きな、
切断用重機を思わせる巨大なハサミ、シザースピンチが現れた。
それを見た王蛇もカードをドロー。しかし、その時異変が起こる。
そこでカードが尽きたのだ。
「……」
「ハハハ!どうかしましたか?ああ、そのデッキですか。
ちょっと中身を拝見したんですがね、少しカードが多すぎる。
それに、私のデッキには大したカードがないんですよ。これでは平等じゃない。
勝手ながら“何枚か”抜かせていただきました!」
シザースは王蛇のデッキから盗んだカードを見せつける。
「……だったらなんだ」
「え?」
「厚紙仕込んでデッキの重さ調節したつもりだったんだろうが、
だいたい4、5gほど違ってたぞ。ちゃんと秤使わねえからバレるんだ」
「で、では、何故わかっていながら、渡したときに……!!」
「ハンデだ」
「ハンデ……?」
「お前と俺では、完全に違うところがある。お前には欠けているものがあるから、
飛車角落ちでやってやろうって言ってんだ」
「強がりはその辺にしたほうがいいですよ。こうしませんか?
あなたはこのカードの所有権を移す方法を私に教える、
私はあなたにカードを何枚か返す。通常、他人のカードを使っても
効果が現れるのは持ち主だけだ。昨日受け取った資料で、
あなたが過日の戦闘で敵ライダーのカードを奪ったことは知っていますが、
具体的な方法が書かれていなかったんですよ。
それではこれを持っていても意味がない、だから私とあなたで……」
『SWORD VENT』
王蛇がベノバイザーにカードを装填。ベノサーベルを装備した。
「うるせえぞベラベラと。要は殺して奪えば全部解決だろうが!!」
そしてシザースにダッシュで駆け寄り、ベノサーベルを振り下ろす。
すんでのところで武器にもなるシザースバイザーとシザースピンチで
斬撃をなんとか受け止めた。ダメージには至らなかったが、ビリビリとした痺れが走り、
手にしたカードを落としてしまう。
「しまった!」
足元に王蛇のカードが散らばる。だが、王蛇が構わず、ベノサーベルでシザースを薙ぎ、
二撃目三撃目を繰り出す。頑丈なシザースピンチで受け止めるシザースだが、
王蛇は斬撃に加え、上段蹴り、ローキックを何度も叩き込み、防御を突き崩していく。
そして、ついに王蛇がシザースの腹をベノサーベルで横一文字に斬りつけた。
「がああっ!!」
バトル開始早々劣勢に立たされるシザース。
「何故だ!何故カードを拾わない!それで私の上に立ったつもりか浅倉!」
「てめえが下にいるだけだ。ほら、さっさと来い」
「くっ、ならばこれに耐えられますか!?」
シザースは巨大なハサミ、シザースピンチを開き、王蛇の肩口めがけて振り下ろす。
巨大な刃物が襲いかかる。その重量と鋭い切れ味に王蛇のアーマーが火花を散らした。
吹っ飛ばされながらも、王蛇は転がりながら受け身を取る。
しかしダメージは受け流しきれず、王蛇は膝に手をつきながらゆっくり立ち上がった。
「ハハッ!どうですか、この切れ味!何人も食わせた甲斐があるというものです!」
「ごはっ……“食わせた”だ?」
「ええ、“仕事”の邪魔になる連中や、私の周りを嗅ぎ回る連中を
モンスターに食わせたんですよ。お陰で大分強くなりました。カードは増えませんがね。
だからどうしてもあなたを倒してデッキをグレードアップする必要があるんですよ!」
王蛇は退屈そうに首を鳴らして吐き捨てた。
「……いい加減口を閉じろ、弱いのが、ばれるぜ」
「つくづく強情な人ですね……いいでしょう。少し早いですが、終わりにしましょう。
最後に聞いておきたいのですが、あなたが言っていた、
私に足りないものってなんでしょうね?今の状況を見ると、
むしろあなたに強さが足りていない気がするんですが」
「欲望だ……」
「ふっ、ご冗談でしょう。
私ほどライダーバトルに賭ける欲望が強いライダーはいないと思っていますよ。
そしてさっきも言いましたが、強くなるために何人もモンスターに食わせました。
中にはただの通りすがりもいましたね。要するに、私は強くなるためならなんでもする。
そうまでさせるほど、このライダーバトルは癖になるんですよ。
では、今度こそさようならです」
自らの力を朗々と語ったシザースはカードをドロー、シザースバイザーに装填。
ハサミを開いた。
『FINAL VENT』
カードの力が開放されると、背後に異次元のドアが開き、
契約モンスター・ボルキャンサーが姿を表した。
シザースがジャンプすると、更にボルキャンサーが両腕で力強くシザースを打ち上げ、
膝を抱えて前方に高速で回転。そのまま王蛇を破壊せんと落下する。
シザースのファイナルベント、高速回転する超硬物質の体当たり攻撃
「シザースアタック」が王蛇に迫る。
いかに王蛇の戦闘能力が高くとも、まともに食らえば敗北、最悪死亡は免れない。
体感時間がゆっくりになる王蛇。
遮蔽物、ない。カード、いらん。弱点、知らん。ないないづくしだ下らねえ。
そんなもんどうでもいい、とにかく殺せばそれでいい。
王蛇はベノサーベルを全力で叩きつけるべくシザースに突撃する。だが、
『FINAL VENT』
システム音声と共にワインレッドの影が飛来した。そしてシザースアタックに直撃。
手塚海之こと仮面ライダーライアのファイナルベント「ハイドベノン」が激突し、
空中で大きな爆発が起きた。爆風と打ちつける砂埃に顔をかばう王蛇。
ライアのエイ型モンスター・エビルダイバーを異次元の海から呼び寄せ、
ジャンプしてエビルダイバーに乗り、空中で一気に加速して敵に体当たりする攻撃。
その急襲を受けたシザースのファイナルベントは相殺され、
シザースは地面に投げ出された。
「があああっ!!……かはっ!一体、何が!?」
突然の反撃に混乱するシザース。彼の前に立ちはだかるライア。
だが、王蛇がそれで納得するはずもなく、
「てめえ……何のつもりだコラァ!!」
当然、戦いに横槍を入れられた怒りをぶちまける。
ライアは王蛇に向き合うと語りかける。
「浅倉……お前は俺を知らないだろうが、俺はお前をよく知っている。
お前を倒し、法の裁きを受けさせるのは、俺だ」
「誰だか知らんが邪魔すんな!」
ベノサーベルで斬りかかるが、ライアは大きく跳躍し、王蛇を飛び越えて背後に立った。
「俺が目障りか。ならまず目の前の敵を倒したらどうだ。1対1の勝負はそれからだ」
「……逃げんな、そこで待ってろ」
王蛇はライアを指差すとシザースにとどめを刺すべく、振り返った。
すると、シザースが本館の中へ逃げ込んでいくのが見えた。
王蛇もぶらぶらと本館の中へ入っていった。
「はぁ……くそっ!浅倉なんかを助ける奴がこの世にいるとは信じられません!」
シザースは急いで階段を駆け上り、階段を上りきると、すぐ3階の客室に逃げ込んだ。
座り込み呼吸を整える。2対1ではあまりにも不利!
なんとか、なんとかしなければ私が殺される!
“お巡りさんは……臆病だ……戦い怖くて逃げ出した……”
呑気に黄金虫の替え歌を歌いながら、シザースを探す王蛇。
1階食堂、いない。2階執務室、いない。3階……にたどり着いたところで、
浅倉はヘルムの中で満面の笑みを浮かべた。
……ドスッ!!
「うわああっ!!」
思わず大声を出したシザースは心臓が飛び跳ねるような気がした。
突然もたれかかっていた壁に穴が空き、剣が突き出てきたのだから無理もないだろう。
王蛇が隣の部屋からベノサーベルを突き刺したのだ。
あと半歩体がずれていたらシザースの体を貫いていただろう。
慌てて部屋から飛び出すシザース。
しかし、同時に部屋から出た王蛇に行く手を塞がれる。
「ミラーワールドに、刑事は要らない……!」
王蛇は両腕を広げてゆっくりと、シザースに近づく。
シザースは後ずさりしながら、カードをドローし、バイザーにセット。
ハサミは開かずまだカードは発動させない。
「わかった!私の負けだ!私のカードを譲ろう!
大したものはないが、多いに越したことはないだろう!?だから……」
「“だから”は嫌いだ。……お前も、戦え!!」
イライラが限界に達し、絶叫した王蛇は全力でベノサーベルを振り下ろす。
同時にシザースはシザースバイザーを開き、セットしておいたカードを発動。
『GUARD VENT』
シザースの前に強固な盾が現れ、大きな金属音を立てて
かろうじてベノサーベルを弾き返した。
力任せの攻撃を跳ね返された王蛇は大きくよろめく。
今だ!シザースは王蛇の隣を走り抜け、階段を降りる。目指すは2階執務室。
ドアを開けて一瞬中を見回す……あった!シザースは迷わず01ゲートに飛び込んだ。
──須藤宅
シザースは01ゲートで命からがら自宅に戻った。やれやれ死ぬところでした。
ログインし直せば私の鎮守府、そこで身を隠せば……
ドンドン!!
その時、乱暴に玄関扉が叩かれた。うるさいですね。新聞の勧誘でしょうか。
さっさと追い払いましょう。変身を解いた須藤はドアチェーンをかけて扉を開く。
「誰ですか……
ああ、警部じゃありませんか。いや、すみません重要なときに休んでしまい……」
「須藤!殺人容疑及び覚せい剤取締法違反で逮捕する!今すぐ出てきなさい!」
耳を疑う須藤。馬鹿な!私への疑いは完全に晴れたはず!一体何故!?
「な、何をおっしゃっているんでしょう。全く身に覚えがないのですが」
「お前の家に浅倉威らしき人物が出入りしたという目撃情報が複数寄せられた。
そこでお前が浅倉と共謀しているという容疑がかかり、再度身辺調査をしたところ、
お前が手を染めていた犯行が明らかになったというわけだ」
くそっ!あいつを家に入れるべきではなかった!とにかく捕まるわけにはいきません。
「……わかりました。少し着替えたいので、5分だけ時間をください」
「早くしろ。言っておくが周辺は既に固めてある。妙な気は起こすなよ」
「はい、すぐ終わりますので……」
須藤はドアを閉じると急いでパソコンを立ち上げ、艦これにアクセス。
ゲームの世界に逆戻りした。
──須藤鎮守府
再度自分の執務室に降り立った須藤は、ほっと一息ついた……のも束の間。
背中に重く尖った物を突きつけられた。
「……話し合いましょう。そうです、私と組みましょう!
私とあなたなら他のライダーを圧倒できる!決着は最後の時、ということで……」
「口を閉じろ、と言ったはずだ」
須藤の背後にはベノサーベルを構える王蛇が。そばにはライアもいる。
冷や汗が止まらない須藤。
「頼む、なんでも言うことを聞く、だから……」
「“だから”はイラつくっつっただろうが!変身しろ!!」
怒る王蛇に背中を突き飛ばされ、窓に叩きつけられる須藤。
パシ、パシ、とベノサーベルで左手を叩く王蛇に睨まれつつ、またデッキを取り出し、
シザースに変身した須藤。改めて王蛇と向き合う。
「よ、よく聞いてくれ、どうすれば私は助かると思う?」
「俺を殺せ。他にはない」
言うと同時に、ベノサーベルで袈裟懸けにシザースを斬りつけた。
「げはっ!……ああっ!」
衝撃で後ろに吹っ飛ばされたシザースは、窓ガラスを突き破り、本館前広場に落下した。
「うあ……あ……」
王蛇の攻撃と落下の衝撃で既に満身創痍のシザース。しかし、王蛇の追撃は容赦がない。
王蛇も窓ガラスから飛び降り、ベノサーベルを真下にしてシザースに突き刺そうとした。
体の痛みを強引に無視して地面を転がり、どうにか刺殺を回避。
両足に残る力を込めて立ち上がる。だが、そんなシザースにまたも王蛇の攻撃が迫る。
今度は両手でベノサーベルを持ち、まっすぐに胴を突いた。
「うぐぉっ!……ああ……」
また仰向けに倒れてしまったシザース。もう転がる力もない。
だが、王蛇が戦いを止めるわけもなく、反撃もままならないシザースを
思い切りベノサーベルで斬る、というより殴りつける。何度も、何度も。
「ハハハハハ!ハハハハ!!アハハハハ!!」
「うう!ぎゃぁっ!!だばっ!げはああっ!!」
狂ったように笑いながら、アーマーの中の須藤を
挽肉にしようかという勢いで何度も殴る王蛇。
抵抗できないシザースは、ただその荒れ狂う暴力にさらされる他なかった。
そして、敵をいたぶるのに飽きた王蛇は、とどめを刺すべく
シザースの喉元にベノサーベルを突きつける。シザースは喘鳴混じりの言葉を絞り出す。
「ごふっ……どうして……お前と、俺は……同じ。戦いが……望み……」
「違う」
「一体、何が……お前も、戦いの欲望は……」
「“守りたい”なんざ考えてるからだ」
「え……?」
「始めからそうだ。サツでの立場を守りたい。小細工してまで自分を守りたい。
余計なもん抱えながらハサミ振り回してる奴の欲望なんかたかが知れてる」
「お前は……何のために……ライダーバトルを」
「理由なんかねえ、ただ殺したい。それだけだ」
「ばけ、もの……」
「ああそうかもな、あばよ……」
王蛇がベノサーベルを振り上げる、そしてシザースの首を貫こうとしたその時。
──浅倉、待て!
ブルーのジャケットを来た青年が全力でこちらに走ってくる。真司だった。
王蛇に駆け寄ると、息を切らしながら頼み込む。
「待ってくれ、殺すのは、待ってくれ!!」
「……」
黙って真司を見る王蛇。1階に下りてきていたライアがその様子を見守る。
「ここでこいつを殺したら、神崎の思う壺なんだよ!お前それでいいのかよ!
誰かの都合でやらされてる殺し合いなんて、おかしいと思わないのかよ!」
「……おかしいのはお前の頭だ。俺を止めたかったら、変身して戦え」
「頼むよ……時間をくれ!
確かに、ライダーバトルを止めても続けても犠牲者は出るけど、
殺しちゃたら後戻りができなくなるんだ!」
「意味がわからんぞ、邪魔だ、どけ」
「ぐわっ!」
王蛇から軽めの張り手を顔面に食らい、倒れる真司。
それでもライダーの力で食らった攻撃は生身の人間を吹き飛ばす威力がある。
鼻血が止まらない。しかし、真司は這うように王蛇に追いすがり、
シザースへの攻撃を止めようとする。
「頼む!頼むよ!」
「しつけえ……!」
今度は足蹴にされる。石畳に叩きつけられ体に鈍い痛みが走る。
しかし、真司はまた王蛇にすがりつき、足にしがみつく。
「頼むよ……お願いだから……もうやめてくれ……
そうだ!俺の、俺のカードやるから!もう十分暴れただろ?あいつもう動けないじゃん!
もういいだろ、な?」
真司はデッキからカードを1枚取り出し、王蛇に差し出した。
黙ってそのカードを手に取る王蛇。
「……くじ引きか。面白そうだな。ふん、お前のせいで白けた。帰る」
王蛇は瀕死のシザースを置いて去っていった。
「よかったぁ~」
鼻血まみれの顔もそのままに、その場に座り込む真司。
一部始終を見ていたライアが変身を解いて近づいてきた。
「城戸……彼をどうする気だ」
「助けるに決まってるじゃん。
今回は完全に俺のわがままだから、俺があいつのモンスター引き取るよ」
「そうか。城戸、一つ言っておかなければならないことがある」
「なんだよ急に改まって」
「俺は今日、浅倉を助けた」
「!? 助けたって……どういうことだよ!」
「俺はお前にライダーバトルを止めたいと言っていたけど、
本当は浅倉に法の刑罰を受けさせたいのが本音だったんだ」
「そうか……お前の友達、浅倉のせいで……」
「もちろんライダーバトルを止めたいのも嘘じゃない。
けど、結局は俺も、浅倉に復讐したい、という欲望で戦っていたのも事実なんだ」
「手塚……」
「だから城戸、やっぱり純粋な思いでライダーを助けたいと思っているのは
お前しかいないんだ。俺はお前のようにはなれない。
だからライダーバトルの答えをお前に託す。
……さっきお前は止めても止めなくても犠牲者が出ると言っていたな。
それはどういう意味だ」
「それは……事情が複雑で話すと長くなるんだ。明日にでも俺の鎮守府で話そう」
「……わかった。とにかく今は彼を救助しよう」
シザースは相変わらず倒れたまま微動だにしない。
真司は近づいてシザースのデッキを抜き取る。変身を強制解除され、須藤の姿が現れた。
真司が彼を抱きかかえると、遠くで事の成り行きを見守っていた五月雨が近づいてきた。
「待ってください!提督をどこへ連れていくんですか?」
「えっと……君は?」
「提督の秘書艦の五月雨です!お願いですから提督を殺さないでください!」
真司は必死に訴える彼女の目を見て話した。
「……大丈夫。誰にもこの人を殺させないために俺の鎮守府に連れていく。
怪我の手当もしなきゃいけない。多分、あちこち骨折してる。
バトルが終わるまで窮屈な思いはしてもらうことになるけど、お願い、信じて」
「わかりました……提督を、よろしくお願いします」
五月雨は真司に深く頭を下げた。
そして真司は三日月が待つ転送クルーザーへ去っていった。その場に残された手塚。
彼はすぐ自分の鎮守府には戻らず、作戦司令室へ向かった。
ドアを開け、中に居た長門に話しかけた。
「忙しいところ済まない。手塚鎮守府の提督だけど、少し、いいかな?」
長門達が立ち上がり敬礼する。
「はっ、何なりと」
「今日のライダーバトルの情報はもう掴んでるよね。……須藤の素性も」
「偵察機からの情報が既に。……まさか提督が浅倉提督と共謀していたとは」
「それについて城戸鎮守府に電文で送っておいて欲しいんだ。
きっと彼のことだから疑いなく須藤と接すると思う。
デッキを取り上げても油断しないよう警告しておいてくれないかな」
「承知しました。仰せのとおりに」
「ありがとう。突然来て悪かった。それじゃあ」
作戦司令室を後にした手塚は今度こそ自分も手塚鎮守府へ戻るべく、
転送クルーザーへ向かった。歩きながら彼は考える。
ライダーバトルを止めても続けても犠牲者が出る。一体どういう意味なのか。
明日の真司からの答えを待つしかなかった。
>仮面ライダーシザース 須藤雅史 脱落
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こんな結末になり申し訳ありません。ちょっとやりたいことができたので……