【クロス】艦隊これくしょん×仮面ライダー龍騎【完結済】   作:焼き鳥タレ派

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第27話 One for All

「真司さん、新聞が届いてますよ!」

 

スパァン!!

 

三日月がニコニコ笑いながら新聞をテーブルに叩きつけた。

まだ青葉についての印象がよろしくない三日月。その音に跳ね上がる思いをした真司。

 

「ど、どうしたの三日月ちゃん……?」

 

「うふふ、別に……ふふ」

 

真司はどこか不気味な三日月を避けるようにさっと新聞を取る。

現実世界のものより薄めの新聞を広げてみると、

各ライダーの変身前の姿と紹介記事が多数掲載されていた。

さっそく自分の記事を探す真司。

 

「おお、あった!どれどれ?すげえ、“紅き龍の戦士”だって!

イヒヒ、いやまぁ、実際そうなんだけど、

なんか照れるっていうかこそばゆいっていうか!

あとは……まあ、優衣ちゃんの事とかはやっぱり言えないよね」

 

真司はその後も他ライダー達の記事に目を通す。感情のない三日月の視線に気付かず。

 

「真司さん……青葉先輩の書いた記事は面白いですか……?」

 

「うん!蓮も北岡さんも相変わらずって感じでさ。あ……蓮、恵理さんの事話したんだ」

 

名前こそ書かれていなかったものの、蓮が恋人の存在を明かしたのは意外だった。

断固取材拒否を貫くと思っていただけにその驚きは大きかった。また一枚紙面をめくる。

 

「へぇ、美浦ちゃん時々ここに戻ってるんだ」

 

ライダーバトルを棄権した霧島美穂についても小さく紹介されていた。

当然ながら写真はなかったが、彼女が新たな人生を歩み始めた事を知って安堵する真司。

 

「そっか。頑張ってるんだ……」

 

微笑みながらまた一枚紙面をめくると、新たなライダーの紹介記事にたどり着いた。

 

「オルタナティブ・ゼロに、名称不明の新ライダー……そうだ!」

 

真司は急いで記事を読む。その中で気になるキーワードが散見された。

 

「オルタナティブ・ゼロ、香川提督……やっぱりあの清明院大学の教授だったんだ!」

 

更に記事を読み進める。

 

「新人ライダーってやつが言ってる、“コアミラー”ってなんだ?

……これを破壊すれば、ミラーワールドを閉じることが出来るって書いてるけど、

もしかしてこれ、すげえ重要なことなんじゃ!こうしてらんない、三日月ちゃん!」

 

「あ、はい!なんでしょう」

 

正気に戻った三日月が返事をした。

 

「クルーザーの運転お願い!この新聞に書いてある東條って人の鎮守府に連れてって!」

 

「わかりました!」

 

真司達は執務室を出て桟橋の転送クルーザーに向かった。

 

 

 

 

 

──東條鎮守府

 

 

「ありがと。じゃあ、行こっか」

 

「はい、お供します」

 

東條鎮守府の本館に着いた真司達はドアノブを回し、

その大きなドアを開いて、中に入った。

玄関ホールの階段を上り、2階執務室へ向かう。

どの鎮守府も作りは同じなので迷うことはない。

執務室のドアのそばで、東條の秘書艦・電が居心地悪そうに立っていた。

真司が彼女に話しかける。

 

「こんにちは。どうしたの、こんなところで」

 

「あ、城戸提督。こんにちはです。今はちょっと……」

 

「どうしたの?」

 

「ええ、ちょっと……」

 

はっきりしない電の横を通り抜け、執務室のドアをノックしようとすると、

中から声が聞こえてきた。

 

“東條君、確かに私は現地住民との交流も大切にするよう言いました。

ですが、コアミラーの情報を漏らせと言った覚えはありませんよ?”

 

“すみません……”

 

“ミラーワールドを閉じられたくない神崎君や、

ライダーバトルを止めたくない連中の邪魔が入っては、

我々の英雄的行為に支障を来します。その点を理解していますか?”

 

“そんな連中、殺せばいいじゃないですか。必要なら、これを書いた艦娘だって。

多くを救うには、小さな犠牲じゃないですか。先生の家族に比べれば……”

 

ドン!!

 

その時、突然壁を殴るような大きな音が聞こえた。

どうにか声を上げずに済んだが、今度は3人とも飛び上がる思いをした。

 

“……東條君、英雄とは、苦しいものなんですよ。

君もそこを理解しないと、本当の英雄にはなれませんよ”

 

“……”

 

明らかに入り辛い雰囲気。だが、明らかに神崎の知り合いと思われる人物と、

“コアミラー”という新事実を知る新ライダー。

2人が揃っているチャンスを逃すわけには行かない。

真司と三日月は何度も顔を見合わせた後、ようやくドアをノックした。

 

「あの!城戸鎮守府で提督やってます城戸真司って言います!いきなり来てすいません!

ちょっと聞きたいことがありまして!あ、ライダーバトルしに来たわけじゃないんです!

ただ、新聞記事で皆さんの事を読んで、

ちょっとお話が聞きたいな~とか思っちゃったりして……」

 

しばらくの無言。緊張のせいか時間が長く感じる。そして、

 

“ほらごらんなさい……どうぞ”

 

「失礼します!」

 

入室許可が出た真司は、はやる気持ちを抑えて落ち着いてドアを開いた。

そこには白衣を着た男性と、彼の生徒らしき青年が立っていた。

青年は若干落ち込んでいる様子で窓の外を眺めている。

新聞記事によると、香川という男性は教授、東條という人物が青年。

 

ということは眼鏡をかけた目の前の男性が、

かつて神崎が師事していた香川教授ということになる。

真司はまず香川に話を聞くことにした。財布から名刺を一枚取り出し、香川に渡す。

 

「はじめまして!俺、現実世界ではOREジャーナルっていうネットニュースの会社で

記者やってます!あの、本当にライダーバトルしに来たんじゃなくて、

俺も神崎士郎の行方を追ってるんです。

いろいろ調べていくうちに、香川先生が昔、清明院大学で神崎を教えてたってことが

わかって、あいつについて教えて欲しくてお邪魔したんです……

あ、この娘は俺の秘書艦・三日月です」

 

香川は受け取った名刺を見て考える。

……以前、大学に取材に来た女性記者も

OREジャーナルという会社に所属していましたね。彼女も神崎君を追っていました。

そして今度はライダーの一人がOREジャーナルの記者。

この会社には注意が必要かもしれません。

 

「失礼します。香川提督、東條提督、三日月です。どうぞお手柔らかにお願い致します」

 

そして張り詰めた空気の中、三日月は、真司にはっきり

“自分の”秘書だと言われたこと、初めて呼び捨てで呼ばれたことに

一人面映い気持ちになっていた。

 

「……はじめまして。私が香川です。なるほど?マスコミの方ですか。

我々以外に神崎君の過去を知る者がいるとは意外です」

 

「お願いです!神崎が401号室でどんな実験をして事故を起こしたのか。

それと、すみません……ドアの前でさっきのお話聞こえちゃいまして。

コアミラーってなんなのか、教えてくれませんか!

事情を話すと長くなっちゃうんですけど、仲間の命がかかってるんです!」

 

「仕方がありませんね、新聞に載った以上、隠しても意味のないことです。

コアミラーとは、ミラーワールドのどこかに存在する、

ミラーモンスターを生み出し、ミラーワールドの中心核となる特殊な鏡面体のことです。

我々はそれを破壊し、ミラーモンスターの脅威から人々を救うために

この世界にやってきました」

 

真司は救われたような気持ちになる。新しいライダーが

私利私欲のために他ライダーを殺しに来たわけではないと知って胸をなでおろした。

 

「よかったぁ!俺は、このライダーバトルを止めるためにライダーになったんです!

でも……」

 

「でも?」

 

「ライダーバトルを止めると犠牲になる人もいるんです。例えば、例えばですよ?

不治の病に罹ってて、新しい命を得るために戦ってるとか、

重体に陥ってる親しい人を助けるためだとか。

そういう事情を抱えているライダーもいるとしたら……」

 

「城戸君、といいましたね。“仮に”そういう気の毒な方がいたとしても、

君が悩む必要などないのですよ」

 

複雑な事情を打ち明ける真司に香川が割って入った。

 

「確かに我々は神崎君と旧知の間柄です。

彼が偶然落としたファイルを見て、ミラーワールドとミラーモンスターの存在を知り、

干渉する術を手に入れたのも事実です。

だからこそ我々は、英雄になる他なかったのです」

 

「英雄って、どういうことですか?」

 

「例えば、10人の命と1人の命。

どちらかだけを救えるとしたら、どちらを選びますか?」

 

香川は両方の手を出して、真司に問う。

 

「どういう、意味ですか……?」

 

「いいですか?

多くを助けるためにひとつを犠牲にできる勇気を持つ者が、真の英雄なんです。

あなたが悩み苦しんでいる原因がまさにその試練なのです。

ミラーワールドを閉じ、多くの人々をミラーモンスターから救うか。

もしくは僅かな人間に新たな命を与えるためミラーワールドを放置し

ライダーバトルを続ける。どちらを選ぶべきかは自明の理でしょう」

 

そして片方の手を下ろす。真司の期待はあっという間に裏切られた。

皆を助けようとする真司に対し、少数を切り捨てると宣言する香川。

 

「そ、そんな!

それじゃ、香川先生は蓮や優衣ちゃんたちを見殺しにしろっていうんですか!?」

 

香川の冷徹な理論に思わず優衣の名を出してしまった真司。

 

「先生の話聞いてなかったの?現実世界じゃ多くの人がミラーモンスターに殺されてる。

きっとこれからも。それを止められるなら、君の知り合い何人かくらい、

小さな犠牲だよ。ね、先生」

 

「お前ふざけんなよ!

だからってなんで優衣ちゃんが犠牲にならなくちゃいけないんだよ!小さな犠牲だって?

そんなの英雄でもなんでもねえよ!」

 

真司は思わず東條に掴みかかろうとした。だが、香川と三日月が間に入り、彼を止める。

 

「君、落ち着きなさい!」

 

「司令官、止めてください!暴力はいけません!」

 

そんな真司を東條は嘲笑う。

 

「ほらね。こんな人に、僕達の理想なんて理解できっこないんですよ、先生。

これ以上話しても無駄だと思いますけど」

 

「いえ、まだです。城戸君、落ち着いて答えてください。

君は今、“優衣”という名を口にしましたね。彼女とはどういう関係ですか?」

 

かろうじて平静を取り戻した真司が答える。

 

「はぁ、はぁ、……優衣ちゃんは、俺達の仲間です……」

 

「ミラーワールドを閉じると、なぜ彼女が犠牲になるのですか?」

 

香川は答えを知っている問いをあえて問う。

この男がコアミラーについて思わぬ手がかりを持っている可能性がある。

一方の真司は視線をさまよわせ、迷った。言うべきか、口を閉ざすべきか。

しかし、相手がなにがしかのヒントを持っているかもしれない。

真司は決心を固め、優衣の事情について話した。

 

「優衣ちゃんは……神崎の妹です」

 

「……続けて」

 

「原因はわかんないんですけど、優衣ちゃんの体に、

ここ1、2ヶ月の間に妙な異変がおきるようになったんです」

 

「異変とは?」

 

「なんというか、時々、そう、俺達が普通のミラーワールドに居すぎた時みたいに、

体が砂のように蒸発していくことがあるんです。

うまく説明できないんですけど、多分、それを原因か、

解決する方法が艦これの世界にあるような気がするんです!お願いです!

それを見つけるまでコアミラー破壊は待ってください!

ミラーモンスターは外の仲間と俺達でなんとかします、だから!」

 

香川はすがりつく真司の両肩を叩いて落ち着かせる。

 

「慌てないで。こちらもコアミラーについてはこの世界にあること以外、

全くと言っていいほど情報がない。そうですね……

コアミラーや優衣さんに起きている現象について、

大きな進展があるまでは相互不干渉ということにしましょう。

お互い情報が不足している状態で潰し合っても、何の解決にもならないでしょう」

 

「は、はい……」

 

「今日の所はお帰りなさい。

今はこれ以上ここで話していても得られるものはないでしょうから」

 

「はい、お邪魔しました……」

 

「失礼します」

 

真司が肩を落として執務室から出ていくと、三日月もペコリと頭を下げてドアを閉めた。

しばらくして、東條がぼそりと口を開く。

 

「……先生、本当にあいつらと組む気なんですか」

 

「いいえ。ただ、監視は必要になるでしょう。

予想以上に彼らが情報を掴んでいることには驚かされました。

我々の活動の邪魔にならなければいいのですが」

 

「そうですね……邪魔になるかもしれませんよね」

 

「それでは、私は鎮守府に戻りますが、くれぐれも派手な動きは避けるように。

ライダーバトルなどに付き合う必要はありません」

 

香川はカバンを持ってドアの前に立った。

 

「外まで見送ります……!」

 

「いえ、結構。君はまずこの世界に慣れることを優先しなさい。

本格的なコアミラー捜索に入る前に。では」

 

「わかりました」

 

そして香川も退室した。

一人残された東條はソファに座り、また“変身”の文庫本を開いた。

読みながら東條は考える。なんであんな奴がライダーなんだろう。

ライダーバトルを止めて皆を救いたいみたいなこと言ってたけど、

結局誰も救えないに決まってる。

だって、それって誰も犠牲にする勇気がないってことじゃない。

英雄になれない奴が誰を救えるっていうのさ。

 

トントントン

 

東條が文庫本を読んでいると、ノックの音が聞こえた。さっきの奴が戻ってきたのかな。

だったら……

 

“司令官、青葉です。先日は取材を受けていただき、ありがとうございました。

お時間がよろしければ、是非感想を聞かせて頂きたいのですが”

 

新聞屋?もういい加減にして欲しいんだけど。あれのせいで先生に怒られたし。

でも、先生は住民と交流しろって言ってたし、

コアミラーについても何か情報持ってるかも。

 

「入れば」

 

「失礼します!」

 

青葉がいつも通り艤装とカメラを下げて執務室に入ってきた。

 

「ご機嫌いかがですか、司令官!今日発行の艦隊新聞は読んでいただけましたか?」

 

「読んだよ、それが何?」

 

「あ、いや、一言ご感想頂ければ嬉しいな~と思いまして」

 

「普通」

 

「あ……はは、そうですか」

 

つっけんどんな司令官の態度にさすがに青葉も苦笑いです。

……しかし、不思議ですね。実際青葉、なにやってるんでしょう。

司令官とは言え、一取材対象にプライベートの時間を使うなんて。

 

「……座りなよ」

 

「あ、はい、ありがとうございます!」

 

それでも青葉に席を勧めてくれたので、少し安心しました。

 

「今日は何?また新聞の取材?」

 

「えーと、あの、それはですね……」

 

とは言え、前回より若干態度が頑なな司令官に困ります。

“ちょっと気になったから会いに来た”と言ったら怒りそうですね……

 

「そ、そうなんですよ!艦隊新聞の増刊号を出そうかな~なんて考えてまして、

まずは東條司令官により突っ込んだお話を、と思った次第ですはい!」

 

「……早くしてよね」

 

「オホン。司令官、前におっしゃってましたよね。

香川提督は真の英雄で、多くを救うために、ひとつを犠牲にする勇気を持ってる」

 

「その通りだよ、だから先生を尊敬してる」

 

お、司令官が少し笑顔を浮かべました。少し彼の警戒心がほぐれたような気がします。

この調子で質問を続けましょう!

 

「では、提督達がこの世界にいらしたのも、

何かの犠牲の上に、何かを成し遂げるためなのでしょうか」

 

「そうだよ!……君はわかってくれそうだから話すよ。

ミラーワールドの何処かにコラミラーがあることは以前話したよね。

それを破壊してミラーワールドを閉じ、

ミラーモンスターから人々を救うのが僕達の使命」

 

「なるほど~、では、そのための犠牲、とは何なんでしょう」

 

「……なんか、ライダーバトルを止めると死ぬやつがいるらしいんだよね。

さっき来た人が言ってたんだけど。でも、そんなのたったの2,3人でしょ、どうせ。

どっちを優先すべきか、考えなくてもわかりそうなもんだけど」

 

……言いたいことはありますが、ここは我慢です。

彼を否定しても、そこで話が終わってしまいます。

 

「貴方と香川提督の目標はわかりました。

差し当たって今後の行動目標などはあるのでしょうか」

 

「まずはコアミラーを探さなきゃ。君、何か知らない?海で妙な物を見たとか。

例えば、巨大なエネルギーの塊とか」

 

「う~ん、すみません、あいにくそういったものは……」

 

「そう。まあいいよ。それを探しだすのも僕達の使命だから」

 

別段気を悪くした様子もなく、司令官は文庫本をめくりだしました。

司令官の機嫌は悪くなさそう……ここで、思い切って肝心な話を切り出そうと思います。

 

「司令官。青葉、以前に申し上げましたよね」

 

「何のこと」

 

「英雄にならなくても、貴方を愛してくれる人はいるという話です」

 

明らかにムッとした表情で彼が答えます。

 

「だったら何?英雄になるのはやめろって言いたいの?」

 

「青葉が言いたいのは、他にも英雄になる方法はあるということです」

 

「そんなものあるわけないじゃん。先生の言うことが正しいんだよ」

 

「確かに香川提督の理屈も正しいです。

でも、青葉は司令官にもっと別の形で幸せになって欲しいんです!」

 

「なにが言いたいんだよ君は!」

 

無表情のまま怒った司令官が文庫本を床に叩きつけます。

でもここで引いちゃだめです、青葉!

 

「青葉、こうも言いました。

司令官が戦いで命を落としたら、必ず悲しむ者がいるって!」

 

「適当なこと言わないで欲しいんだけど!知り合いもいないこんな世界で誰が……」

 

「青葉がいます……!」

 

「……何言ってんの君」

 

確かに、自分でも何を言っているんでしょう。

でも、あふれるように出てくる言葉が止まりません。

 

「はっきり言います!初めて会った時から思ってました。

司令官、ちっとも幸せそうな目をしてません!

普通、明確な目標を持って行動している人の目は輝いています!

でも、司令官はずっと悲しそうな目をしてます!

本当はコアミラーも英雄もどうでもいいんじゃないですか!?」

 

「わかったようなことは言うなって前にも言ったんだけど!!」

 

「“誰かが好きになってくれるかもしれない”!それが心の叫びなんじゃないですか!」

 

「君はケンカを売りに来たのかなぁ!?もう出ていってよ!」

 

「提督命令だから出ていきますが、これだけは考えておいてください。

もし青葉が司令官のことを好きだったら、貴方はどうしますか。……失礼します」

 

パタン、とドアが閉じられると同時に訪れる静寂。

激しい言い争いの直後で、軽い耳鳴りがする。東條は頭をかきむしる。

心を揺さぶられ、怒りとも苛つきとも付かない感情、

そして初めて抱いた上手く表現できない気持ちを処理できない。

 

バン!

 

「ああああ!!」

 

彼は両手をテーブルに叩きつけ、吠えた。

 

 

 

青葉も、1階ホールのベンチに座って考え込んでいた。

 

また、熱くなってしまいました。放っておくのが一番だとわかっているのに、

どうして、こんなことをしてしまったんでしょう。

彼が司令官だから?いいえ。多分、あの眼。

どうしてもあの眼が心に焼き付いて離れません。

彼は英雄になるしか愛を受ける方法がないと信じ切っています。

でも、そんなの間違いです。新聞記者としては誤りでも、人々を守る艦娘として、

青葉は彼に密着取材したいと思います……

 

 

 

 

 

──城戸鎮守府

 

 

「とりあえず、リュック取ってきたら蓮のところに行くから、ちょっと待ってて」

 

「わかりました」

 

桟橋で三日月と一旦別れた真司は執務室に行こうと本館に向かった。

 

シャアアア!!

 

すると、茂みから大きな影が飛び出し、真司を突き飛ばした。

 

「ぐわっ!」

 

転がりながら周囲を素早く見回す真司。すると、視線の先に異形の存在を見た。

鋼鉄の巨体にブルーのラインをあしらった二足歩行の虎を思わせるミラーモンスター。

両腕が巨大な鉤爪になっており、引き裂かれたらひとたまりもないだろう。

 

「くそっ!なんだよお前!」

 

真司もカードデッキを取り出し、噴水の水面にかざし、

 

「変身!」

 

仮面ライダー龍騎に変身した。ミラーモンスター出現に周辺で騒ぎが起きる。

とりあえず龍騎は噴水の水面に飛び込み、別のミラーワールドへ移動した。

虎のミラーモンスターも龍騎を追って左右反転した鎮守府に飛び込んできた。

そこで龍騎はカードを1枚ドロー、ドラグバイザーに装填。

 

『SWORD VENT』

 

ドラグセイバーを召喚した龍騎は謎のミラーモンスターに斬りかかる。

が、突然後ろから重い斬撃を受けて地面に叩きつけられた。

 

「があっ!!ご、ごほごほっ!!だ、誰だ……!」

 

龍騎は体をひねって後ろを見る。すると、目の前のミラーモンスターと同じく、

全身を鋼鉄のアーマーで覆い、各所にブルーのストライプを施したライダーがいた。

その手には先ほど龍騎を斬りつけた巨大な斧が握られている。

彼の名は仮面ライダータイガ。そして謎のミラーモンスターは

契約モンスター・デストワイルダー。

 

「はぁ…はぁ…君みたいな、英雄にふさわしくないライダーは、

消えるべきなんだ……!!」

 

タイガはなぜか極度に興奮した様子で答える。

 

「その声……お前、東條って奴だな!相互不干渉じゃなかったのかよ!?」

 

「それは、先生との約束でしょ、僕には関係ないかな……!」

 

「めちゃくちゃ言いやがって!」

 

ドラグブレードで今度はタイガに斬りつける龍騎。

しかし、タイガはその重厚な斧で受け止める。

そして、カードを1枚ドロー、そのまま斧の付け根を上にスライドさせ、

カードスロットをオープン。装填し、刃を下ろした。

武器にもバイザーにもなる斧・デストバイザーでカードの力を開放する。

 

『STRIKE VENT』

 

タイガの両腕にデストワイルダーのような巨大な鉤爪・デストクローが装備される。

 

「うわあああ!!」

 

雄叫びを上げてタイガは両腕の鉤爪で激しい斬撃を繰り返す。

龍騎も剣でなんとか切り払うが、二刀流の手数をさばき切れず、

胸に一撃食らってしまった。斬りつけられたアーマーが火花を散らし、

龍騎は宙に放り出される。

 

「うう……」

 

立ち上がろうとする龍騎。だが、タイガはその隙を逃さず、

また背中に鉤爪の鋭い一撃を食らわせた。

 

「げはああっ!!」

 

その衝撃に龍騎は地を這うことしかできない。

なんとか起死回生を図ろうとカードをドロー、装填。

 

『FINAL VENT』

 

ファイナルベントで逆転を狙う龍騎。

カードが発動すると、異次元からドラグレッダーが龍騎の元へ飛来した。

ドラゴンライダーキックの構えを取る龍騎。だが、それを見たタイガが、

デストクローを投げ捨て、デストバイザーを拾う。

そして、カードをドロー、斧のカードスロットに装填。刃を下ろす。

 

『FREESE VENT』

 

すると、システム音声と同時に、ドラグレッダーが凍りつき、完全に動きを止められた。

突然の現象に戸惑う龍騎。

ファイナルベントの体制に入り、無防備になっていた龍騎にタイガが忍び寄る。

そして、彼が気づいた瞬間、またデストバイザーの重い一撃を食らい、

直後に下から斬り上げを叩きつけられた。

大斧の連撃を受けた龍騎は、後ろに吹っ飛ばされ、完全に気を失った。

 

「あははは、はぁ……」

 

不気味な笑い声を上げ、仰向けに倒れる龍騎に歩み寄るタイガ。

そして、両手に持った斧を振り上げる。

そのまま一気に、龍騎の首を両断……しようとした。

しかし、何者かに柄を掴まれ、刃は止まった。

 

 

「もう十分でしょう、命を奪う必要は、ありません」

 

 

変身した香川、オルタナティブ・ゼロだった。驚いたタイガが息を荒くしながら問う。

 

「どうしてですか……!」

 

「言ったはずですよ。

私たちはライダーバトルに乗るためにここに来たわけではありません」

 

「でも!彼はライダーにふさわしくない!

英雄になれない奴がコアミラー破壊に貢献できるわけないじゃないですか!

他のライダー達と僕らを邪魔しにくるかもしれない。だったらここで……!」

 

「東條君、君は少し命を軽視しすぎている。私の執務室でゆっくり話をしましょう。

とにかく、彼は外に出して我々は戻りますよ」

 

「はい……」

 

タイガとオルタナティブは龍騎を担いでミラーワールドを脱出し、鎮守府に帰還。

変身が解け、気絶したままの真司を置いて去っていった。

 

 

 

 

 

──医務室

 

 

ぼやける視界が徐々にはっきりしてくる。

しばらくして真司は医務室のベッドに寝かされていることに気づいた。

そばにいた三日月が必死に声をかけてくる。

 

「真司さん!しっかりしてください!まだ痛む所はないですか?」

 

「あれ、三日月ちゃん。どうして俺……」

 

「あんまり帰りが遅いから迎えに行ったら、広場で倒れてたんですよ。

一体何があったんですか!?」

 

すると、もう一人別の声が聞こえてきた。

 

「ようやく意識が戻ったと思ったら、また医務室に逆戻りとは、

よほど病院が好きらしいな」

 

ぶらぶらと近寄ってくる蓮だった。

 

「念のため秋山提督に来ていただいたんです。

敵襲ならどなたかに守っていただかないと……」

 

「敵襲……?そうだ、そうだよ!あの東條って奴にいきなり不意打ち食らってさ、

あいつとんでもない奴だよ!今度あったら覚えとけってんだ!」

 

「油断してるお前が悪い。三日月に聞いたが、そもそもお前、

俺に会いに来ようとしてたそうだが、何の用だったんだ」

 

「ああ!それだよそれ!新聞読んだ?謎の新ライダーのとこ!」

 

「コアミラーとかいうわけのわからん物のことか」

 

「それそれ!それを壊すとミラーワールドを閉じられるって話だけど、

正直ここじゃ手がかりなくてさ。一度一緒に現実世界に戻ろうかと思ったんだよ」

 

「そういうことか。なるほど、確かに今ミラーワールドを閉じられると何かと不都合だ。

契約中のミラーモンスターもいなくなり、ライダーバトルが続行不可能になる。

奴らより先に見つけ出して確保する必要がある」

 

「いや、なんでそういう考え方になるんだよ!

……そうだ、まだ、蓮に言ってなかったっけ。優衣ちゃんのこと」

 

「優衣?優衣に何があった」

 

真司は、オーディンと戦う直前に一度現実世界に戻っていたとき出来事を話した。

突然優衣の体が激しく粒子化したこと。神崎が駆けつけると治まったこと。

401号室の資料に同封されていたネガの写真を手に入れ、

現在、OREジャーナルの助けを借りて調査中であること。

 

「……なぜもっと早く言わなかった」

 

「仕方ないだろ!その後……

オーディンにボコボコにされて意識不明だったし、いろいろ変な事件あったし」

 

「変な事件?お前が鎮守府ごと音信不通になったことか」

 

「それだよ!異世界から来たライダーと知り合いになったんだけど、

なんかそいつの命狙ってるおっさんがいて、そいつも異世界のライダー召喚して、

結構マズいことになってたんだけど、

別のライダーやその異世界ライダーの凄いアイテムで敵、全部倒してなんとかなった」

 

「そいつらも新しいライダーじゃなかったのか」

 

「違う違う!カードデッキじゃなくて、異世界のライダーに変身したり、

召喚する武器で戦ってた。

そいつらが言うには、俺達が生きてる世界は他にいくつもあるらしいよ。

もう、よその世界に行っちゃったけど」

 

「聞けば聞くほど怪しい話だ。殴られすぎて頭がおかしくなったんじゃないのか?」

 

「違うって!三日月ちゃんも言ってやってよ」

 

「ああ、秋山提督、本当なんです。

あの日私たちは本当に異世界からの攻撃を受けていたんです」

 

「なるほど、なら本当なんだろう。どっちにしろ、もういないならアテにもできん」

 

「このやろ……三日月ちゃんの言うことはあっさり信じやがって!

まあいいや、とにかく一旦戻ろう!編集部のみんなが情報掴んでるかもしれないし」

 

「なら行くぞ。早くしろ」

 

「え、あ、はい!」

 

「ちょっと待てって着替えるから!三日月ちゃんも置いてかないで!」

 

真司は慌てて患者服から私服に着替えると、執務室に向かった。

 

 

 

階段を駆け上り、ドアを開けると蓮と三日月が待っていた。

 

「遅いぞ。あと10秒で来なかったら放っていこうと思っていた」

 

「待てって言ったじゃん、三日月ちゃんもひどいよ……」

 

「あ、ごめんなさい真司さん……つい秋山提督に釣られちゃって」

 

「何をモタモタしている。本当に置いていくぞ。

手塚と悪徳弁護士には電話で確認を取った。しばらく現実世界に戻る予定はないらしい」

 

「ああ、サンキュ!……じゃあ、三日月ちゃん。

2,3日戻らないと思うけど後のこと頼むね」

 

「はい、お気をつけて!」

 

三日月に見送られ、真司と蓮は01ゲートをくぐって現実世界へと戻っていった。

 

 

 

 

 

──TEA 花鶏

 

 

ヴォン!

 

久方ぶりに現実世界に戻った蓮と真司。

階下が何やら騒がしいが、とりあえず無視してやるべき事を相談する。

 

「とにかく俺は、編集長に連絡取って、何か新しい情報がないか聞いてみる」

 

「俺は優衣に着いておく。俺達が戻ったことで神崎が何か仕掛けてくるかもしれん」

 

「わかった。何かわかったら連絡する」

 

 

 

そして真司は階段を降り、中国人観光客でごった返す店内をすり抜けていった。

それを見た沙奈子が悲鳴を上げる。

 

「あ、真ちゃん!今日は店に居てちょうだい!……ああ、ここは持ち込み禁止!」

 

ガヤガヤとやかましく好き放題する中国人に辟易する沙奈子。

ツアーガイドもやる気なくカウンターで居眠りしている。

 

「ノーイングリッシュだから!ジャパニーズオンリー!……ええい、もうやめだぃ!」

 

ふてくされて床に座り込んだ沙奈子が声を上げると店内が静まり返る。

 

「こんな店、もうやめだぃ!!」

 

沙奈子がヤケを起こして布巾を放り投げた。

 

 

 

 

 

──OREジャーナル編集部

 

ルルルルル……

 

「はい、OREジャーナル!」

 

電話に出たのは大久保だった。

 

“編集長、俺です。真司です……”

 

「おま、……あ、いやあ、いつもお世話になっております!」

 

慌てて口調を変える大久保。それを怪しげな目で見つめる島田。

 

「その後どうですか、お変わりなく?」

 

“はい、おかげさまで、どうにかなりそうです。本当に、すみません”

 

「そうですかそうですか!そりゃあよかった!どうですか?今夜あたり一杯」

 

“はい。どこかでお話したいんですけど、会えませんか?”

 

「じゃあ、6時に駅前の“呑み処マタドール”で。ええ、いつもの焼肉屋です」

 

“ありがとうございます。ところで、令子さんは、何か言ってましたか”

 

「あ、桃井は今、海外出張中でして!はい、詳しくはお会いした時に。失礼します」

 

相手が切るのを待って受話器を置く。やっぱり島田がじっと見ている。

妙なところで勘の鋭い島田を警戒してごまかす大久保。

 

「あー、島田。今日、得意先と接待だ。

俺、定時に帰るからお前も早めに仕事切り上げろ」

 

「はい……」

 

そして、大久保は急ぎでない仕事を明日に回し、

必要最低限の仕事の処理に取り掛かった。納期の迫った仕事を全て片付けた頃には、

もう5時を回っていた。終業時刻のアラームが鳴る。

大久保はハンガーに掛けてあった上着を羽織ると、島田に声をかける。

 

「おい、島田。今日は終わりだ。鍵閉めるから出てくれ」

 

「はい~」

 

ガチャッ

 

窓の鍵、電気の消し忘れを確認し、島田がオフィスから出ると、

大久保はドア右上のパネルを開け、中のスイッチを押してドアを施錠した。

 

「じゃあ、島田。お疲れ」

 

「お疲れ様でした~」

 

島田と別れた大久保は真司との待ち合わせ場所へ向かった。

 

 

 

 

 

──呑み処マタドール

 

 

店内に威勢のいい店員の声が響き、あちこちで肉の焼ける音が弾け、

火の着いた脂が燃え上がる。

大久保はトングで牛カルビをひっくり返しながら一人ぼやく。

 

「正直うちもよぉ、この商売長くは続かねえんじゃねえかって思うわけよ。

そろそろ新しいビジネス考えねえと生き残れないと……って聞いてんのかよ真司」

 

目の前でぼーっとしている真司。大久保はため息をつくと改めて問う。

 

「……お前さあ、本当になにやってんだ?

ヤバいことに首突っ込んでんじゃねえだろうな」

 

「すみません……」

 

神妙に答える真司の顔にはガーゼや絆創膏。首からは包帯が覗いている。

完治したとは言え、傷跡は簡単には消えないし、タイガとの戦闘で付いた生傷もある。

 

「確かにやることはやっとけつったけどよぉ、

“歌舞伎町の路地裏で身元不明の遺体発見”なんてニュースなんか勘弁だぞ。ほら」

 

「どうも……」

 

大久保は真司のグラスにビールを注ぐ。

真司は一気に飲み干すと、今度は大久保のグラスに注いだ。

 

「おっとと、サンキュ。……で、これが例のブツだ。令子から預かっといたぞ」

 

大久保はカバンから大きな封筒を取り出し、真司に渡した。

優衣から受け取った洋館の写真と、住所のメモ。そして不動産登記簿の写し。

 

「凄い……ありがとうございます!」

 

「帰ったら令子にも礼言っとけよ?」

 

「はい!」

 

さっそく真司は書類に目を通す。この住所にこの屋敷がある。

ここに何があるのかはわからないけど、

優衣ちゃんに起こってることの手がかりがあるのは間違いない!

で、この登記簿の写しは……なんかごちゃごちゃしててよくわかんないな。

 

ええと、重要そうなのが、“所有者、神崎**”。

 

神崎!?誰だこの人!多分優衣ちゃんのお父さんか親戚か誰かなんだろうけど、

とにかく神崎士郎が関わってるのは間違いない!

401号室の資料からこの写真が出てきたんだから!

明日、優衣ちゃん連れて蓮と見に行こう!

 

ただならぬ様子で資料を読む真司を、大久保は内心不安な気持ちで見ていた。

 

 

 

「それじゃあ、ごちそうさまでした!」

 

「おう!っていうかお前全然食ってなかったろ!じゃあな!」

 

大久保は駅前で真司と別れると、自分も家路に着くため駅に向かった。

 

ピロロロロ!

 

携帯が鳴ると大久保は本体を開いて通話ボタンを押した。

 

「はい、大久保です」

 

“あ、編集長。桃井です”

 

「おお令子か、どうだった」

 

“編集長。連絡できなくてすみません、でも大ネタ拾いました”

 

「本当かよ!」

 

“はい。神崎士郎の研究資料手に入れました。それと、彼の死亡診断書のコピー”

 

「ええ!?マジかよ……じゃあ、あのビデオに映ってた神崎士郎は死人ってことか?」

 

“これを見る限りそうとしか……”

 

「ああくそ、惜しいな。今ちょうど真司と会ってたところなのに」

 

“ええっ!?城戸君、また会社に来てたんですか?”

 

「いや、違う違う。ちょっと帰りに待ち合わせして今の具合聞いてみただけだ。

例の資料も渡しといたぞ」

 

“はぁ……そうですか。ありがとうございます”

 

「とにかく、明日詳しく聞かせてくれ」

 

“わかりました”

 

「じゃあな、お疲れ。切るぞ」

 

大久保は携帯を切る。以前真司が会社に戻ってきた時、

神崎士郎の事を知っていたようだった。だが、令子の持ち帰った資料によると、

真司は既に死んでいるはずの神崎士郎を追っていることになる。

一体何がどうなってんだ?……真司、死ぬなよ。

 

 

 

 

 

翌日。

花鶏の前で真司達3人が出発の準備を始めていた。

蓮と優衣がシャドウスラッシャーに2人乗りし、

真司はズーマーで2人を追いかけることになっていた。

 

「真司君、ありがとう。あの屋敷に行けば、きっと何かわかる」

 

「俺じゃないよ。令子さんのおかげだよ」

 

「そうだ。こいつは何もしてない」

 

「うるせえな!原付じゃ40km/hくらいが限界だから、ゆっくり走ってくれよ」

 

「知らん。住所は知ってるんだろう。後から追いかけてこい」

 

「もう蓮ったら……先に着いたら待ってるから。じゃあ、行こう」

 

そして3人は謎の屋敷へ向けて出発した。

都心からシャドウスラッシャーで約30分、ズーマーで1時間超のところに

その屋敷はあった。時々人の手が入っているのだろうか。

外から見る限り古くはあるが汚れてはいない。

一足先に着いた蓮と優衣は屋敷の様子を眺めていた。

鋼鉄製の門扉があるが、中に入るのは真司を待ってからにした。

 

「どうだ、優衣。なにか思い出したか」

 

「わからない。でも、なんだか見覚えはあるような、そんな気はする……」

 

その時、ズーマーのエンジンが悲鳴を上げながら2人の元へ走ってきた。

真司はズーマーを路肩に止めると、2人に合流した。

 

「ごめん、お待たせ!」

 

「遅いぞ。何時間待たせる気だ」

 

「まぁまぁ、しょうがないじゃない。真司君原付なんだし」

 

「いっそ車の免許でも取ったらどうだ。もういい、入るぞ」

 

「それじゃあ、行こっか」

 

優衣は鉄の門を軽く押してみた。

鍵がかかっていない扉はそれだけでキィ……と音を立てて開いた。

敷地内に入る3人。謎の洋館を前にし、皆、少なからず緊張していた。

神崎士郎、ミラーワールド、そして優衣。全ての答えがここにあるのかもしれない。

期待と不安を胸に、優衣は玄関のドアノブに手をかけた。

 

 

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