【クロス】艦隊これくしょん×仮面ライダー龍騎【完結済】 作:焼き鳥タレ派
「う~ん、大和のフルコースは絶品だね。吾郎ちゃんのフレンチにも引けを取らないよ」
優雅な手つきでナイフとフォークを使い、ローストビーフを口に運ぶ北岡。
彼は執務室に持ち込んだ食事用テーブルで、
そばに控えるコック姿の戦艦大和の手料理に舌鼓を打っていた。
室内には、これまた彼が注文した蓄音機からクラシック音楽が流れる。
これほどの贅沢が許されているのは、もちろん彼が
提督権限を乱用するイレギュラーだからなどではない。それに見合った戦果を上げているからだ。
卓越した頭脳で現有戦力を最大限に活かし、最小の損耗で様々な海域の解放を達成した彼は、
既に優秀な提督として艦娘達の信頼を得ていた。
「ふふ。ありがとうございます。お食事後にはこちらを」
大和はワイングラスに飲み物を注ぎ、テーブルに置いた。
丁度コースを食べ終えた北岡は、口を拭いてグラスを手に取り、一口含む。
「!? ね、ねぇ大和。これってデザートワイン?」
思わぬ甘みに一瞬パニックになる。
「いいえ。大和特製のラムネです。さっき艤装内で瓶詰めしたばかりの作りたてなんです!」
「あ、ああ、なるほどね。乾杯……」
苦笑いして懐かしい味を飲み込む北岡。
そう言えば、第二次大戦で造られた大和にもラムネ工場があったって聞いたことがある。
ワインに関しては吾郎ちゃんに軍配かな。
今度帰ったら、とっておきのロマネを開けてもらおう。
吾郎ちゃんにも来て欲しかったんだけど、ライダー以外は入れないみたいなんだよね。
まぁ、そうなると、この変な現象はやっぱり神崎の仕業で……
そのうち他のライダーも来るってことになるのかな。
それにしても、いきなりゲームの中に引きずり込まれた時にはどうなることかと思ったけど、
リアルな世界として生きるにはなかなか楽しいじゃない。
まだここに来て半月足らずだけど、最近のゲームも馬鹿にできないね。
「このところ不思議な出来事がよく起きてますね~」
食器を片付けながら大和が世間話を始めた。ネクタイを直しながら北岡が尋ねる。
「不思議なこと?」
「なんでも他の鎮守府に提督以外の人間のプレーヤーさんが続々といらしているようで」
「……ふ~ん。ちなみに、どんなやつなの?」
「皆さん不思議な鎧を着て自ら深海棲艦と戦ってらっしゃるとか。
龍を従えて戦う赤い戦士、黒い鎧を着た騎士のような方、あと、もうお一方。
その方は普通の人らしいんですが、イレギュラーをやっつけたそうなんですよ~
頼れる方ばかりですね」
大和は浅倉のイレギュラー殺害については良い話しか聞かされていないようだった。
艦娘達の不安を煽らないためのこの鎮守府の長門による情報統制だろう。そして北岡は考える。
……城戸と秋山。やっぱりもうライダーバトルのメンツが集まりだしてるってことか。
他の1人は知らないが、イレギュラーってなんだ?
「なるほど。面白い人達だね。ところで、イレギュラーってなんなの?」
「ああ……。提督は現実のお仕事も忙しいから、ご存じないのも無理はありませんね」
やはり北岡の執務室にも01ゲートが浮かんでいる。
大和は若干表情を悲しげなものにして、イレギュラーについて説明する。
「……そんな連中がいたなんてね。
もう少し俺が早く来てたら、そいつらを再起不能にできてたんだけど。
大体ネットゲーマーなんてろくでもないやつばっかりだし」
イレギュラーの横暴について聞いた北岡は、偏見混じりの見解を述べる。
「あまり危険なことはなさらないでくださいね。
提督はこの鎮守府の頭脳なんですから、艦隊戦での殴り合いなら私達に任せてください!」
大和は腕を曲げて力こぶをつくるようなジェスチャーをした。
……さて、俺がライダーだってことはいつ明かすかな。それともこのまま伏せとくか。
考えていると、ドアのノックが聞こえた。
“飛鷹だけど。入るわよ提督”
「うん。もう食べ終わったし、入ってよ」
北岡の秘書艦、軽空母飛鷹が入室した。ロングヘアが目を引く艦娘。
白を基調とした、赤い縁のスーツと和服をかけ合わせたような上着と、
真っ赤なロングスカートが特徴的。
「それじゃあ、私は失礼しますね」
「うん、ごちそうさま」
飛鷹と入れ替わるように大和が部屋から出ていった。
「ほら、これに着替えて」
飛鷹は提督用軍服一式をテーブルに置いた。北岡は、“またか”と額に手を当てる。
「前にも言ったじゃん。俺の制服はこのスーツ。いわばビジネスマンの鎧だよ?」
「駄目よ。この純白の軍服こそ提督の証、鎮守府の長を象徴する旗印なんだから。
今日という今日は着てもらうわよ」
「それは無理だ。軍服を着て弁護士バッジ付けるなんて、完全に文民統制の原理と矛盾してる。
とにかく着る気はないからしまってよ」
「はぁ……。どうしてこの服は人気がないのかしら。他の提督方も着てくださらないっていうし」
「堅苦しいんだよとにかく。Tシャツとか作れば?“月月火水木金金”とか書いてさ」
「できるわけないじゃない、そんなこと!観光地のお土産じゃあるまいし!」
「そんなことより北方海域の海図を出してよ。あの戦艦だらけの海域をなんとかしないと。
さぁて、何が必要で何が足りないのか検討しなきゃ……」
「もう、すぐそうやって仕事に逃げるんだから。はいどうぞ、提督!」
飛鷹は呆れつつテーブルに海図を広げた。
うーん、やっぱり奴らと渡り合うには総合力バランスより、
攻撃・防御を突出させたほうがいいかな。資材を惜しまずこちらも戦艦を……と
北岡は思考を走らせる。
そんな彼の姿を見て飛鷹は思う。
本当、提督としては頼りになるんだけど、ちょっと
ワガママで子供っぽいところが玉に瑕なのよね。
そんな彼女の気苦労などどこ吹く風で、北岡はゆったりと海図を眺めていた。
北アメリカ某所
夜。モーテルの1件すら見えない広い荒野に、戦闘ヘリ、戦車、そして銃器で武装した兵士
一個大隊が整列していた。一際目を引くのは、荷台が巨大モニタと化したトラックだ。
モニタの前に指揮官らしき体格のいい白人の男が立っている。
荒れ地に似つかわしくない上等なスーツに、ブロンドと青い瞳。
彼は衛星電話で何者かに電話を掛けた。相手も待っていたのだろう、1コールで繋がった。
ブロンドの男は流暢な日本語で話しだした。
「ハロー?プロフェッサー。コチラノ、ジュンビハ、オーケーデスヨ」
“こちらも入金を確認しました。では、今から送付するコマンドを連続して実行してください。
まだ確実な接続方法ではありませんが、10000回に1回程度の確率で成功するはずです”
「ノープロブレム。PCナラ、アットイウマ。
……ネンノタメノ、カクニンデスガ、オタガイ、“シンライ”ヲ、ダイジニシタイ、モノデスネ」
“ご安心くださいミスター。私も裏組織相手に詐欺を働くほど、愚かではありませんよ。
妻も子供もいる身なのでね。成功率はともかく、
そのプログラムは必ず例のポイントにアクセスするようになっています”
「オー!ソレハ、スバラシイ!ボクタチハ、サッソク、シュッパツシマス。デハマタ」
“それでは、よい旅を”
そこで通話は切れる。ブロンドの男はヘリに乗り込むと、トラックの兵士に無線で指示を出した。
「おい、例のプログラムは届いたか?」
“はい。今、ダウンロードが完了したところです”
「起動しろ」
「はっ」
トラックの乗務員がノートパソコンを操作すると、荷台のモニタにも同じ画面が大写しになる。
>MWS.exe is running...failed
>MWS.exe is running...failed
>MWS.exe is running...failed……
コマンドプロンプトに同じメッセージが高速で流れていく。黙って見守るブロンドの男。
そして待つこと数分、画面に変化が現れる。
>MWS.exe is running...OK Now_Accecing
「Yes!」
思わず声を上げる男。何しろこの先には未知のテクノロジーが待っているのだ。
地味な武器の横流しとは比べ物にならないビジネスチャンスだ。
コマンドプロンプトがなおも複雑な処理を流していると、徐々に周辺の空間が揺らぎ始めた。
兵士達からどよめきが上がる。間もなく転送が始まる。男は総員に無線で連絡。
「総員に告ぐ、落ち着いて作戦通り事に当たれ。転送終了後は私の指示を待て」
“ラジャー”
返答が返ってくると同時に、巨大モニタから波紋のように放たれる空間のゆらぎが強まり、
やがて一個大隊のヘリ、戦車、兵士全てを飲み込んでいった。
Login No.<不正なアクセスを検出しました_管理者にお問い合わせlhg;>
暗闇に0と1が浮かぶ不思議な空間を抜けると、まず真っ白な洋館が目に飛び込んできた。
右手は赤レンガの巨大な倉庫のような施設。他にも生活スペースと思しき建物がある。
地上では、我々の姿を見て、カンムスとやらが騒いでいる。今はそんなことはどうでもいい。
ここの代表と話をしなければ。
「ここが、未来の世界……。ヘリを降ろせ。私が降りている間に陣形を整えておくように」
「ラジャー」
着陸が終わると、ヘリから降りた男はゆっくりと洋館に向かって歩き出した。
司令官がいるとするなら、あの立派な建物である可能性が高いし、
いなくても誰かしらいるだろう、そいつから聞き出せる
『侵入者に告ぐ、そこで止まれ!止まらなければ撃つぞ!止まれ、聞こえないのか!』
鎮守府全体に設置された警報用スピーカーから長門の声が響くが、男は歩みを止めようとしない。
通りの角から、艦娘達が現れ、行く手をふさぎ、機銃や砲を男に向けた。
「動かないで!」
「貴方は提督じゃない、不法侵入者!やろうと思えば攻撃は可能なんですよ!」
>ヘーイ!ここからは英語が苦手なみんなのために、帰国子女の私が同時通訳するヨー! 金剛
「ふむ。撃つのは構わないけど、君達のコマンダーにご迷惑がかかると思うよ。
それに、場合によっては、彼に大きな利益をもたらすことだって出来るんだ。
僕達は話し合いに来ただけだ。本当だよ」
「嘘!じゃあ、あの戦車や兵隊は何!?」
「話し合いは時として、喜ばしくない結論に達することもある。そんな時のための自衛手段だよ」
「要するに、言うことを聞かないと殺すってことでしょ!?私達にあんなものが……」
──待った。みんな、彼をお通しして
騒ぎを聞きつけ洋館から出てきた北岡が、艦娘達を止めた。
皆、男を睨みながらしぶしぶ道を開ける。
執務室
北岡は侵入者の男を執務室に招き入れた。
そして、対面式ソファで向かい合い、互いに自己紹介を始めた。北岡のそばに飛鷹が立つ。
「……はじめまして、私は北岡秀一。この鎮守府の提督。現実世界では弁護士です」
「ナイストゥーミーチュー、Mr.北岡。お目にかかれて光栄ですよ。
私は、“Sons of Daidalos”北アメリカ支部総帥のデイビッド・E・アーカンソーです」
「北岡で結構ですよ。で、今日は裏組織の幹部が
わざわざゲームの中までどういういったご用件で?」
「裏組織ですって!?」
飛鷹が驚く。鎮守府の外、つまり現実世界をろくに知らない彼女が、
いきなり普通に生きている者なら関わることのない存在を目の前にしたのだから、
無理もないだろう。
「Sons of Daidalos(ダイダロスの子ら)。
世界中のあらゆる紛争地域や、金はあっても技術がない国に、
様々な輸出入禁止の軍事兵器を売りさばいている世界規模のシンジケート」
「オー!知っててくれたとは嬉しいよ。
そう、必要としている人に、必要なものを提供するのが僕達の仕事。
もちろん、それなりの報酬はもらうけど」
「それってつまり、死の商人じゃない!戦火を膨らませ、戦争にさらに戦争を呼ぶ悪党じゃない!
提督、やっぱり戦うべきよ!」
「ノーノー、お嬢さん、それは原因と結果を取り違えてるよ。
僕達がいるから戦争が起こるんじゃない。戦争したい人がいるから僕達がいるんだよ」
「飛鷹、いいから。確かに彼の言うことにも一理ある。買うやつがいるから売るやつがいる。
……だけど、それと私達に何の関係が?」
「簡潔に言うと、僕達は良きビジネスパートナーになれると思うんですよ。
北岡は僕達にこの世界に関する情報、カンムスという存在の詳しい身体的特徴、
特に現実とこの世界に行き来する方法を教えてほしい。あなたは知っているかな?
このゲームのデータは2013年に存在しているんです。
つまり、あなたは現実とゲームを往復する時にタイムトラベルをしているんですよ。
そう、このゲームはタイムマシンの開発に繋がる可能性を秘めている。
そして我々はあなたの口座に悪くない報酬を振り込む」
2013年!?初めて知った事実に驚く北岡だが、ポーカーフェイスで切り返す。
「なるほど?確かにあれを応用すれば、そういったことも可能かもしれませんね。
しかし、残念ですが、ご協力はできかねます。
私とて、この世界を完全に把握しているわけではないし、
タイムマシンについても、決して現実的とはいえない。
どこか一国がそんなワイルドカードを持っていたら、世界のパワーバランス、いや、
人類の歴史そのものが崩壊する。
最後に……。艦娘の特徴ですが、それはつまり、
外科的手術で体組成を見せろ、ということですよね。
大事な部下をそんな目に合わせることは、できませんよ」
飛鷹は何も言わないが、ずっとアーカンソーを睨んでいる。
「ご心配には及びません!僕達はタイムトラベル技術を一国で独占するつもりなどありませんよ。
アメリカを始め、ロシア、中国、ヨーロッパ各国に公平に分配しようと考えています。
よく考えてください。これは核に代わる“安全な”戦争抑止力になるんですよ。
カンムスの方に関しては……。少々気の毒だけど、文明の進化のためにはやむを得ない犠牲です。
それに、言ってしまえば彼女達はデータの塊。売り渡した所で、
あなたは今まで通りクリーンな人間でいられる。
そう、僕達は、あくまで、平和主義者なんですよ」
それを聞いて飛鷹が激怒する。そして北岡も心を決めた。
「くっ……!!黙って聞いていれば勝手なことを!
やっぱり航空戦なら私に任せて、あの妙な航空機を私の烈風で!」
「待ちなよ飛鷹!」
「どうして止めるのよ!?」
「そのヘリ、AH-64アパッチっていうんだけど、両ウィングに付いてる武装を見てごらん」
窓の外を見ると、ヘリが3基ホバリングしている。
どの機も、各ウィングにヘルファイア対戦車ミサイル4発、そして、
蜂の巣のようなポッドにハイドラ70ロケット弾が19発装填されている。
更に、前方下部にはM230機関砲が搭載されている。
「あれ、対戦車用とは言え最新鋭の兵器なんだよね。
第二次大戦中の艦艇を元に生まれたみんなが食らったら、多分怪我じゃ済まない。
それに、いくら君の烈風が強力でも、
恐ろしい威力と発射レートを誇るあの機関砲には太刀打ちできない」
「グレイト!あなた本当に物知りです!だからこそ、本当に残念。
良いビジネスパートナーになれると思ったんですが……」
アーカンソーが左脇のホルスターから回転式拳銃を取り出し、北岡に向けた。
思わず飛鷹の血の気が引く。
「!?」
「……音楽を掛けたいんだけど」
だが、北岡はゆっくりと立ち上がり、蓄音機に近寄った。
「オーケー。でも妙なことはしないでください。私も最期の時を邪魔したくはありません」
北岡は黙って蓄音機にレコードをセットし、ゼンマイを巻き、そっと針を置いた。
ゆったりと、静かで、そして悲しげな曲が流れ出した。
“Why does the sun go on shining? Why does the sea rush to shore?”
(なぜ太陽は輝き続けるのかしら。なぜ波は打ち寄せるのかしら)
「Skeeter Davis……“The End of The World”。名曲ですね。僕も好きだよ」
“Don't they know it's the end of the world? It ended when I lost your love.”
(皆は世界が終わったことを知らないのかしら。あなたの愛を失った時に)
歌の流れる中、北岡はクローゼット近くの姿見の前に立ち、
ネクタイを締め直し、スーツを軽く手で払う。こんなところかな。
「フム、最期の瞬間まで身なりに気を遣うとは、あなたビジネスマンの鏡です。
だからこそ惜しい、本当に惜しい」
その時、丁度曲が終わり、レコードがゆっくりと回転を止めた。
「素敵な歌も終わり。さて、日本ではこういうものを“冥土の土産”というらしいね」
「そう。これは、あなた方への、レクイエムですよ」
「何っ?」
北岡は答えず、さっとスーツからカードデッキを抜き取り、姿見にかざした。
すると、姿見と現実の北岡の腰にベルトが実体化。その時、北岡の真後ろに神崎が現れた。
“少しだけ手を貸してやる。さっさとイレギュラーを始末しろ”
それだけを言うと、さっと姿を消した。
北岡は驚く様子を見せず、両腕を一瞬クロスすると、曲げた右腕を立て、左腕を腰に添える。
「変身!」
北岡の体に3体の光の鏡像が重なると、グリーンのスーツに
ロボットを思わせる重厚なメタルアーマーを装備した、仮面ライダーゾルダが現れた。
「なんだと!」
「うそ、提督もライダーだったの!?」
「くそっ!!」
アーカンソーが44マグナムをゾルダに2発撃った。
狭い室内を揺さぶるような銃声がこだまするが、
大口径のリボルバーもライダーの装甲には効果がなかった。
「シィット!」
アーカンソーは慌てて執務室から飛び出し、外に待機させた部隊の元へ戻っていった。
「さて、イレギュラーハントと行きますか」
外に出ようとするゾルダに飛鷹が付いていき、文句をぶつける。
「ちょっと、どうして黙ってたのよ!とにかく私も戦うから!」
「後、後。さっきも言ったけど、ヘリに近づいちゃ駄目だよ」
「はいはい、わかってますー!」
ゾルダが大きく音を立てつつ1階の出入り口のドアを蹴破ると、
既に部隊が戦闘態勢に入り、アサルトライフルを構えた兵士が大勢なだれ込んで来ていた。
ゾルダの正面に10人の兵士が隊列を組んで立ちふさがった。
「総員攻撃開始!ファイア!」
隊長格らしき兵士が叫ぶと、全員がアサルトライフルを発砲。
無数の銃弾がゾルダに雨あられの如く叩きつけられるが、
やはり通常兵器でライダーのアーマーを傷つけることはできなかった。
「な、なんだあいつは!?」
「RPG!RPGだ!」
さて、どうしようかなぁ。まだカードを使うほどの敵ではないけど……!?
その時、部隊後方のアパッチが翼の大きな回転音を響かせ離陸した。
同時に、ヘルファイアを一発ゾルダに向けて発射。すかさずゾルダはカードを1枚ドロー。
銃型バイザー、マグナバイザーのマガジンに装填。スロットを押上げた。
『GUARD VENT』
カード発動と同時にヘルファイアが着弾。大爆発を起こす。が、ゾルダの前方を覆い隠すような、
何かの胴体らしき巨大なアーマーが現れ、衝撃からゾルダを守った。すかさずゾルダも反撃。
銃型武器にもなるマグナバイザーで、兵士達に連射。3人に命中し、彼らが悲鳴を上げる。
「ぐああ!!」
「飛鷹、走れ!」
「ええ!!」
ライダーバトル用の武器、マグナバイザーが命中した兵士は胴に穴が空き死亡。
瞬く間に0と1の集合体になり、宙に消えていった。
アパッチが走る飛鷹とゾルダに向け、なおもM230・30mmチェーンガンで追撃をかける。
全力で走った彼らの後を、小口径砲のように大きな銃弾が破壊していく。
本館の壁が大きく一直線上にえぐられる。
その時、ゾルダは兵士を乗せたトラックと戦車が宿舎の方へ向かっていくのを見た。
「飛鷹、君は宿舎を頼む!きっと駆逐艦の娘達が逃げ遅れてる筈だ!ヘリは俺が!」
「任せて!烈風、あの兵士達を追撃して!」
飛鷹がサッと滑走路が描かれた巻物を伸ばすと、その上に航空機型に描かれた式神を乗せる。
式神はみるみるうちに実体を伴い、高性能戦闘機、烈風に变化し、
宿舎に向かった兵士を追いかけていった。
そして、彼女自身も烈風を追いかけて宿舎へと走っていった。
それを確認したゾルダに、ヘリと戦車部隊が石畳を踏み潰しながら迫りくる。
ゾルダはカードをドロー、マグナバイザーにリロード。
『SHOOT VENT』
カードが発動すると、ゾルダの両腕に一門の大砲が現れた。
まずはデカブツに一発くれてやりますか!
ゾルダは広場に展開された戦車の1両に照準を合わせて、トリガーを引いた。
間近で稲妻が落下したかのような発砲音と共に大口径砲の実体弾が放たれ、
戦車に命中。一撃で爆破。
砲塔が宙を舞い、後にはキャタピラだけが戦車の面影を残す残骸が残された。
中から乗務員だったと思われる0と1の粒子が漏れている。
しかし、戦車はまだ何両もあるし、ヘリは3機とも健在。まだ戦いは始まったばかり……
だから嫌なんだよ、法律を守らない連中は!
その頃、飛鷹は息を切らせながら宿舎へと続く道を必死に走っていた。既に宿舎の方角から銃声が鳴り響いている。
やっと宿舎にたどり着くと、入り口の前でバリケードを築いた大和や他の重巡洋艦達が
兵士や戦車と睨み合っていた。
「私達にそんな銃は効きません!大人しく投降しなさい!」
古鷹が叫ぶ。そしてまだコック姿から着替えていなかった大和も続く。
「そうです!私の46cm砲なら、戦車が何台来ようと平気です!」
だが、兵士達は引く様子を見せない。
「お前達を殺す必要はない。だが、中の連中がこれに耐えられるか?」
兵士が大きな直方体の平気を肩に担いだ。M202ロケットランチャー。
四連装のロケット弾を発射する兵器である。
「まだ抵抗を続けるなら、こいつと戦車の大砲でその小屋をふっ飛ばす。
誰か一人くらいは頭が消し飛ぶかもしれんぞ」
「この……卑怯者!!」
どうしよう……これじゃ、烈風を連れてきた意味がないじゃない!
兵士はともかく、機銃弾で戦車を撃ち抜けるわけが!!
烈風は彼女の頭上を旋回しているが、その時、遠くの高台が一瞬光り、
遅れて飛んできた銃弾に1機が撃ち落とされた。
その後も、数秒おきに1機、また1機と撃ち落とされていく烈風。え、どうして!?
彼女は知らなかったが、既に一個大隊の兵士が鎮守府全体に配置され、
警戒にあたっていた航空機がスナイパーに狙撃されたのだ。飛鷹は歯噛みした。もう駄目、私に何ができるの……?
が、その時。彼女はなんとなく何処かから金属の反響音が聞こえてきたような気がした。
なにかしら。スピーカーの不調?と、彼女が不審に思った瞬間、凄まじい悲鳴が聞こえてきた。
艦娘ではなく、兵士達の。え、なに?飛鷹がまた視線を宿舎に向けると、
信じがたい光景が広がっていた。
「ギャアア!メーデー!メーデー!」
「撃て!総員攻撃態勢!」
見たこともない化け物が兵士に襲いかかっているのだ。
誰かの指示と同時に全員が怪物にアサルトライフルで応戦するが、
怪物は激しい銃撃を意にも介さず、バリバリと兵士をヘルメットごと頭から食っている。
断末魔の悲鳴を上げる兵士。飛鷹達は思わず目を背ける。
「撤退、撤退だ!」
「ヘリのところへ戻れ!」
兵士を乗せたトラックと戦車は食われ行く兵士を見捨てて、
急ハンドルで洋館の方へ戻っていった。
そして、呆気にとられていた飛鷹も、慌てて二本の指に式神を挟んで彼らの後を追う。
一方、ゾルダは苦戦を強いられていた。
ヘリ、戦車隊、無数の兵士を同時に相手にしなければならない。
それどころか、彼は洋館前広場で戦っていたが、この戦場、広いようで狭い。
大勢の敵に埋め尽くされていることもあるし、東側には弾薬類が貯蔵されている工廠がある。
そこに砲弾やミサイルが撃ち込まれたら、鎮守府全体が吹っ飛ぶ。
必然、洋館に向かって西側の限られたエリアでの乱戦を強いられていた。
マグナバイザーで群がる兵士を撃ち、戦車砲弾、ヘリのハイドラを回避しながらの反撃。
ヘリを撃ち落としたいが戦車を放っておけばまともに砲撃を食らう。
ゾルダの疲労はピークに達していた。
「くそっ、どうしてこんなにいるのかな……っとと!」
またも予期せぬ方向から戦車の砲撃が飛んできた。一体どこに潜んでた?
撃破しても撃破しても次から次へと湧いて出る。
「奴はもう虫の息だ。始末しろ」
ヘリに乗り込んだアーカンソーが総員に指示を出す。
だが、その時、彼の無線にあちこちから返信が殺到した。
「撤退、撤退します!」
「救援乞う!化け物が!!」
「RPGが効かねえ!来るなぁ!」
「ギャアア!!」
「どうした、何が起こっている?」
だが、いずれの無線もそこで途絶える。化け物?カンムスの反撃?
彼女達は人殺しに強い抵抗感を持っていると聞いていたが?まあいい。
兵員が戻り次第ここで迎え撃つ。
その時、ゾルダの両脇の道からフルスピードで戦車やトラックが疾走してきた。
そして慌ててヘリの真下に付く。
敵の増援か?と思ったが、それらの後を追うように両手に剣を持った怪物や、
頭部が大きな球体になったクラゲのような怪物が彼らに付いてきた。
……なるほど?“手を貸す”ってこういうことね。
「待たせたわね!」
その時、飛鷹がゾルダの横に飛び込んできた。
「今度こそ、役に立つから!」
「サンキュー、それじゃあ、2,3分、奴らを足止めしてくれないかな。
ゲームで言うところの必殺技があるんだけど、ちょっと発動に時間が掛かるんだよね」
「わかったわ!全機爆装!さあ、飛び立って!」
飛鷹は再び巻物を広げ、霊力を帯びた式神を滑らせた。
式神は爆弾を積んだ爆撃機に変化し、広場で混乱に陥っていた敵部隊に爆撃を始めた。
爆風を受けた敵兵が陣形を崩し、直撃を受けた戦車の砲身がひん曲がる。
M230機関砲に爆撃隊が次々撃墜されているが、まだ数はある!
とにかく提督のために時間を稼がなきゃ!飛鷹は次々と爆撃隊を放って行った。
そして、ゾルダはマグナバイザーに必殺のカードをリロード。
『FINAL VENT』
ゾルダの足元に水たまりのような波紋を放つ次元のゲートが開き、
そこからバッファローのような角を持つロボット型ミラーモンスター、
鋼の巨人マグナギガの姿がせり上がってきた。
そしてゾルダはマグナギガ背部の挿入口にマグナバイザーを差し込む。
「飛鷹!俺の後ろに下がれ!」
「ええ!」
飛鷹はジャンプして爆撃機の1機に片手でぶら下がり、ゾルダ後方に一瞬にして移動した。
「耳塞いでたほうがいいよ……。それじゃあ、これが、君達の最期だ」
ゾルダがマグナバイザーのトリガーを引くと、マグナギガの前装甲が開き、
内蔵されていた武装が解放され、ビーム砲にエネルギーが充填された。
「バイバイ」
その一言と同時に、全身のビーム砲、誘導ミサイル、大口径ガトリングガンが一斉発射され、
ゾルダにとどめを刺そうと集めっていた敵部隊に襲いかかった。
武装ヘリも、重戦車も、重装甲の兵士も、驚きのまま、大爆発と高エネルギーの圧倒的火力の前に
死体すら残さず0と1の粒子に分解されていく。
ゾルダのファイナルベント「エンドオブワールド」で、まさに敵の世界は終わりを告げた。
かろうじて1機のヘリが煙を上げながら巨大な01ゲートに逃げていったが、
あの様子では長くは保たないだろう。ヘリが逃げた後、01ゲートは消滅。
後に残されたのは、おそらく戦車やヘリだったと思われる鉄屑。
兵士はビーム砲の熱で痕跡すらとどめていなかった。
「ふぅ、なんとかなったかな」
変身を解いたゾルダは、額の汗を拭った。その時、スピーカーから長門の声が聞こえてきた。
『提督、偵察に当たっていた艦娘から連絡だ。艦娘は全員無事。
敵兵は撤退したか、正体不明の怪物に襲われ死亡。無事なら飛鷹に連絡を送らせて欲しい』
「だってさ。飛鷹、こっちも大丈夫。敵は全滅したって長門に伝えてよ」
「ええ」
飛鷹はメッセージを託した式神を作成司令室に飛ばした。そして、北岡の方に振り返る。
「ねえ、提督」
「なに?」
ゴチッ!と痛い音が細い指先から飛ぶ。彼女は北岡に強力なデコピンを放った。コツを掴んだ者から食らうデコピンはかなり痛い。
「痛ったあ!なにすんだよ飛鷹!」
北岡はたまらず悲鳴を上げたが、構うことなく飛鷹は問い詰める。
「どうして黙ってたのよ!貴方も仮面ライダーだってこと!」
「それはさあ、言う機会なかったっていうか、
言おう言おうと思ってたら今日になったっていうか……」
「私がどれだけヒヤヒヤしたと思ってるの!?あいつが銃を抜いたとき!」
「だから悪かったって。……しかしさあ」
北岡は周りを見回す。
「何よ」
「美しくないんだよ、このしっちゃかめっちゃかの状況!」
北岡は両腕で訴える。広場の石畳や庭木は戦車でバキバキに踏み潰され、
ヘリのミサイルや機関砲で洋館は半壊状態だ。
「何かと思えばそれ?“再起動”すればいいじゃない。あっという間に元通りよ」
「再起動?何それ」
「提督権限の1つ。この世界を構成するデータを読み込み直すの。
“提督権限、再起動実行”って宣言するの。そうすれば侵略者襲撃前の状態に戻せるわ」
「なにそれ聞いてないんだけど?」
「貴方もライダーだってこと隠してたでしょ?おあいこよ」
「それならデコピン1発分こっちが損なんだけど?」
「男なら細かいこと気にしないの。さぁ、早く。それとも今日からボロ屋で寝る?」
「わかったよ!提督権限、再起動実行」
少しやけっぱちに宣言すると、北岡の視界がブラックアウトし、
遠くに白い艦船のシルエットと“Now Loading”の文字が浮かんで見えた。
そして数秒立つと再び洋館の前に戻る。
そこには戦闘の後など微塵もなく、元の美しい白亜の邸宅が立っていた。
「……うわ、すっごいね、これ」
「すっごいね、じゃないでしょ!
提督には聞きたいこと、言いたいことが山ほどあるわ、ほら、早く来て!」
「痛たた!引っ張んないでって、歩くから!」
そして北岡は飛鷹に執務室へ連行されていった。
北アメリカ某所手前
「機体、コントロール効きません!!」
「なんとか体勢を立て直せ!!」
エンドオブワールドで致命傷を負ったアーカンソーの搭乗するヘリは、
01ゲートの中で横回転していた。
そして、光に包まれ、荒野に放り出されたヘリは、地面に激突し、爆発した。
「おい、あれは!?」
「総帥の機体だ!!」
慌ててトラックの乗務員が降りようとするが、爆発の衝撃で飛び散った焼けた鉄片が、
トラックの燃料タンクを貫いた。
そして、巨大モニタも、プログラムが記録されたパソコンも、全てを巻き込み大爆発を起こした。
都内 某所
「……」
回転式の大きなソファで白衣の男がパソコンのモニタを眺めていた。
>MWS.exe is terminated
>Fatal Kernel Error
>END
「やはり彼らでは無理でしたか」
男は中指で眼鏡を直して呟いた。
「直接我々が出向くしかなさそうです」
そして、男はブラウザを立ち上げ、DMM.comのサイトを開いた。
そこには艦娘達のそばに“今すぐ出撃!!”という文字が浮かんでいた。