【クロス】艦隊これくしょん×仮面ライダー龍騎【完結済】   作:焼き鳥タレ派

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第8話 HN: Mad Valkyries

「できますよ、提督!」

 

彼女は明るい笑顔で答えた。

 

「できんの!?」

 

「本当ですか!?……いえ、聞いといたこっちが驚くのも変ですけど」

 

真司と三日月は工廠を訪ね、明石に“あるもの”の作成が出来ないか相談に訪れていた。

今後の戦いのためにできれば欲しいけど、多分無理だろうなぁ、と思っていたので

2人共驚く。

 

「明石に任せてくださいよ!それじゃあ、まずはサイズから。

提督、さっそく変身してください」

 

「オッケー!」

 

真司は壁に立てかけられていたステンレス板にカードデッキをかざし、龍騎に変身。

 

「どっこいしょっと。じゃあここに立ってください」

 

「わかった!」

 

龍騎は彼女が持ってきた正方形の粘土状の素材の上に立つ。

足の裏に沈み込むような不思議な感触が伝わってくる。

 

「はい、いいですよ。ふむふむ、足裏の反動吸収機構がこんな感じね。わかりました。

もう変身解いて……。いや、もうしばしお待ちを」

 

「なに?」

 

「ええ、その不思議なアーマー、

特に莫大な情報量をカード1枚に収めた技術に興味がありまして。

なんというか、そのぉ、分解地味たことをさせてもらいたいな~なんて……」

 

明石は目を光らせ、両手の指を滑らかに閉じたり開いたりして、にじり寄ってくる。

 

「だ、駄目だって!これぶっ壊れたらドラグレッダーに頭からガブリなんだよ!」

 

「残念~もしいつか必要なくなったら是非お譲りを」

 

「わかったから!とにかく、お願いね」

 

「まっかせてください!」

 

元気よく敬礼する明石と別れて、慌てて二人は工廠を後にした。

 

「いや~危なかった。あの人島田さんとどっか似てるわ」

 

「島田さん?」

 

「ああ、俺の職場でパソコン関係の管理やってる人なんだけど、

ちょっと変わっててさ……」

 

「あはは……。明石さんはアップデートがあるといつもあんな感じで。

でも、とにかくよかったですね。ダメ元の注文があっさり通って」

 

「うん!これからは積極的に海で戦える。

今までは、何ていうか、俺達のトラブルにみんなを巻き込んでばかりだったから。

深海棲艦のことも気にはなってたけど、

最初の日以来、直接攻撃に来なかったから後回しになってた。

俺、頭悪いから、艦隊指揮しながらライダーバトルのこと考えることとか無理でさ」

 

「そんなことないです!真司さんが来てくれたから、

皆さんまた人を信じられるようになりました!鎮守府の空気も明るくなりました!

……それに、真司さん達は事情を抱えてるから、しょうがないです」

 

「……ありがとう。あれが完成したら、久しぶりに出撃しよう!

三日月ちゃんも来てくれる?」

 

「もちろんです!私だって、真司さんが育ててくれたから、結構やれるんですよ?

なんだか武者震いがしてきました!」

 

「よーし、奴らとはしばらく戦ってなかったから、

まずは1-4……。う~ん、1-3辺りで肩慣らししようか」

 

「製油所地帯沿岸ですね。楽しみにしてます!」

 

 

 

 

 

次の日。

 

「できましたよ~」

 

「早っ!」

 

「もうですか?」

 

真司と三日月は昨日聞き忘れた完成予定日を聞きに来たのだが、

なんと既に出来上がっていた。

 

「はい。そりゃ、オーダーメイドの砲や魚雷ならもっと時間かかってましたよ。

あれらは艦娘が発する信号、人間で言う脳波を読み取って、その命令通りに動くから、

その分仕組みも複雑になりますし、そもそも人間には動かせないんです。

でもこれは、ただ装着者の意思と関係なく、

“浮く”という命令を実行し続ける単純なものですから。あ、転んでも大丈夫ですよ?

艦娘のような浮力を体全体に与えますから」

 

「すげえ、マジ頼りになるよ明石!」

 

「ニヒヒ!もっと褒めてくれてもいいんですよ~」

 

そう、真司が明石に注文していたのは、海で戦うための艤装。

艦娘のように海面を走り、地上のように戦うための靴だった。

ドラグレッダーに乗って戦えなくもないが、ADVENTを消費する上に、

うっかりドボンしたら一巻の終わりだ。

 

「それじゃ、さっそく試着してみましょうか。提督、変身を」

 

「うん!」

 

真司は龍騎に変身。すると明石が奥から靴を一足持ってきた。

 

「さあ、履いてみてください。

今のレザーシューズの動きを邪魔しない素材で作ってます。

寸法もぴったりだと思いますよ」

 

龍騎が靴に足を突っ込むと、明石がバンドをしっかり足首まで巻いてくれた。

 

「うおお、本当にぴったりだ!全然履いてる気がしない!

これでみんなと一緒に戦えるのか~」

 

「よかったですね、真司さん!」

 

「うん、それじゃあ、後で出撃しような。

……あ、明石。それともう一つお願いがあるんだけど」

 

「何ですか~?」

 

「この、ライダー用の艤装なんだけど、

他の鎮守府の君にも作り方を教えてもらってもいいかな?

きっと、蓮達もみんなのために深海棲艦と戦いたいと思ってるから……」

 

「心配ご無用!既に全鎮守府の“明石”と、この靴の製造法は共有済みです!

新たな発見はみんなのもの、“明石”全員の協定です!」

 

「そっかー。明石、本当に、ありがとうな」

 

「どういたしまして!三日月ちゃんも頑張んなよ!」

 

「はい、本当にありがとうございました!」

 

明石に礼を述べ、二人は広場で話し合う。

 

「それじゃ、昨日言ったとおり、さっそく出撃しようよ。

今すぐじゃいきなり過ぎるから、午後2時に出よう!」

 

「はい、出撃の際は、作戦司令室の長門様か陸奥様に声をかけて頂ければ、

手筈を整えてくださいます」

 

「わかった、サンキュ。じゃあ、また後でね」

 

「では、後ほど!」

 

 

 

 

 

午後2時。薄暗い、地下出撃ドッグに真司が選定したメンバーが集まった。

旗艦、もといリーダーは仮面ライダー龍騎こと城戸真司。

皆、「出撃」と書かれた丸いパネルの前に立っている。

 

「っしゃあ!みんな、今日はよろしく!」

 

2番目、駆逐艦 三日月。

「真司さん、先輩方、今日はよろしくお願いします。久々の出撃なので緊張します」

 

3番目、駆逐艦 響

「艤装、問題なし。響、出撃する」

 

4番目、軽巡洋艦 龍田

「ごきげんよう、みんな。今日は頑張って沢山ころ……戦果を上げましょうね」

 

5番目、軽巡洋艦 天龍

「ふっ、製油所地帯……あの時の激戦地に比べればどうってことないぜ」

 

皆、準備が整ったものから、次々出撃パネルに飛び乗る。

そんな彼女を見送った龍騎が最後にパネルに向かってジャンプする。

 

「よーし、俺で最後だ。とうっ!」

 

飛び乗った瞬間、全身が前に力強く引っ張られ、一気に加速する。

 

「うわわわわ!速えなこりゃ!」

 

転びそうになりながらも、なんとかバランスを取り戻し、皆を追いかける。

前方には地上へ続く出口があり、明るい青空が見える。

龍騎はその抜けるような青空めがけて飛び出す。

パシャッと水面に降り立つと、皆がそこで待っていた。

 

「お待たせ!ところで龍田さん、1-3への道案内お願いしていいかな?

生身で行くのは初めてでさ」

 

「いいですよ~まず該当海域全体のデータをダウンロードしますね~」

 

龍田が目を閉じ集中すると、周りの空間から何もかもが消え、

ただの白に塗りつぶされた。そして、上空に大量のプログラムの川が流れる。

処理が完了すると、今度はキャンバスに絵を描くように、新たな海域が構成され、

周囲の景色が一変した。これで出撃は完了である。

 

「さあ。ここが製油所地帯沿岸ですよ~。ここからは足で移動です」

 

「ありがとう、龍田さん!よーし、今こそ新兵器“靴!”の威力を……。ん?」

 

その時、龍騎の元に羅針盤を持った小人が飛んできた。

ああ、ここは一発目から羅針盤だったな。

 

「よし、回して!」

 

「らしんばん回すの~?」

 

小人がやる気なく針を回す。カララララ……。結果は、南東。

 

「あら。今日はボス戦おあずけですね~」

 

龍田が残念そうな顔をする。

 

「次に期待しようよ。じゃあ、引き続き道案内よろしくね!」

 

「みんなこっちよ~ウフフ」

 

全員が龍田を追って海を駆ける。

龍騎もだいぶ海上移動に慣れてきた頃、天龍が話しかけてきた。

 

「あんたが噂の仮面ライダー提督か。このオレを選ぶとはなかなかの判断力だ」

 

「今日はよろしくな、天龍!」

 

「龍田がさん付けでオレが呼び捨てなのが腑に落ちんが、まあいい。

どうせお前もオレの眼帯が気になるのだろう」

 

「龍田さんはなんか、お姉さんっぽくてさ。

それに眼帯はパソコンやってた時に見慣れてるから別に……」

 

「いやいや皆まで言うな!仕方ない、古傷が痛むが後輩のためだ、教えてやる。

忘れもしねえあの激戦で“バシャアン!!”……」

 

天龍が激しく動く海面に足を取られ、すっ転んだ。

 

「皆さん、気をつけてください、うずしおです!……龍田先輩の電探で助かりました」

 

「い~え」

 

「あー……大丈夫?」

 

「……もっと早く言えぇ!!」

 

ずぶ濡れになった天龍が叫んだ。が、それだけにとどまらず。

 

「あれ?ない、ケースに入れといた弾薬が足りない!うう……、ちくしょおお!!」

 

うずしおに弾薬を流されてしまったようだ。

 

「……まぁ、元気出せって」

 

慰める龍騎だが、泣きっ面に蜂の天龍は、何か言いかけたまま黙り込んでしまった。

しょぼくれる天龍と慰める龍騎をしんがりに、一同が次のポイントへ進もうとしたら、

また羅針盤の小人が龍騎の元へ寄ってきた。

 

「回して回して!今、この人看病しなきゃだから」

 

「フフフ……これだよ、いっつもこんな扱いだよ……」

 

カララララ……。今度も、南東。

 

「天龍、天龍!確か次は会敵ポイントだよ!元気出して行こうぜ!」

 

「!?……お、おう!硝煙の薫りが懐かしいぜ~」

 

おし、天龍復活!

しょげたまま会敵ポイントに突っ込んだらヤバかったから、間一髪セーフ。

そして間もなく先頭の龍田が後ろに声をかけた。

 

「敵艦隊、見ゆ。……みんな~?獲物が現れたわ~」

 

前方に敵影が3つ。軽巡1に駆逐2だ。久方ぶりの戦闘としては手頃な規模だろう。

皆、艤装やSWORD VENTを準備し、戦闘態勢に入った……が、様子がおかしい。

龍騎はライダー特有の視力でいち早く気づいたが、

深海棲艦が皆、奇妙なオーラを放っている。軽巡は黄色。駆逐は赤。

えっ……なんで、こんなとこにエリートとフラグシップが!?龍田が龍騎に呼びかける。

 

「提督~陣形を選んでね~」

 

「と、とりあえず単縦陣で!」

 

龍騎が陣形を決めると、今度は龍騎を先頭に皆が縦一列になって航行する。

考えても仕方ない。いくら強化されててもこの海域の深海棲艦なら大丈夫なはず!

 

「みんな、砲雷撃戦、行くぞ!」

 

“応!!”

 

龍騎の号令と同時に接敵、敵もこちらに気づき、砲を向けてきた。

ドォン……ドォンと散発的な発砲音と共に数発の砲弾が飛んでくる。

全員、弾道を的確に読み、回避。こちらも反撃に出る。

 

「おし、まず駆逐艦から片付けてっと!」

 

龍騎が新開発の靴を存分に活かし、駆逐艦の1体に向けダッシュで斬りかかる。

だが、ドラグセイバーを振り下ろすと、甲高い金属音。

とてつもない硬さに弾き返された。反動で手放さないのがやっとだった。

なんだこりゃ!?エリート化してるとは言え、

初めて戦ったときはズバズバ切れてたのに!

 

「みんなも続きましょ。それ~」

 

「当たって!」

 

「さて……。やりますか」

 

「天龍様の攻撃だ!うっしゃぁ!」

 

後続の仲間も次々と砲撃し、命中させているが、

敵艦、特に黄色い軽巡に効いている様子が全く無い。

 

「なんでだよ!なんでオレの直撃弾がダメージ1だよ!」

 

「天龍先輩だけじゃありません!みんなもmissか1ポイント!

明らかに命中率とダメージ計算が変です!」

 

「待ってて、ドラグレッダー呼ぶから!」

 

龍騎はカードをドロー、ドラグバイザーに装填。

 

『ADVENT』

 

次元の壁を突き破り、無双龍ドラグレッダーが勇ましい咆哮と共に現れた。

パソコン画面の編成画面でいう、6番目のスロットに収まる。

 

「やっちまえ、ドラグレッダー!」

 

ドラグレッダーは空に向かい吠えると思い切り息を吸い込み、超高熱の炎を3隻に浴びせかけた。

今度はまともにダメージが通る。

駆逐艦1隻が燃え尽き、もう1隻が大破。軽巡も中破した。

 

「おし!みんな、ここを乗り切ったらすぐ撤退しよう!なんだか嫌な予感がする……!」

 

「そうですね!なんだか、この敵、異常です!」

 

攻撃を続けながら三日月が答えるが、やはり全くと言っていいほどダメージが通らない。

龍騎は2枚目のカードをドロー、装填。撤退前提なら惜しみなく!

 

『STRIKE VENT』

 

龍騎は右手に現れた龍の頭を、撃沈寸前の駆逐艦に向けて突き出した。

ドラグレッダーが吐き出した火球が黒焦げの駆逐艦に命中。

炸裂し、駆逐艦を粉々にした。

 

「提督、やるね」

 

「くそ、オレにも龍の手下がいればな!“龍”つながりだし!」

 

「無い物ねだりをしても仕方ないわ、天龍ちゃん。

ここは提督にお任せするしかなさそう」

 

響達が話している間も、龍騎が残る軽巡と戦っている。

龍騎は、今度は突き刺すようにドラグセイバーを前に出すが、

エリートより強力なフラグシップに皮の一枚すら傷つけられない。

そして近接戦闘を挑んだことが仇となり、砲撃の予兆を見逃してしまった。

気づいた瞬間、轟音。避けられたのは運が良かっただけでしかない。

そして、主砲の衝撃波を食らった龍騎は吹き飛ばされ、海面に叩きつけられる。

 

「がああ……あっ!」

 

痛みで身体が痺れ、立ち上がれない龍騎に軽巡が執拗に砲撃を加える。

転がってなんとか回避しながら、カードをドロー。

苦痛をこらえて立ち上がり、すぐさま装填。

 

『FINAL VENT』

 

「はあああ……」

 

両腕を左から右に振りかぶり、腰を落として構えを取る。

龍騎の回りをドラグレッダーが飛び回る。そして全力で跳躍。

全身をひねりながら1回転し、蹴りの姿勢を取り、黄色く光る軽巡に狙いを定める。

 

「はぁっ!!」

 

後方からドラグレッダーが龍騎に激しく燃え盛る炎を浴びせ、

爆発的加速と高熱を与える。そして、炎の矢と化した龍騎はまっすぐ軽巡に突撃。

巨大な顎に砲身を生やしたような怪物に直撃した。

中破レベルまで体力が減少していた軽巡は粉々に砕け散り、

消し炭となってボタボタと海に落ちていった。

全てが終わると、龍騎は思わず片膝を付く。仲間たちが駆け寄ってくる。

 

「真司さん、大丈夫ですか!?」

 

「提督、お怪我はありませんか~?」

 

「だ、大丈夫、俺は大丈夫。でも……」

 

龍騎は戦闘の跡を見回す。まだ熱風と硝煙が立ち込めている。

 

「ここの敵、明らかに異常だった。

確かに司令官レベルに応じて敵は強くなるけど、ここまで極端な変化はなかった!」

 

「そう、異常。帰って長門達と状況確認と対応策を練ったほうがいい」

 

「そうだね、響。ええと、撤退するには……これか!」

 

その時、龍騎の目の前にホログラフのボタンが2つ現れた。「進撃」「撤退」。

龍騎は迷わず「撤退」を押す。その時、凪いでいた海に流れが生まれ、

龍騎達を次のポイントへ運び出した。混乱する一同。三日月が叫ぶ。

 

「え!どうして進撃するんですか!?」

 

「ち、違うよ!確かに俺、撤退を押したんだよ!間違いないって!」

 

「ちくしょう、ちくしょう、一体何がどうなってんだぁ!!」

 

天龍の叫びも虚しく、龍騎率いる艦隊はどんどん次の会敵ポイントへ流されていく。

 

 

 

 

アメリカ ノースカロライナ州 某邸宅 地下階

 

 

「あれ~?負けちゃったんだけど、これって、なんで?」

 

長い黒髪を派手な色に染め、唇にいくつもピアスを開けた少女が

ノートパソコンに向かいながら尋ねる。とある家屋の地下階。

3人の少女達がノートパソコンを操作している。

ギター、ロック歌手のポスター、大量のテディベア。こじんまりした部屋に

それぞれの趣味のグッズがあふれている。

問いかけられた眼鏡の少女がひどく怯えてブロンドの癖っ毛をかきむしる。

 

「わわわ私のせいじゃない!ちゃんとファイアウォールも突破したし、

セキュリティシステムも回避したし、私達以外のアクセスも遮断してあるし、

パラメータ設定も最大にしたし、オーバーフローしてないことも確認したし……

とにかく私のせいじゃない!お願いだからぶたないで、ああ、お願いお願いお願い!」

 

「だ~いじょうぶ、マーガレット。ここじゃ誰もアンタをぶったりしないし、

アタシも怒ってるわけじゃない。ただ、何があったか説明してほしくてサ」

 

「本当に?」

 

「本当だって。ほら、落ち着いて。

どうして変数enemy群がみんな0になったのか教えてよ」

 

「っせーな!マーガレットの癇癪持ち、被害妄想、突発的ヒステリーは

なんとかなんねえのかよ!」

 

褐色の肌に男物のワイシャツを身につけた、ジーンズ姿の少女が文句を飛ばしてきた。

 

「ジェシカ黙って。さあ、マーガレット」

 

「……ターゲットらしきデータ。仮にαとするけど、

そいつをポイントγに誘導するところまでは上手く行ってたの。

戦闘イベントもきちんと発生したし、

用意したダミーターゲットとぶつけることにも成功した。

そこまで何の問題もなかったの。本当よ?

正規NPCが脅威にならないことも確認したんだけど……」

 

「けど?」

 

「αが”ADVENT” っていうコマンドを実行したら、

いきなり莫大なデータ量の独立プログラムが割り込んできたの!嘘じゃない!

ちゃんと外部のアクセスはシャットアウトしてたのに!

でも、そのプログラムが干渉を始めてきて、

ダミーターゲットの変数enemyの値をどんどんマイナスに!

αはその後も“STRIKE VENT”や“FINAL VENT”ってコマンドを実行して、

システム上、一度に1しか減らない変数enemyを一気に削り取って……

私が作ったダミーターゲットプログラムを全部デリートしたの。

ねぇ、私どうすればいいの!?」

 

「うっせーつってんだろ!てめえは叫ばないと喋れねえのか!?」

 

「もうちょっとだから、お願い。

マーガレットのプロテクトを回避して、なおかつ

この娘が作ったAIを破壊する独立プログラム?

……わかった、マーガレット。よくやってくれたね。ログを送ってよ。

アタシの方で検討してみる」

 

「わかった……」

 

「ありがとう。ジェシカ、そっちはどう?」

 

「もーちょいで安定したアクセスプロトコルができる。

Sons of Daidalosのアホ共がベタベタ足跡残してくれたから楽な仕事だった。

あと少しで音声データくらいは直接“向こう”に送れるよ。

……まっさか、サーバーがあんなところにあるなんてな」

 

「おつかれさん、じゃあ、アタシはαの行動を分析しようかな」

 

ピアスの少女はマーガレットから送られた膨大なログを読み解く作業を開始した。

 

 

 

 

 

その頃。

龍騎達はゆっくりと、しかし確実に次の会敵ポイントへと流されていた。

 

「くそっ、いくら走っても流される!

三日月ちゃん、なんか使えそうな提督権限ない!?」

 

「無理です!一度進撃状態に入ったら、提督でも次の会敵まで止められません!」

 

「駄目だ、海面そのものが滑ってやがる!」

 

天龍が腹ばいになって泳いでみるが、水面ごと流されるだけだ。

 

「……戦うしか、ないと思う」

 

響が覚悟を決めたその時、空に響き渡る声が聞こえてきた。

 

“Hello, Alpha. Can you hear me? Could you answer me if ...”

 

「が、外人?」

 

「なな、なんなんでしょう……」

 

>ヘーイ!ここでまたまた金剛の同時通訳だヨ!物語の続き、スタートネ!

 

“聞こえてるかな?聞こえてたら返事が欲しいんだけどサ”

 

「誰だよお前!」

 

“う~ん……とりあえず、マリー・アントワネットってことにしとく。

マリーって呼んでよ”

 

「ふざけんな!俺、城戸真司!これ全部お前の仕業かよ!

いきなり敵、強くなったり!勝手に流されたり!」

 

“なるほど。αの本名はキド・シンジ。日本人ぽい名前だね。

こっちの界隈じゃサ、個人情報は徹底的に秘匿する。

本名は?教えない。国籍は?教えない。スリーサイズは……

くれるもんくれたら教えるよ”

 

「界隈?お前らも……あれだ、サンズオブなんとかの仲間か!」

 

“まあ、アタシらはいわゆるハッカー集団ってやつ。

一応「Tri-Circuits(トライ・サーキッツ)」って名前もある。

で、あんな間抜けと一緒にしないでほしいな。

奴らが外注のプログラムで大ドジこいたって話は、アタシらの間ではもう筒抜けでサ。

そうそう、さっきの質問だけど答えはイエスだよ。

ターゲットプログラム、アンタ達が言う敵キャラ?

そいつをこっちが作った強敵とすり替えたのはアタシら。

強制的に次のイベント発生、つまりゲームで言う……戦闘。

それが始まるまであと8秒くらい。大丈夫、今は停止してる。

回りくどい言い方でごめんよ。何しろこっちは白黒画面とにらめっこで

そっちの状況よくわかんなくてサ”

 

「それで、“くれるもんくれたら”って言ったよな!なんだよ目的は!」

 

「真司さんもしかして……」

 

三日月がじと~っとした目で龍騎を見る。

 

「違うよ!数字なんか興味ねー!……じゃなくて、

何を渡したらこんなことやめるんだ!」

 

“そっちの世界に行く方法。

こうしてアンタ達と会話できるところまでは辿り着いたんだけど、

そっからがどーしてもわかんなくてサ。

もう知ってるだろうけど、そのゲーム、2013年に存在してるんだよね。

ダイダロスの連中はそれを応用してタイムマシン作ろうとしてた。アタシらは逆。

誰もタイムマシンを作れないように徹底的にその世界をぶっ潰す。

バタフライ・エフェクトって聞いたことある?

蝶の羽ばたきがはるか遠くで嵐を起こすって話。

誰か一人が大好きな恐竜を見にジュラ紀に行ってサ、魚を捕まえたり、

それこそ蝶を標本にしたり、やりたい放題したとする。

そして2億年後の現代に戻ったら人類は絶滅してエイリアンだらけでした、

なんて悪趣味な展開もありえる。アタシらはそれを止めたいわけ”

 

「ざっけんな!お前らの都合で消されるくらいなら、大暴れして討ち死にしてやらあ!」

 

天龍が空に向けて刀を振り回す。

 

「天龍ちゃん、落ち着いて……」

 

“協力してほしいな。

これでもサ、アタシらは信じる正義の為に戦ってきた。

 

病床の回転率上げるために、点滴に筋弛緩剤入れて

病院ぐるみで患者の寿命を調整してた、大病院の薬品管理記録と

患者数の不整合性をマスコミにリークしたり。

ふざけた陪審制のせいで無罪になった連続強姦魔のドラ息子の個人情報、

住所年齢性別国籍犯罪歴、そしてカード情報に至るまであらゆる情報を晒し上げて

社会的に殺したり、まぁいろいろ。

時々、銀行口座のデータバンクに侵入していくらか失敬するけど、

それは社会正義の報酬ってことで”

 

「お前が根っからの外道じゃないことはわかったよ。でもやっぱり間違ってるよ!

俺だってできるならお前をここに連れてきたいよ!

みんなの顔を見てくれよ、目を見て話をしてくれよ!生きてるんだよ!

例え人間じゃなくたって、お前達みたいに何かに怒ったり、

何かのために戦ったり、信念を貫いて生きてるんだ!」

 

「真司さん……」

 

“……まぁ、いいサ。1分だけ待つよ。

それまでに答えが出なかったり、拒否したら、足元がウォータースライダーに変わる。

ゴールでは、カラフルなバトルシップが両手を広げて待ってるからサ”

 

「ちょっと待て、おい、おい!!」

 

通信が途絶えたのか向こうが無視しているのか、返答はない。

 

「……どうしましょう」

 

さすがに龍田も不安げに真司の決断を待つ。

俺、考えもしてなかった。この世界を形作るデータが、そんな危うさを秘めてたなんて。

俺はどうすれば……

 

 

「城戸、何を考え込んでいる、お前らしくもない」

 

 

声のした方を見ると、後方から変身した蓮。仮面ライダーナイトと加賀が

海上を疾走してきた。そして、龍騎達と合流。

 

「真司さん……支援艦隊ですよ!」

 

「ま、たった二人だがな。会話はこちらの鎮守府にも届いていた。

さすがにまだ練度の低い吹雪を連れてくるわけには行かなかったが」

 

「……この世界を守るためにも、ここは譲れません」

 

 

「俺の登場シーン取るなよ、秋山」

「言ってる場合じゃないでしょ!」

 

 

次に現れたのは仮面ライダーゾルダに変身した北岡。

秘書飛鷹に突っ込まれながら、海面を走ってくる。

 

「北岡さん!」

 

「こないだの借りを返すよ。

だから食い逃げで捕まったら、大人しく執行猶予頂戴しなよ?」

 

「だからしないって!」

 

「馬鹿言ってるとまたデコピンよ!?……ああ、城戸提督、失礼しました」

 

「あ、いえいえ……」

 

この人が例の秘書かな?おっかねー。などと考えていると、

ヒタ、ヒタという不気味な足音が。

談笑するライダー達に何者かが近づく。気配に気づいた彼らが見たものは。

 

 

「ここか、祭りの場所は……」

 

 

その名も仮面ライダー王蛇。禍々しい存在が両手を広げて悠々とその場を眺める。

 

「浅倉、ひょっとして、一緒に戦ってくれんのか……?」

 

「……誰が獲物をくれてやるか」

 

「ま、いいんじゃない?馬鹿となんとかは使いよう、って言うし」

 

今度は飛鷹のツッコミがない。彼のしたこと、その正体について、

秘書艦である飛鷹には知らされていたのだ。彼が浅倉提督……。思わず唾を飲む。

4名のライダーが勢揃いしたところで、龍騎が皆に告げた。

 

「みんな聞いて!

多分パソコンでこのゲームやったことないだろうから知らないと思うけど、

この先に“戦艦”っていうメチャクチャ強い奴が更に強化されて待ってる。多分6体。

そいつらには艦娘の砲や俺の剣が全然通じなかったんだけど、

アドベントや契約モンスターを絡めた攻撃ではダメージが通ったんだ。

きっと、この攻撃を仕掛けてきたやつは、ライダーの存在を知らないから

ミラーモンスターの介入を想定してないんだ!」

 

「なるほど?だったらなおさら俺のマグナギガの出番だね」

 

「戦艦だのなんだのどうでもいい。戦やぁいいんだよ……!」

 

“あ、あー、聞こえてる?タイムリミットだけど、もう答えは聞くまでもないよね。

援軍を呼んだってことはサ”

 

「ああ、俺達は戦う!みんなの世界と引き換えの正義なんて、俺はいらない!」

 

“そ。じゃあ、楽しんでよ。アタシらは腰を据えて”そっち“への行き方を探すからサ”

 

今度こそ完全に通信が途絶えた。だが、もう龍騎達に迷いはなかった。

足元の海流が一気に動き出す。すると、龍騎の意識に金属の反響音が鳴り響く。

思わず頭を押さえながら、海面を見る。神崎だった。

 

「これで異物を排除しろ。攻撃者への対処は俺がする」

 

神崎は1枚のカードを投げて寄こした。慌ててキャッチする龍騎。

 

「え、なんだよこれ……?」

 

燃え盛る炎を背景に、左の翼が描かれたカード。名前は“SURVIVE”

 

「使えばわかる。生き残り、戦え」

 

それだけ言い残すと、彼は唐突に姿を消す。もう会敵までは時間がない。

考えてもしょうがない!龍騎はカードデッキにSURVIVEを収める。

幸い先程の戦闘が終了したことで、他のカードも再補充されたようだ。

すっかり日が落ちた大海原で、龍騎達は待ち受ける無数の光る眼を見た。

 

 

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