【クロス】艦隊これくしょん×仮面ライダー龍騎【完結済】   作:焼き鳥タレ派

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第9話 Installing…SURVIVE.exe

龍騎達を運んでいた潮の流れが止まった。まだ戦闘は始まらない。嵐の前の静けさ。

闇の向こうにゆらゆらとうごめく赤いオーラと12の瞳。

 

 

フフフフ……アハハハハ……

 

 

不気味な笑い声を無視し、まず加賀が偵察機・彩雲の矢を空に放った。

矢は上空で弾け、偵察機に変化。赤い群れの上空を旋回し始めた。

 

「加賀様が来てくださってよかったです。

T字不利という最悪の事態は避けられましたから」

 

三日月が絶望的状況の中、わずかばかりの幸運に喜びを見出す。

そして、しばらくして彩雲が加賀の元へ戻ってきた。

加賀は愛機の報告にそっと耳を澄ませる。

 

「……そう、ありがとう。みんな、敵艦隊は戦艦6隻の複縦陣。同航戦になるわ」

 

「助かる」

 

「別に」

 

ナイトの無愛想な礼に、加賀もそっけない反応で返す。

 

「くそお!エリート戦艦6隻だと!めちゃくちゃな事しやがって!」

 

通常ありえない状況を前に龍騎が叫ぶ。

 

「落ち着いてください、城戸提督。

不正に造られた深海棲艦を倒せるのは、あなた方ライダーだけです。

ここで冷静さを失ってもらっては困ります」

 

加賀に諌められ、落ち着きを取り戻す龍騎。

 

「……うん、そうだね。みんなの命を預かってる俺がしっかりしなきゃ!

ありがとう、加賀さん!」

 

「構いません……」

 

やはり淡白な返事をする加賀。その時ゾルダが1つ提案をした。

 

「ねぇ、戦い始める前に、いきなり俺のファイナルベントぶっ放すってのどうよ?

多分、敵味方入り乱れての乱戦になるだろうし、そうなったらもう使えなくなる。

そもそもアレ、発動が遅いから、いざ戦いが始まったら、

敵が使うチャンスくれるとも思えないからさあ」

 

「ファイナルベントって、お前の飛び蹴りみたいなやつか?」

 

聞きなれない言葉について、天龍が龍騎に尋ねた。

 

「うん、俺達ライダーの必殺技みたいなもんでさ、

北岡さんのはとんでもない兵器撃ちまくんの。みんなも耳塞いどいたほうがいいよ」

 

「……全部殺しやがったら承知しねえぞ」

 

戦いが待ちきれない王蛇が釘を刺す。

 

「はいはい、そうなったら俺が相手してやるから。

……それじゃ、いくよ。開戦の合図だ」

 

ゾルダはカードを1枚ドロー。マグナバイザーにリロード。

 

『FINAL VENT』

 

ゾルダの足元に現れた次元の波紋から、マグナギガの巨体がせり上がる。

そして、背中の挿入口にマグナバイザーを突き刺すと、

マグナギガの前装甲が開きつつ、全身のビーム砲にエネルギーが充填された。

そしてゾルダがトリガーを引く。

次の瞬間、ビーム砲、誘導ミサイル、ガトリングガン、全砲門の一斉発射。

 

それが決戦の狼煙だった。

多種多様な兵装が火を吹き、赤い影の群れに襲いかかる。

発砲時の光で奴らの姿が浮かび上がった。前方4隻が上半身にセーラー服を来た人型。

最後尾2隻がフードを被り、ネックウォーマーを付けた人型。

皆、襲い来る怒涛の弾幕に驚いている。そして着弾。

高密度に集中したエネルギーが敵艦6隻を巻き込み大爆発を起こた。

耳に手を当てて見守っていた艦娘達が息を呑む。

 

「あれが、北岡提督のファイナルベント……」

 

「とんでもねー武器の塊だな……あいつら生きてんのか?」

 

初めて見た響や天龍が驚きの声を漏らす。だが。

 

 

ううう……あああああ!!

 

 

怒りの絶叫が夜の空に響き渡る。それを聞いたライダー達が一斉に戦艦へ向け突撃する。

 

「みんなは回避に専念して!絶対食らっちゃ駄目だ!」

 

「わかったわ!駆逐艦のみんな、もっと後退して!」

 

龍騎が龍田をはじめとする艦娘達に指示を出し、赤い影めがけて走り出す。

 

「飛鷹、効かなくてもかまわないから、安全な場所から航空機を。

敵の気を散らしてくれるとだいぶ違うんだよね」

 

「了解、提督!」

 

ゾルダも秘書に指示を出し、カードをドロー、マグナバイザーにリロード。

 

『SHOOT VENT』

 

ゾルダの両肩にビーム砲が現れる。彼も龍騎の後を追って行った。

 

 

散開したライダーと艦娘のチームがそれぞれ行動を開始。

 

「……行ってくる」

 

「ええ……」

 

ただ、それだけの言葉をかわすと、

ナイトは駆け出し、加賀は弓に矢を番え、戦闘機を放った。

 

 

 

「ハァ!生きててくれて、ありがとよ!」

 

字面だけ見ると優しい、殺意を込めた言葉を吐きながら、

連れ合いのいない、また必要としていない王蛇はいち早く敵陣へたどり着いていた。

彼が見たものは、エンドオブワールドで大きな被害を受けた敵艦隊。

前方2隻が大破、中央2隻が中破、後方2隻が若干のダメージだった。

王蛇もカードをドロー、ベノバイザーに装填。

 

『SWORD VENT』

 

王蛇の手に、黄金の突撃剣と称される、一振りの剣が現れた。

そして、効こうが効くまいが知ったことかと言わんばかりに、

最も手前、大破状態の1体に振り下ろす。

が、やはり、カアァン!と甲高い音を立てて弾き返される。

気づいた戦艦は王蛇を睨みつけ、逆に王蛇は仮面の下から笑みを返す。

楽しめそうじゃねえか……。そう思った瞬間、付近の戦艦達が王蛇を粉砕せんと一斉に砲撃。

王蛇は後方に大きくステップを取り、さらに真上に全力でジャンプして

砲弾を全て回避した。

 

「慌てんな。夜は、これからだ……」

 

 

 

 

 

アメリカ ノースカロライナ州 某邸宅 地下階

 

 

「あああもう!やっぱり駄目!せっかく新しいプロテクトを構築した

絶対干渉不可の完全なダミーターゲットを作ったのに、やっぱり駄目じゃない!!

αだけじゃなく、β(ベータ)γ(ガンマ)δ(デルタ)も!

どうして私を馬鹿にするのぉ……?

どうせ向こうで一生懸命作った私のプログラムを笑ってるんでしょう!特にγ!

いきなり私の作品をめちゃくちゃにしたあんたは絶対に許さない!!」

 

マーガレットはソファの上でうずくまり、泣きながらパソコンの処理ログを読んでいる。

 

「ああ、まーた始まっちまった。マーガレットのヒステリーに被害妄想。

これなんとかなんないのかね、マジで」

 

ベッドに座りながらジェシカがぼやく。

真司にマリーと名乗った少女は、マーガレットの背中を優しくなでて、彼女をなだめる。

 

「ほら、泣かないの。今回ダメだったなら、また作り直せばいいじゃない。大丈夫。

アンタは一流プログラマー。アタシらも手伝うからサ、

今回駄目でも、また“やり直せば”済む話でしょう?

アタシらにできないことなんてなかったじゃん。α達にアンタの腕前見せてやんなよ。

奴らが音を上げるまで、サ」

 

「うう……ありがとう」

 

落ち着きを取り戻したマーガレットだが、今度はジェシカが大声を出す。

 

「あんだよコレ!舐めてんのか!?」

 

「どうしたの?」

 

「どうしたもこうしたもねえ!見ろよこれ!」

 

ジェシカがノートパソコンをマリーに向けると、一通のメールが届いていた。

 

 

 

送信者:<送信者不明>

件名:警告

 

そこまでにしておいたほうが身のためだ

 

 

 

「……ふ~ん、アタシらのメルアドに送信者不明で警告とはね。やるじゃん」

 

「やるじゃん、じゃねえよ!向こうの連中にもハッカーがいるに決まってる!

逆に引きずり出して吠え面かかせてやるよ!マリー、しばらくそっちは頼む!」

 

「了・解。さて、勝負の行方はどうなのかな?」

 

 

 

 

 

製油所地帯沿岸

 

 

「浅倉、近づき過ぎだ!下がれ!」

 

砲弾を回避した王蛇に龍騎が叫ぶ。

 

「馬鹿が。近づかねえと、殺せねえだろうが……!」

 

王蛇はカードをドロー、ベノバイザーに装填した。

 

『ADVENT』

 

フシャアァァ!!

 

すると、王蛇の契約モンスター、ベノスネーカーが

獰猛な吐息を吐きながら猛スピードで水面を這って来た。

 

「エサだ」

 

王蛇が顎で最前列の1体を示すと、ベノスネーカーが、するすると

瞬く間に大破状態の戦艦に忍び寄り、その長い身体の尾で思い切り彼女を締め上げた。

そして、動けなくなった戦艦に真上から強力な毒液を吐き掛ける。

彼女の肉体、艤装が蒸発するような音を立てて解けていく。

 

“アアアア!!ギャアアアァッ!!”

 

激痛で悲鳴を上げる戦艦。まさしく死のシャワー。

人間に近かった彼女の姿が、おぞましく溶けて化け物じみたものに変わっていく。

それを見計らった王蛇がベノスネーカーに指示を出す。

 

「……食え」

 

ベノスネーカーは、瀕死の戦艦に食らいつき、ひょいと口に放り込んだ。

そして、ゴォン、ギィ、ミシミシ……と重い金属が変形するような、

生々しい咀嚼音を立てて、何度も噛んで飲み込んだ。ようやく1体撃破。

 

「あれの悪食は飼い主譲りだね。むしろ飼い主が似たのかな。どっちにしろ美しくない」

 

離れた所で王蛇の悪口を言いながら、両肩のビーム砲で先頭の1隻を撃つゾルダ。命中。

エンドオブワールドで満身創痍の彼女はもう保たないだろう。と思っていたその時。

 

「提督、足元!」

 

「え……うおっとと!!」

 

彼方から白い物体が二本高速で迫って来た。

 

 

アハハ……クスクス……

 

 

後方2隻が放った魚雷だった。

酸素魚雷は航跡がほぼ見えないため、飛鷹の呼びかけがなければ気づけなかっただろう。

 

「ふぅ~助かったよ飛鷹」

 

「もう、気をつけて!最後尾のやつは魚雷発射管も装備してるみたい!」

 

 

 

「さっさと数を減らしたほうがいい。死にかけを討つ」

 

ナイトはカードを1枚ドロー。ダークバイザーに装填。

 

『ADVENT』

 

暗い夜空から溶け出るかのように、闇の翼・ダークウイングが姿を表す。

そしてナイトの肩に掴まり、マントに変化。

その効果で飛行能力を得たナイトが先頭の敵艦に向けて突進。

すかさず彼女に接近し、大きくマントを広げて、高速で敵の周りを回転した。

鋭い刃となっているダークウィングの翼が、竜巻のように戦艦の身体を切り刻む。

ナイトは攻撃が済んだら素早く離れ、様子を見る。

全身を切り裂かれた戦艦が、身体の至る所から体液を吹き出しながら

ゆっくりと沈んでいく。そして水に浸かりきった瞬間、爆発した。

 

「……2体目だ」

 

 

 

「っしゃあ!1列目撃破!俺もやってやるぜ!」

 

龍騎はカードをドロー。ドラグバイザーに装填した。

 

『ADVENT』

 

次元の壁を突き破り、ドラグレッダーが再び現れた。すかさず龍騎は命令を出す。

 

「また焼き払え、ドラグレッダー!」

 

だが、上空の存在に気づいた最後尾の戦艦2隻が、

ニヤリと笑って3連装砲で対空砲火を始めた。

彼女達は大口径砲を連射し、ドラグレッダーを撃墜しようとする。

前列、中央の戦艦とは比較にならない強力な砲撃に、

ドラグレッダーも回避に専念せざるを得ない。危機を感じた龍騎は攻撃中止を命じる。

 

「ああ、よせよせ!やっぱり攻撃はいい!なんとかこっちまで来るんだ!」

 

ドラグレッダーは火の玉の嵐をかいくぐり、なんとか海面まで降り立った。

そして龍騎のそばに立つ。

だが、完全に興味を龍騎とドラグレッダーに移した後方の戦艦は攻撃を止めない。

“STRIKE VENT”をドローしたが、特に戦闘力の高い後方2隻の猛攻に

発動するチャンスがない。超重量の焼けた鉄塊の群れが襲いかかり、

回避したと思ったら足元に酸素魚雷が迫り来る。

くそっ!みんな頑張ってるのに、これじゃあ、なんにもできないじゃんか!!

 

「真司さん……!」

 

苦戦する龍騎を見ていた三日月が前に出る。

 

「何をしているの!危ないわ、三日月ちゃん!」

 

「……当たって!!」

 

龍田の静止も効かず、三日月はヘラヘラ笑う後方2隻に12cm単装砲を放った。

それは、戦艦を相手にするにはあまりにも貧弱だったが、覚悟の一発だった。

たった1ポイントのダメージ。しかし、戦艦レ級の注意を引くには十分だった。

彼女らは、ぐりん!と首を回して三日月を見る。

黙って2隻のレ級は三連装砲を三日月に向け、情け容赦ない集中砲火を浴びせた。

 

「三日月ちゃん!」

 

龍騎は急いで“STRIKE VENT”を装填。

王蛇達に注意が向いている中央列のうち1隻に狙いを定め、

右手に現れた装備を突き出した。ドラグレッダーが体内で圧縮した火球を標的に発射。

燃え盛りながらまっすぐに飛んでいった。

その太陽のような高熱を蓄えた火球に気づいた戦艦だったが、

既に回避も間に合わない距離まで迫っていた。彼女が振り向くと同時に、直撃。

火球そのものの熱と砲身への引火で大爆発を起こした。

バラバラになった破片が落ちる度、海水が蒸発音を立てる。残り3体!

 

「やりましたね、真司さん……!」

 

燃える鉄塊の降り注ぐ中、龍騎に精一杯の笑顔を見せる三日月。

そんなことどうでもいい!龍騎はカードをドローしながら全速力で彼女に向かって走る。

 

『GUARD VENT』

 

龍騎の左腕に盾が装備される。そして三日月に向かってジャンプした瞬間……

時間が止まった。

GUARD VENTでかばおうとしたが間に合わず、真っ赤に焼けた砲弾が

その小さな身体にめり込んだ。

砲弾はなお威力を殺すことなく、彼女を後方にふっ飛ばした後、

追い打ちをかけるように爆発した。真司の頭が真っ白になる。

ただ、彼女の元へ足を動かしていた。

たどり着いた時、彼女の周りの水面は赤く染まっていた。

大量に吐血し、倒れた三日月に龍騎が必死に呼びかける。

他の艦娘も危険を承知で集まってきた。

 

「三日月!しっかりして三日月!」

 

「真司、さん……倒せましたね」

 

「なんで……なんであんな無茶したんだよ!!」

 

龍騎は口を血まみれにした三日月の手を握る。

 

「皆さんを、助けられるのは、真司さん、だけだったから……」

 

「三日月が死んだら意味ないだろ!!」

 

「役に、立ちたかった……改二にもなれない駆逐艦……戦いでも、勝てない……

悩んでる真司さんも支えられなかった……」

 

「違うだろ!いつもそばにいてくれた!俺を支えてくれてたんだよ、

ゲームでも、この世界でも!三日月は俺の特別なんだよ!」

 

「ふふ……あり、がとう。ござい……ます」

 

残った力でそれだけを言うと、彼女の手から力が抜けた。

 

「三日月?三日月……三日月ィ!!」

 

龍騎の絶叫が、月が冷たく照らす夜空に響く。龍田が三日月を抱きかかえる。

 

「気を失ってるだけ。まだ助かるわ、体力が1残ってる。でも……次は駄目よ」

 

その時、真司の心とカードデッキがリンクし、なんらかの変化をもたらした。

そして彼は告げる。

 

「……みんな、できるだけ遠くに離れて。危険だから」

 

「わかったわ。三日月ちゃんは任せて」

 

龍騎は何も言わずにゆっくりと立ち上がる。そしてデッキから1枚のカードを引き抜き、

裏向きのカードを指先で回転させた。

描かれていた燃え盛る炎の背景が、実体を持って渦を巻き、左側の黄金の翼が輝く。

 

手にした者に生き延びる力を与え、荒れ狂う烈火の力を宿らせる、最後の切り札。

その名は──SURVIVE。

 

“SURVIVE”をドローした瞬間、周囲が炎に包まれ、熱風が吹き荒れる。

闇に包まれていた海域が明るく照らされた。その異変に皆が驚く。

 

 

 

炎の赤に照らされる飛鷹とゾルダが驚愕する。

 

「提督、あれってなんなの!?」

 

「知らないよ!ここに来る前、神崎に貰った新しいカードかもね!」

 

 

 

そして、ドラグバイザーが燃え上がり、龍の頭部を思わせる形状の銃型バイザー、

ドラグバイザーツバイに変形。

そしてバイザーの口を開き、内部のカードスロットに“SURVIVE”を装填。

勢いをつけ口を閉じると、龍騎の体を業火が包み込む。

 

『SURVIVE』

 

業火が止むと、龍の顔を模した重厚なアーマー、

両肩から突き出る牙を思わせるプロテクター、

そして黄金の装飾が施されたヘルムでパワーアップした龍騎、

龍騎サバイブが姿を表した。

 

 

その姿にナイトも加賀もただ一言で驚きを示す。

 

「城戸……」

 

「……あの姿、龍の化身ね」

 

 

 

同時にドラグレッダーも、鋼鉄の装甲をまとった、

烈火龍ドラグランザーにパワーアップ。

 

龍騎サバイブは何も言わずにカードをドロー、ドラグバイザーツバイに装填した。

そして中央列の生き残りに向き合う。後列の2隻も突然燃え上がった海に混乱している。

 

『SHOOT VENT』

 

そして、ドラグバイザーツバイでターゲットに狙いを定めた。

龍騎サバイブがトリガーを引きレーザーを発射。

同時にドラグランザーも巨大な火球を放ち、ライダーと契約モンスターの

息の合った攻撃が標的の戦艦に命中。

レーザーで胴体を貫かれ、火球の直撃を受けた彼女は、燃え尽き、灰となった。

 

「データだろうとなんだろうと……お前達は、お前達だけは絶対に許さない!!」

 

ようやく落ち着きを取り戻した戦艦レ級2隻は、自分達以外が殺されたことに気づき、

龍騎サバイブを見た。もう顔は笑っていなかった。彼女らは全武装を一斉に発射した。

だが、龍騎サバイブは構わず最後のカードをドロー。ドラグバイザーツバイに装填した。

 

『FINAL VENT』

 

カードが発動すると、ドラグランザーが月明かりの空に舞い上がり、

体から鏡の欠片が吹き飛んだ。

龍騎サバイブは思い切り跳躍してドラグランザーの背に乗る。

すると胴体と尾から車輪が現れ、尾を折りたたむと、

そのまま巨大なバイクに変形して着地。

 

深い闇の世界に、怒れる烈火龍の咆哮が響き渡る。

龍騎サバイブは、アクセル全開で戦艦2隻に突撃。

本能的に危機を感じた彼女らも反撃に出るが、ドラグランザーが

巨大な火球を連続して吐き出し、砲弾、魚雷を全て迎撃する。

レ級戦艦にドラグランザーのエンジン音が迫る。

ドラグランザーは敵を焼き尽くさんと、

彼女らに全力でいくつもの巨大な火球を叩きつける。

そして龍騎サバイブは、全身を黒く焦がされ、艤装が溶け落ちた2隻に

フルスピードで体当たりした。どちらも凄まじい衝撃で宙高く放り出される。

十数秒かけて空を舞い、落下。

 

 

アア……ア、アア……

 

 

龍騎サバイブのファイナルベント「ドラゴンファイヤーストーム」で致命傷を負った

レ級戦艦達は、立ち上がろうと手を伸ばしたが、

そこで力尽き、爆発した。凄まじい爆風に、皆、しばらく動けなかった。

そして、目を開いた者から状況を知ることになる。

敵を殲滅したこと。生き残ったことを。

 

「提督……、私達、勝ったのね!」

 

「ま、そうみたいだよ。出張手当もらいたいくらいの大仕事だったけど、

今回に関しては生きてるだけマシ、だね」

 

飛鷹・ゾルダペアが胸をなでおろす。

 

 

しかし、喜んでいられる者ばかりでもなかった。

龍騎サバイブは三日月を抱える龍田に走り寄る。

 

「龍田さん!早く戻ろう!三日月ちゃんを手当しないと!」

 

「最終ポイントのイベントが終わると自動的に母港へ戻る仕組みになってるわ。

少しの辛抱だから、三日月ちゃん、頑張って」

 

三日月は、なおも弱い呼吸を繰り返しながら眠っていた。

 

 

 

 

 

アメリカ ノースカロライナ州 某邸宅 地下階

 

 

「う~ん……これにはさすがにアタシもFで始まる言葉が出ちゃうかな~」

 

マリーの後ろではまたマーガレットが悲鳴を上げていた。

 

「なんで、なんで、なんでなのよおおお!もういや、こんなクソゲーム大嫌い!

みんなが私を馬鹿にする!大事なものを壊していく!ふざけるんじゃないわよ!

何考えてるのよ、なんなのよ、“SURVIVE.exe”って!

勝手にインストールしてんじゃないわよおぉ!!」

 

「うわぁ、正直これは引くわ……」

 

絶叫し、もはや指先に血がつくほど頭をかきむしるマーガレット。

マリーが慌てて止める。

 

「落ち着いて!落ち着いてマーガレット!頭の掻き傷は治りにくいから。

ほら、言ったでしょ。何度でも“やり直せば”いいって。

なに、ちょっとのマップ移動のプロセスをループさせて、

またスタートポイントからやり直させればいいだけ。簡単でしょ?大丈夫だって。

アタシらは無限にダミーターゲットを用意できるけど、奴らの体力は限られている。

アタシらの勝ちは時間の問題。ほら、傷の手当しておいで。

悪いけど、私は奴らに対処しなきゃ」

 

「うん、わかった……キャア!!」

 

「今度はなんだよったく……ってうぉい!なんだこりゃ!」

 

「どうしたの!?ジェシカ、マーガレット!」

 

不可解な悲鳴を上げる二人に戸惑うマリー。

 

「パ、パソコン見ろって、パソコン!!」

 

「パソコン……はっ!!」

 

コマンドプロンプトの黒い画面を見てギョッとした。

マリーの顔が映り込む、画面の向こうから男が見つめているのだ。

さらに男は語りかけてきた。

 

「警告はしたはずだ。もはやお前達に明日はない」

 

「てめえか!私に変なメール寄こしやがったのは!」

 

「へぇ……あんたがα達の親玉ってこと?」

 

「……ダミーターゲットに強制介入したり、SURVIVE.exeを造ったのも?」

 

「俺はライダーの宿命に従うだけだ。最低限必要なものだけを与えている」

 

「意味わかんねえよ!なんだよライダーって!

バイクの腕なら私が……!」

 

その時、不意に呼び鈴が鳴った。時間は日付が変わった頃。

まともな要件で誰かが訪ねてくるはずがない。

 

「ジェシカ、頼める?アタシはこいつと話付けなきゃ」

 

「ああ、上等だ……」

 

ジェシカは枕の下に隠していた拳銃を取り出し、1階への階段を上がっていった。

 

「それで、アタシらをどうしたいわけ?」

 

「消えてもらう。お前達の情報を、然るべき機関に流した。

既にお前達の排除に動いている」

 

「なるほどね。可能な限り高速な通信環境を揃えたのが裏目に出たってわけか……」

 

“あんだテメエら!今何時だと思ってやがる!”

 

その時、1階でジェシカが何者かと言い争う声が聞こえてきた。

 

“名乗る必要はない。……Tri-Circuitsのガキ共だな”

 

“くそっ!”

 

一瞬争うような音と、人が倒れる音。

ジェシカの拳銃、サイレンサー付きピストルの銃声、ジェシカは……多分死んだ、か。

 

「ね、ねえ……。ジェシカは?ジェシカどうしちゃったの?」

 

「大丈夫、ほら、こっちおいで」

 

ぞろぞろと大勢の人間の足音が近づいてくる。

そしてとうとう、彼女達の根城にグレーのスーツを着た男が、

防弾チョッキを着けた兵士に守られながら乗り込んできた。

 

「話は聞こえていただろう。データを渡せ。

そうすれば今までのクラッキングに関する罪に問われるだけで済む。

司法取引も考えよう」

 

「名乗りもせず深夜に女の子の部屋に押しかけるとかサ、

やっぱCIAはボンクラ揃いだね」

 

「ラストチャンスだ。データを、渡せ」

 

「ふぅ、わかったよ」

 

「え……。本当に渡すの?こいつらが約束守ると思う?」

 

マリーは答えずにパソコンを操作する……ふりをして机の裏の隠しボタンを押した。

突然3人のパソコンが急激に熱を帯び、間もなく煙が上がりだした。

 

「貴様、何をした!?」

 

「何って?こんな時のために緊急時のデータ抹消システムを組み込んどいた。

もうHDDはドロドロに溶けてるよ」

 

「この……ガキが!」

 

銃声2つ。

マーガレットは頭を撃ち抜かれ即死。マリーは胸を撃たれ、瀕死の状態だった。

ぼやける視界。去っていく男達。自分のパソコンを見ると、

かろうじて画面が表示されている状態だった。

彼女は床に転がったヘッドセットに向かって、かすれる声で話しかける。

 

 

 

 

 

城戸鎮守府

 

 

「お願い、早く手当して!バケツ使って!急いで!」

 

三日月を搬送していく艦娘に真司が叫んでいると、空から声が聞こえてきた。

もちろん声の主はマリーで、彼女達の身に起きたことも、

マイクを通じて真司達に伝わっていた。

 

“ねえ、シンジ……”

 

「マリー……。なんでこうなる前にやめられなかったんだよ!

三日月ちゃんも、お前達も!!」

 

“悪いね。アタシら、こんな生き方しかできなくてサ……。でも、ゴホゴホッ!

……最期に、聞いて欲しいんだ。分かって欲しいんだ。

……アンタら、本当にヤバいことしてるってこと。

その世界を放っておくと、マジで、ヤバいんだ……。ゴフッ!せめて、閉じるだけでいい。

みんなを、守って。世界を、守ってよ。馬鹿な、女から、最期の、お願い……”

 

「おい、マリー、返事しろって!おいマリー!!」

 

もう返事はなかった。

真司は知る由もなかったが、その日、アメリカのダウンタウンにある一軒家が、

火災で焼け落ちたという。ニュースにも新聞にも載ることなく、

彼女達の戦いは幕を閉じた。真司は洋館の前で呆然と立ち尽くしていた。

 

「なんでだよ……。同じだよ。同じだったんじゃないか!」

 

みんなを助けたい、世界を守りたい。目的は同じだったのに。

仲間になれたかもしれないのに。

ただ手段を間違えた。それだけで争い、結果的に死なせることになってしまった。

 

「なんでこんなことになっちゃうんだよ!!」

 

誰もいなくなった広場で真司は何かに向かって叫んだ。

 

 

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