提督が白紙の契約書に着任しました   作:奈音

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短い


第一部 提督がファントム海面に着任しました
01 はじまりのあさ


 その日のあさ、私は悪魔と契約せざるを得ない状況下に陥っていた。

悪魔、その名をシラヌイと名乗り、「提督である私との契約が必須である」と詰め寄るのだ。

私は丁度、優雅な観光旅行のために船上の人であり、ありていに言って逃げ場はなく。

 

 「埒が明かない!」といって引っ張ってくる小さくもみずみずしき手。

私は手を引かれて外に連れ出されることよりも、

思わずその肌のきめ細やかさに目を見張ってしまい。

ーー戦場へ連れ出された。

 

 ところで、テレビ媒体で行うことの出来る遊戯的筐体のことを諸氏はご存知だろうか?

昔なんぞは攻略本なる親切な業者采配による指南書なぞなく、友人同士教え合い競い合いと楽しんだものだが、今時はチュートリアルと銘打って親切懇切丁寧に取り零しの内容に導いてくれる大変ありがたいものあって。つまり何が言いたいかというと。

 

  私の初めての戦場はフロムソフトウェアだったということだクソッタレ!

 

のちになって知ったことだが、私が観光旅行と洒落込んで向かっていた島は既に敵軍の占領地となっており、今この瞬間この時に、悪魔たらんシラヌイからもたらされた情報によると。

戦艦×2空母×1軽巡×1雷巡×1駆逐×1からなる大艦隊を撃破しなければ私の命はないのだということである。なぜ分かるのかはわからない、分かるのは絶望的だということだけだ

 

 「…戦力は」

 

 「私だけです」

 

 「…増援は?」

 

 「ありません」

 

 「撤退」

 

 「120秒後に接敵します」

 

 どぉん、と揺れる船。

上空を見上げると戦闘機らしき飛行物体が次々とその荷を虚空にバラ撒いているところであり、

「失礼します」との言葉とともに有無を言わさず海に放り込まれた。もうなにがなんだか分からない。私はこの旅行を一ヶ月前から楽しみにしていて、地理や観光名所に関してはバッチリ。あまりにも暇になりすぎたときなどは衛星視点から島の隅々まで架空旅行と洒落込んでいたものだ。

その記憶と船に乗ってからの時間を計算するとーー

 

 「ーー死んだなこれは」

 

 

 本島と島の丁度真ん中の辺り。

四方に島の影はなく、前方より見えるは死の軍団なりとくれば生きる気力よりも先に死への諦観が見えようと言える。しかし何事も試してからゲームオーバーとすればよい。覚えゲーであったならば。いやどうせこれは夢なのだ。そうだ。そうにちがいない、そうだと今私が決めた。契約だの何だのと、何度も何度もうるさく言っていたが、どうせここで終わる夢ならば死んでやろう

前のめりに死んでやろう。

 

 「シラヌイ」

 

 「…はい」

 

 「契約する」

 

 「ーーは?」

 

 「私はシラヌイと契約し、怨敵討ち滅ぼし、あっぱれ見事な勝星を獲ってやろう」

 

 「ーー」

 

 「聞いているのかァ!」

 

 「ーーはっ!はい、提督!勿論です!」

 

敗北必至のスタートラインで、助走も出来ずに一人とヒトリ。

提督となった男は汗びっしょりでもこの際構わないから夢から目覚めることを。

契約したシラヌイは驚愕とともに、別つまで尽くすことを誓った。




この提督順応性高すぎませんかね…
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