走馬灯を見た。
医学的見解では、走馬灯というのは。その身体及び生命に危機が差し迫った時。今まで生きてきた人生活動の中での最適解を探すためのものであるとされている。だが。その記憶にないそれが見えるのは。やはり私は忘れていて。其処は白かった。およそ白で構成された自然物ばかりで。その中に誰が造ったのか近代的な赤と茶と黄の人工物がひしめいて「滅ぼしてしまえという気持ちはある」烏の濡れ羽色よりも黒い黒の外套を羽織った「その勢いは止まらないだろう」風にはためかせて「だが私は時期尚早だと考えた」愛おしげな眼差しに映るのは年端もいかない子供で「だから私を殺しに来い」いや何言ってんだおぃこら「ぇェッ…」そこでショックを受けたような顔をされても「ごほんごほん…言葉が足りなかったな」白い峯から昇る陽光を浴びながら「ここまで来いってことだ」抱えられる「ーーしっかり覚えておけよ」跳躍。足元がふわりと消え失せて。大地が遠くなる。高く。高く。高く。高い。高い! おい高いって。これ着地できんのか「あっ…」あっ?「ごめんなんか浸りすぎて」え待って。これ走馬灯だよね。小さい頃の記憶だよね。なに私幼少でこんな恐怖体験させられてるの「記憶飛んだらごめん…」とても申し訳無さそうな顔でなにか言って「か、体はしっかり庇うからね!」おいぃいいいいいいいいい「おいバカが落ちてくるぞ!」「あのバカなんで子供ダイてんダ!」「クソババア弟になんかあったらぶっころぉおおおす!」「おい誰かフブキ止めろ!」「バカの下敷きになって死ぬぞ!」「オイ怪力組はよう行けヤァ!」「…か、かいりきじゃ…ない、よ?」「ウルセェ走レ!」死ぬ死ぬ死ぬシヌゥううううう「誰でもいいから受け止めろオオォォォォォォォ…!」
暗転。
ーー夢を見ていた気がする。
「あどみらーる!」
パチリ。と目が醒めて。がばぁっと抱きつく「きゃっ」背後でごぉおおおんバシャアァアアアンと。重量のある金属物が大地に叩きつけられ。内蔵されていた中身が零れ落ちる音がして。しかし有体にいってそれどころではなく。一刻も早くここから離れなければならないという強迫観念が全身を支配して。思えばどこで気を失ったのかを覚えていないが。この時の私は夢心地にも似て。端的に言うとフリーフォールの恐怖から逃れることしか頭になく。手を引く「あっ」少し嬉しそうな声がしたが構っている余裕もなくて。走る。走る。走る。どこへ向かっているのか分からなくても。しばらくして。どぉおん。と熱風と。衝撃が後押しするように。私には振り向いている精神的余裕などなく。しかしプリンツは「ドラム缶…?」がしゃがしゃがしゃと金属音が立て続けに降り注いで「上…?」まるで天からの啓示をその身に。一身に受けて。未来の行末を受け止めるために空を仰ぎ見て。旅の迷い人のような表情の「いっ…」迷いが消え「いきます!」鬼気迫って。ん?と思い振り向いて。鉛色の塊が大量に。ビー玉を入れた容器からばらばらと零れ落ちるように。碁石の入った容器を幼稚な悪戯でひっくり返したかのような。あまりにも無秩序な塊の群れは。円筒形の長方形をしていて。古代の故人が天から空が降ってくるではないかと心配した光景そのものにも見えて。まるで今にも降り出しそうな曇り空がそのまま落ちてきたかのような光景で。ガン。ガン。ガシャ。ガシャ。バシャ。ガンガガシガシャバシャガンガガシガシャバシャガンガガシガシャバシャガンガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!
つまり、振り向くとドラム缶が雨あられのごとくと降ってきて。
このままでは追いつかれる!プリンツは見た。空から次々と降り注いでくる。雨よりも激しく。驟雨となった雷鳴の如き威力を持った。なんてことだ。しかも「あっはははははははははは「ひゃははははははは「いーははははははははは」嗤い狂いながら正確無比な射撃で打ち砕いていく敵の姿。意味がわからない。爆発。轟音。やはり意味がわからない。なんでドラム缶が空から降って。違う。これは。逃げ道を防ぐように。道が残るように。誘い込むために。誘導されたそれは。一見そう見えても「狂ってる…」避けられないならどうとでもなってしまえという悪意を感じて。戦えないなら退場してしまえという害意を感じて。狂騒に「逃げ回っているだけかぁ!」身を任せるように「はははははははは!」無茶苦茶な動きで「思い出せ!」語彙を失っていって。迫りくる狂威。だから。瞳を見た。眼を視た。逃げ惑いながら。分からなくて。プリンツは提督を抱えながら、敵と擦れ違う程の距離で撃ち合う。外れ。ただしこちらだけが。プリンツは右肩を掠るように撃ち抜かれ。力が抜け。すれ違いながら。その勢いのまま提督を支える力を失って。投げ出される。その瞬間だけとは言えでも。敵の目の前に。目前に。手を伸ばせば届くほどの距離に。失敗したと感じた瞬間から、全力で提督をかばえる位置までの時間を計測して。その最中に。すぐさま。単装砲が提督に照準が合わさってそんなやめ待ってうそちがわたしーー。
ーードン…。
静寂が煩いほどまでに響く空間で不知火は見た。たった1つの砲音とともに艤装をバラバラにされながら吹き飛ぶ、大和を見た。一瞬だった。誰よりも速く動けていたのはやはり大和だった。その余りにも桁違いな。その力で。其の装甲で。いち早く味方の先頭に立ち、より脅威に近い渦中へ飛び込んだ大和が。全く同じことを考えていた不知火の頭上を。刹那の間に飛んで行くのを。世界の時間が鈍化した世界の中で。不知火は確かに知覚した。だが不知火は恐れなかった「あ」鈍化した世界の中で雄叫びを上げながら注意を集めようとして。真っ直ぐ突き進み。見た。居た。巨大な錨で有象無象を打ち上げながら奇声を上げている電が。己より体躯の巨きな敵の急所に入り込み次々と首をへし折っていく川内が。目の端に見えて。だから不知火は理解した。あれがそうだと。黒で塗りつぶすのではなく。全て混ぜてしまうのではなく。消えてしまえと。何もかもが消えてしまえと。消去。白紙。まっしろに。まるで白で世界を塗りつぶそうとするようなおぞましい意志が塗り固められたそれが。二つの角を生やして。まるで古代御伽噺に語られる妖怪のような。角と牙と爪の。鬼。口の端から牙を覗かせて「ーーーーーーー」意味のある言葉を発さず。呻き声のような。接敵。したと感じた時。不知火は頭から大地に沈められると同時に。敵の背後をとって。回し蹴りで壁に叩きつけられたと感じた時には。単装砲を敵頭蓋に押し当てて吹き飛ばす必殺の位置を取って。だが両腕を吹き飛ばされ感覚がなく。同時に頭上から魚雷を発射して。にも関わらずそのまま返されて爆発し。右。左。上。下。後。次々と死ぬ。気絶する。重症を負って。折れて。落ちて。消えていき。その全てが不知火の姿で。残像ではなくて。実像が次々と顕れては消えて。10秒。戦闘では決して短くない時間を絶え間なく殺され続けて。30秒。それは決して拮抗しているわけではなく決死の不知火がいるだけで。1分。電と川内が歯を食い縛りながら見ていることしかできなかった虐殺撃にようやく駆け付け始める段取りが整った頃には。73秒。不知火はとうとう倒れて。敵の目前で。体に傷一つなくても。耐えきった不知火は「ーー貴女の尽力に」だから「わたくしは」やり遂げて「ーーわたくしは強い【敬意】を表するっ…!」瞬間鉄屑に成った艤装で全身を保護した大和が全力で殴りかかって。吹き飛ぶ「根性有りすぎワロタwwwwwなのですwwwww」打ち頃のホームランヒットで空高く「…堕ちろっ!」同時に打ち上がった川内が叩きつけ大地で摩り下ろして行って「ーー指弾装填」すべての指の隙間に装填を終えた大和が弓なりにシナリ。だが起き上がってくる。向かう。響き渡る唸りの声へ。大和は。怒っていたから。憤りを感じていたから。川内が離脱したのを確認して。放つ。それはあまねく地を這う流星の如くと鳴って。大和の指弾のことごとくが針鼠を思わせるように突き刺さり。爆裂し。吹き飛ぶ。だから。当然のように川内と電は追い討ちに駆けた。まだ死んでない。倒していない。墜ちていない。想いに応えるように。駆ける二人の向かう先を鏡に写すように。針鼠のように鳴ったそれが。原型を留めた白が。疾走。激突。巨大な錨は片手で受け止められ。柔を用いて仕掛けられる技のことごとくが。その剛力で撥ね退けられる。全身隙間なく艤装を纏った大和の体捌きが続いて。それでも。速さと。力が追いつかない。拮抗。客観的に俯瞰しているものがいるならばそう評したそれは。三人がかりでようやく負けないだけで。常に全力疾走。動作の一つ一つに機関全開。目を逸らしたら死ぬ。背を向けたら死ぬ。隙を見せたら微塵も残らない。そして。撃つより打った方が早い。本来その体躯に備える性能にあるまじき戦闘を繰り広げるほかなくーー。
近接格闘こそ本領である体躯で。急制動と急加速を繰り返して。マックススピードを瞬間ゼロに破壊力として叩きつけ。その余波で腕を伸ばして急加速。明石に釣り餌扱いされながら流星の如くと鳴って。ひぃひぃ泣き喚きながら。ピンク色の悪魔に語彙の尽くす限りの罵倒を叫び散らして。急遽。突然に。あぁ自分は頭がおかしくなったんだなと。唐突に。南西の風は雑に敵性個体を撃破しながら考えた。なにせ妙ちくりんなことに。起きながら幻影が視える。夢を立ちながら見ている。比喩ではなく。黒い黒い天に続く奈落の穴が。提督の眉間をピタリと狙い。狙い誤たず吸い込まれるように銃線が通っていって。その映像になんと己の幻影さえ視えてきたのだからいよいよシエスタの時間だ。余計な情報に気を取られて死ぬのはゴメンだと。意識を切り替えようとして「来い!」聞こえた。私を呼ぶ声が。肉声ではなくとも。幻影が私を呼んでいる。違う。これは「ここだ!」すぐさま方向転換する。分かる。分からなくても。呼んでいるのだ。だから行く。聞き間違えるはずがないから「今だ!」ご丁寧にタイミングまで完璧に測ってくれるところに舌を巻きながら。降り注ぐドラム缶の群れを無意識的に。奇跡的な動きで曲芸士のように掻い潜って。全て指示通りに。もはや眼を開けて前を視る必要性もなくて。より雪の壁が厚くなって。なにも見えなくても。見えない筈なのに。見える。はっきりと。分かる。いける。走る。疾走る。地に覇を唱える流星となって「ーーリベッチオ!!!」は弾丸の如くと鳴リ響き。今まさに提督を貫かんとした砲弾を砲手ごと貫く鉾となって。突き刺さる。月穿つ。敵性個体が「く」の字に曲がるほどの衝撃を与えたことを眼の端に確認して。すぐさま離脱して。空から降り注ぐ砲弾の雨が地を耕していく。残念なことに。リベッチオは止まるとすぐさま耕作中の大地のように掘り返されてしまう為。吹き飛ばした相手を見ることなく。助けた相手は確認して。プリンツオイゲンが敵性個体と対峙するのを見届けながら。走り続ける。飛び続ける。先程よりも明らかに良くなった自分の動きに驚きを感じながら「あー、あー」声?「聞こえますか聞こえますね返事がなければ聞こえてないので撃ちます」こいつ本気だ「きっ、聞こえてまぁああああああああああああああああああああす!」どうやら手甲足甲の手から声が出ているようなので全力で応答する「元気なのはいいことですよ」ほっ「じゃあ撃ちますね」待って待って「リ、リベは砲撃支援はもういいからてーとくの援護にいきたいでーす!」回れ右をして戻る「敵前逃亡で試し撃ちのチャンスだったのに…ッチ」不穏…不穏だ!明石は何故こんなに厳しいのか。自問自答するリベッチオだが。顔面スタンプのことを思い出して歯噛みする。こんなことなら鳩尾に一発いれて気絶させておけばよかった畜生!急ぐ。急いで戻る。が「ぇえ…?」困惑。まだ届かない二つの影が動く戦場で。リベッチオは己のことを棚に上げて理不尽だと感じた。もうあいつ一人でいいんじゃないかなと言わせんばかりの八面六臂。提督をカバー出来る位置に付いたプリンツオイゲンが。極東の能舞台で言うところの般若にしか見えない。敵性個体が撃つ。撃ち放たれたそれが。真正面から。プリンツオイゲンが放った砲弾と1ミリのズレもなく衝突して。敵性個体が空からドラム缶を振りなく降り注がせても。間断なく空に放たれる三式弾の傘が全てを弾いて。機銃掃射を同じく機銃掃射で弾突き(ビリヤード)しているのはどういう次元の目と腕を持っていれば出来るのかわからなくて。次々と。まるで事前に打ち合わせた曲芸を見ているかのような。だから。気づいた。リベッチオは其処でようやく気づいた。敵性個体があの手のこの手で翻弄するような機動を取りながら常に動いていて。プリンツオイゲンはその場から全く動いていなくて。そして。その瞳には。怯えがなく。ひるみがなく。臆すことなく。自身に満ち溢れていて。違う。あれは。信じている顔だ。信頼している表情。迷いがないのは。確信を持って動いているからで。全く後ろを振り返ることもないのは。あれはーー。
提督と呼ばれる男は考えていた。記憶の有無を。契約の意味を。自分の出生を。詳しくは分からなくても。ジグソーパズルのあと一欠片が足りないような。いやいや一区画足りないような。しかし。完成図が近づいた穴だらけの絵図を見て。予想する。想像する。思考する。随分と長閑で悠長に。編成する。編成する?前を見て。砲口を胸の中心めがけて照準を絞り始めたおねえちゃんを名乗る少女を見ながら。寝惚け眼で。半分動き出した脳みそで。理由を考えた。親族を名乗る存在がそこまでする理由を考えた。そして。あぁと。何故か納得がいって。じゃあ、と。呼ぶ。刹那の間に「来い!」心で「ここだ!」叫ぶのは「今だ!」それが出来ると知っているからなのだ「ーーリッベチオ!」西部のガンマンのように引き抜いた貫手で砲弾の同一線上指したと同時。凶弾は放たれて。だが。真後ろ。真横から。赤い閃光が流星となって。衝突。激突。突破。遮るものはなにもなく。突き抜けた先で。鳩尾深く突き刺さる。吹き飛ぶ。吹き飛んで。勢いのまま大地にすり下ろされながら転がって。リベッチオはすぐさま飛び立って。追撃の弾雨が大地を耕して「あ”あ”あ”…!」だが。ものともせずに立ち上がり。構える。だけどそれはもう知っていた。いまからフブキお姉ちゃんは性懲りもなく眉間を狙うからしゃがむ。ヒュン、と。頭上から大気を貫く音がして。そのまま飛び膝蹴りかドロップキックに間隙なく突貫してくるから前転。ごぎゃり、と。着地を失敗することを考えていなかった自滅の音が聞こえて。そのまま後頭部を狙撃してくるから「あどみらーる!」駆け付けてきたプリンツに「私の後頭部から真後ろで撃て!」弾突き(ビリヤード)を要求して。金属と金属が弾け飛ぶ音が聞こえたから。腹を立てたフブキお姉ちゃんはすぐドラム缶を落としてくる「三式弾装填!頭上に撃ちまくれ!」「さっ…三式弾装填!ふぁいやぁあああああああああああああああああああああああ!」わけも分からず即断で指揮官の指示に従ったプリンツの砲撃は頭上に油と煤にまみれた花火をぶち撒けて。舌打ちするんだろうな、と考えて。プリンツの手を引いて「ひゃっ…」倒れる「あ、あどみらーる?!」硝煙と火の雨が降り注ぐ視界不明瞭な戦場でもきっと一撃必殺を狙ってくるから「機銃掃射。私の指す方に正確に」予測ではない「は、っはい!」解答用紙を見ているような「今!撃て!」機銃の掃射が全て弾かれる感触を確認したから。分からなくて。把握できなくて。理解できなくても。例えるなら5km先から高速で突撃してくる重量車を避けるための危機感知のような。幾重にも重なる線路の。遥か彼方に視える新幹線の突撃を避けるような。あまりにも遠すぎて。あからさまに遅すぎて。手に取るように分かるから。敵の位置も。味方の大勢も「おとうとぉ!キサマぁ…」そうだ「視ているな…っ!」見ている。貴女が視えている。怒り狂っているのではなくて。狂ったように悦びの相貌をしている貴女が。だから。きっと。私にはすべてが見えていたのだ。最初から。最早。もはや目を開ける必要が無いことも分かって。だが。だから。いや。今考えるべきことではなくて。私は今眠っている。そして目覚めてもいる。ならば。簡単。簡単なこと。夢を終わらせるには死ねばいい。夢が終わるためには殺さなければならない。どちらかを選ぶ必要があった。だが。どちらも選ぶ必要はなく。どちらも手に入れる方法はあるのだ。ならば「リベ「はいはいリベはここにいます!敵前逃亡なんかしてませんよー!してませんからねぇええええええええ!」食い気味に参上したのに少し引く「砲撃支援はお任せ下さい」ピコッという擬音が聞こえるようなちんまい明石がリベッチオの頭から「ひょえぇええええええ!」飛び出してきたことにリベッチオが一番驚いているが「リベt「10秒で仕留めてきまっす!」即座に返答が返って来て「保たせるだけでい「しねやおらぁあああああああああああああああああああああああ」あっという間に行ってしまって「だ、大丈夫だろうか」心配していると「大丈夫です、こちらは」いつの間にか肩に乗り移っていたと思しきちんまい明石が「そんなことよりも」深刻な声で「調べました」真横に等身大の本物も来ていて「私は調べたんです」連装砲ちゃんの後背複座席に誘導されながら。明石の言葉に耳を傾けて。
「まず私は」「私を調べました」「…いえ私のことはいいのです」
「ここにきてからは」「敵を倒しながら」「踏みしめられるこの場所を調べました」
「ほとんど分かりませんでした」「でも分かることは或りました」
「今でも」「私は私を信じることが出来ないのですが…」「まず」
「顔面を踏まれた時には」「南西の風の基本性能解析は終了していました」
「プリンツオイゲンに関しては」「出会った瞬間に終わっていました」
移動しながら。その巨体と砲撃で次々と敵性体を破壊していきながらも器用に視線だけはこちらに向けて「提督」じっと。見つめる。見つめられる。無言を貫き。肯定も。否定も行わず。黙しているこちらを見る目は「お応えくださらないのですか?」詰問するようで。問いただすようで。だが応えず「ーー私に…いえ」耳を傾けるだけで「ーー私たt「ショォオオオオオウカァアアアアアアク…!」爆発音。バっと振り向いて。見る。戦闘の中心地を。リベッチオが。吹き飛ばされでもしたのか空中を後方に吹き飛び自ら回転して。危なげなく着地する。プリンツオイゲンは。被害をまぬがれたのか油断なく砲を構えて。そして。煙が充満した戦場の真ん中に。それら。それらが姿を現す。そこには。倒れている。不知火が。大和が。川内が。だが一人だけ。独り。錨を剣のように構えた電が。生き耐え絶えの様相で。全身針鼠のようになった白い白と向き合って。だが相手も満身創痍。どちらも既に、立っているだけでも困難な様相を呈していて「ーー混ざれ」だからというわけではなく。文字通りの光景が。目の前で酷く緩慢に展開されているのにも関わらず。誰一人動くことはできなかった。余りにも筆舌にし難い。冒涜的な光景が。うぞうぞと。ぐちゃぐちゃと。交わり合い繋がり合い。粘土を捏ねるように。肉玉を捏ねるように。混ざっていく。原型を失っていって。一回り大きくなったような。どちらとも言えないものが。確かな人型の輪郭を以て新生していくのを。戦慄ととともに電は見た。なんだろうがぶっ飛ばすとリベッチオは意気込んだ。もう二度とあどみらーるを危地に立たせないとプリンツオイゲンは心に決めて。明石は。それが目に入った時には提督を見ていた。一欠片の動揺もせず。状況の変化に惑乱せず。当たり前のように。前から知っていたことをいまさら見せられたような表情をしている提督を見て。明石は。納得と諒解と己の推測に間違いがなかったことに絶望を感じながら。砲撃の準備をした。
電「やっと斃せると思ったら…、(ゲージ)回復してるなのです…」