孤島ボッチームのメンバーが三人になったところで現状打破の手段は全く浮かばず、
三人仲良く犬死にか無駄死にか最前線かヴァルハラか勝利するまで撤退は許されないか孤軍奮闘で何時やってくるかわからない友軍?の為に徹底抗戦。つまり轟沈、水没、全ては水底の奥にといった視界的にも物理的にもお先真っ暗な未来見通し以外見えずその日は警戒を交代しながら休むことになった。そして。
ーー。
眼が覚めた。
意味もなく眼が覚めた。
真夜中だった。
微睡みながら起き上がると片手にまたカードがある。煌めく。
「・・・・・・・・・・」
全身黒装束の忍者が跪いている。
顔を下に向けて一言も発しようとしない。
しばらく呆然として放っておくと、右目から流れるような焔が灯る。考える。
ーーよしわかった!
「シラヌイ」
「はっ!」
「いかづち」
「なwwっwのwwwっwでっっすwwwwwwwwwwwまたやりやがったのですwwwww」
「えーっと「…センダイ」そう、センダイ」
「ーー今日は死ぬにはいい日だ」
というわけで、そういうことになった。
砲撃の光と悲鳴と怒号が聞こえる位置までセンダイに背負ってもらい、そこからは状況がどうなっていようとも全員全身泥まみれになりながら見えないようにバレないようにゆっくりゆっくりしずかにしずかに抜きあし差しあし忍びあしで一直線上の延長線上に目標を捉えることに成功する。センダイを旗艦とし、順にシラヌイ、いかずちと並ぶ。重要視したのは身長だ。誰も一言もしゃべらない。物音一つ立てる気配もない。そこには意味が無いからだ。
それにしても助かった。
たまたま夢で神風特攻する夢を見て、たまたま現在敵艦と思しき怨敵が交戦中で、たまたま追い詰められた敵首魁が単艦で手と足が届くような位置まで撤退しながら撤退戦なんて。実にいい夢だ。夢の中で夢を見るということに矛盾はあるものの、まぁ、そういうものなんだろう。
さぁ、来たぞ気づかれたぞ慌てふためいているぞ追撃艦隊か我々かどちらを優先すべきなのか一瞬迷い、たった一艦しかいないように見えるようにしたこちらに全速で突っ込んでくるぞ。センダイのハンドサインが全てを伝達し終えたことで、シラヌイは魚雷を装填し、いかづちは提督を投擲する準備に入る。
数瞬後にようやく。
巧みな位置取りが功を奏し、こちらが単艦でないことが見破られるがもう遅い。もう遅いんだ。
センダイ監修による作戦が発動する。
「センダイ! 行きますよ!」
「…いつでも」
センダイが加速する。シラヌイといかづちは速度を維持する。
「ぁあああああああああああああああああああああああああ!」
「なのですwwwwwww」
「…来い」
作戦名「空を征く」三人の馬力を合わせてシラヌイがセンダイを踏み台にし、いかづちが空中ただ中にあるシラヌイを踏み台にして更に高みへ。
センダイはそのまま機関が焼け付く程に機体を唸らせて敵前へ特攻。
シラヌイは空中から魚雷弾薬爆雷を力任せにところかまわずばらまく。
いかづちは提督を敵首魁に投げつけた後、その反動を使って急降下する。
撹乱からの一撃必殺を叩き込むために、それぞれが最善を以て突貫していく。
全てが陽動に見えるように、どれもが奇を衒った一撃を放つための布石であるかのように、視線を奪うために、攻撃目標を定めさせないために。
だからーー
飛び上がったシラヌイに目を奪われる、次の瞬間に特攻してくるセンダイに眼を奪われる、飛び上がったいかづちに目を奪われる。咆哮を上げて目前に迫らんとするセンダイに目を奪われる、気迫の篭った怒声を発しながら武器弾薬をところかまわずばらまくシラヌイの上を行くいかづちに目を奪われる。両手を振りかぶったいかづちから放たれた、以前、腕を奪っていったに憎くて憎くて仕方がなくて夜も眠れなくて今まで生きてきた一生の中でこれほどまでに誰かのことを思い続けたことの経験のないほど思い焦がれた因縁浅からぬ怨敵の姿に目を奪われて。怒りで目の前が真紅に染まり、全ての理性が蒸発する。
「ーーォノレェェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」
また貴様か、貴様なのか!
よくもよくもよくもよくもよくも!あれもこれもそれもどれもあいつもこいつもどいつも!
今日の朝も昼も夜も全て貴様のせいか貴様のせいだな貴様のせいに決まっている許してなるものか許してやらない許されざるべきものだ
ーー今すぐ殺してやる!
直上に目を奪われた、いやさ怒りに理性と思考を奪われたからこそ、気がつかない。
センダイが提督を受け止めるためだけに特攻を掛けたのに気がつかない。
シラヌイが顔面を蒼白に染めながら後ろに回り込んでいるのに気が付かない。
いかづちが笑いを堪えるために顔面痙攣を起こしながら眼をギラギラと輝かせて、提督に続いて特攻しているのに気が付かない。
ーー白い抜手が頬を掠める。
提督の頬を、文字通り皮一枚引き裂いて。
急降下してきた間抜けを一撃で確実にこの手で屠ってやるという意気込みが全身から感じられる渾身の構えで放たれた必殺のそれが。
「センダイ」
「…なんだ」
「さすがだ」
「…フッ」
処刑台の執刀鎌にかかっていた提督を忍者装束が掻っ攫い。
驚愕に目を見開いた間抜けの、隙だらけになった背中と直上から、一撃で確実にこの手で屠ってやるという意気込みが全身から感じられる渾身の構えで。
パイルバンカーよろしく、魚雷が撃ち込まれた。
合・体・攻・撃