01 代償
提督と呼ばれる私。私のその後。 というか直後。
夢が醒めた時。夢から冷めた時。ぼろり、と。私の中からそれは。溢れるように零れ落ちた。
それは右腕の形をしていて。白い。白無垢のような。純白の。全てを塗りつぶすかのような。あれは捨てたのではなかったか。すべてを聞き終えて、私が私を自覚した途端。まるでいままで抑えられていたものが弾けるように飛び出して。なんだ? 大和に全身を抑えられている? 不知火も。雷も。川内も。私を抑え込むように。
「ーーぁ。「ぁ”あ”あ”「あ”あ”あ”あ”「あ”あ”あ”あ”あ”「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”…!」
それにしても妙にうるさい。誰が叫んでいるのか走らないが、近所迷惑な声も居たものだ。
聞こえ方が【夢を見ながら眠っているときの】目覚まし時計のアラームのように一つ膜を挟んだ音のようで。二転。三転。腕をばたつかせる音。足をばたつかせる音。見える世界が右に。左に。
大和の差し迫った表情に。これは。獣のような断末魔を上げ、なりふり構わず暴れているのは。
私は。
ーー暗転。
声が聞こえる。
「あぶなかったー。意識の切り離しが成功しましたよー。あかしー」
「ふぅぅぅう…。
我ながら私たちになんでこんな事が出来るのかは不明ですがやりましたねプリンツ」
「ーー」
客観的に見える世界が切り替わる。
今までFPSのゲーム画面に合っていたチャンネルが急速に遠ざかり、程よい俯瞰視点から操作可能なRPGに切り替わったような。少女が二人。ツナギのようなものを来て。工廠で工作を行う工匠のように、それにふさわしい姿形で。
「あどみらーる! あどみらーる! どーこですかー?」
「うーん。多分だけれど。本当に成功したのなら提督から接触してくれるはず。今のご自分を自覚された提督なら」
「なるほどぉー。それもそうかもしれませんね!
私も気づいたらここで、しかも治ってましたもんね!」
「止めて思い出させないでお願いやめて。私なんか直前まで殴りかかろうとして…」
「お”のれ、お”のれ、お”のれぇ”え”え”え”!」
「いやぁあああああああああああああああああああああああああああああ…!やめてって言ったでしょ!私やめてって言ったでしょ!違うのよ!しょうがなかったのよぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ーーーー」
ええっと。そう。なんだったか。何について考えていたのだったか。
私は考え込むように【右腕】で顎をさすり、【目の前】で行われているコントじみた光景に首を傾げながら思いを馳せる。不知火から全てを聞いて。全て。そもそもなにを話していたのだったか。ひどく動揺していたのを覚えている。覚えている?知っているはずのことを知らないような感覚。
経験したことが急にできなくなるような。歩き方を忘れてしまったかのような。二週目を始めたゲームをうまく進められないような。
ーーあぁ! 一つだけ思い出した。そう言えば私は■■という名前だった。なぜ忘れていたのか。
「ごめんなさいなきやんでー…。ぁ!ぁああ! あ! 明石! あどみらーるが着任したよ! ほんとにきたよ!」
「うぅぅうううう…。プリンツぅううううう。
私を追い込んでおいて、更にそんな都合のいい嘘で私の嘆きどころを更に刺激しようだなんてそうはいかないんだからね!」
「いや目の前…」
「めのまえぇぇ…? …え?」
「…やぁ」
「わぁぁぁああああ! 感激ですあどみらーる!」
「わぁぁあああああああああああああああああああああああ…! 申し訳ありませんていとくぅぅぅぅぅぅぅううう!」
とりあえず状況はさっぱり分からないが、どうやら私が歓迎されているらしいことはよくわかった。と思う。黄金に煌めくツインテール。第3帝国を象徴するカラーリングの帽子とツナギを着て煤で黒く染まった頬を赤く染めて全身で求愛するかのように感激と歓迎を全身で表してくれるプリンツ。朱を白く薄めた腰まで届く長髪。大日本帝国を象徴するカラーリングの防火エプロンと巨大な鍛具を片手にさめざめと後悔の涙を流しながら驚愕と謝罪を全身で示してくれる明石。
…どうやら、彼女たちとはよく話し合う必要がありそうだ。
17春E5クリアしたからね、書くしかないね…