続くかは未定
ガタゴトと不定期に揺れる馬車。木材で出来た物のため致し方ない部分はあるが正直乗り心地は良くない。
「痛っ!?」
さらに道も綺麗に整理されていないので時折大きく馬車は揺れる。その衝撃で痛みを感じるのは致し方ないし、弟が思わず声を上げるのも仕方がない事だ。
ガタッガタッと相変わらず馬車は揺れ動きその度に弟は痛みに声を上げる。
全く我が弟ながら情けない。この最上級の馬車でなおかつ弟のみ衝撃を吸収するマットに座っているのになんと言う体たらく。私達一家においてそんな軟弱な者は弟のみ。情けない限りだ。
「おおーい!かなり揺れたが平気か?荷物とルルテオは無事かぁー?」
馬車の外から父の声が聞こえた。父としても今の揺れは大きいほうだったため私達に声をかけたのだろう。
ふふ、我が父ながら過保護な事だ。あの程度の刺激で私がどうなることもあるまいに。勿論搬送中の物資も無事だ。
「父上!少し尻が痛みます!もう少し穏やかな運転を!荷物は無事ですが肝が冷えました!」
「すまん!もう少し辛抱してくれ。まもなく王都につく。どうやら最近魔王軍が攻めてきたらしくて道がデコボコなんだ!危険物の扱いは注意してくれ!」
どうやら弟のルルテオにとってはこの揺れは些か激しいようだ。父は私達より搬送中の荷物が心配であるようだがそれも致し方ない。何せ現在運んでる物資は危険物も危険物。空気に触れた瞬間に発動する最強の爆裂魔法を放つポーションなのだから。それが100本あれば世界を脅かす魔王軍であれ即座に撤退する代物だ。取り扱いは厳重にすべきだろう。
ちなみに爆裂魔法とは現在知られている魔法の中で究極の破壊力を持つ最強の魔法だ。その威力は究極の何違わず一軍を消滅させてしまうとされている。そしてその威力に違わず莫大な魔力を消費するため並の人では扱いきれず、長く生きた魔族でも相応の実力者でなければ扱えないためネタ魔法とされている。
そんな魔法を発動させるポーションは危険物以外の何物でもない。そのため爆裂魔法に耐えられない弟は搬送中の物資に必要以上に神経を尖らせていた。
「ふぅー。何とか無事か。まったく魔王軍もそうだが王国軍にも困った物だ。争うのは構わんが民の事も考えて欲しい。我等行商人にとってこんな街道は溜まったものではない!特に俺にとってこの衝撃は勘弁してほしい。一撃が大ダメージな上に危険物の運搬は死活問題だ!下手したら俺が死んでしまう!」
弟の言い分は間違っていないだろう。しかし私は些か不満だ。
「すまんって!帰りに温泉に寄ってやるから勘弁してくれ!ちなみにリリティはどうだ?平気か?」
リリティとは私の名前だ。父としては私の無事を確認したいのだろうがまったくもって過保護過ぎる。この程度私には造作もないと言うのに。
「ご安心を父上!姉上は表情を変えずに三角木馬に跨がっています!母上は如何ですか!?」
「そうか!まだ無事か!身の危険を感じたら迷わず殴れ!少しは時間を稼げる!ママは少し危ないが俺がいればどうとでもなるから気にするな!」
娘を迷わず殴れなんて!
「っんん!」
我が父ながらご褒美すぎる!我が弟に殴られでもしたら私は昇天してしまう!
「父上!それは姉上にはご褒美です!」
「わかってる!それでも現状維持にはなる!つーか何で三角木馬に跨がってるんだよ!あれはママ専用で仕方なく取り付けた奴だぞ!?」
「知らねぇよ!最初っから跨がってたよ!つーかそんなもん作るなクソ親父!」
「仕方ねぇーじゃん!ママに頼まれたんだもん!」
「いい歳したおっさんがもんとか言うな!」
『ん!んほぉーーーーー!』
「エアリスーーーー!?頼むから夜、せめて宿まで待ってくれ!このままだと俺が門番に捕まる!?」
どうやら母上は限界に近いようで父上に迫っているようだ。凄く羨ましい。ちなみにエアリスとは我が母の名前で私達兄弟からは母上、父からは普段ママと呼ばれている。趣味は私と同じだ。
「んっ!んん!」
「どうしましたララティーナ。辛いですか?」
「ん!い、いや凄く良い!……がダスティネス家の者としてこれしき!!」
ふとこの行商に同行した従姉のララティーナ。ララティーナ・フォード・ダスティネスが声を上げる。彼女は私と同じ木馬に跨がっているが慣れていないのか顔を赤く染めつつも満更でもなさそうだ。しかしダスティネス家の者としての矜持か言葉は抵抗しているふりをしている。
「ララティーナ、あなた自分で良いといってますよ?気持ちいいのでしょう?今ならルルテオに私ごと衣服を剥がせて猿轡を着けさせる事を許可しますわ!」
「な!私はそんな!?る、ルル!たのみゅ!」
「やらねぇよ!何が悲しくて双子の姉を剥がなくちゃいけないんだ!そ、それにララティーナに、な、ななな何でんなことしなくちゃいけねぇんだよ!従姉にそんな事するわけないだろ!」
まったく素直な娘だ。流石は我が従姉。私もそうだが母と同じ趣味の様で欲望には忠実だ。まぁ忠実でなければ父上特性の三角木馬に私と一緒に乗るわけがないか。ちなみにこの三角木馬は馬車内で母の欲望を満たすために父が行商中に作り上げた物だ。今では母が父上から離れないためもっぱら私専用でたまに行商に参加するララティーナの特等席となっている。昔は弟が暇潰しに私に悪戯をしたり重りを着けたりして楽しんでいたが私が本気で絶頂してから残念なことにやらなくなった。我が弟ながら優しいのかヘタレなのか。
ちなみに弟はララティーナに惚れていて、ララティーナも弟を意識している。まぁ性質的に弟は父によくにているしララティーナも母と私に似ているため相性は抜群だろう。容姿的にもララティーナは私と母に良く似ているし、違いと言えば私達母子は銀髪でララティーナは金髪なくらいだ。
『んおおお!!?!?』
そんな中で突然強い衝撃で私達は三角木馬の上を滑る。あまり慣れていないララティーナはともかく私や外に父といる母まで同時に声を上げてしまう程の刺激だ。あまり強い衝撃に打たれ弱い弟はきっと失神しているだろうがかろうじて積み荷は守ったようだ。
「リリティ!ルルテオ!ララティーナ!無事か!?ママは気絶しちゃったから中に送るぞ!モンスターにかこまれちった!」
今のは危なかった。モンスターにかこまれ急に馬車が止まったから故の衝撃だったらしい。案の定打たれ弱い弟は気絶し、ララティーナも木馬を跨いで急激なスライドを与えられたためアへ顔で気絶している。私はかろうじて意識を保っているが父に長年連れ添った母が気絶するほどの衝撃は羨ましい。出来れば変わって欲しいが無理なので諦めるしかない。
「父上!ララティーナとルルテオは気絶してますが皆商品共に無事です!」
「わかった!ママを頼むぞリリティ!俺は邪魔なこいつらを掃除してくる!」
「ぐぎぎぎぎ!モンスターが妬ましい!父上にしばかれるなんて母上を除いてモンスターしかいないなんて!私!モンスターに味方したいです!」
「黙れドM娘!」
「っん!」
その一言で満たされる!そしてそれ以上を受ける母が羨ましい!全く罪な父だ。娘の私にこんな感情を持たせるなど。
あぁ、いつか現れるだろうか。父の様な鬼畜男は。現れないのならいずれ母は敵となるがそれは難しい。何せ父と母は始まりの町アクセルにおいておしどり夫婦で通っている。娘である私が間に入っては修羅場以上の事になり得る。弟においてもそうだ。ルルテオはマザコンのシスコンではあるがそれ以上にララティーナに惚れている。
あぁ、早く来ないかな、私の旦那様は。理想としては鬼畜で他人からカスやらクズなど呼ばれつつも運が良い商才に恵まれた人物が良い。それがあれば満足だ。
ちなみに我が父は過保護な上に世界中の誰より強い。魔王すらも商売相手にし、魔王軍すら嫌う紅魔族とも取引し、更には世間一般で信仰されるエリス教徒、ではなくキチガイで知られるアクシズ教徒を熱心に信仰する狂信者。その力は父、ジョージ・フォン・ダスティネスが本気を出せば世界征服を余裕でこなせる程と言われており、現在の均衡は父が居なくなれば崩れると言われているほどに凶悪だ。
そんな父だ。モンスターの軍勢は数分で駆逐され、その討伐賞金は我が家、ひいては本家であるダスティネス家に送られた。
さらにちなみにではあるが我がダスティネス家は王族の懐刀とされる大貴族であり私達は本家をフォード・ダスティネスとし分家としてフォン・ダスティネスと名乗っている通り貴族でもある。
父の趣味、と言うか出自より1商人として生活しているが実は割と凄い名族だったりもする。
まぁ所詮分家であり、顔の広い商人であると私は認識していて、それを継ごうと思ってた私は考え足らずだったのだろうと思う。
あの私の理想の旦那様が現れるまでは気にもしなかったのだ。
最後までお付き合いありがとうございます。
本来は父親が主人公だったのですが、何故か娘が1話の語り部となりました。
もともとダクネスが好きな私の妄想なので深く追及しないで頂けると幸いですが、妄想が止まらなかったと言えば皆様なら理解して頂けるとありがたい!