青髭ジル・ド・レェが何故か良識を持っていたら   作:歩く好奇心

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 ノリなので続くかは分かりません。
追記)すいません、誤字がかなり見つかりました。修正しました。
追記2)口癖を直しました


始まりの裏切り

 

 

「これは………一体何てことなのですか」

 

 下水の通る、薄暗い闇の中でした。そんな中、一人の長身の男が、片手で自身の顔を覆いましては、静かに嘆きの言葉を呟きます。しかしそこにはもう一人。若く、軽薄な印象を思わせる青年が、目の前で嘆く彼が見えていないように喜びを示してははしゃぎます。

 

「スッゲスッゲェ!!悪魔をほんとに呼び出しちまった。超クールな展開じゃんこれ!!」

 

 長身の男は嘆くの止めます。爬虫類を感じさせる目付きながらも、その細められた瞳は知的な厳格さを伴わせました。

 

「………どうやら、私を呼び出したのは君のようですね」

「そうそう!俺俺っ!俺、1度でいいから悪魔ってのを見てみたくてさ、さらに欲を言えば友達にもなってみたいなって。だって悪魔と友達とかマジクールだと思わない?」

「悪魔?」

 

 その言葉とともに、男は自らの服装に目がつきました。厳めしい黒色のローブを纏い、派手な紫と黒のシマシマ模様の首巻きです。そんな自身の服装は、どこかの物語にでも出て来そうな、怪しげな魔術師を彷彿させる、まさに怪人の格好と言えました。

 

「たしかに、足元の血の紋様を見ますにも、君は悪魔の類を召喚する算段でもしていたことが伺えます」

 

 見下ろせばそこには、夥しい血液でえがかれた魔方陣。長身の男は冷たい視線をもって、手放しで喜悦を示す目の前の若者を見下ろします。

 

「よくもここまで、悪趣味なものを用意したものです。君の歪んだ執念ぶりがよくわかりますよ」

「そうそうっ、そうなんだよ!いやぁ苦労したなぁ。でも、ま!その苦労もまた甘美なものだったよ。こんな結果をもたらしてくれるなんて、俺は何て果報者なんだろぉ!」

 

 若者は男の話を聞いているようで聞いていません。ただひたすらに、クール、クールと、叫びましては喜んで小躍りするの繰り返し。若者の瞳は狂喜に満ち溢れてました。

 

「まさに旦那は俺の願いを叶えてくれたって訳っ!くーっ、超感激っしょ!!悪魔と知り合えるなんて、普通の人生に1度だってないよ。魔王か悪魔の加護にでも恵まれてるとしか思えないや!」

「君はサタニストですかね。人の身でありながら、自らの種を害する害悪を敬愛しますか」

「そうっ!さっすが旦那、俺のことわかってるぅ!」

「……君もまた、狂うことを選ばざるを得なかった者の1人なのでしょうか。君は、自らが滅びへと向かっていることを理解していますか?」

「滅びの道とか、まさに俺にぴったし。俺はその道をバリバリ飛ばしてくぜぇ!

 あっ、旦那ってのはあんたのことだからね。旦那にはこの呼び方がぴったしだと思うんだっ」

「……なるほど、そうですか」

 

 噛み合うようで噛み合いません。男はか細く鼻を鳴らしました。そして、目の前のある光景を視界に収めますと、この若者はもうだめだと、男は確信を持ちます。

 

「御託は十分。少なくとも君の望みは今ここに叶ったことを保障しましょう。私はまさに君の言う、悪魔も吐き捨てるような魔術師です。」

「ま、マジマジ!?それって悪魔にも避けられるほどヤバいってこと!?くぅーっ、超クールっ!!」

「君の願いは、私と友人になること。この唾棄すべき、悪鬼のような愚か者の私とです……その理解に、間違いはないでしょうか?」

「え?なになに!?俺のこと、もう理解してくれたの?くぁーっ、ほんっと最高っ!!

 俺って昔いっつもさ、自分のことを誠心誠意ひたむきに自己紹介してんのに、理解されないことが多くってさぁ。

 今もう無駄だって分かってるからやってないけど、それでもこうしてみると、理解してくれる人がいるってのは、素晴らしいことだなぁ」

 

 うんうんと、若者の青年は腕を組みまして、自己完結した感心と納得を表します。

 

「あ、そうそう、旦那にプレゼントがあんの。遅れてごめんね、俺ってばつい嬉しくって」

 

 そう言って青年がじゃじゃーんと、両手で指し示しましたのは、胸や腹が捌かれ、内臓が赤い鮮血とともに飛び出した少年少女の遺体、云わば生け贄の供物ともとれるものでした。

 

「悪魔の旦那ならこういうの喜ぶと思って、俺チョー張り切ったの。どうどう、チョーイカしてない?」

 

 見て見てとばかりに、少年のはらわたを掴んでは見せ付ける若者の顔は邪気のない子供のような笑顔でした。しかし、男は厳めしい静かな顔を崩しません。そして男は目を瞑りました。

 

「その純粋さが恨めしく思いますが、確かにこの少年少女は私のために用意されたようで。君のその目に孕む狂気、歪み、そしてその捻れた誠意は確かに私が受け取りました」

「ほんとに!? やったぁぁぁ!!!もうこれで俺と旦那は相棒よっ、よろくなっ、旦那っ!」

 

 自身に向けられる青年の笑顔が、男にはとても苦痛に感じます。しかし、自分には、この歪みに歪みきった若き青年を否定し、軽蔑し、そして人道を説くなど出来るはずがないと、男は内心首を振りました。

 私には、その資格がないのだ。

 

「この度の聖杯戦争にてキャスターのクラスをもって参上つかまつりました。我が名はジル・ド・レェ。青髭のジル・ド・レェ。

 かつて聖女ジャンヌとともに戦いを駆け抜く栄光に恵まれたにも関わらず、自らの脆弱性に落ち崩れ、情念のままに千を越える少年を陵辱し、殺害した……救えない愚か者、それが私です」

「千人とかすっげぇっ!?さっすが旦那っ。格が違うねぇ、あっ、俺、雨生龍之介」

 

 自らの罪を省みるように、静かに真名を告げるジル・ド・レェ。ですが、そんな彼の重々しげな空気は一切吹き飛ばすよう、龍之介は彼の恐ろしげな過去の吐露に狂喜乱舞するのでした。

 

「そうですか、雨生殿。

 ………ならば、君の友人となる私はジル、もしくは、先ほど君がつけたような旦那でも構いません。好きに呼んでください」

「おっけーっ!あ、ならさ、俺のことも親しみを込めて龍之介って呼んでくれよな」

「……了解しましたよ、龍之介」

 

 龍之介はジルの手をとって、ブンブンと勢いよく握手します。彼はもはや有頂天でした。それも当然。憧れの悪魔のような異界の人物と、こんなにも難なく友人の契りを結べたのです。落ち着けというほうが、無理な相談なのです。

 

「此れから超クールで、超イケてる未来運命が俺達を待ってんだっ!!旦那っ!これからその聖杯戦争?ってのに全力を尽くそうなぁ!」

 

 龍之介は楽しげにジルの肩に手を回します。すると、騒がしい龍之介とは違って、静かな口調を崩さないジルはこんなことを言い出します。

 

「私は龍之介に仕えるサーヴァントです。そして君の望みを叶えることが、私に課せられた義務でもあります」

 

 ジルは先ほどから調子を変えない、静かな声音で言葉を紡ぎ、龍之介へと向かい合いました。

 

「義務なんてノンノン!ナンセンスだぜジルの旦那っ。そんな知的な静かさを保ってるけど、俺にはきっちり伝わってますからねっ、旦那の内なるセンセーショナルな狂いっぷりはっ!!くぅーっ!あえて無害で紳士な皮を被るその姿勢、さすがは千人も殺した悪魔っす」

 

 龍之介は相変わらず話を聞きませんが、ジルはそのまま更に言葉を重ねます。

 

「そして……我が義務は、既に果たされました」

 

 ぶしゃっ、と、肉皮を破るような水しぶきの音が響きます。同時に、龍之介が

 

「え?」

 

 と、自らの腹部に顔を向けました。

 

「私は言いましたね。君の願いは叶えることが義務と。私と龍之介は友人です。故に、龍之介の願いは果たされた」

 

 そして、ずしゃっ、と、さらに肉が引きちぎられる、耳を覆いたくなるような音が続きました。龍之介は凝視しました。引き抜かれたジルのその手、ジルのその手には鮮血にまみれた、幾重もの自身のはらわたが、こんもりと積まれていたのです。

 

「あ……あぁ………」

 

 ジルの手に持つはらわたを、龍之介は震えるその手で、ぶるぶると掴み上げます。

 

「こうして主従の関係を結んだのも何かの因果でしょう。すみませんが、私の勝手な独善のままに、君の友人として、そして私の過去の贖罪として、私は君の命を剥奪しました。……恨んでくださって結構ですよ」

 

 しかし、聞いているのか、いないのか、龍之介は自身のはらわたを見るばかりです。そして、

 

「ちょ、ちょーキレイじゃん……はは…は…旦那はやっぱり最高だ……」

 

 どしゃっ、と、膝を地面に屈しますと、龍之介はそのまま重力に任せて仰向けに倒れます。その瞳に生気はなく、生者の証しはありません。しかし、自身の死を迎えた彼のその表情は、どこまでも澄んだ空気のごとく、狂喜に満ちた笑顔でありました。

 

「…………」

 

 1人の若者が死に絶え、残された者はジル1人。彼は厳めしい表情に、僅かな苦みを示します。龍之介はジルにしてみれば、自身の過去の生き写し。いわば、目を背けたくなるような過去そのものを、むざむざと眼前に突きつけられた錯覚を覚えさせたのでした。

 

 龍之介、君は最後に笑えていました。狂気に犯されていても、それは恐らく、君にとって幸福なものだったでしょう。そうじゃありませんか?

 

 ジルは生前、自身の最後を思い浮かべ、そしてゆっくりと首をふりました。

 

「幸福、ですか………本当にこれでよかったのでしょうか……」

 

 暗い部屋の中、彼は前方へと視線を向けます。そこには先ほど見せ付けられた、少年少女の血まみれの遺体。彼は丁寧な手つきで二人の遺体を抱えると、そのままゆっくりとした歩調でその場を後にし、そして闇のまみれた通路の奥へと消えていきます。

 

 そして後に残ったものは、惨劇を証明する血に汚れた地下の部屋。この惨劇の部屋が発見されるのがいつになるのか、それは誰なもわからないことなのでした。

 

 

 




 アニメの彼はアレだけど、カードっぽいのに描かれたキャスターは格好いいような気がします。それだけ。
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