ISを動かした幼馴染に巻き込まれる話 作:帝国過激団
結局あの後、授業は滞りなく進み、俺は今は放課後を迎えている。
昼休みに食堂に行ったらモーセの海割りや大名行列が見えたが… まぁ特筆すべきことじゃないだろう。
そして、寮へ帰ろうとしている途中。
「ハアイ、浅間くん。 元気かしら?」
「こりゃあどうも、更識先輩。」
目の前に現れたのは水色の髪に赤い目をした先輩。
この学園に生徒会長であり、最強。
ちなみに俺に襲撃をかけてきたのは彼女である。
そして彼女がバッと、手に持った扇子を広げるとそこには『風紀委員』の文字。
「風紀委員、なってくれない?」
「随分と唐突ですね、どうしてまた?」
嫌な予感がするが気のせい、きっと気のせいだ。
「いえ、男子が2人も入学してきて、いろいろと問題が起こるかもしれないじゃない? 今の生徒会の人数じゃ対応できないから、風紀委員を立ち上げようと思ってね? それで、風紀委員長はある程度の知名度があって、実力も伴っている人物がいいなぁ…ってなったら浅間くんじゃない?」
「実力云々は買い被りですよ。 しかし… 風紀委員…」
あれ、待てよ? 確かに委員会ってクラス代表になれなかったよな?
閃いた。
「一週間後に答えを出させていただきます。」
「…ああ、なるほど。 そんなにクラス代表になりたくないの?」
「面倒くさそうですんで、だったら風紀委員長やらせていただきますよ。」
この学園の校則は結構ゆるいから仕事も少ないだろう。
部活に入る気もないので、風紀委員に所属さえしていればたまに働くだけで大丈夫なはずだ。
「それじゃあ俺は部屋帰りますんで、また。」
「ええ、今度はもっとお喋りしましょう?」
微笑みながら言う更識先輩。
何つーか… つかみどころのない人物だと思う。
…止めだ、あの人について考えても何も浮かばねえ、寮に帰ろう。
「にしても… 何であそこで舌打ちなんぞしちまうかなぁ…」
自分の行動を悔いながら歩いていると、自分の部屋の前に着いた。
同室は一夏だろうし、一夏は一週間は自宅から登校するらしい。
中には誰もいない筈だ。
鍵を開けて、扉を開き、靴を脱いで部屋にあげると中にいたのは…
「あー、相川さんだっけ?」
「あ、浅間くん!? 何でこの部屋に!?」
出席番号1番の相川さんだった。
おい、一夏と同室じゃねえのかよ。
「…何ていうか、こう… よろしくお願いします。」
「よろしく… お願いします?」
お互い深く頭を下げて、少しの沈黙が流れた。
♤♠︎♤
「いやー、驚いたよ。 まさか浅間くんが同室なんて。」
「俺も驚いたわ。 なぜ女子と同室になったよ。」
結構打ち解けた。
うん、こっちが話題振らなくても話してくれるから楽だわこの子。
「っていうか、浅間くんぬいぐるみなんて持ってるの?」
彼女がそう言って指で示すのは、テーブルの上に置いてあるぬいぐるみだった。
「ん? ああ、あれは自分で作ったんだよ。」
「え!? 嘘!? 触ってみてもいい!?」
「いいぞ。」
許可を出すと、彼女はぬいぐるみを触り始めた。
まあそれなりに自信のある出来のウサギだ。
「女として負けた気がする…」
「そんな裁縫なんぞいらないだろ、掃除と料理ができればいいんじゃねえか?」
「浅間くんはその2つはどうなの…?」
「掃除の方は… 小2ごろからずっと自分でやってるから結構得意だな。 料理はそこまで得意じゃないが菓子作りには自信がある。」
俺の言葉を聞いて、がっくりと項垂れる相川さん。
「完璧に… 負けた…」
「…今度教えようか?」
「是非! 是非とも!」
取り敢えずフォローを入れてみたら、予想以上に反応してきて驚いた。
「あ、俺時間だからちょっと出るわ。」
「え? なんの時間?」
「アリーナの使用許可、春休みからここに入ってたからその時に予約取っといた。」
「へぇ… あれ? っていうことはISも何度か動かしてるの?」
「まあ… 100時間は動かした。」
マジで100時間動かしたのだ。 ちーさんを怒らせて連行されて、を繰り返した結果操作時間が100時間を超えていた。
「えー、嘘でしょ?」
「…マジだ、大マジ。」
「どれだけハードにやってたの…」
「まあ、そのことについては後で話そう。 そんじゃあ行ってくるわ。」
「あ、うん。 いってらっしゃい。」
部屋の鍵を持って外に出る。
アリーナの使用時間は2時間ほど、射撃練習と近接練習をするには少し足りないがまあいい。
「あ、すいません。 予約取っておいた浅間ですが…」
「ああ、あなたね。 はい、どうぞ。」
と言って、ロッカールームの鍵を手渡される。
まあロッカールームで着替えなくとも、拡張領域の中に収納されているISスーツを装着すればいいのだが。
それにしても受付の先生が女尊男卑をする人じゃなくて良かった。 最悪、予約すら取れないかもしれなかったからな。
ロッカールームでISスーツを着用してピットに出る。
「んじゃまあ… 目標は3つぐらいでいいだろう。」
自分の貸し出し区画の操作をして、バルーン型の目標を3つ用意する。
ISを装着して、カタパルトからピットに出る。
そしてアリーナ内に飛び出した瞬間、アリーナ中の視線が俺に集まった。
…予想外だった。 まあそりゃあそうなるだろうとは思う。
そのままISで目標のところまで飛んでいく。
距離は30mぐらいでいいだろう。
目標との距離を測り、ルイス軽機関銃を二丁実体化させた時に、背中に衝撃が走った。
「うっ!?」
振り向くと、そこにはラファール一機と打鉄二機。
ラファールはアサルトライフル一丁、打鉄はどちらも近接ブレード『葵』を装備している。
その先頭に立つ、ラファールに乗った女がニタニタと笑いながら言う。
「あなた、イギリス代表候補生と試合をするそうじゃない? だから、私たちが練習を手伝ってあげようと思ってね?」
見え透いた嘘だ… やりたいのは3人でのリンチだろうが。
まあ、やれる限りは戦ってやろう。
ってかそんなに話広まってんのか。
「んじゃまあ… お願いしますわ!」
ラファールの女に突っ込んでいく。
それに反応してラファールが銃を構え、両隣にいた打鉄が剣を振るおうとする。
……?
「あの、先輩。 手加減してるんだったら俺も抜きましょうか?」
「は!? 何を言ってるの?」
ブレードを2つとも避けて、射撃をかいくぐってラファールの腹を蹴り飛ばす。
「うぐっ!?」
「先輩、もーちょい本気でいいですよ?」
「ふ、ふざけないで!」
おかしい、ラファールも打鉄も、こんなに遅かったか?
右側から接近してくる打鉄の動きが、いつもよりも遅く見える。
…そうだった。 俺、いつもちーさんと練習してんだった。
成る程、打鉄は普通瞬間移動まがいのスピードで背後に回り込みはしないのか。
「あー、成る程。 んじゃこっちも行かせて貰います。」
ブレードを振るう打鉄の側頭部をルイス軽機関銃で殴りつけ、ひるむ先輩に銃口を向け、両手の引き金を引く。
「くっ!」
もう一機の打鉄が来る前に、目の前の打鉄に向けて飛ぶ。
ルイス軽機関銃をしまい、高熱によって敵にダメージを与える、ヒートホークを取り出しながら切りつける。
首元を狙って振り抜き、もう一度振りかぶって脳天に振り下ろす。
そのまま打鉄は地面に落下する。
ラファールの射撃が横から飛んできた。 左手で打鉄の首を掴んで盾に使って防ぐ。
「なっ、何を!」
「甘えよ。」
ヒートホークをしまい、今度は大口径の対艦ライフルを取り出す。
そしてサイトの中にラファールを合わせて、射撃。
轟音が響くとともに、ラファールが後ろに吹き飛んだ。
「ああぁぁぁぁぁ!!」
ブレードを振りかぶりながら、もう一機の打鉄が突進してくる。
だが遅い。 左手の打鉄を叩きつけ、手榴弾を取り出してピンを抜き、そこから離れると、程なくして爆発が起こった。
おそらく、最初の打鉄はSEを全損させただろう、もう一機の打鉄にも、ラファールにも、それなりに威力の高い攻撃を当てている。
「喰らえ!!」
叫びながら目の前に飛び出してきたのは体勢を立て直したラファールだ。
右手に持っているのはアサルトライフルのヴェント、左手はショットガンのレイン・オブ・サタディか。
敵が引き金を引く前に、すれ違うように
まだ出来が不完全なせいで、加速や距離はただの
「なっ!?」
ラファールの横を通り抜け、振り向く前に
「ぐあっ…」
爆発的な加速からのタックルで、ラファールが吹っ飛ぶ。
そして、ヒートホークを再度取り出し、右手にヒートホーク、左手に対艦ライフルを持つ。
三発目の
体勢を立て直そうとしているラファールの背中を切りつけ、叩き落とす。
そして右手の対艦ライフルを構え、照準を合わせる。
-ズガァン!!-
銃、というよりかは砲と言った方が伝わりやすいような轟音、銃弾は真っ直ぐに進み、巨大な銃弾がラファールの頭部に着弾。
「が…あ…」
おそらくSEを全損させた。
足元に転がるラファールを掴み上げ、先ほど手榴弾の爆発に巻き込んだ打鉄の方に投げ渡して睨みつける。
「どうします? まだやりますか?」
「…くっ!」
先輩は苦虫を噛み殺したような面をした後、ラファールを地面に置いて近接ブレードで切り掛かってくる。
「遅いっつーの。」
近接ブレードの間合いギリギリで後ろに下がり、刃が俺の体の前を通過した瞬間、対艦ライフルを槍のように突き出し、打鉄の腹に叩き込む。
「ぐっ…」
そして銃身を蹴り上げ、打鉄を対艦ライフルで持ち上げた状態で、引き金を引く。
-ズガァン!!-
対艦ライフルの銃弾はゼロ距離で打鉄に搭乗する先輩の腹に炸裂し、打鉄が解除される。
絶対防御により操縦者に傷はつかないが、それなりの衝撃を受けただろう。
「んじゃあ俺、自分の練習に戻りますんで。 ご指導、ありがとうございました。」
顔を真っ赤にする先輩に背を向け、ターゲットの方に向かっていく。
さて、イギリスの第三世代機対策の練習を始めるか。