ISを動かした幼馴染に巻き込まれる話 作:帝国過激団
-ジリリリリリリリッ!!-
鉄平は爽やかな朝に相応しくない、けたたましく鳴る目覚まし時計を叩き割る勢いで止め、布団から身を起こした。
3月の朝、立春を迎えてはいるがまだ肌寒く、朝は布団から出たくもない。
「かっ怠ぃ…」
カーテンの隙間から漏れる日光が嫌が応にも意識を覚醒させ、5:30という受験の済んだ中学三年生としては少し早い時間に目覚めた。
眠い目をこすりながら階段を下りる途中で、昨日担任の言っていたことを思い出す。
「男性IS起動検査、か… なんでクソ寒い体育館でんなことしなけりゃなんねえんだ…」
一昨日、公立前期試験の日に自分の幼馴染である織斑一夏がISを起動してしまったことにより、世界中でISを動かせる男性を探す検査が行われていた。
将来はISに関連する企業に就職したいと思っている彼からすれば、ISの現物を見れるのは嬉しいがそれ以外はどうでもいいのである。
そして、何気なくつけたテレビのニュース番組には例の幼馴染の顔。
「おーおー、また今日もあいつのニュースやってら。 なんで毎朝見知った野郎の顔を見なければいけないのかねぇ…」
トーストを焼き、マーガリンとジャムをつけて齧りながら、朝に何をするのかを考える。
先日のテストの自己採点の結果、特待枠での合格には申し分ないほどの点を取れていたし、成績も完璧。
そもそも前期で特待枠合格ができなかったら後期は受けずにアルバイト。
手持ち無沙汰になった彼はネットサーフィンに興じることにした。
☆★☆
「ん、もうこんな時間か」
ブラウザを閉じ、時計を見やると既に登校時間の20分前になっていた。
固まった体をコキコキと音を鳴らしながらほぐし、立ち上がる。
「えーっと、制服はっと」
押入れの中のハンガーにかかったシャツと制服の上着を取り出し、畳んである制服のズボンを広げて履く。
もうそろそろこの制服にも別れを告げるのだ。
「3年間、短かったなぁ…」
思い返すと、それなりに充実していながらも短い3年間だった。
きっと、完璧に全ての記憶が残っていれば途方もなく長く感じるんだろうが、断片的な記憶のみを思い浮かべると途轍もなく短く感じる。
というより俺は卒業式でも無いのに何言ってんだ。
少し毛が潰れた歯ブラシに歯磨き粉を適量、ゴシゴシと歯を磨きながら鏡を見る。
寝癖は無し、昨日遅くまで起きていたせいか少し隈があるが、いつもの事なので気にしない。
歯を全て磨き終わると、歯磨き粉を洗面台に吐き出し、口を濯ぐ。
ガシガシと頭を掻きながら、軽い鞄を持ち上げる。
受験が終わった今ではもう殆ど授業は無く、自習やオリエンテーションのみ。
当然持っていく教科書類も少ないので必然的に鞄は軽くなる。
「行ってくる」
誰もいない家に声を掛けながら家の外に出て、鍵を閉める。
クソ冷たい風が吹いて、少しだけ震える。
立春を迎えどまだ気候は冬のように思えて、さらに今日にIS起動検査があることを思い返すとさらに嫌になる。
唯一の救いは自分の名前が"浅間 鉄平"である事。
五十音順で出席番号を決める俺の学校では、自分の出席番号は2番。
それでも前のクラスのやつが残っていて少しは待たされるだろう。
「憂鬱な…」
IS検査自体は良い、むしろ乗りたい。 高校に行っても蘭と過ごしたい。
「でもあり得ねえしな。 もし乗れたとしても男子は2人だけだ」
あり得ない事を仮定して憂鬱になるのはやめよう。
憂鬱なのは寒い中で待つ事だけ、俺がIS学園に入学などはあり得ないのだから…
◇◆◇
「あっ、泉谷先生、2組の検査お願いします」
隣のクラスの男子が、2組を呼びに来た。
2組の男子は一旦自習を取りやめ、体育館に向かう。
ザワザワと音を立てながら13人ほどの集団で歩いていると、その中から"ハーレム"だの聞こえてくるが、お前が言っても一夏に全部取られるだけだろう。
俺がそう指摘すると、そいつは顔を覆って
「止めろ… 止めろよ鉄平。 夢ぐらい見させてくれ…」
と言っていた。
何を隠そう、その人物は弾なのだが。
「ってか良いよなお前は! 彼女がいてよぉ… いや、あんな奴だが」
「うるせえよ、ってかお前の妹だろうが。 そして"あんな奴"ってなんだ"あんな奴"って! 滅茶苦茶可愛いだろうが!」
「あんなののどこが良いんだよ!」
ほう…俺に宣戦布告をするか… よろしいならば
「そのオーラを引っ込めろ。 目付き悪いから睨まれると滅茶苦茶怖いんだよ」
「貴様は… やってはいけない事をした…」
「悪い、悪いって! ってか兄が妹に何言っても自由じゃ…」
「まあ良いだろう。 流石の俺もお兄様にそこまで噛みつきはしない」
「おう、よろしく頼むぜMy brother」
妙に発音良く言った弾にチョップを食らわせていたら、体育館に着いていた。
隅の方に仕切りがある、おそらくあの中にISがあるのだろう。
俺たちはぞろぞろと仕切りの前まで行って、検査官の女性の支持にしたがって番号順に並ぶ。
寒い、寒いよこの野郎。
ようやく1組の検査が終わり、2組の検査に入った。
「相応 翔」
俺の一つ前の番号の、出席番号で必ず1を取る事に定評のある翔が呼ばれた。
翔はサムズアップをしながら仕切りの中に入って行き、次にはしょんぼりとした顔で帰ってきた。
「浅間 鉄平」
同じく、出席番号1、もしくは2を取る事に定評のある俺が呼ばれる。
仕切りの中に入ると、そこには鎮座するISがあった。
これはラファール・リヴァイブか。
「じゃあ、このISに触れて」
「はい」
試験官の女性の指示に従って、ISに右手を触れる。
その瞬間、さまざまな情報が俺の脳内に流れ込んでくる。
光に包まれたと思ったら、俺は気づいたらISに乗っていた。
「まさか… 2人目が…」
2人目の男性IS操縦者が現れるとは思っていなかったのか、試験官の女性は少し唖然とした後、どこかに電話をかけ始めた。
俺はISを解除して、地面に降りる。
そして仕切りから上半身を出し、後ろで並んでいる奴らにサムズアップをした。
「マジかよ!」
「畜生鉄平この野郎! …いや、待て。 俺たちも可能性がなくなったわけではない!」
「鉄平が乗れたなら俺らが乗れてもおかしくねえ!」
エキサイトする男子たちを尻目に、俺はISに目を戻した。
…え、マジで入学しなきゃいけないの?
♤♠︎♤
結局あの後、俺以外の適合者は見つからず、俺は1人でIS学園に送られた。
世界で最も規模の大きい学校と言われて、即座に納得出来るほどの大きさをもつ。
さて、俺はその学園の学園長室に通されていた。
皆もわかるだろ? あの、悪い事してなくてもこう言う部屋にいると滅茶苦茶緊張するの。
しばらく待っていると、良い服を着た初老の女性が現れた。
自己紹介の後に、俺にIS学園に入学してもらうこと、それと学園についての説明が施された。
一通りの説明を聞いた後は、応接間に通された。
何をすれば良いのかが分からず、少しの間ボーっと待っていると、黒いレディースのスーツ着た女性、一夏の姉であるちーさんが現れた。
「まさか… お前までISを動かすとは…」
頭を押さえ、ため息をつきながら、絞り出すように言うちーさん。
まあ、実の弟がIS動かした上に俺まで動かしちゃうんだからな。
処理だの何だのに追われて大変なんだろう。
「なんか… スンマセン」
「いや、気にしなくても良い。 しかしお前もIS学園に来るのか」
「そう見たいっすね。 ちーさんのクラスに割り当てられると良いんですが…」
ちーさんは現在、IS学園で教職に就いている。
おそらく一夏はちーさんのクラスになるのではないだろうか?
そのクラスに俺が入れると良いんだが…
「私がそうするように掛け合っておこう。 それと、今日は私が家まで送ろう」
「あ、はい。 ありがとうございます」
ちーさんは少し黙り込み、思いついたような顔をして俺に言う。
「だが鉄平よ。 このIS学園は思春期の男子としては嬉しいんじゃあないか?」
「… と、言いますと?」
「いやなに、周りが一夏以外女子だけなのだ。 俗に言うハーレムと言うものも作れるのではないか?」
「いや、大体の女子が一夏に持ってかれますよ。 ってかそんなことしたら蘭に殺されますし」
ちーさんは意外そうな表情をした。
「ふむ、昔からの知り合いの贔屓目なしに言っても、お前はそれなりに良い顔をしてると思うが?」
「いや、それでも一夏には敵いませんて。 それに俺、目付きも性格も悪いから大半には怖がられるでしょうよ。 実際ちーさんも顔は良いのに未だに男がいませんし…」
「ほう。 それは私の性格が悪いと?」
「悪いわけじゃあないんですが、男からしてみると強か過ぎるんじゃないですかね? ある程度の可愛げがないと」
笑顔とは威嚇の表情に由来すると言われるが、まさしく今のちーさんが浮かべるのはその表情だ。
この人にとって"恋人"や"婚期"などは地雷だったな。
「これでも気にしているんだが…」
俯いたちーさんがモゴモゴと何かを言う。 残念ながら聞き取れなかったので何を言ったのかと聞くと
「鉄平、お前も一夏に引けを取らないよ…」
と言われてしまった。 失敬な、あの歩くフラグ建設機の朴念神と一緒にされるなど。
「そもそも俺はもう彼女いますし、フラグも鈍感も関係ないですよ」
「そうだったな」
気を取り直したちーさんが顔を上げながら言う。
俺から視線を逸らしているが、時計を確認しているのだろうか?
顔も赤いようだ。
「何ですか、今の話題で顔赤くして、もしかして俺のこと大好きですか?」
「ば、ばっ、馬鹿を言うな! お前は弟の幼馴染だ、それ以上でも以下でもない!」
「いや、以上でも以下でもなかったら何なんですか…」
俺の最後の発言は無視され、車に連行された。
そんなところが持てない原因じゃ…
そう言おうとしたが黙って飲み込み、車の助手席に座る。
さっきの発言で場を気まずくしてしまった…
無言のドライブは約30分間続き、ちーさんは俺を家に送り届けて帰って行った。
読んでいただいてありがとうございます。
今のところちーちゃんはヒロインにするか迷ってるところです。
ちーちゃんとくっ付けちゃったら鉄平が彼女がいるのに幼馴染のお姉さんに手を出す最低野郎になるし… ここまでやって何もなしだと物足りない…