ISを動かした幼馴染に巻き込まれる話 作:帝国過激団
IS学園2日目、結局昨日の晩飯を食堂で取り、それだけで心が疲れてグッスリ寝ることができた。
いや、嬉しくねえよ。
そして朝早く起きて、寝癖を直し、歯を磨いてからパソコンを弄っている時に扉がノックされた。
「空いてますよ。」
そう言うと、扉がガチャ、と開いてちーさんが入ってきた。
パソコンを閉じて、椅子から立って対応する。
「おはようございます。」
「おはよう、鉄平。 ところで、今日からお前のISの訓練ができるが… やるか?」
「え、マジですか!?」
「マジだ。 アリーナの使用許可はもうとってある。」
なんだかんだ言って、IS学園に入学することは嫌でもISを動かすのは楽しみだったのだ。
いや、ロボットに乗って戦闘なんて男のロマンだろ?
「何時頃からやる?」
「今すぐにでも!」
ちーさんの問いに答える。
楽しみなことはとっておけない主義なのだ。 例えそれが逃げ出さなくてもな。
「ふむ、では朝食をとってからアリーナに向かうか。 少し部屋の外に出ているから急いで着がえろ。」
「了解!」
パソコンをシャットダウンし、ちーさんが部屋から出たのを確認してタンスからIS学園の制服を取り出す。
一応、これを着た方が良いだろう。
少し特殊な制服に苦戦しながらも、着替え終え、ベルトを締めて扉を開ける。
「お待たせしました。」
「おお、似合っているじゃないか。」
「そうですか? 俺、白は似合わないってよく言われるんですけど。」
「問題ない。」
2人で並んで寮の廊下を歩いている時に、思い出した。
「そういやちーさん! 俺のイケナイ本どうやって持ってきたんですか!?」
「いや、お前の鍵がたまたま見つかってな。 入り用かと思って荷物の中に入れておいた。」
「要りませんよ! 特にIS学園では!!」
「ふむ、では捨てるか?」
「…取っときます。」
少しの間の後、そう答えた俺の頭をちーさんは叩こうとするが…
昨日のことを思い出し、少し顔を赤くして脇腹に弱めに肘を入れてきた。
「チッ、またあの姿が見れると思ったのに…」
「黙れ。」
世界最強の冷徹な一言。
うん、従わざるを得ないよね。
暫く歩くと、食堂についた。
結構早い時間だから野次馬はいない。
よし、これでゆっくり食べられそうだ。
食券機の前で少し悩んで、サンドイッチとコーヒーを選んだ。
ちーさんは焼き魚の定食。
…普通逆じゃね?
その疑問を飲み込み、おばちゃんから受け取ったサンドイッチとコーヒーの乗ったトレーを適当な机に置くと、ちーさんは俺の向かいに座った。
合掌し、食べ進めていると、不意にちーさんが話しかけてきた。
「ところでIS学園の寮で1日過ごした感想はどうだ?」
「感想、ですか… ああ、上野動物園のパンダにでもなった気分ですね。 自分の名前をパンダ風に改名するか迷っていたところです。 昨日はパンダ風の名前を夜通し考えていて一睡もできませんでしたよ。」
上野動物園の〜、の下以外は嘘だが、ちーさんは少し笑って言い返してくる。
「ほう、それでいいアイデアは思いついたのか?」
「いや、それが自分の名前から取ろうとするとなかなかいいのが無くて。 よければちーさんが名前をつけませんか?」
「いや、止めておく。 お前は鉄平のままでいいよ。」
そこから会話が途切れ、食事に戻る。
殆ど同時に食い終わった俺たちは、トレーを返してアリーナまで歩く。
「ちーさん、俺のISってどうなるんですか?」
「今のところ、お前は量産機を与えられる予定だ。 ラファール・リヴァイヴと打鉄の2種類から選べる。」
「なるほど、俺のタイプ的にはラファールですかね。」
他にも、いろいろと質問をしながら歩いていると、アリーナについたところで、ちーさんが俺に鍵を渡してきた。
「ロッカールームでISスーツに着替えてこい。 この鍵のロッカーに入っている。 私はピットで待っているぞ。」
「わかりました。」
アリーナの案内板を見て、ロッカールームとピットの位置を確認して、ロッカールームに急ぐ。
それにしても男子のISスーツはどうなるのだろうか? 確か女子の物は結構露出が多かった気がするが…
出来れば背中は見られたくないしな。
そう心配をしながらロッカーを開け、中のISスーツを手に取る。
良かった、露出はかなり低い。 水着のラッシュガードのようだ。
設計者に心の中でサムズアップをしながらISスーツに着替える。
着替え終わって、少し体を動かしてみるとかなり体にフィットした。
ロッカールームを出て、ピットにつくと。
そこにはちーさんと、2機のISがあった。
先ほどちーさんが選択肢としていたラファール・リヴァイヴと打鉄だ。
「さて、どちらから乗る?」
「じゃあ… まずは打鉄で。」
ちーさんに乗り方を教えてもらいながら、鎮座する打鉄に乗り込む。
コックピットに背を預けると、頭の中に大量の情報が入り込んできた。
「良し、まずは歩いてみろ。」
「はい!」
ISには手足を拡張する装甲がついているので、やはり普通に歩行するのとでは感覚が違う。
一歩、右足を踏み出した時によろけてしまう。
「緊張するな。 IS自体がお前に合わせてバランスを保ってくれる。」
ちーさんの言う通り、段々とマシに歩けるようになってきた。
5分ほどで、少なくとも歩行は十分にできるようになった。
「次は走ってみろ。」
ちーさんにそう言われ、歩行のスピードを上げて走り出す。
バランスにはもう慣れたのでよろけることもなかった。
「最後だ。 あそこから出て空を飛んで見せろ。」
ちーさんが指差すのはピットの出口、戦闘用の空間に続く一本道だ。
どうやら地面が磁力を使ってカタパルトのようになっているらしい。
ちーさんの指示に従い、カタパルトに足をセットする。
「では、鳥になってこい。」
「はい!」
次の瞬間、勢いよく体が前に飛び出た。
そして、光が段々と近づいてくる。
地面を蹴り、PICを起動。
空に飛び出た俺の体と打鉄は、重力に逆らい空中にとどまった。
「おお!」
眼下にはかなり遠い地面、そして横と上を向けば空が広がっている。
なんと表現すればいいのだろうか、このISに乗っている時は、空が近く感じる。
もちろん、今飛んでいる時よりも高い場所に行ったことはある。
それでもだ。
ただ、堅牢さが売りの打鉄だけあって、装甲が多いのか少し動きが重い。
『良し、よく出来ているぞ鉄平。 それでは一旦戻ってこい。』
ISの個人回線でちーさんからの指示があり、俺はそれに従ってピットに戻った。
俺はちーさんのいる辺りまで歩き、打鉄をしゃがませてから停止する。
「さて、次はラファール・リヴァイヴに乗ってみろ。」
今度はラファール・リヴァイヴに乗り込む。
また、情報が流れ込む感覚だ。
なるほど、こいつは打鉄よりも【
反対に装甲は少ないようだ。
立ち上がり、先ほどと同じように歩行して、走る。
感覚は打鉄のときに掴んでいたので、すぐに乗りこなすことができた。
そして、次はいよいよ飛行だ。
カタパルトに接続し、勢いよく飛び出す。
そして地面を蹴り、PICを起動。
ちなみにPICとはパッシブ・イナーシャル・キャンセラーの略だ。
これは物体の慣性がなくなったような現象を起こさせる装置で、これと推進翼を使うことでISは空を飛ぶ。
『打鉄とラファール・リヴァイヴ、どちらがいい?』
「戦ったことがないので装甲の厚さについて考えずに言うとラファール・リヴァイヴですかね。 一応こいつも柔らかい部類ではないのでしょう?」
『その通りだ。 ラファール・リヴァイヴはパッケージによって遠〜近距離全てに対応できることが売りの機体だ。 だから拡張領域が広く、尖った性能もない。』
ISについての情報は知っていたが、実際に体感するのとではわけが違う。
空中を飛び回りながら、体を慣らしていく。
暫くの間空を飛んでいると、ちーさんからピットに帰って来い、と通信が入った。
速度を落としながらピットに着地し、指示に従ってISを解除する。
「では次は射撃の訓練だ。この画面から好きな装備を選べ。」
目の前の画面には、ジャンルごとに分けられた様々なISの武装が映っている。
ISの後付けの武装は、その武装のデータをバススロットにインストールし、それを実体化させることで使用可能になる。
さて、どの武器にしようか。
画面に目をすべらせていると、一つの銃が目についた。
89式小銃だ。
自衛隊、海保、SATなどで使われる日本製の自動小銃。
いや、ISの場合でも"made in Japan"は安心するだろ?
それだけの理由でこの武器を選び、ISのバススロットに二丁インストールする。
あとは拳銃も二丁、SOCOMピストルを。
最後にナイフをインストールして、ISに乗る。
「よし、では武器を実体化してみろ。」
「はい… どうやればいいですか?」
「出したい武器を思い浮かべろ。」
ちーさんに言われ、先ほどみた89式小銃を思い浮かべる。
すると、手にIS越しで重さが伝わった。
「おお!」
「5秒か… まあ、初見で無言ならばかなり早い方だろう。」
「無言ってどう言う意味ですか?」
「基本的に初心者は武器の名を言って実体化するんだ。 まあ、今回無言でできたから次からもそれで練習しろ。 目標は1秒以内だ。」
1秒か… 達成出来る気のしない目標だが、ちーさんの言うことだ。 恐らく練度を高めれば出来るものなのだろう。
「さて、では訓練に移ろう。 幾つかターゲットを出すからそれに向けて撃て。」
「わかりました。」
ちーさんの声とともに、7つのバルーン型のターゲットがフィールドに現れる。
すかさず、それに狙いをつけて引き鉄をひく。
ターゲットとの距離は約70、とても初心者が当てられる距離ではないが、ISのアシストによって狙いが定められて、弾丸は的に向かっていった。
次に89式小銃をしまい、SOCOMピストルを2丁実体化させる。
そして狙いを定め、射撃。
結果は全弾命中、だがターゲットの中心に当たる弾は少なかった。
ちーさんによるとISで大まかなアシストをしても、結局はパイロットの技量がものをいうらしい。
「よし、次は実戦だな。」
「…え? あ、相手は?」
「私だ。」
「嘘でしょ?」
今日初めて動かした、ようやく初心者になったような俺と、世界大会優勝者。
確実に負ける。
それどころか、ちーさんの試合を見たことがある俺には、一撃も喰らわせることが出来ないような気もした。
「良し、では始めようか。」
ピットから打鉄をまとったちーさんが飛んでくる。
その手には近接ブレードの"葵"を握られている。
ちーさんはISの世界大会、モンド・グロッソを、近接ブレードである"雪片"のみで勝ち抜き、優勝した。
その優勝には相手の
ISの戦闘では、先ほど言ったSEを全損させた方が敗北となる。
ISは攻撃を受けるとSEがバリアとなり操縦者を守る。
しかし攻撃を受けるごとにSEが減っていき、最終的には機能を停止する。
「では、試合… 開始だ!」