ISを動かした幼馴染に巻き込まれる話 作:帝国過激団
「試合、開始だ!」
試合開始の声を発しながら、ちーさんが消えた。
いや、消えたのではない、ハイパーセンサーがちーさんの場所を示している。
「背後か!」
振り向くと、そこにはブレードを構えたちーさんが居た。
俺はその瞬間に前方、つまりちーさんの方に飛ぶ。
俺がまともにやって勝てるわけがない、それならば行動の不意をつき、出来る限り善戦する。
体当たりによってSEが少し削れるが、問題ない。
「ほう、なかなかやるな。」
ISのハイパーセンサーがが視力をアシストし、獰猛な笑いを浮かべるちーさんの顔がよく見える。
笑いは元々、相手に対する威嚇を示すと言うが、成る程、これが笑いによる威嚇か。
ちーさんが体制を整える前に、89式小銃を構えて引き鉄を引こうとした瞬間。
「…へ?」
SEが全損した。
目の前にはブレードを振り切った体制のちーさん。
「…まさかの一撃ですか?」
「いや、一撃ではないぞ。 一瞬で5回切ったのだ。」
越えられない壁を感じながらも、ISから降りて立ち上がる。
やっぱ化け物だこの人。
するとちーさんもISから降りて、俺の前に立つ。
「まあ、一瞬でも私に本気を出させたのだ。 なかなかに良い発想だった。」
「まあ、世界最強のSEをほんの少しでも削れたんだから良しとしますか…」
腕を組むちーさんの不敵な笑みが、若干ドヤ顔に見えて少しだけムカついた。
良し、仕返しをしよう。
「ところでちーさん。」
「ん、なんだ?」
「めちゃくちゃ獰猛な笑顔だったけど、可愛かったですよ。 今度は可愛らしく笑ってくれませんか?」
俺が言い切ると、ちーさんは顔を赤くして、少しの沈黙の後。
「ふん!」
すばやい上下のワンツーを喰らわせてきた。
間違いない、これはホワイトファングだ!
だが、攻撃が来ることをわかっていた俺は、少し後ろに下がりながら両腕で顔を覆い、防御をする。
ホワイトファングを打った後のちーさんが懐に飛び込んできて、右の脇腹にリバーブローを連発する。
だがそれも予測済み! 右手で脇腹をガードする。
しかし次の瞬間ーーー
「グッ!?」
顎に衝撃が走る。
これは、まさか…
「ドラゴンフィッシュブローだと!?」
ボディーを連発し、相手の注意を引きつけた後に死角から頭部へのブローを放つ技。
その技をちーさんは習得していた。
「お、お前は… な、何を言っている!?」
完璧なボクシングの後に、顔を赤くして叫ぶちーさん。
昔、だいたい俺が中1の頃からこうしてからかうとこう言う風に、顔を赤くして照れるのだ。
何も本気で口説こうとしてるわけではなく、たまに仕返しとしてやっている。
まあ、その後に模範とも言えるボクシングを食らうのだが。
「し、真実じゃないですか… それにしてもボクシング技術本当にヤバイですね…」
顎を抑え、立ち上がりながら言う。
「ほ、本当にお前は昔から… 良し、今日はISで思いっきり扱いてやろう。」
あ、これ満足するまで付き合わされるやつや…
「良いでしょう! 今日中にはまともに一撃喰らわせられるようになってやりますよ!」
「ほう、ならば来い!」
お互いISに乗り込み、武装を実体化する。
この時に降参していれば、もっと楽に1日を終われたのかもしれない…
☆★☆
「うおおおおお…」
結局あの後、12時までずっと試合をして、昼飯を食い、その後アリーナに連行され、7時まで試合をして、晩飯を食い、10時まで試合をした。
おかげで実体化は0.5秒を切り、さらにISの操作技術である
結果としては、一度だけちーさんのSEを1/5まで削ることができた。
ちなみに、試合を終えたあと、ピットでちーさんがちょっとシュンとした顔でやりすぎだったと謝ってきた。
適度に休みはくれたし、その時の顔が可愛すぎたので許す。
その時に頭を撫でたら顔を赤くしたちーさんの利き腕での低空スマッシュが俺に炸裂した。
時計を確認すると、時間は10時。
まだ眠気が残っていたのでシャワーを浴びることにしよう。
パジャマを脱いで、新しいパンツを持って風呂場に行き、シャワーを出す。
手の先に当たる水が少しずつ暖かくなっていくのを確認し、浴槽のふちに座って頭から水流を被る。
「あ"あ"あ"あ"」
溜息と共に変な声が出る。
そのままぼうっとシャワーを浴び続け、立ち上がってシャワーを止めてタオルで体を拭く。
パンツを履き、タンスの中を探して適当な私服を選んで着る。
時間は気付いたら11時、俺は1時間シャワーを浴びていたのか…
財布を探していると腹がなった。
11時ならば昼飯を食べるのにもいい時間だ。
鍵を持って部屋から出て、食堂に向かう。
今日は… 親子丼にするか…
♡♥︎♡
俺があの後、食堂で親子丼を食べていると1人の先輩が近づいてきた。
「ねえ、あなた2人目の男性IS操縦者の子よね?」
「あ、はい。 そうです。」
小豆色の髪を頭の右側で結んだその人は黛薫子と名乗り、俺のことを浅間くんと呼んでいいか聞いてきた。
質問に了承し、話を続ける。
「でさ、私は新聞部の副部長なんだけども、あなたのことを新年度1発目の記事にしたくてさ。」
「取材ですか? 良いですよ。」
「ありがとう!」
黛先輩が笑顔で言い、取材が始まる。
「じゃあまず… 彼女とかいるの?」
「1発目からきますね… 普通は趣味とか特技とかからでは?」
「いや、やっぱりみんなが注目することから聞いてきたいじゃない? それで、どうなの?」
「います。」
「へえ、本当? どんな子?」
いつの間にか近くに来ていた周りの先輩方から"残念"だの"1人目の方にいくか…"だの"彼女がいても関係ない!"だの聞こえるが無視だ。
まあ一夏が来たら全員そっちに行くだろ。
そして俺は質問に、蘭の顔を思い浮かべながら答える。
「五反田 蘭って言いまして、親友の妹で可愛い子です。 普段は男勝な子なんですけどたまに見せる弱気な表情とか、甘えてくる時の態度とかがそれはもう…!!」
「へえ、彼女思いなのね。 ぶっちゃけキスとかした?」
その質問に、俺は飲もうとした水を吹き出しそうになった。
「な、内緒です。」
「へえ… 否定しないってことは?」
「さ、さて次の質問いきましょう!」
全力で話をそらして次の質問を要求する。
先輩はニヤニヤしながら、次の質問をしてくる。
「じゃあ趣味とか特技とかは?」
「趣味も特技も裁縫ですね。 幼い頃に母に習ってはまりました。」
「へえ、どれぐらいの物を作れるの?」
「そうですね… こんぐらいの縫いぐるみは作ったことがあります。」
自分の腰から首あたりまでを手で示す。
黛先輩は驚いた顔をしている。
「凄っ! その縫いぐるみっていまIS学園にある?」
「今はないですね。 あ、でも裁縫の道具はあるので作ることはできますよ。」
「じゃあ今度時間があったら作ってくれないかな? 記事に載せたいの!」
「なら今日から作りますか、春休みですから時間もありますし。 なんの縫いぐるみが良いですか?」
「じゃあ… 兎とか?」
「わかりました。」
兎ならば作ったこともある。
1日ですぐ作れるだろう。
「それじゃあ次の質問! 昨日織斑先生と食堂に来て、その時に"ちーさん"って呼んでたらしいけどどう言う関係?」
その質問には、周りの女子も興味があるようでざわめきが収まった。
「まずちーさんの弟である一夏とは幼馴染なんです。 それで、もう1人幼馴染がいるんですけども、そのもう1人の幼馴染のお姉さんがちーさんを"ちーちゃん"と呼んでまして。 だったら俺はちーさんと呼ぼうってことでして。」
答えた後、周りがもう一度ざわめきだす。
羨ましがってる内容が多いな。
「じゃあさ、随分親しそうだったけど… ぶっちゃけ恋情とかあるの?」
「恋情はないですかね。 まあ、可愛いとは思いますが。」
黛先輩がガタッと立ち上がる。
周りの先輩方も今まで以上にうるさい。
「どう言うところが!?」
「そうですね… 例えば、ちょっとからかうと顔を真っ赤にするところですかね。 まあその後酷いしっぺ返しを食らうんですが。」
次の瞬間、空気が凍りついた。
どうしたのだろうか?
そう思って先輩方の方向を見た瞬間…
「鉄平よ… 覚悟はいいか?」
鬼がいた。
「ちーさん、どの辺からいましたか?」
「ピンからキリまで聞いていたぞ?」
「…じゃあ俺はこれで。 縫いぐるみの製作にかからないといけないので。」
- 待 て -
恐ろしい、地獄の閻魔も裸足で逃げ出しそうな声が聞こえた。
それは本能的な恐怖であった。
ちーさんが俺の肩を掴み、引き摺られる。
「さて、黛よ。 このことを記事にしたらどうなるか… わかっているな?」
黛先輩が顔を真っ青にしてコクコクと頷いている。
誰か… 助けて…
この後どうなったかはあえて言わない。
結果として、俺の武装の展開速度が0.2秒を切り、