ISを動かした幼馴染に巻き込まれる話   作:帝国過激団

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#7

 カーテンの隙間から光が漏れる部屋の中で、俺は目を覚ました。

 頭を掻いて、時間を確認すると5時半。

 随分と早起きしてしまったな…

 

 寝起きでは極端にIQの低い俺は、何をするかを空っぽの頭の中で考え、昨日の約束を思い出した。

 縫いぐるみを作らねば。

 

 裁縫用具を取り出し、作業を始めた。

 久しぶりの縫いぐるみ作りだったので、楽しみながら作業をしていると、扉を叩く音がした。

 

「はい。」

 

 作業を中断して扉を開けると、その先にはちーさんがいた。

 

「ああ、おはようございます。」

 

「鉄平… 昨日は悪かった。」

 

「ああ、別に構いませんよ。 半端なくISの操作技術が上達しますし。」

 

「いや、だが…」

 

「いいんですよ、俺もちーさんと入れて嬉しいですし。」

 

 俺の発言を受けて、ちーさんは少し顔を赤くして俯いた。

 その動作があまりにも可愛かったので、頭を撫でてしまった。

 

「お前は…! どうしてこう… !」

 

 反応できない速度で顎を殴り抜けられる。

 少し蹌踉めくが、倒れることなく止まった。

 

「いや、可愛いものにはちょっと悪戯したくなっちゃうじゃないですか?」

 

「な、か、可愛い…」

 

 ちーさんはさらに顔を赤くして、俺の胸ぐらを掴む。

 次の瞬間、無限の打撃が俺を襲う。

 そして、ちーさんは俺に背を向けて立っていた。

 これは… 瞬獄殺だと!?

 

「やりますね… ちーさん。 まさかはじ○の一歩だけでなくスト○ァイ技まで使ってくるとは…」

 

 背を向けたちーさんは顔を見せてくれない。

 そのまま少したち、いつもと変わらない涼しい顔をしたちーさんが振り返った。

 

「む、縫いぐるみを作っていたのか。」

 

「あ、はい。 ところでちーさんって縫いぐるみとか好きですか?」

 

「いや、興味はないな… どうしたんだ急に。」

 

「例えばね、いつも硬派なちーさんの部屋に行ってみたら、棚の上に縫いぐるみが。 なんてなったら男は果てしなく萌えます。 ですので俺は婚期を逃しかけてるちーさんを手伝おうと…」

 

 言い切る前に、俺の体を無数の拳が襲った。

 例えるならば… ショットガン!

 ちなみにちーさんは顔を赤くはしてない、つーか怖くしてる。

 愛のない打撃は痛いのでやめてください…

 

「さて、ついて来い鉄平。」

 

「…まさかまたぶっ通し練習メニュー!?」

 

「ああそうだ。 …と言いたいところだが、今日はラファール・リヴァイヴを正規にお前の専用機にすることになっている。」

 

「え、じゃあ色とか弄っていいんですか?」

 

「構わない。」

 

 ちーさんの後をついていくと、IS整備課のドッグについた。

 個室となっている部屋を一つ開けると、そこにはラファール・リヴァイヴが鎮座している。

 

「よし、では手早く済ませて訓練に移るとしよう。」

 

「結局訓練の方はするんですね…」

 

 また今日も死にかけるのかと思うと、軽い… いや、重い絶望に苛まれた。

 心の中で悲痛な叫びをあげる俺をよそに、ちーさんがラファール・リヴァイヴのそばの端末を操作して何かの画面を俺に見せてきた。

 

「ISの待機形態の一覧だ。 好きなのを選べ。」

 

 画面にはピアス、イヤーカフ、ネックレス、指輪などの結構な種類が表示されている。

 イヤーカフは落としそうだから却下。

 ピアスは穴開けたくない。

 指輪も落としそうそして忘れそう。

 よし、ネックレスにしよう。

 

「じゃあ、これでお願いします。」

 

 結局選んだのは、指輪にチェーンが通っているタイプのネックレスだ。

 ちーさんが端末を操作すると、目の前のラファール・リヴァイヴはネックレスに変わった。

 ネックレスを手に取り、首にかけてみる。

 

「まあ制服の中に隠せるし、丁度良いですわ。」

 

「そうか、では訓練に…」

 

「ストップ!」

 

 静止の声をかけた俺を、ちーさんが怪訝そうな目で見てくる。

 いや、別に訓練を遠ざけてるわけじゃない、したくないのは真実だけど。

 

 俺はISを装備はせずに展開し、肩から伸びているシールドを指で指す。

 

「このシールドの中に灰色の鱗殻(グレースケール)仕込めませんか?」

 

 灰色の鱗殻(グレースケール)、それは第二世代のISで扱える武装の中で、最も高い攻撃力を有するパイルバンカーだ。

 俺がちーさんに善戦した時も、この灰色の鱗殻が不意打ち気味に当たったからだ。

 しかし、戦闘中に出そうとすると少しのタイムラグがあるし、武器を扱う手が足りない。

 それならばシールドの内に仕込めばいい。

 シールドは自由に操作できるので、使用する時に相手に当たる場所に動かせば良い。

 

「成る程、面白いな… だが、お前それできるのか?」

 

「…一応知識はありますが、自信はないです。」

 

 俺の夢はIS関連の仕事で、知識は仕入れていたがそれを実際に使うことはなかった。

 あ、後今更だけど受験した私立高校には特待で受かってた。 今となっては意味がないが…

 

「そうか… ならば、彼女を呼ぼう。 ラファールについては私よりも詳しいし、確か整備や改造についても詳しく勉強していたはずだ。」

 

 ちーさんは携帯を取り出し、どこかへ電話をかける。

 話の内容からして相手は同僚、そして後輩のようだ。

 知識を頼りに、ちーさんとともに改造に必要なパーツを揃えていると、部屋に1人の女子が入ってきた。

 背が低く、童顔、そしてデカイ、何がとは言わないがデカイ、説明不要。

 

「あ、織斑先輩、彼が浅間くんですね?」

 

「あ、どうも。 浅間 鉄平と申します。」

 

「そうだ。 電話でも話した通り、彼のラファールの改造を手伝って欲しい。」

 

 その先輩と思われる女子は山田 真耶と名乗った。

 そして俺にどのように改造すれば良いのか、と聞いてきた。

 

「ここのシールドに灰色の鱗殻仕込みたいです。」

 

「あー、成る程。 それなら結構すぐ終わりますよ。 まずはここをこうしてですね…」

 

 先輩から解説を受け、作業を進めていく。

 方法を教えてもらい、時には先輩も手伝ってくれて40分ほどで両方のシールドの改造が終わった。

 

「いやあ、助かりました。 凄いですね、山田先輩。」

 

 俺がそう言った瞬間、部屋の空気が凍った。

 え? 俺なんか地雷踏んだ?

 

「あー… 鉄平、山田君は教員だ。 ちなみに教師として見られないことを結構気にしている。」

 

「良いんです。 どうせ私なんて子供っぽくて…」

 

 ああ、やばい! よくはわかんないけどこれはまずい。

 

「だ、大丈夫ですよ! 山田先生は十分大人っぽいっですって!」

 

「ど、どこらへんがですか?」

 

 山田先生が顔を上げて、俺の目を見て聞いてくる。

 若干涙目だ。

 涙目上目遣いとかふざけんじゃねえぞ!

 

「…ハート(胸部装甲的な意味で)とか?」

 

 ようやく絞り出した言葉がこれだ。

 よし、これならば問題なく誤魔化せる!

 

「ハート(精神的な意味で)ですか!?」

 

 良し、完璧な食い違いが起こった。

 山田先生は喜んでいるし、俺も嘘は言っていない。

 全員がハッピーで終われる最高の選択肢だ。

 

「ハァ… では鉄平。 そのシールドの試運転も兼ねて練習だ。」

 

 おそらく今の会話を、俺の意味の方で解釈したであろうちーさんが呆れ顔でため息をついた後、俺の首根っこをガシッと掴んだ。

 え? 俺このまま連行されるパターン?

 

「さっさとISを待機形態にしろ。 あ、山田君、手伝ってくれてありがとう。」

 

「ありがとうございました。」

 

「いえいえ、いいんですよ! 私は大人ですから!」

 

 その分厚い胸部装甲に手を当てながら言う山田先生。

 いや、目の保養にはなるんですがある意味では毒なんですよ。

 俺はできるだけその胸を見ないようにして、ISを待機形態のネックレスにして、首にかける。

 

「じゃあ、本当にありがとうございました。 助かりました。」

 

 山田先生に頭を下げて礼をする。

 この人がいなければ上手く改造ができていなかったのだ。

 山田先生は微笑んで、俺に言葉を返してくる。

 

「また何かあったら頼ってください。 私は先生ですから。」

 

 そう言って、俺がはいと返すと去っていった。

 ちなみにこの部屋は俺専用のドッグとして使えるらしい。

 ちーさん部屋の鍵を手渡され、鍵を閉めてからアリーナに向かおうとしたところで、俺の腹がなった。

 

「そういえばまだ朝飯食ってませんでした。」

 

「そういえば私もだ。 よし、練習は朝食をとってからだな。」

 

 俺はそのまま、ちーさんとともに食堂に向かった。

 その後一日中ISを乗り回し、灰色の鱗殻を使いこなせるようになった。

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