ISを動かした幼馴染に巻き込まれる話   作:帝国過激団

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IS学園一学期編
#8


 ここ、IS学園寮に来てから十数日。

 取材を受けたり、一日中ISの試合をしたり、ぬいぐるみを作ったり、一日中ISの試合をしたり、謎の青髪赤目の人物に襲撃を受けたり、一日中ISの試合をしたり、ちーさんを愛でたり、一日中ISの試合をしたりした。

 あれ? 俺この春休みほぼ毎日一日中ISの試合してね?

 

 休んだ記憶のほとんどない春休みを思い返しながら、ネックレスを首にかけ、制服を着る。

 何度か着用した制服だが、それでもまだ真新しい。

 睡眠から覚醒するために全開にしたカーテンの先の窓から日光が当たる。

 

 あくびを一つして、今日必要な道具を鞄に入れて、一度ベッドに座り込む。

 そう、今日がIS学園の入学式だ。

 ハードなことに、ここIS学園では初日から授業がある。

 分厚い教科書の入った鞄は重く感じられた。

 

 部屋の隅に置いてある結構な数の段ボールは、今日から寮に入るであろう一夏のものだろう。

 

 時計を確認してから部屋を出る。

 この時間ならば十分余裕を持って教室につける。

 

 本校舎に続く道を歩き、自分のクラスである1-1の扉を開ける。

 教室の中には誰もいない、どうやら俺が1着のようだ。

 誰もいない教室というのは少しテンションが上がる。

 前の黒板に映る席順を示す画面を見ると、自分は窓側の一番後ろ。

 最高の席だ。

 指定された席に腰を下ろし、鞄から教材を取り出して机の中に入れる。

 時計と時間割を見ると、ホームルームまでは結構な時間がある。

 早く来すぎたか…

 本でも読んで時間を潰すとしよう。

 

 ボーッと本のページをめくっていたら、周りがザワザワとしてきているのに気づいた。

 他の生徒たちが登校してきたのだろう。

 時計を見ると、ホームルームまであと2分。

 教室を見回すと、俺の周り数メートルに見えない壁でもあるのか、円の形になって女子たちが俺を見ていた。

 

「おはよう、そろそろ席に座らないとホームルームが始まるぞ?」

 

 挨拶と、ちょっと遠回しにそんな見んな、と言う。

 いやね、マジでパンダ風の名前考えることになるのは嫌だから。

 それに俺は一夏の奴とは違う。

 おそらくあいつならこの状況、何も言わずに黙って見られていると思うが、俺は初対面の女子に対してコミュニケーションを取れる男!

 

「う、うん。 じゃあ隣座るね!」

 

「浅間鉄平、よろしく。」

 

「あ、うん! 私は千堂 薺だよ! よろしくね!」

 

 会釈をして教室の前に視線を移す。

 と、その時に一夏が前の扉から教室に入ってきた。

 遠目でもわかるほどにガッチガチに緊張していて、足取りがおぼつかない、そのまま倒れこむように最前列ど真ん中の机に座り込む。

 

 周りの女子たちは一夏を注視して、それが一層一夏を萎縮させる。

 そんな時間が少し続き、俺も数人の注目を受けたが気にせずに窓の外を眺めていると、教室の扉が開く音がした。

 

 もう一度前に視線を移すと、山田先生が教室の前の扉から入ってくるところだった。

 乳が揺れ… いかん、蘭に殺される…

 

「全員揃ってますねー。 それじゃあSHL(ショートホームルーム)始めますよー。」

 

 微笑みながら言う山田先生だが、それに対する反応はない。

 全員の意識が一夏に集中しているせいで…

 

「それではみなさん、1年間よろしくお願いしますね。」

 

 笑顔を繕って言う山田先生、反応0。

 俺としては反応したいが、そうしてしまうと周りの視線が俺に集まる可能性がある。

 すいません、山田先生、それと一夏、俺の心の平穏のための贄になってくれ…

 

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。 えっと、出席番号順で。」

 

 そろそろ狼狽える先生が可哀想になってきた…

 それにしてもデカ… いかん、まだ死にたくない…

 1番最初に呼ばれたのは廊下側最前列の相川さん、ハキハキと自己紹介を終えて席に着いた。

 それと同時に、俺の机に【回答者】と書かれた… なんだろう、立体映像の三角柱? が浮かぶ。

 すごい技術だなおい。

 三角柱を眺めた後、立ち上がる。

 教室の女子の視線が俺に集中した… 成る程、一夏はこれを常に味わってるのか… ザマァ。

 

「あー… 浅間鉄平です。 趣味は裁縫、特技も裁縫。 一応ISについての勉強はしてありますが、色々とわからないところもあるかもしれないんで、迷惑かけるかもしんないけどよろしくお願いします。」

 

 取り敢えずそう言って席に着く。

 うん、よくやったよ俺は。

 席に座るなり、視線を視線をグリンと70度ほど左に移し、空を見る。

 ああ、晴れてるなぁ…

 

 自己紹介は続き、一夏の番が来た。

 

「じゃあ次は、織斑一夏くん。」

 

 一夏は名前を呼ばれても反応しない。

 あ、これ緊張しすぎて周りの音が入ってきてない感じですわ。

 

「織斑一夏くん、織斑一夏くんっ!」

 

「は、はいっ!?」

 

 裏返った声で反応する一夏、あ、これ失敗するな。

 一夏はそのまま思案を続ける、おい、自己紹介しろよ。

 

「あっ、あの、大声出しちゃってごめんなさい。 お、怒ってる? 怒ってるかな? ゴメンね、ゴメンね! でもね、あのね、自己紹介、『あ』から始まって今『お』の織斑君なんだよね、だから、ね、ゴメンね? 自己紹介してくれるかな? だ、ダメかな?」

 

 先生、それは教師が教え子に対してとる態度じゃないです。

 ってか一夏も一夏であんま困らせないであげろよ…

 心なしか、一夏への注目が強くなった気がする。

 

「いや、あの、そんなに謝らなくても… っていうか、自己紹介しますから、先生落ち着いてください。」

 

「ほ、本当? 本当ですか? 約束ですよ! 絶対ですよ!」

 

 なんか… どこかズレたような感じの人だなぁ…

 でもあれは庇護欲を掻き立てられる。

 

「え……えっと、織斑一夏です。 よろしくお願いします…」

 

 名前と挨拶、そして特大の間。

 教室の空気が凍り、まるで【開戦を決定する会議を見守る軍人達】のようだ。

 いや、それとは比べものにならないほどにしょうもないことだが、それぐらい神妙な雰囲気が教室を包んでいた。

 

「…い、以上です!」

 

 間を終わらせてそう閉じる一夏。

 同時に数名の女子がずっこける。

 

「あ、あのー。」

 

 涙声感が増した山田先生の言葉。

 そして、教室の机の間を黒いレディーススーツを来た女性が一夏に向かって歩いていく。

 そして出席簿を構え…

 

 -パアンッ!-

 

 と、音が響く。

 例えるのならば… 風船が破裂する音か?

 まるで壊れたブリキのおもちゃの首を回すように、ギギギ、と振り返る一夏。

 あの振り返りかたって漫画だけじゃなかったのか…

 

「げぇっ、関羽!?」

 

 2人の英雄がそこにいた。

 一夏(命知らず)と、その姉である関羽(三国志の英雄)…おっと、ちーさん(ブリュンヒルデ)だ。

 ちなみに今俺が途中で言い直したのは、ちーさんが出席簿を構えたからだ。

 え? 何? そこから投球してくるの?

 

「あ、織斑先生。 もう会議は終わられたんですか?」

 

「ああ、山田君。 クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな。」

 

 優しい声で山田先生に答えるちーさん。

 関羽はどこかへ消えたようだ。

 

「キャーーーーー! 千冬様、本物の千冬様よ!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです! 北九州から!」

 

 直後、教室内に超音波が響いた。

 脳みそを直接抉るような黄色い歓声から逃れるために耳を塞ぐ。

 

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

「私、お姉様のためなら死ねます!」

 

 その歓声に対し、ちーさんは羽虫でも見るかのような目をする。

 

「…毎年、よくもこれだけの馬鹿者が集まるものだ。 感心させられる。 それともなにか? 私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」

 

 おそらく前者かと。

 ISの戦闘において世界最強を謳われるちーさんは、当然下手なアスリート… どころか超一流のアスリートよりも人気と知名度が高い。

 当然、ISの道を志す生徒たちがそれを知らない訳もなく、それどころか先程のようにちーさんの指導を求めてこの学園に来る人もいる。

 因みにこれはフリでも何でもなくマジで鬱陶しがってる時の態度だ。

 恐らく今、一夏は『もうちょっと優しくしようぜ?』とか思ってるだろう。

 甘い、ほぼ砂糖水の御坂神社の甘酒より、五反田食堂のカボチャの煮物より甘い。

 

「きゃああああっ! お姉様! もっと叱って、罵って!」

「でも時には優しくして!」

「そしてつけ上がらないように躾をして〜!」

 

 こ れ が ち ー さ ん だ。

 

 言動の一つ一つがこの歓声たちを引き起こすのだ。

 何故だろう、本当にこの学園には馬鹿者しか来ていないのか?

 

「で? 挨拶も満足にできんのか、お前は。」

 

 一夏を振り返りながらいうちーさん。

 あの人は弟に甘くなるタイプじゃない、寧ろ厳しく当たるタイプだ。

 

「いや、千冬姉、俺はーー」

 

 パアンッ!

 ちーさんの必殺技、出席簿での強打が響く。

 え、待ってちーさん。 それ出席簿煙吹いてね?

 

「織斑先生と呼べ。」

 

「…はい、織斑先生。」

 

 そしてこのやりとりで、教室中に一夏とちーさ… 織斑先生が姉弟なのがバレた。

 

「え…? 織斑くんって、あの千冬様の弟…?」

「それじゃあ、男でISを使えるっていうのも、それが関係して…」

「ああっ、いいなぁっ、変わってほしいなぁっ。」

 

「あれ? それなら浅間くんはどうしてISを動かせるの?」

 

 そのセリフのせいで、教室中の視線が俺に向く。

 頬杖をついて、適当に会話を聞きながら窓の外を眺めていたが、それには気づいた。

 

「…知らん、俺はそこの一夏とは幼馴染だが身内にヴァルキリーやブリュンヒルデはいない。」

 

「へえ… あれ? でもそれは織斑先生と昔から関わってきたってことよね?」

 

 紺色の髪の女子が頬に指を当てながら言う。

 いや、知るかよ。 俺としては天災の兎が何やかんやした可能性が大だ。

 

「IS適性が関わってきた人間にも移転する… 報告は上がってないはずだ。」

 

「ふーん… そっかぁ〜。」

 

 と、そこまででチャイムが鳴る。

 

「さあ、SHRは終わりだ。 諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。 その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。 いいか、いいなら返事をしろ。 よくなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ。」

 

 と、ありがたいお言葉。

 どうやら織斑先生の教育方針は軍隊で培ったもののようだ。

 数年前に、1年間ドイツで軍のIS操作の教官をしていたし、ISは言ってしまえば兵器だ。 この教育方針も間違ってはいないのだろう。

 

「席につけ、馬鹿者。」

 

 その言葉を受け、一夏は席に腰を下ろした。

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