夢幻繋げる物語 作:詩羽
ここはドコだろう
どこが上で、どこが下なのか
上下左右、感覚が曖昧な場所
何で、こんな所に居るんだろう?
『ここは、夢幻の狭間。人々の夢や思い出によって創られた、別の空間。よく言う言い方では、この世でもあの世でもない、虚無。人が住むことが出来ない次元』
それって、人が存在できない空間って事だろ?
なら何で俺は、ここに居るんだ
『確かにこの空間では、人は自己の存在を確立出来ない。ここは夢の中、意識し目覚めた時には全て、うたかたの夢の中。あなたがここに居るのは、選ばれたから』
結局は何が言いたい
分かるようで、まったく分からない
選ばれるってなんの事だ
『重要なこと、それは、別れた繋がりをあなたが繋ぐ。ただそれだけ』
橋渡し役って事なのか
でも、それは選ばれた理由にはならない
そもそもお前は誰だ?
『わたしは、ユメ。あなたを見出した、この空間そのもの。分かりやすく言うなら、この夢幻の狭間自身、又は管理者』
ダメだ、嚙み合っているようで、全然話が嚙み合わない……まぁいいや
考えるだけ無駄な気がしてきた
『夢幻は失われつつある。暖かな記憶が、負の出来事で消され、夢幻はやがて負の牢獄へと変わってしまう。あなたは私の代わり。懸け橋となる。さぁ、目覚めの時。世界を、人を見て、夢幻を繋いで……』
「あれ?ここは…」
目を覚ますと、見慣れぬ部屋のベットの上に居た。
長い間、不思議な夢を見ていた気がする。
よく分からない場所で、一人で喋っていた。
けれど、誰かと会話をしていた。
そして、夢を繋ぐとか、守るとか、そんな感じの話をしていたような……
「あ!姉さま、ようやく目を覚ましたよ!」
声のする方を見ると、ベットの右側に白髪の少女。左側には黒髪の女の子が立っていた。
「こら、ひかり。騒いじゃダメでしょ」
どうやら少女の名前は、ひかりと言うらしい。ひかりの言動からすると、黒髪の子は姉なのか。
「あなた森で倒れていたけど、大丈夫?」
「あ、あぁ、おかげさまで」
「そう、ならよかったわ」
「ねぇねぇ、お兄さん。名前、何て言うの?」
名前…?
「……分からない」
自分は誰だ?何をしていた?そもそも、ここは……?
「……ひかり、悪いのだけど、水を汲みに行ってくれない?」
姉は何かに気付いたようで、光に水くみに行かせようとする。
「えー、まだお兄さんの名前、聞いて無いんだけどー」
「起きたばかりで、少し寝ぼけているみたいだから、ね。お願い、水を汲んできてあげて。ね?」
「うーん、分かった。じゃあいってくるよ!」
初めのうちは拒んでいたひかりだが、姉がどうにか説得し、元気に飛び出していった。
ひかりが出って行ったのを見届け、扉を閉めた姉。
そして部屋の端にあったイスをベットの側まで持って来て座ると、確認するように話し始めた。
「もしかして、何も覚えていなかったりします?」
「恥ずかしながら、その通りです。自分の名前も出身も、何をしていたのかも、まったく分からない」
「そう…ですか…。困りましたね。私たちも、あなたが森で倒れている所を偶然見つけて、保護したので…名前が分かる物を持っていませんでしたし、唯一持っていたのはコレですし」
そう言って姉は側にあった引き出しから、一冊の本を取り出して渡してきた。
それを受け取り開いてみるが、中は真っ白で何も書かれていない。
「確かにこれじゃあ、何もわからない」
こんなものを見たって、謎が深まるばかりだ。
さて、これからどうしたものか……
「あの、良ければ、記憶が戻るまで面倒見ましょうか?」
これからどうするかを悩んでいると、姉が唐突に面倒を見ると申し出てきた。
確かに、記憶が戻るまで下手に行動しない方が良いかも知れない。けど、
「さすがに、身元も分からない人をこれ以上置いておく訳にはいかないでしょ?大丈夫、きっとなる様になるから」
「いえ、大丈夫ですよ。あなたはきっと、悪い人じゃない。そんな気がするんです」
「でも……」
「それに、あなたが居る方が、ひかりも喜ぶでしょうし」
明らかにリスクの方が、大きいだろうに。それなのにここまで言うとは…
……これも何かの縁、なのかな…
「…分かった、しばらく厄介になるよ」
「はい!えーっと、何て呼べばいいんでしょうか?」
「え?あぁ、そうか」
自分の名前も分からないんだった。
そうだな……
「取り敢えず持っていたっていうこの、真っ白な本にちなんで、ましろ、で良くないか?」
「何とまぁ、安直な…まぁはい、よろしくです、ましろさん。私は絢瀬弥美、やみと呼んで下さい」
こうして、記憶をなくした人物ましろと、やみ・ひかり姉妹との生活が始まるのだった。
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