夢幻繋げる物語 作:詩羽
「お兄さん~、ご飯だよ!」
「………」
「おに~い~さ~ん、ご飯だよ!聞こえてるでしょ!」
「ぅお、ひかりか。今良い所だったんだ、用事なら後にしてくれ。ってか、本返して」
何時からそこに居たのか、ひかりに読んでいた本を取られてしまった。
絢瀬姉妹と暮らし始めて半年。
いまだに記憶は戻っていないが、そこまで気にしていない。
むしろ今では記憶の事とか、正直どうでも良くなってきている。
なぜなら、今のこの生活が気にいっているから。
そんなわけで、この大陸の伝承についての本を読んでいたところ、ひかりに邪魔されたわけだ。
「だ~め、ご飯が先!姉さまも待っていたんだから!」
「あ~、それは悪い事をしたな」
「そう思っているのなら、早く来てくださいよ」
ひかりに促され、書斎からリビングに向かおうと席を立ったところで、背後から声がかかる。
振り返ると、書斎入り口にやみが立っていた。
「はい、これ夕飯です」
「お、ありがと。悪かったな。つい、読み解くのに熱中してしまった」
「わかってますよ。ですけど、たまには一緒に食べませんか?ひかりもその方が、喜びますし」
「な、そんな事ないもん!姉さまのバカ!」
「あ、ひかり……」
恐らく恥ずかしかったんだろう。
ひかりが走って、書斎を出て行ってしまった。
「ちょっとからかい過ぎましたかね?」
「いつもの事だろ?ま、やり過ぎには気を付けろよ」
さて、やみの作った夕飯をいただきますかね。
「そうですね、お年頃ですもんね。そう言えば、何の本を読んでいたんですか?」
「ん?ほぉれ。つふえのうふぇの」
「いや、どれですか?」
ん?机の上の、と言ったが、さっきまで読んでいた本が無い。
あぁ、そう言えば、ひかりに取られたんだった。
「悪い、さっきひかりが抱えて行ったわ」
「あぁ、さっきのひかりが持っていたものですね。あれは確か」
「大陸の伝承、交流、その他諸々についての本だ」
暮らし始めて半年、今では記憶を取り戻そうとしてはいないが、初めの頃は努力をしてみた。
が、諦めた。頑張っても思い出せなかったからな。
その時が来れば思い出すだろう。
今ではそう考えている。
さて、唐突だが記憶を取り戻すために頑張っていた頃、読んだ本や聞いた話で知った事。
『大昔、争いが絶えなかった頃、とある神様が争いで滅びゆく種族たちを見て、それを嘆いた
その神は、大陸を分断する事を決めた
分断した大陸を一つ一つ次元の狭間で囲み、繋がりを断った
そして各大陸に一つ、転移門を創り、神は言った
夢を持ちなさい
手を取り合いなさい
暖かな記憶を増やしなさい
良き記憶と夢により、世界はまた一つになるでしょう』
『調和乱せし者、現しき時
夢幻の狭間に住みし神
夢結びし代理者
送りださん』
と、まぁ他にも色々あったが、取り敢えずこの二つ。
やみにこれらの本の話について聞いてみると、大陸分断の話や夢幻の狭間の存在は本当らしい。
まず大陸について。
大陸は空間の湾曲により繋がっていて、大陸の端や海の先には別の大陸ではなく、元の場所に戻るらしい。
その湾曲は人には見えない空間、つまり次元の断絶によって起こっているらしい。
この湾曲の影響を受けずに大陸を移動する手段。
それは話にあった、転移門だ。
この門は、王国が管理して居るらしい。
次に夢幻の狭間。
これは、転移門を通っている途中の空間の事で、大陸を覆っている空間の湾曲も夢幻の狭間との事らしい。
改めて自分たちが居る大陸は、アイシルク。
テール共和国外れの山の中に建つ家。
アイシルクは中立の大陸で、同時に転移門が存在する王国の名前でもある。
テール共和国は獣人種と人種の国。
姉妹が山で暮らしている理由は別の機会で話すとして、まぁこんな感じで記憶を取り戻すためにいろいろと読みあさった。
今でも読んでいるけど……
「好きですねぇ、ましろさん。またあれですか?引っ掛かりがあるのに、思い出せないやつ」
「そう、それなんだよ。やっぱ、旅に出て見るべきかな……」
「そう、ですね。ですけど、送りだすにはちょっと……」
「そうだよな~、自分は戦えないし、やみたちより弱いしな」
「もう少しで資金も貯まりますし、我慢してくださいね?」
「分かってる。やみたち事情も、な」
しばらくして三人は、各大陸を巡る旅に出る
そして知る
三人の出会いは必然で、伝承にあった予言とも言える話が、動き出しているという事を