彼の2度目の事故は思いがけない出会いをもたらす。   作:充電器

2 / 8
どうも充電器です。

2話目です。

楽しんでいただけたら幸いです。

それではどうぞ。


第2話 彼と彼女は約束する。

「んっ……んぅ…うぅ…………」

 

 眼が覚めると、知らない天井が目の前にあった。

 どこだここは。

 

「目は覚めましたか?どこか痛む所はありませんか?」

 

 声の方を向くと、白衣に身を包んだ知らない女性がいた。

 

「先生に報告しなきゃ」

 

 数分後、俺は訳も分からぬまま数種類の検査を受けていた。

 

 ☆☆☆☆☆

 

 検査を受け終わって、今は病室のベットで横になっている。

 検査後、主治医の先生から俺がトラックに撥ねられたこと、その結果左脚を骨折したことを教えて貰った。

 

 また骨折したのか。しかも何かを助けて。入学式のときと殆ど同じだな。

 全く変わってない、そう思い思わず自嘲の笑みが溢れる。

 

 医者によれば、1ヶ月は入院しなきゃならないらしい。

 

 あ〜、この1ヶ月は完全に授業から離れてしまう。ノートを見せてくれるような友達もいないし。あっ、でも戸塚に頼めば見せてくれるかも。そうだ戸塚に頼もう。よし、早速メールを………なんて送れば良いんだ………。普段自分からメール送んないからわかんないよ。あぁ、俺の素晴らしき計画が…。

 

 この時、同時にあいつらなら……という考えが頭をよぎった。

 だが、俺はそんな考えをすぐ捨てた。

 そんなことはあり得ないのに。あるはず無いのに。自分でその可能性を潰したのに。

 まだそんな事を考えている自分に腹が立つ。

 

 そんなことを考えてたら、ガラガラッ、勢いよく部屋のドアが開いた。

 

「お兄ちゃんっ」

「小町か。どうしたそんなに慌てて」

「さっき主治医の先生から、お兄ちゃんが目を覚ましたって家に連絡貰って…ヒック……それで、それで…うわぁぁん」

 

 小町は急に泣き出して、俺に抱きついて来た。

 心配掛けちゃったな。妹を泣かせるなんて千葉の兄失格だな。

 

 ☆☆☆☆☆

 

「落ち着いたか」

「うん…」

「心配掛けてごめんな」

「ホントだよ。お兄ちゃんがトラックに撥ねられたって聞いた時は、本当にビックリしたんだからね。しかも、全然起きないし。丸2日寝たまんまだし。これ、小町的にポイント低いよ。小町ポイント大暴落だよ」

「本当に悪かった」

 

 そう言いながら、俺は安堵していた。事故に遭ったおかげで、小町には修学旅行の事を悟られずにすみそうだったからだ。

 

 え、ちょっと待って、丸2日寝てたの、おれ。事故に遭ったのが土曜日だから……。最悪だ。プリキュア見損ねた。

 

「今週のプリキュアなら録画しといたよ」

「マジかっ」

「大マジだよ。お兄ちゃんがプリキュア見損ねた時の為に、小町が録画しといたんだよ。見逃したらお兄ちゃん悲しむだろうと思って。あっ、これ小町的にポイント高いっ」

「流石小町だ。愛してる」

「小町はそうでも無いけどねっ」

 

 ひどいな。

 なんてバカなやりとりをしていたら、いつもなら社畜ってるはずの両親がやって来た。

 

「八幡大丈夫かっ」

「八幡っ」

「親父、母ちゃん。心配掛けてごめんなさい。それと左脚が折れてるだけで、体の方は全然大丈夫だ」

「そう、なら良かった」

「それにしてもお前はまた何かを助けて事故に遭ったのか」

 

 親父にそう言われて、俺は事故に遭う直前に女を突き飛ばしたことを思い出した。

 

「そう言えば、あの女はどうなったんだ」

「お兄ちゃんのおかげで無傷だって」

「そうか、なら良かった」

「八幡、あなたもっと自分の心配もしなさい」

 

 小町のことを何かと優先する両親から心配されてる……。何だかんだ言っても愛されてるんだな。そう考えるとなんくすぐったいな。親父に愛されるって気持ち悪いけど。

 

「あ、そうだお兄ちゃん」

「何だ」

「お兄ちゃんが助けたその女の人、今から挨拶に来るって」

「え、マジ」

「マジマジ。お兄ちゃんが目を覚ましたって伝えたら、今日伺いますって言ってたもん」

 

 コンコン

 

「あ、噂をすれば。はーい、どーぞ」

「失礼します」

 

 入って来たのはあの女だった。しかも総武高校の制服を着ている。

 そいつは俺のことを確認したら、急に頭を下げた。

 

「大吉梓(おおよしあずさ)と申します。この度はあの事故から助けて頂きありがとうございます。また、そのせいで事故に遭わせてしまい誠に申し訳ありません。本日はお詫びとお礼の為にお伺いしました」

 

 いきなり頭を下げられ驚いてしまいながらも、なんとか言葉を返す。

 

「あ、頭を上げて下さい。こっちもいくら助ける為とはいえ、突き飛ばしてすいませんでした」

「さてと、じゃあそろそろ行くか。当事者同士で積もる話もありそうだし」

「え、ちょっと待って。急過ぎない。2人っきりにしないで」

「小町帰るわよ」

「はーい。じゃあねお兄ちゃん。また来るよ」

「待ってくれ〜〜」

 

 そう言って小町達は帰ってしまった。

 おい、ふざけんなよ。この状況どうすれば良いんだよ。

 

 沈黙が続いて欲しくなかったから、立ちっぱなしの大吉に声を掛けた。

 

「取り敢えず、座ったらどうですか」

 

 はい、そう言って大吉は椅子に座った。

 

「えっと……比企谷八幡です」

「大吉梓です」

「………」

「………」

 

 空気が重たい。会話が続かない。続けないと。

 そこで俺はさっきから気になっていた事を尋ねた。

 

「その制服、総武高校なんですね」

「はい、そうですけど。どうして……あ、もしかしてあなたも総武高校なんですか」

「はい、そうです」

「ホントですか。何年生ですか。私は2年J組です」

「そしたら同じ学年ですね」

「そうなのっ」

 

 うわ、こいつ同い年っていう分かった瞬間、敬語やめやがった。じゃあ俺も敬語やめてやる。

 

「ああ、2年F組だ」

 

 ていうかなんなのこいつ、さっきまでしおらしかったのに、急に態度変えて。お詫びとお礼を言いに来た奴の態度とは思えないな。

 

「比企谷くん」

「何だ」

「あの時私のことを助けてくれてありがとう。君だけ助かる事も出来ただろうに態々助けてくれてありがとう」

 

 そう言って、大吉はまた頭を下げた。

 なんだ、ちゃんと出来んじゃん。

 

「君が入院したのは私のせい。だから、困ったことがあったら何でも言って。私に出来ることだったら、なんでも言ってくれて構わないから」

 

 なんでも、という言葉を聞いて、チラリ、と大吉のことを盗み見る。

 髪はショートボブで、顔は結構可愛いな。雪ノ下、由比ヶ浜程ではないが、まあまあ整っている。中の上って感じか。それで、出るべき所はそれなりに出てて、引っ込むべき所はそれなりに引っ込んでる。身長は大体160位かな。

 

「あ、そうだ。比企谷くんは入院中の授業のノートどうするつもりなの。良かったら、私貸すよ」

 

 中々魅力的な提案だ。けど俺には戸塚が……。でもまぁいいか、態々言ってくれたんだし。

 

「じゃあノート貸してくれ。どうしようか困ってたんだ」

「いいよ、これぐらい。それで、他には何かないかな」

「無いな」

「そっか。じゃあ、ノートは明日持ってくるね」

「分かった。宜しく頼む」

「だからいいって。それと……これ」

 

 そう言って、大吉は書店で俺が譲ったラノベを差し出した。

 

「譲ってくれてありがとう。まだ読んでないでしょ。だから、はい」

「おお、マジか。続き気になってたんだよ、ありがとな」

「え、じゃあなんで私に譲ってくれたの」

「それは、お前がすごい物欲しそうにこれを見てたからだよ」

「あ、そうなの。なんかごめんね」

「別にお前だから譲った訳じゃない。物欲しそうだったから、譲っただけだ。気にすんな」

「そうだけど、比企谷くんは優しいね。本当にありがとう。じゃあ、私帰るね。明日も来るから。バイバイ」

 

 そう言って、軽く手を振りながら大吉は帰って行った。

 騒がしくて、ちょっと失礼な奴だったな。

 

 ☆☆☆☆☆

 

 私は今日、数日前、私を事故から助けてくれた男の子に会った。

 名前は比企谷八幡くん。ちょっと目がアレだけど、結構カッコよくて、優しい男の子。

 

 明日から彼に私のノートを見せることになった。いつも以上に綺麗に板書しなきゃな。明日から頑張ろう。

 

 私の足取りは普段より軽かった。

 




いかがだったでしょうか。
結構無理矢理でしたかね。

この作品はアンチではありません。そういうふうに見えるかもしれませんが。
1話目でオリヒロの容姿等について書かなかったのは、単純に自分が忘れていたからです。申し訳ありません。

間違いを指摘して下さった方、ありがとうございます。
誤字脱字などご指摘の程よろしくお願い致します。

それでは、また。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。