彼の2度目の事故は思いがけない出会いをもたらす。   作:充電器

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どうも充電器です。

3話目です。

長くなってしまいました。

楽しんでいただけたら幸いです。

それではどうぞ。




第3話 彼は依頼について考える。

 コンコン

 

 ノックされた。

 

「どうぞ」

「失礼しま〜す」

 

 入って来たのは、大吉だった。

 

「こんにちは、比企谷くん。昨日行った通りノート持って来たよ」

「おぉ、サンキューな」

「やめて、お礼なんて言わないで」

「は、じゃあなんて言えばいいんだよ」

「何も言わずに受け取ってくれればいいんだよ。これは私がやって当然の事だから」

 

 そう言われて、無言で大吉からノートを受け取る。

 

「うわ、すげえなこれ」

 

 大吉のノートを見てみると、そこには綺麗な文字が、必要最低限だけ使われている色が有った。

 大吉のノートは、明らかに勉強が出来る奴のノートだった。

 

「大吉、お前さ勉強出来るだろ」

「学校のテストだったら、学年10位ぐらいだけど……どうして」

「ノートの取り方が上手いからそう思った」

「比企谷くんもそう思う。私、自分でもノート上手く纏めれてるって思うんだ」

「そうか。じゃあこれ借りるわ」

「そういえば、比企谷くんは勉強出来るの?」

「国語なら出来るぞ」

 

 前回のテストでは国語はまた3位だった。

 

「そうなんだ。ちなみに私も国語得意なんだけどさ、前回のテストで4位だったんだ。結構すごいと思わない」

「確かに結構すごいな」

 

 『結構』止まりだけどな。

 

「比企谷くんは何位だったの?」

「3位」

「え……嘘でしょ」

「嘘ついてどうすんだよ」

「まさかここに、私が国語で一向に勝てない3人の内の1人がいるなんて‥なんか悔しいな。じゃあ数学は?」

「最下位だったぞ」

 

 前々回のテストでは、最下位回避出来たのにな。

 

「それは…なんというか…酷いね。大学どうするの?」

「私立文系だから大丈夫」

「今の時期からそんなのって、なんか勿体無くない。まだ1年以上あるのに」

「良いんだよ、別に。大人になってから数学なんて使わないんだし」

「そういう問題じゃないんだけどなぁ……。あ、そうだ。じゃあ明日から数学教えてあげるよ。ノートのついでってことで」

「大丈夫だから」

「遠慮しないでよ」

 

 こいつ、人の話聞かねぇな。

 大吉の態度に少しげんなりしていると、コンコン、ドアが叩かれた。

 

「どうぞ」

「八幡っ」

 

 はっ、この呼び方はもしかして、戸塚かっ。

 

「八幡、我だ」

 

 材木座……そうだ。こいつも俺のこと名前で呼んでたわ。

 

「八幡っ、元気?お見舞いに来たよ」

 

 戸塚だ。

 ……ちょっと嬉しすぎて言葉が出ない。

 あれか、これが下げて上げるってやつか。

 ていうか、一緒に来たのか。

 

「戸塚、ありがとな。身体の方は大丈夫だ。心配掛けてごめんな」

「ううん。八幡が大丈夫ならそれで良いよ」

「八幡っ、我も心配したぞっ」

「比企谷くん、この2人は?」

 

 大吉が2人のことを聞いて来た。

 こいつ戸塚のことを知らないとかマジか。

 

「あ、僕は八幡の友達の戸塚彩加です」

「あ〜、我は剣豪将軍、材木座義輝である。我も八幡とは友達だ」

「大吉、材木座は友達じゃない」

「そうなんだ……。あ、私は大吉梓です。比企谷くんに助けられた者です」

「どういうことなの、八幡」

 

 戸塚が小首を傾げながら、質問して来た。とつかわいい。

 俺は大吉の発言の意味を伝えた。

 

「そうだったんだ。八幡、あんまり無茶しちゃダメだよ」

 

 と、戸塚ぁ……。

 

「そうだぞ八幡。八幡がいなかったら、我は誰と体育でペアを組めばいいんだ」

「知らねぇよ」

「え、そんなのなんか決まってるんじゃないの」

 

 今の発言は大吉だ。

 それを聞いた材木座の大吉を見る目が変わった。睨んでる。全然怖く無い。

 

「大吉、俺とか材木座みたいなぼっちは、そういうので一緒になる相手がいないんだ。ぼっちにそういう発言をすると、ぼっちは傷つく。そして今お前は、材木座を傷つけた。よって、材木座に謝るべきだ」

「そうだそうだ」

「え〜。まぁ、ごめんなさい」

 

 まさか本当に謝るとは……。

 

「そういえば、戸塚は時間大丈夫なのか」

 

 確か今日は、テニススクールがある日だった気がする。

 

「あ、本当だ。じゃあ僕行くね。バイバイ八幡、また来るよ」

「あぁ、またな。頑張れよ」

 

 頑張れ、戸塚。

 

「さて八幡、我が今日ここに来たのには理由がある。それは………八幡に新作を読んで貰って意見を貰おう、というものだ」

「またかよ。新作って言ってたけど、ちゃんと完成してるのか?」

「無論。だから八幡に見てもらおうと思って奉仕部に行ったのに、八幡はいないし、雪ノ下嬢は八幡の名前を出したら露骨に機嫌が悪くなって、我の事を罵倒し始めたからな。我ちょっと泣いたぞ」

 

 材木座が『奉仕部』、『雪ノ下』と言った時、自分の中に何か苦い物が広がっていくのを感じた。これは、俺があいつらに対して、何か後ろめたい気持ちがあるから感じたのだろうか。

 

「そして、平塚教諭に八幡の事を聞いたら、八幡が入院している事を知ってな、お見舞いついでに新作を見て貰おうという訳よ」

「そうか、新作は読んどくよ。暇だしな」

「頼んだぞ。さてと、我は今からゲーセンに行かないといけない。なのでさらばだ八幡。また来る」

 

 そう言って、材木座は去って行った。

 

 お見舞いに来て貰えるのは、結構嬉しいもんなんだな。ありがとな。

 

 ☆☆☆☆☆

 

「新作ってどういう事?」

「あぁ、材木座はラノベ作家目指してんだよ。それで新しいのができるたびに、俺が読んでダメ出ししてる。それと大吉、これありがとうな」

 

 俺は昨日彼女から借りたラノベを返した。

 

「もう読んだんだ。どうだった?感想聞かせてよ」

 

 そこから約15分程、語りあった。

 

「いや〜、やっぱり話せる相手がいるのはいいね」

「そうだな。俺もこの話題でここまで盛り上がったのは初めてだ」

「うん、私も楽しかった。さてと私も帰るよ」

「そうか、気をつけて帰れよ」

「うん、分かった。あ、そうだ比企谷くん」

「なんだ」

「比企谷くんはさ、いつから数学躓いたの?」

 

 こいつ本当に俺に数学教えるつもりだったんだな。

 

「中学の頃から苦手ではあったが、ここまで酷くなったのは、高1からだな」

「分かった。高1だね。じゃあ、今度こそ本当にバイバイ」

 

 大吉は手を振りながら、帰って行った。

 

 さてと、材木座の小説でも読もうかね。

 ちゃんと完成させたみたいだし、いつもより頑張ってみるか。

 

 ☆☆☆☆☆

 

「こんなに酷いんだ……」

 

 戸塚と材木座がお見舞いに来てくれた翌日、俺はさっきまで、大吉が俺の学力を測る為に作った数学の問題を解いていた。

 

「ふっ、学年最下位は伊達じゃないだろ」

「そこで偉そうにしないでよ。さてと、じゃあ基礎からやって行こうか」

「まだやるのかよ。せめて休憩させてくれ」

「わかったよ。10分だけだよ」

 

 ていうか、本当に俺にまだ数学教えるとか正気かこいつ。あんなに出来なかったのに、まだやるのかよ。見捨てないんだな。

 

「比企谷、邪魔するぞ」

「邪魔するなら帰って下さい」

「新喜劇みたいに実際に帰ったりしないからな、私は」

「このネタわかったんですね。で、なんの用ですか。平塚先生」

 

 ノックも無くこの病室に入って来たのは、平塚先生だった。

 

「おや、大吉じゃないか」

「知ってるんですか」

「ああ、私はJ組も受け持っているからな」

「平塚先生、こんにちは」

「こんにちは。さて比企谷、また無茶をしたそうだな。そこにいる大吉を助けて、自分はトラックに轢かれる。君は私が文化祭の直後に言った言葉を忘れたのかね」

 

 そう言われてある言葉を思い出す。

 

『比企谷。誰かを助けることは、君自身が傷ついていい理由にはならないよ』

 

『……たとえ、君が痛みに慣れているのだとしてもだ。君が傷つくのを見て、痛ましく思う人間もいることにそろそろ気付くべきだ、君は』

 

 はは、俺はあの時から全く成長していないんだな。

 

「すいませんでした」

「思い出したのならそれでいい。では、本題に入ろう。比企谷、奉仕部に依頼が来た」

 

 そして、平塚先生は依頼について語り始めた。

 

 ☆☆☆☆☆

 

 奉仕部、という比企谷くんの所属している部活に来た依頼は、端的に言うと『一色さんという女子生徒が生徒会長になるのを防いでくれ』というものだった。

 

「平塚先生、これって奉仕部の手に負えるものじゃないでしょ」

 

 確かに、比企谷くんの言う通りだ。

 昨日、奉仕部は生徒の成長や自立を促す所、そう比企谷くんから奉仕部について色々と教えてもらったけど、これは明らかに奉仕部の依頼の範疇を超えている。

 

「そんなことはわかっている。色々あって奉仕部に頼ることになったんだ。それで比企谷、なにか良い案はあるか」

「はぁ。少し時間を下さい」

 

 そう言って、比企谷くんは両手を合わせ、親指を顎の下に持って行き、人差し指を鼻に持っていって考え始めた。

 その顔は真剣そのもので、ちょっとだけ、ほんの少しだけドキッとした。

 この時の比企谷くんのちょっとアレな目は、むしろカッコよかった。

 今までとは違う比企谷くんが間近で見れて嬉しい、もっと見てみたい、知りたいと思った。

 

「平塚先生、取り敢えず3つ考えました」

 

 あぁやめちゃった。もうちょっと見てたかったな。

 

「一つ目は、一色以外の候補を建てる、です。ですがこれには問題点が」

「その候補を建てられるか、だろ」

「そうです。仮に候補を建てられたとしても、選挙まであまり時間がない中、公約を考え、演説の内容を考えたり、とやる事が多くて全部出来るかわからない」

 

 確かに。他の人に公約とか考えて貰ったら、傀儡になっちゃうし。

 

「二つ目です。これは簡単です。一色にやる気なってもらって、依頼自体を無くしてしまおう、というものです。この場合は、一色にどれだけ生徒会長のメリットをアピール出来るかに掛かってます。もしそうなったら、平塚先生の腕の見せ所ですね」

「その時は善処するよ。それで三つ目は何だね」

 

 比企谷くんはかぶりを振った。明らかに言うのを躊躇っている。

 

「怒らないで聞いて下さい。俺が一色の応援演説をして、酷い演説をする、というものです」

「比企谷、全く君は……。はぁ、三つ目は却下だ。概ね、雪ノ下の考えたものと同じだな………。比企谷」

「なんですか」

「あの2人となにかあったのかね」

「どうしてそう思うんですか」

 

 はぁ〜、と溜め息を吐いてから平塚先生は口を開く。

 

「私が先程『雪ノ下』と言った時、一瞬だが身体が強張っていたのを見たからだ。そして、もう一度聞く。あの2人となにかあったのかね」

「平塚先生には敵いませんね……。少し長いですけどいいですか」

「構わないよ」

 

 私には関係の無いことだ。

 これは比企谷くん達の奉仕部のことで、私には関係の無い事だ。

 病室から出て行った方が良いかな、そんな考えが頭をよぎったか、比企谷くんのことをもっと知りたい、この気持ちが勝ってしまったので、私は動かなかった。

 

 比企谷くんは徐に口を開き、そして語りだした。

 

 

 




いかがだったでしょうか。

感想を下さった方、ありがとうございます。励みになります。返信しないのは、返信の仕方がわからないからです。教えていただけると嬉しいです。

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指摘をして下さりありがとうございました。

誤字脱字などご指摘の程よろしくお願い致します。

それでは、また。
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