彼の2度目の事故は思いがけない出会いをもたらす。   作:充電器

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どうも充電器です。

少し遅くなってしまいました。申し訳ございません。

楽しんでいただけたら幸いです。

それではどうぞ。


第4話 彼は恩師と彼女に諭される。

 なんて言えば分からない、これが比企谷くんの話を聞いた感想だった。

 

「比企谷……。なんと言えばいいのか……」

 

 どうやら平塚先生も私と同じ感想を抱いたようだ。

 

「質問だ。君は何であの2人が、そんなことを言ったのか本当に分からないのか」

「分かりません。それにあの状況では、あのやり方しか無かった。矛盾している依頼を上手く解決しろっていう方が無理ですよ」

「そうだな、君の言うとおりだ。依頼の解決だけを考えた場合ではな。もう一つ聞くぞ。修学旅行に行く前の奉仕部は、君にとってどういうものだった」

「居心地の良い所でしたよ。それこそぬるま湯みたいな」

「そうか。ではこれが最後だ。君が嘘の告白をした本当の理由はなんだ」

 

 平塚先生は真っ直ぐ比企谷くんの眼を見つめる。逃がさない、そう言っているみたいだった。

 その真剣な瞳を受け止める比企谷くんだったが、やがてバツが悪そうに視線を逸らした。

 

「そんなの依頼を解決する為に決まっているじゃないですか」

「本当か」

「………」

「君は理解した、いや、理解してしまって、同情したんじゃないか、葉山たちに。あのまま戸部が海老名に告白していたら、あのグループは元のままではいられない。しかし、現状維持を望んでいる人間がいる。今の関係性でいたい人間がいる。今の彼らにとってのあのグループは、今の彼らの環境においては全てで、君にとっての奉仕部のように、居心地の良いものだと知ってしまった。葉山や三浦を通じて」

 

 平塚先生はそこまで言うと、一旦口を閉じた。

 比企谷くんは平塚先生の方を向く。

 それを確認してから、平塚先生は再び語り出す。

 

「失ってしまったら、もう元には戻らなくて2度と手に入らない。君にもそういうものがある。仮にそれが上っ面なもので無意味なものだとしても。だから、同情した。そして、失わないように嘘の告白をした。違うか、比企谷」

 

 平塚先生の口調は穏やかではなく、かといって、怒っているようでもない。どこか諭すように聞こえる。

 

「だが、それは結果的に君の最も嫌う欺瞞に繋がる。告白程度で壊れる関係を、その程度だった関係を、上っ面の関係を君の嘘でどうにか取り繕った。虚構を虚構で塗り固めたんだ。君は欺瞞に満ちた関係性を嫌っていたのにもかかわらず。そして、その行動を効率が良かったから、という理由で肯定してしまった。これが君がついた嘘だろう」

「全部お見通しなんですね」

「当たり前だ。私を誰だと思っている」

「アラサー独身女教師」

「はぁ、今回は不問にしてやろう。それで比企谷、君はどうしたい」

 

 平塚先生は比企谷くんの瞳を覗き込もうとする。

 

「わかりません」

「本当にか」

「本当にです」

「そうか。比企谷、また来るよ。その時までに答えを用意しておいてくれ」

「わかりました」

「お大事にな」

「はい、また」

 

 そう言って、病室から出て行った。

 

 ☆☆☆☆☆

 

「やっぱ、敵わねぇなあの人には」

「本当に全部言い当てられたの?」

「あぁ、全部言い当てられた」

「あのさ、もしかしてだけど……文化祭の時の相模さんの一件って……比企谷くんの仕業なの?」

「あぁ、そうだ。あの時も色々有ったな」

 

 大吉は平塚先生が言っていた『文化祭の直後』という言葉からヒントを得たのだろうか、相模の一件について聞いて来た。

 

「色々って何?なんであんなことしたの?」

 

 迷うな。言うべきか、それとも言わないべきか。だが、結局言うことにした。修学旅行の時のことをもう聞かれたし別に良いか、そう思ったからだ。

 

「わかった」

「ありがとう」

 

 俺は慎重に言葉を紡いだ。

 

 ☆☆☆☆☆

 

「比企谷くん、君は優しすぎるよ」

 

 私は比企谷くんにそう告げた。

 申し訳ない気持ちで一杯だ。理由は簡単だ。私は、クラスメイト達と一緒になって比企谷くんの事を悪く言ってしまったからだ。何故、相模さんに罵詈雑言を浴びせたのか、その理由を大して調べもせずにうわさを鵜呑みにして。

 

「俺は別に優しくない。本当に優しいなら、あんな解決方法は取らないだろう」

「いいや、優しいよ。優しすぎる。普通なら相模さんは糾弾されるべきだよ。けど君のお陰でそれを免れた。分かる人にしか分からない方法で、自分が悪役を買って出て」

 

 少し彼について踏み込み過ぎたかもしれない。1日で彼についてここまでしれるなんて、思ってもみなかった。

 

「比企谷くん、君は痛みには慣れてるかもしれない。けど、慣れてるだけなんだよ。慣れてるだけであって、痛みは感じてる。傷付いている。私は君が傷つくのを見たくない」

 

 何を言っているんだろう。こんな事は彼が一番よく分かっているだろうに。それに私のせいで彼は入院しているっていうのに。けど、言わずにはいられなかった。また彼は周囲に理解されにくい方法で、人を知らない内に助けてしまうだろうから。そして理解されなくて、拒絶されてしまう。修学旅行の時のように。

 

「それにさ、比企谷くんのそのやり方は、ちょっと変えた方が良いと思う」

「どういうことだ?」

「比企谷くんのそのやり方だと、やり過ぎだと思うんだ。助け過ぎ、とも言えるかな。文化祭でも修学旅行でも、比企谷くんが全部どうにかしちゃった。君が行動を起こさないことで得られる挫折も有ると思う。そしてそれは、また違った成長をもたらしてくれると思うんだ」

 

 私は一旦そこで言葉を切る。

 顔に柔らかい笑みを浮かべて、優しい声音で語りかける。

 

「おんぶに抱っこじゃなくて、軽く背中を押してあげるって感じかな」

 

 ☆☆☆☆☆

 

「大吉、出来たぞ」

「あ、終わったんだ。見せて見せて」

 

 平塚先生がここを訪れた翌日、俺は今日も大吉に数学を教えてもらっている。

 

 昨日は色んな事が有ったな。

 平塚先生には驚かされた。

 大吉にもだ。こいつは、俺に踏み込んで来た。そして、俺の事を多少肯定してくれた。俺が傷付くのを見たくない、とまで言ってくれた。こんな事を家族以外に言われるのは初めてだった。嬉しかった。

 

 ふと思った。

 どうしてこいつはこんなことをするんだ。

 俺の相手をするなんて一体どういうことだ。

 

 大吉の顔を見てみる。

 大吉の視線は俺の出した解答に行っていて、俺の視線には気がついていない。

 こいつはこいつで、普通に美少女の部類に含まれるんだよな。

 整った目と鼻、きめ細やかな肌、自己主張が過ぎない胸、細すぎず太すぎずで健康的な太腿。

 

「どこ見てるのかな、比企谷くん」

「うわっ、びっくりした。なんだよ、俺は別に何も見ていない」

 

 少し見過ぎだな。やっちまった。

 そんなことを考えていたら、俺の頰が引っ張られた。

 

「イタイイタイっ。何すんだよっ」

「嘘つくからだよ。私の脚を凝視してたでしょ。このスケベっ」

 

 頰を引っ張るだけでなく、抓って来やがった。

 

「止めろ止めろっ」

「止めないよっ。この変態っ」

 

 こいつ、昨日と言ってる事とやってる事が矛盾してるんだけど。

 今、お前に傷付けられてるんだけど。まぁ、俺が悪いんだけど。

 

 ガラガラッ

 

「あら、随分と元気そうで楽しそうじゃない、比企谷くん」

 

 名前を呼ばれた。

 

 その発生源の方を見てみると、俺と大吉がくだらない事をやっている間に俺の病室に入って来た、雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣が立っていた。

 




いかがだったでしょうか。

次回はもう少し早く投稿したいと思います。

ご指摘、ご要望があれば教えて下さい。

それでは、また。
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