彼の2度目の事故は思いがけない出会いをもたらす。   作:充電器

6 / 8
どうも、充電器です。

遅くなってすいません。受験勉強と体調を崩した所為です。本当に申し訳ありません。

楽しんでいただけたら幸いです。

それではどうぞ。


第6話 彼は一息つく。

「比企谷くん、戻ったよ」

「おう」

「驚いたね」

「そうだな」

「あんな風に言って良かったの?」

「いいんだよ」

「そっか」

 

 比企谷くんの病室に戻って来た。

 彼の顔は少し清々しそうだ。

 

 ☆☆☆☆☆

 

「ありがとう、海老名さん」

 

 そう言って、私は部室に向かう。

 

 ついさっきまで私は海老名さんから、修学旅行の時の出来事について話を聞いていた。これは、昨日の大吉さんの一言がきっかけだった。

 まさか、彼のあんな行動を取ったのには、海老名さんの依頼が関係しているとは、思ってもみなかった。

 

 矛盾する2つの依頼を同時に解決するのは不可能だ。だから、彼は嘘の告白をした。彼らしく、依頼を解消する為に。

 

 部室に着いた。中には、由比ヶ浜さんがいる。この事を彼女に伝えるべきだろうか、伝えないべきだろうか。いや、伝えるべきだろう。彼女も知っておくべきだ。

 

 ガラガラッ

 

「由比ヶ浜さん、話があるわ」

 

 声を掛けると、携帯電話を使っていた手を止め、私の方を向いた。

 私は椅子に腰掛け、彼女に事のあらましを伝えようと口を開いた。

 

 ☆☆☆☆☆

 

 昨日、ヒッキーのお見舞いに行った。

 一緒に病室にいた女の子と楽しそうで、元気そうだった。後でその女の子についてゆきのんに教えてもらったら、大吉梓さんっていうらしい。

 

「本物ってなんだろう……」

 

 本物、ヒッキーが言っていた言葉。

 私はヒッキーに振り向いて欲しい。ヒッキーが好きだから。その人からあんな事を言われたから、昨日は相当ヘコんだ。優美子とか姫菜とかと話している内に、気分は少し晴れた。

 

 スマホを操作して、本物と調べてみる。

 その意味は私が知ってるのと同じだった。頭の良いヒッキーの考えている事なんて、アホの私にはわからないかもしれないけど、ヒッキーの事を知りたいな。

 

 ガラガラッ、ととびらが開く音がした。振り向くとゆきのんが立っていた。少し顔が険しいかな。

 

「由比ヶ浜さん、話があるわ」

 

 何故かはわからないけど、嫌な予感がした。

 

 ☆☆☆☆☆

 

 ぼふん、と勢い良くベットに倒れ込む。

 

 ゆきのんから、修学旅行での事を聞いた。

 

 あんな事があったなんて。

 どうして姫菜は私とか優美子に相談してくれなかったんだろう。

 それとも、私達の関係ってそんなものなのかな。

 

 いや、それよりも。

 

「私、最低だ」

 

 ヒッキーに、人の気持ちもっと考えてよ、と言ってしまった。

 人の気持ちを考えていなかったのは、私なのに。

 姫菜の気持ちも考えなかったのは、依頼を受けたのは、私なのに。

 

「私、最低だ」

 

 ☆☆☆☆☆

 

「比企谷、助かった」

「礼には及びませんよ」

 

 雪ノ下達がやって来てから、一週間が経った。

 今日は検査があり、検査によれば、俺の脚はとてもいい具合に回復しているらしい。俺の担当の医者によれば、一週間程早く退院出来るらしい。

 

 因みに、この一週間、大吉は毎日ここに来て、ノートを見せてくれたり、数学を教えてくれる。おかげで、入院している間に授業に遅れたりはしなそうだ。

 数学は相変わらずだが、少しコツを掴んで来た感じがしないでもない。

 今日は少し遅れて来るらしい。

 

 今は平塚先生が来ている。一色の依頼がどうにか片付いたそうだ。俺が提案した、一色にやる気になってもらう、というやり方で依頼を解決したらしい。

 

「どうやって説得したんですか」

「頑張っただけだ。特にやり方とかはない」

「そっすか」

 

 結果だけ見れば、雪ノ下は依頼を解決出来ていない。つまり、依頼は失敗、そう解釈出来るだろう。

 

「そう言えば、大吉はまだ来ていないな。毎日来ているらしいじゃないか」

「そっすね。今日はなんか遅れて来るらしいですよ」

 

 ガラガラッ

 

「お兄ちゃ〜ん」

 

 平塚先生と話していたら、小町がやって来た。

 

「あ、平塚先生。こんにちは」

「こんにちは。相変わらず元気だな」

「なんかすいません」

 

 なんか申し訳なかったから、軽く謝罪をしておく。

 

「構わんよ。さてと、そろそろ帰るよ。せっかくの兄妹水いらずを邪魔したくはないからな」

「そっすか」

「比企谷またな。また来るよ」

「さよなら」

「平塚先生、さようなら〜」

 

 小町が手を振っているのを見て、軽く手を振り返して、平塚先生は去って行った。

 

「さて、小町。今日はどうしたんだ」

「別になにかあった訳じゃないけど、無性にお兄ちゃんの顔が見たくなったから、思わず来ちゃった。あ、今の小町的にポイント高いっ」

 

 本当にポイント高かった。

 

 ガラガラッ

 

「こんにちは〜」

「あ、梓さん。こんにちは〜」

「小町ちゃん、こんにちは。比企谷くんもこんにちは」

「おう」

 

 大吉が来た。

 

 小町と大吉は、前にここで会ってから、持ち前のコミュ力ですっかり仲良くなっている。

 

「はい、これ。今日の分のノートね」

「おう」

 

 大吉はここに来ると、まずノートを貸してくれる。

 

「なんか、2人付き合ってるみたいですね」

「こ、小町ちゃんっ」

「小町、なに言ってんだ」

「えー、だってやり取りが凄い自然なんだもん」

「そりゃそうだ。毎日ノート貸してもらってんだから」

「そうだよ、小町ちゃん」

「ったく。で、小町。なんで来たんだ」

 

 このままだと、一向に本題に入らなそうだったから、少したしなめる。

 

「ああ、今日の検査の結果を聞きに来たんだよ。お母さんとお父さんも気にしてたよ」

「そういえばどうだったの?」

「問題なし。むしろ良いくらいだ。医者の話だと、退院が一週間ぐらい早まるんだと」

「良かったじゃん、お兄ちゃん」

「良くねぇよ、ダラダラ出来る時間が短くなっちまう」

「全く、このごみぃちゃんは」

「ははは…」

 

 大吉に苦笑いされた。俺の考え方って普通だろ。休むチャンスが有ったら休む、当然だろ。

 

「そういえばさ、お兄ちゃん」

「なんだ」

「雪乃さんと結衣さんは?」

「どういうことだ?」

 

 どういうことだ、なんて言わなくてもわかっている、小町が何を言いたいかなんて。そして、今、俺は酷く動揺していることだろう。小町には知られたくないことを、知られてしまうかもしれないのだから。

 

「小町さ、一週間に2、3回ここに来るけど、まだ一回も会ってないんだよ。普通、同じ部活の仲間が入院してたら、偶にお見舞いに来るものじゃないのかな。運動部だったら難しいけど、奉仕部はそうじゃないじゃん。雪乃さんと結衣さん、来てないの?」

「えっとね、小町ちゃん」

「大吉、いいよ」

 

 大吉は、今の話題は俺にとって辛い物だろう、そう思ったのか、態と話を遮るようだった。

 

 小町には知られたくないことだが、いつかは知られてしまうことだ。そのタイミングが来てしまっただけだ。

 小町に話す、いつもなら嬉しいことが、今は酷く億劫だ。事の顛末を伝えたら、なんと言われるだろう。話すことが、酷く躊躇われる。

 けど、そんなことは言ってられない。深呼吸して気持ちを落ち着かせてから話そう。

 

 ☆☆☆☆☆

 

「はぁ…全くお兄ちゃんは…」

 

 修学旅行から今まで何が有ったのかを、比企谷くんは小町ちゃんに伝えた。

 そのことは今の彼にとって、触れて欲しくない話題のはずなのに。

 

「あのね、お兄ちゃん。小町は妹だから、お兄ちゃんのやったことの意図だってすぐわかるし、すぐ納得だって出来る。けど他の人はそうじゃないんだよ。そこの所ちゃんとわかってる?」

「わかってるよ」

 

 今の彼の表情は、苦虫を噛み潰したようだ。

 

「けど、ちゃんとお兄ちゃんが考えて選んだったらいいよ。なにか言いたいことが有ったら、遠慮せずに言ってくれていいからね。小町はお兄ちゃんの味方だから。あ、今の小町的にポイント高いっ」

「ありがとな、小町。愛してるぞ」

 

 えっ、ひ、比企谷くん何言ってるの。あ、愛してるって。比企谷くんはもしかしてシスコンなの。シスコンなんだよね、そうなんだよね。そうであって。

 

「小町はそうでもないけどねっ」

「またかよ」

 

 あっさり振られてた。よく考えてみたら、小町ちゃんは妹なんだ。本気な訳がない。そんなことにも気付かないくらい焦ってたのかな。え、なんでそんなに焦ってたの、私。

 

「あれ、梓さんどうしたんですか。顔、真っ赤ですよ」

「えっ、そうなのっ」

 

 どうしよ〜。すごい恥ずかしいよ〜。

 

「そうだな、真っ赤だ」

「き、気にしないで。ほら比企谷くん、今日も数学やるよ。今日から確率だよ」

「お兄ちゃん、良かったね。梓さんみたいな可愛いな人から、勉強教えてもらえて」

「そうだな」

 

 えっ、ひ、ひひひ比企谷くん、今私のこと可愛いって…。

 

 私は、顔がより赤くなって、身体が熱くなるのを感じた。

 




いかがだったでしょうか。

少し変でしたかね。

次こそは早く書きたいです。

ご指摘、ご要望があれば教えて下さい。

それでは、また。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。