IS〈インフィニット・ストラトス〉闇の少女とペンダント 作:tamatyann
変更点だけの把握はこの話の後書きを見て下さい。
篠ノ之束がISと呼ばれる「マルチフォーム・スーツ」の発表をおこなってから一ヶ月ほど時が過ぎたある日、何千ものミサイルが白煙を引きながら東京都の上空を埋め尽くす様に飛翔していた。
東京の上空を我が物顔で突き進むミサイルは、主にロシアやアメリカ、中国などの常任理事国の原子力潜水艦や地上ユニットなどから発射された巡航ミサイルやSLBM群だった。
高度なセキリュティーを誇る各国の軍事ネットワークだったが、同時多発的なサイバー攻撃を受けた結果として完全に指揮系統を掌握されてしまった。
そのサイバー攻撃は軍事ネットワーク以外にも及び、民間の電話の基地局や発電所など各国の国家機能を維持するのに必要なインフラが強制的に封鎖させられた。
電気、ガス、水道、信号など社会インフラが各地で誤差動を起こし使用不可能となり、世界中の政府がその突然の事態に対応を迫られている最中に事は起こった……
乗っ取られた軍事ネットワークから各国の総司令部の命令と偽ったある一つの命令が出されたのだ。
それは、日本の首都――東京――へのミサイルの発射。
一部は核攻撃を受けた場合の報復攻撃を想定したプラン通りに司令部隷下の部隊によって自動発射されたが、大半のミサイルは人間対機械と言うさる映画(ターミネ○ター)の様な事態を想定して人間の操作を必要としていた為に弾道ミサイルや巡航ミサイルにしても外交問題もあるわけでもないのにすぐに発射されるわけではない。
当然、平和憲法を持つ日本への攻撃に疑問を抱く部隊が多数存在していたが、電話や無線で問い合わせようにも軍事衛星から民間の衛星通信、インターネットに至る大半の伝達手段を掌握されていたので大半の部隊は総司令部に問い合わせることが不可能に近かった。
それでもアナログ無線があるので、命令が下されて数分の内の間には総司令部と連絡が取れていたのだが、司令部隷下の部隊が発射したICBMがそれを中断させることとなる。
核弾頭を搭載したICBMはハッキングにより操作され日本に向かわず、軍事ネットワークを乗っ取られた各国の上空で爆発したのだ。
上空と言っても高度100kmほどである。
大気が希薄なそこで爆発した核爆弾はほとんど爆風を起こさず地上の人間や建造物に被害を与える事はない。
だが、その代わりに発生したのがEMPと呼ばれる電磁パルスが曲者だった。
そのEMPは一瞬のうちに地上に到達し、ありとあらゆる金属に誘導電流を発生させたのだ。
みなさん知っているだろうが雷が落ちているときにPCの電源をつけるのは自殺行為である。
理由は当然、雷が落ちたときに発生する過電流や過電圧によってパソコンの内部がやられてしまうからだ。
それと同じ事態が核爆弾の爆発した地点の真下で発生したのだ。 それも、一つの核爆弾が爆発した場所から300km圏内全域で……
強力な電磁パルスは、光ケーブル以外の有線・無線の通信回路、外部から電気をもらっている電気回路(発電所の電気を家のコンセントで使っているPCとか)などが300kmの圏内全域で一斉にショートしたのだ。
テレビやラジオなどの放送局から送電システム、金融、医療などパソコンや電子機器が一つでも関わっている場所は軒並み機能を喪失した。
それは軍でも同様で、辛うじてアメリカの本土やロシアの一部では高高度核爆発で発生するEMPの防護の措置やバックアップ体制を構築していてたので遠方の部隊が問いただしてくる発射命令を取り消す事が出来た。
だが、通信が一切取れなかったその他の部隊は、総司令の命令に従って決められた発射プロセスを実行した。
結果として、日本の首都に発射されたミサイルの総数は2000基を越えた。
その中には当然、大型のICBM(大陸弾道ミサイル)やSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)も入っていて、その全てに核弾頭が搭載されていた。
終末速度がマッハ25となる物から報復攻撃用の潜水艦発射型の物まで実に様々な種類があったが、それらの大半は東京に到達する前に無力化されることになる。
流石にマッハ25ほどで迫る核弾頭などをISが対処すると言う事態にもならず、なぜか起動した自爆プログラムによりICBMやSLBMは全て無力化されたのだ。
自爆したのを除いても、東京に突っ込んでくるミサイルの数は1000基以上で、その大半が亜音速のトマホークやハープーンと言った対艦・対地ミサイルだった。
旧ソ連が考案したアメリカの空母機動艦隊(空母打撃軍)への攻撃方法として採用されていた「飽和攻撃」よろしく、自衛隊が必死に維持しているMD(ミサイル防衛)と「白騎士」による迎撃だけでは1000基を越えるミサイルの飽和攻撃から東京を無傷のまま残す事など出来るわけがなかった。
PAC-3による迎撃と数隻のイージス艦によるミサイルの迎撃……
鬼神に迫る勢いで行われたISによる無茶苦茶な迎撃により、最終的に東京都上空に到達したミサイルの数は100分の1以下である10基を下回った。
だが、迎撃から漏れて首都上空に到達したそれらミサイルは、プログラムで定められた重要拠点や市街地に向けて飛翔し続けた……
そのうちの1つが、東京都の一角にある古いオフィスビルの一つに着弾した。
その古いオフィスビルに着弾したのは通常弾頭のトマホーク。
老朽化の目立つオフィスビルの壁を安々と喰い破ったトマホークは、内部の机や椅子などを弾き飛ばしながら中央部の支柱に直撃した。
その時、遅延信管が作動して454kgの炸薬と燃料が一気に爆発した。
その結果、老朽化したオフィスビルは着弾したフロアを起点にして軋みながら倒壊し始めた。
煙を濛々(もうもう)と上げながら倒壊するそのオフィスビルは、乗り捨てられた車が放棄されている道路めがけて古くなったコンクリートの体をボロボロと崩しながら倒れていく……
放棄された車だけだったら良かったが、そのオフィスビルの倒壊コースには一人の幼い少女とその両親らしき男女が立ちすくんでいたのだ。
避難する途中でミサイルの爆発音を間近に聞いて放心状態になってしまった3人は、瓦解しながら迫るオフィスビルの影から完全に逃げ遅れてしまった。
少女の両親が我に帰って爆音のした方向を見たときには、既にオフィスビルが灰色の粉塵を撒き散らしながら自分たちの眼前に迫っていた。
車以上の大きさの瓦礫を彼らが視線に捕らえたとき、既に彼らは死を覚悟した。
彼らに瓦礫が直撃する10秒前。
死を覚悟した父親だったが、抱き抱えている幼い娘を守るために、無意識の内に胸に抱く娘を全力で投げ飛ばしていた。
その少女は7mほど投げ飛ばされ、偶然にも隣のビルのショーウインドーに身体を衝突させ、ガラスを突き破りながら中に入った。
少女がガラスを突き破り、ビルの床に体を接触させた瞬間、少女の耳に至近距離で落雷した様な爆音が突き抜けていった。
しかし、その爆音はその少女にはくぐもった音にしか聞こえない。
なぜなら、投げ飛ばされた地面に撒き散らされたガラスの破片や倒壊したオフィスビルの瓦礫が少女の体中を切り付け、突き刺していたからだった。
少女は全身に走る痛みに絶叫し、地面の揺れで体中が痛むのを感じながら気絶した……
外の土煙が和らぎ始めた頃、投げ飛ばされた少女が痛みで意識を取り戻し、その痛みに震えながら立ち上がった。
ガラスの破片でボロボロとなり、血で紅く染まった白いワンピースを身に纏った少女は、いつも優しく声をかけてくれる両親がいないことに気が付いた。
「おとーさん、おかーさん……どこ?」
少女が何度も何度も呼びかけても誰も返事を返してはくれない。
血だらけの少女は、薄暗いビルの中を傷ついた足を引きずりながら必死に両親を探し始める……
しばらくするとそのビルの床には点々と血によって線が描かれ、少女が必死に探し回った軌跡を残していた。
その軌跡はいつのまにか瓦礫の山となった道路の外へと続き、瓦礫の山へと消えていった……
外の土煙が落ち着いて瓦礫に埋もれた道路の様子がはっきりと見える様になった頃、倒壊したオフィスビルの瓦礫の山を必死にどかし、隙間に顔を突っ込みながら両親を探す少女の姿があった。
少女は瞳に涙を浮かべながら一度もペースを維持しながら瓦礫をかき分けている。
その少女の白いワンピースは血の色と瓦礫から出たホコリで黒ずみ、瓦礫をどかしていた両手は既に血まみれになっていた。
(なんで……パパとママはどこにもいないの?)
両親がどこにもいないと一度でも考えてしまうとその事が何度も頭によぎり、毎回瓦礫をどける少女の手が止まった。
少女はそのたびに必死に心を駆り立てて、両親がどこにもいない事を認めないとばかりに無我夢中に瓦礫をどかす。
少女は心も体も満身創痍な状態のまま両親を探し続け、もう既に探し始めてから1時間半以上の時間が過ぎていた……
そんなとき、偶然にも瓦礫の一角に紅く染まった場所があるのを少女が発見した。
少女はそこに両親がいるかもしれないと、一縷の望みを託してその場所を中心に探しだした。
血の付着している小さい瓦礫をどかして、大きな瓦礫の隙間を覗き込んだときに止まった少女の身体。
少女の視線の先には、顔や身体が瓦礫によって肉塊と化した両親の変わり果てた姿があった……
父親と母親は手を繋いだまま息絶えている。
たった数時間前には少女と一緒にパフェを食べながら笑っていた両親の顔は瓦礫によって潰され、辺りには濃厚な死の臭いが充満させていた。
「なん……で……おきてよ、ねぇ……」
少女は嗚咽をこらえながら、繋いでいる両親の手に触れる。
2人の手は血で濡れていたからか、触れた少女の手からは段々と体温が奪われ始めた。
両親の遺体を眼前に入れた少女は、我慢の限界に達しポロリと落涙した。
一度涙が流れれば、少女の瞳から堤を切った様に止めどなく涙があふれてくる。
少女はそのまま感情に身を任せてしゃくりあげて泣いた……
長い間、両親の手を握りながら少女が悲哀に暮れていると、ふとした拍子に両親の手から何かがこぼれ落ちたのを感じた。
その直後に金属が固い瓦礫に落ちる音を聞いた少女は、涙で視界が制限されているのにも関わらず、落ちた何かを痛々しいまでに血で赤黒く染まった手で探り出した。
ガラスやコンクリートから出ている鉄棒に血塗れた手が触れる度に少女は顔を歪めたが、がれきとは違う小さく丸みをおびている物体に触れたのでそれをすくい上げた。
少女がすくい上げたそれは、いつも母親が首にかけていたペンダントだった。 それを両親が握っていたらしく、少女が両親の手に触れて揺さぶった時に偶然落ちたらしい。
少女が涙を溢れさせながらもそのペンダントを両手で包んで抱きしめようとした時、手の上で勝手に金色のペンダントが開いてしまった。
そのペンダントの中には少女と両親が笑いながら写っている写真があったが、それは血で半分染まりながら寂しげに収まっていた……
血で染まった写真が少女の視線に入ったとたん、少女の心の奥底から無意識の内に押さえつけていたどすぐろい感情が沸き上がった。
それは自浄作用のある涙を止めさせ、少女の神経を高ぶらせ始めた。
「なんなの……なんで?」
少女がそう呟いた時、遠くの方から複数の爆音が聞こえてきた。
瓦礫の狭間から見える空を少女が見上げると、そこには白い何かが縦横無尽に飛び回っていた。
それは次々と青色や灰色の戦闘機、そして大小様々なミサイルを飛行機には出来ない軌道で叩き落としている様子が見て取れた。
その何かに破壊されたミサイルや戦闘機の破片が次々と地上に落下している。 破壊された戦闘機のキャピノーから射出された人間がパラシュートで降下していた。
空で破壊された兵器の破片がいくつかが少女の近くにも落ちて爆発したが、空を飛ぶ何かは自分が破壊した物の末路には興味が無いらしく、平然とどこかへと飛び去っていた……
(なんでアレは私の家族を助けてくれなかったの? もしかしてアレがパパとママを殺したの?)
それを見た時、少女の心が押さえつけていた怒りの感情に大量の燃料が注がれた。
最愛の両親の死体を見てくすぶっていた怒りの感情に投下された燃料は、復讐と言う甘美な感情を少女の心の奥底に植えつける事になった。
少女は無意識の内に精神を崩壊させるのを防ぐために、思考を復讐という炎を燃やすことに誘導した。
「わたしの家族をこわしたのはあれなのね?」
少女は両親の血で汚れたペンダントをギュッと握り締めた。
少女はその時に両親が死ぬ原因を作った相手を全員、両親と同じ目にあわせてやると誓った。
「お父さん、お母さん待っててね。 かならず……」
そうつぶやいた少女は、ビルが倒壊してから3時間後に公安によって保護される事となった……
後に白騎士事件と称される華々しいISの登場劇。
日本政府は警察や自衛隊の対応の不手際やISのイメージダウン、メディアからの追求などを恐れて死亡者数を0と公表した。
その結果として少女の両親は交通事故として書類上処理され、当然公安に保護された少女には児童養護施設に入ることになり、公安からの監視が付くことになる……
数ヶ月後、少女は普通の児童養護施設とは言え公安からの監視下から失踪し、7年後には認定死亡として戸籍から消去された。
この物語は、公安の監視から逃れたある少女の物語である。
ブランク解放と一緒に設定を練り直しました。
硬派な感じにエセ三人称です。
変なところや未熟なところがあったりすれば短くても感想をくれれば嬉しいです。
変更点
・主人公・トモカの織斑一夏などへの憎悪の強化
・ISをコアを二つ使うと言う設定で更に強力な物に
・主人公・トモカは少しだけお金が好きな女の子に
ぐらいかな?