IS〈インフィニット・ストラトス〉闇の少女とペンダント 作:tamatyann
トモカとセシリアの試合が終わり、セシリアのISのメンテナンスが終わった頃、ようやく一夏のISが届いた。
そのISは、白銀に輝く「白式」と呼ばれる一夏の専用機である。
トモカは一夏の専用機のデータを集めるために、ISが届いてはしゃいでいる一夏の居るピットに入り込んだ。
「トモカ、こっちだこっち!」
トモカがピットでISを装着して嬉しそうな一夏を少しだけさめた目で見ながら一夏に近づいた。
そのISは、見た目からしても一夏が乗ると「正義」の代名詞と言っても違和感が無い感じがして、血に染まった自身の黒いISとは真逆の存在だとトモカは苦笑した。
「カッコいいじゃん、一夏」
「でもなんか武器が少ないんだよなぁ……」
一夏はそう言うと刀剣の様な近接武器を量子化した。
「雪片弐型とか言う名前なんだけどこれしか武器が無いんだよなぁ……」
一夏のぼやきを聞きながらトモカは自身のISの能力を使って一夏の武器などの情報を収集していく。 その情報をアメリカに送信しつつトモカは冷徹に敵の観察を行っていた。
あの篠ノ之束の事だから何を仕掛けてるやら……織斑一夏の戦闘能力は現状では低いとは言え、自律戦闘させて逃がすくらいやらせそうよね、あの害悪ならしかねない。
暴言を心の中で唱えながらも表情は柔らかい笑みのままだ。
「遠距離の武器は難しいから、剣道の心得がある一夏にはピッタリじゃない?」
「でも遠距離の武器って……こう、何かかっこいいだろ?」
「それは分かる気がするけど、反動制御とか移動目標の未来位置を狙うだけでも大変だよ?」
「うっ……まっ、まぁ慣れれば大丈夫だ」
「今から一夏が戦うセシリアさんの遠距離兵器の扱い方を見て学んで見たら? 彼女、銃の扱いも上手いから聞いてもいいかも」
「それもいいかもな、でもトモカも上手なんじゃないか?」
「私のISは2.5世代だから、出力とシステムアシストでそう見えてるだけだし……」
敵にガセ情報を流すのは世の中の常だし、まあ教えてもいいけど消すときに面倒にならないように条件付けるっていう手もありかな……
「2.5世代?」
「あの糞血縁野郎は一個も教えて無かったのよねぇ……姉共々地獄に落ちればいいのに……」
トモカがぶつぶつと文句を言っていると、一夏がその様子を凝視していた。
うわーやっちゃった、イメージが……
「……」
「コホン、ただの文句だから気にしないでね? それで世代の話だっけ?」
「おっ……おう」
一夏はドン引きしているようでISを器用に少しだけ浮かびながらソロソロと後退していた。
そんなに器用な事出来るならなんで昨日はあんなに下手だったのよ……
「第一世代がISの初期型の世代で二世代目が現在の主流のIS、第三世代が特殊兵器を搭載したセシリアさん達代表候補生が乗ってるISって感じだね。 私のは後付け武装を山のようにつけて基本性能を向上させて少しだけ特殊兵装が積んである中途半端なやつだから2.5世代なのよ」
「へぇ……俺のは何世代なんだ?」
「そうね、ちょっと解析させて貰える?」
「いいけど、どうするんだ?」
「アクセス許可だけ出してくれたら大丈夫だよ」
そう言うと、トモカは一夏のISに対してアクセスを開始した。 一夏は「留宮トモカのIS・《ブラックウィドー》からの全アクセスを許可しますか?」と言う文面に対してYES!と選択してセキリュティを解除した。
その瞬間トモカは一夏のISの全データーにアクセスし、収集と保存に入った。 兵器情報からISのコア情報、最適化している最中のISの特性やスペック、一夏の詳細な身体・バイタル情報など収集できる全ての情報である。 数分もすればトモカの元にその莫大な量のデータが集まった。
やった……これで一生安泰だ……
トモカは数年の間に感じたことが無いほどの興奮に包まれていた。 手に入れた情報の山は上手く扱えば小国くらい買う金額になる可能性もあるのだから仕方ないとも言える。
トモカにとって一夏は血縁上消したい相手ベスト3に入るが、生理的嫌悪感は束と千冬の糞ビッチより相当マシな感じなので駒にしても良いとも感じていた。 一緒にいれば各国政府から莫大な金が入ってくるし、千冬への憎しみさえ制御できれば実入りの良いのだから。
「トモカ、大丈夫か?」
「あっ、うん……そうそう、一夏のISは第三世代だと思うよ」
「へぇ、やっぱ良い奴なのか」
「糞ビッ……じゃなくて束博士が改造してるだろうから性能はピカイチだと思うよ」
一夏とトモカが談笑していると、時間が迫っているのか山田先生が気弱そうな表情を見せながら時計をチラチラ見ながら近づいてくる。
「織斑君、そろそろ時間なので……」
「あっ、はい! 今からいきます!」
そう言うと一夏はそそくさと準備を始める為に山田先生の方へと向かった。
「頑張ってね」
「おう!」
そんな仲良さそうな2人の様子に何か感じたのか、山田先生と一緒に付いてきた千冬がつっかかってきた。
「何の用でここにいる? 留宮」
「仕事ですが何か?」
「……そうか、一夏に変なことをするなよ」
「はぁ、そうですか。 ビジネス以外で目標と過度な接触はしていませんし、今後もそんな予定は一切ありませんが……」
「チッ……そうか分かった」
当然のようにトモカへ嫌悪感を見せる千冬だったが、それより一夏の方が重要みたいで、飛び立つ準備を終えた一夏に話しかける為に移動していた。
二人が何言か会話を交わし、一夏はピットから飛び立った。
暫くしてセシリアと一夏の試合が始まって10分ほど経った頃、トモカは顔を青くしながら電話を受けていた。
その電話相手はアメリカ国防相。 そして眺めているのはメールで送られてきたお高い金額の書かれた請求書だった。
「うわっ、4千万ドルとか……」
セシリアとの試合で相当暴れ回った上に武装を乗せる高価なピットまで複数大破しているのだからこの金額は仕方ないとも言える。
本来、国に所属している人間なら請求書など届かないし、そんなに金が掛かっても気にしないのだろうが、トモカはアメリカとの契約社員である。
アメリカの仕事をしている最中の費用は掛からないが、必要経費以外で使う場合には別途お金が掛かるのだ。
一応は追加の仕事を受けて兵器の請求書の支払いをしているが、ヘコヘコとして媚びを売っておかないと、イザと言うときに補給を後回しにされたら目にも当てられないから仕方ないのだ。
「武器弾薬にビット……ただでさえISのせいで国防省の予算は削られているのに、どこまで無駄に合衆国の予算を使うつもりだ? 必要経費は払うが今回は過剰に使用したと思われる分は請求しておいた」
「すいません……」
「ビットの破損状態を見たが一部修理が不可能な物もあったんだぞ! ……まあいい、来週に別件の仕事を受けるなら七割ほどまけてやる」
「わかりました……でも、英国のセシリアのデータを収集したのでそれで勘弁してもらえません?」
「データはありがたくもらっておくが、契約は契約だ」
「……はぁ、了解です」
静かにトモカは電話を切った。
「あのケチンボ禿頭め、もし弱みを握ったら絶対泣かしてやるんだから!!」
ブツブツと金勘定にうるさい国防相の愚痴を言いながら一夏との試合に備えるために移動を開始していると、すれ違った人達からぎょっとした目で見られていた。
(この調子だと一夏のデータも買い叩かれそうだしなぁ……売るのはアイツに任せておくとして、一夏との試合はどう費用を減らして勝とうかな)
トモカは渋々一夏を圧倒的火力で泣かせてやろうと計画していたのを諦めた。 その代わりに砲弾が比較的安価なカノン砲だけで戦ってみようと考えていた。
出力的にもカノン砲で殴り付けるくらいの能力がトモカのISにはあったし、たった一門の大砲に負けるのを見るのも面白そうだったからだ。
国防相に怒られたくないからじゃないんだから、一夏なんかに大量にお金を使うのがもったいないからだし……
トモカはそう自身に言い聞かせると、騒がしい観客の声が聞こえる自分用のピットへと入っていった……
◇
そして一夏とセシリアの試合が終わってから数十分後、やっと最後の試合が始まろうとしていた。
トモカは一夏を潰してやろうと手ぐすねひいて待っていた。 カノン砲一門を構えながら天井のバリアギリギリの高さでできる限り上方を占有する形でである。
トモカが競技場に入ってから数分後、ゆっくりと一夏がピットから飛び上がってきた。 そのときには一夏の表情が硬かったが、トモカの装備を見てから少しだけ表情を緩めた。
「あれ、トモカ? セシリアと戦った時より武器が少なくないか」
「そうよ、一応このカノン砲だけで戦うつもり」
トモカが少しだけ一夏を侮ったような表情を見せながら言ったからなのか、一夏は少しだけニヤリと笑みを浮かべていた。
どうせ油断してるから勝機があるとでも思っているのだろうと予想を付けたトモカはそ知らぬ顔をしながら自動供給されるカノン砲弾の信管を近接信管に変更したりなどして最終調整を行っていく。
両者が集中しながら互いに武器をしっかりと構え終えたとき、会場のブザーが鳴り響いた。
「第三試合、織斑一夏対留宮トモカの試合を開始します」
そのアナウンスがあった瞬間、最初に動いたのは一夏だった。 緩急をつけながらセシリア戦で学んだのだろう回避起動を取りながらトモカに向かって突撃してくる。
それに対してトモカは牽制で一夏の至近距離に砲撃を続けながらゆっくりと誘うように交代していく。
近接攻撃しか出来ない一夏は、数度交錯した後に強引にトモカを切り付けにかかる。
フェイントもない単純な攻撃にトモカは冷静に頑丈なカノン砲で一夏の雪片弐型を受け止めた。
「やるじゃん、一夏!」
「くそっ、反応が早いな」
そう言うとトモカは2つのコアのおかげでケタ違いの出力の出るISの特性を利用して強引に一夏を吹き飛ばした。
「そっち、こそ!」
そう言いながらトモカは吹き飛んだ一夏に砲弾をぶち込む。 一夏が行動するまでにトモカは距離をとってさらに砲弾の雨を降らせた。
しばらくすると黒い硝煙で一夏のいるはずの空間が満たされ、トモカは赤外線などで一夏を探し始めた。
一夏が硝煙の雲から突然飛び出し、また一つ覚えに突貫してくるのだろうと考えていたら突然一夏が唯一の武器の雪片弐型を投げ飛ばしてきた。
「なっ……」
武器を投げてくるとは思わなかったトモカは不意を突かれて雪片弐型の直撃を受けた。 怯んだ瞬間に一夏がトモカの懐に入り込み、落ちていく雪片弐型を掴むと零落白夜を起動させた。
「決まった!」
さすがにセシリア戦でその危険性は認識していたのでトモカは顔を引きつらせながらカノン砲を一夏に指向する。 だが、カノン砲が一夏に触れる前に零落白夜状態の雪片弐型でトモカの下腹部辺りを切り上げられた。
それだけで3/1ほどのシールドが削られたのに一夏は多段攻撃の構えを見せている。
「舐めないで!!」
トモカはそう叫びながらカノン砲の砲弾を複数量子化すると、そのまま2人の眼前で一斉に起爆させた。
爆発にクラクラしながらもトモカは爆煙に紛れて撤退する。 さらに置き土産に砲弾をいくつか量子化させて、離脱したときに一気に起爆させた。
すでにダメージは半分を超えてしまった。 トモカは緊迫した表情で距離を取りながら砲撃を繰り返す。
30秒ほどの時間に10発もの砲弾を量子化による自動装填で強引に一夏の居る空域に叩き込んだトモカは荒い息を吐きながら砲撃を止めた。
砲撃を止めると風の流れで煙が流れていく。 そうして見えた一夏は白式の装甲が複数弾け飛んだり煤けてはいたが闘志は溢れていて、雪片弐型を構えてる様子から何発か砲弾を叩き切って直撃を避けていたのだろうと予測がついた。
「やるじゃん……一夏」
トモカはバトルジャンキーという訳ではない。 いつもなら冷徹に敵を殲滅するのだが、今回は楽しげに戦うことを楽しんでいた。
いつか殺そうとしている相手だが、数度のISの試合でここまで操作技術や戦闘能力が上達したのを見て一種の天賦の才を持っているのではないかと感じていた。 武器無制限の殺し合いになればトモカが圧勝するだろうが、制限がついた状態とは言えISの初心者が長年ISを兵器として使用してきたトモカに一泡吹かせる事に成功しているのだ。
トモカはその点を評価してお金がかかるけど少し本気を出してあげようと考えた。
「だろ! って、なんで武器を変えてるんだよ……変えないって言ったじゃないかトモカ」
「近距離のほうが得意なんでしょ? だったらいいじゃん!」
トモカはカノン砲を量子化して格納すると、IS用の双刀を取り出した。 そのまま時間を置かずに一夏に突撃する。
すると一夏は慌てて雪片弐型で防御したが、衝撃を流しきれずに身体を仰け反らせた。
「ヤベッ……」
出来た隙をついてトモカは一夏の絶対防御が作動するように何度も斬りつける。 雪片弐型を使わせないように重点的に圧を加えるように攻撃した後、一夏を地面に蹴り落とす。
その瞬間にカノン砲などの重火器を取り出したトモカは地面に落ちた一夏に無慈悲に砲弾や銃弾の雷雨を降らせていく。
時間にして20秒ほどで会場に再びブザーが鳴り響いた。
「勝者、留宮トモカ!」
トモカはそれを聞いて攻撃を中断すると、一夏の傍に飛んでいった。 一夏は先ほどよりもボロボロになっていたが、なぜか笑顔だった。
「やっぱトモカは強いな……」
「まあね、動ける?」
「うーん……少し休みたいな」
そう言う一夏を見てトモカは苦笑しながら一夏を抱えてピットに戻っていった……
しばらく書いていなかったので下手になってる……
とりあえずダッシュで書いて投稿しました。