IS〈インフィニット・ストラトス〉闇の少女とペンダント 作:tamatyann
視線は三人称らしく度々変わってます。
チョット大げさな場面もありますが、多めに見てください……
第二回モンドグロッソ決勝戦の当日、白騎士事件で瓦礫の下敷きとなって両親を亡くした少女が決勝戦会場にいた。
彼女は両親の形見であるペンダントを胸に抱きながら、隣で携帯の画面を見ている30歳ぐらいの男と談笑しながらウロウロと歩き回っている。
「ねぇお父さん、あの弟さんってどこかな?」
「例のお姉さんが中央の通路側を購入していたらしい……ほら」
男が指さす先を見た彼女は「弟さん」を見て思わず顔をしかめた。
だが、男はそれに頓着せずに足を進めた。
彼女と男は「弟さん」と呼んだ目標が視認できるほど近くの席に座ると、男は鞄の中からサングラスを取り出し装着した。
サングラスをかけて視線を隠しながら「弟さん」を監視する男を目立たせない為に、彼女は隣に座る男にもたれ掛かって目を閉じた。
すると、彼女の嗅覚は男から香る独特な匂いを感じながら深く息を吸い込んだ。
(……お父さんみたいな香りがする)
彼女は男の柔らかな香りと体温を感じ、いつの間にかウトウトし始めていた。
彼女は仕事中だと必死に眠気を我慢しようとしていたが、男の体温は彼女に両親のことなどを思い起こさせるのには十分で、彼女は過去の出来事を思い出しながらまどろみに包みこまれていった……
そんな彼女と男の二人の様子は、誰が見てもアジア人の父親とその娘と言う風に唯の親子にしか見えないだろう。
周囲にとって微笑ましい親子にしか見えないが、実際にはその二人には血縁上も戸籍上にも一切接点が無い。
白騎士事件で両親を亡くした少女は「留宮カオル」と言う名前だったが、日本から失踪した現在は「留宮トモカ」と名乗っている。
そんな彼女――留宮トモカは現在、隣にいる30歳台の男の元に白騎士事件から5年間もずっと身を寄せているのだ。
なぜ、トモカがそんな男の元に身を寄せているかと言うのにはある約束があった……
◇
トモカの両親が肉塊と化した白騎士事件から数週間ほど、当時5歳だったトモカは病院のベッドの上で過ごしていた。
唐突に日常が崩れて幸せな家庭から一転して孤児と言う立場になってしまったトモカは精神的に荒れていた。
だが、病院で精神的なケアが施される内に、段々と落ち着きを取り戻し始めていた。
そんな最中、偶然テレビをつけているときに見たニュースの報道特集が、5歳とまだ幼いトモカの心に闇を作り出すきっかけとなったのだ。
『東京都に突如として千を越えるミサイルが来襲し、それを華麗に打ち払った白騎士事件……
数多のミサイルを撃墜し死者が一人も出なかったと言う大成果を上げたISと呼ばれるマルチフォーム・スーツの実態に……』
トモカはそれを見ていた時、その特集で両親を殺した犯人の情報が少しでも得られるとドキドキしながら待っていたのだ。
だが、実際にそこから得られた情報は、両親が「そこで死んだことにはなっていない」と言う嘘だけ……
やっと精神的に落ち着きを取り戻し始めていたトモカは、報道が間違えているとはっきりと理解でき、他の入院している患者の人や看護師にそのことを話した。
だが、何回話してもその度に返ってくる答えは、「その事件で死んだ人はいない」と言う事だけだった。
廊下の前にいた警察の人にトモカが言っても帰ってくる答えは一緒だった。
トモカが本当のことを言っても誰も信じてくれず、
間違っていると毎回諭され続けた幼いトモカは、味方が誰もいないと感じるまでに時間はかからなかった。
その為、意気消沈したトモカに対して時折、両親が死んだのは事故だったと諭してくる大人のおじさんやお姉さんが病室を訪れてきた。
それを聞き流している内にトモカは、心に殻を作って引きこもってしまった。
それでも周りの大人たちがトモカを否定するので、トモカの心の殻は段々と厚くなり、普段から透明な膜の向こうから劇を見ているように心を隔離するようになった。
そんな時に児童養護施設の職員が来て、退院したら児童養護施設に入る事になると、トモカに告げたのだ。
その時トモカは「家に帰りたい」と一言だけしか言う事はなく、結局この日はその職員は返ってしまった。
更に数週間が過ぎ、トモカは退院することになったがそのときに出迎えてくれる近親者は居なかった。
トモカの家庭は典型的な核家族で、トモカには頼る遠方の親戚すらいない。
なので結局、トモカがいくら家に帰りたいと願っても、5歳児を一人で住まわすわけにもいかないので児童養護施設に入ることになる。
結局、トモカが過ごしてきた家からは必要最低限の荷物だけが児童養護施設に送られたが、両親の思い出がたくさん残る家具など様々なものが家と共に処分された。
それを児童養護施設で知らされたトモカは、久しぶりに感情を表に出した。
怒りと言う感情を露にしたトモカが、児童養護施設の職員に食って掛かったが、どれだけ文句を言っても所詮、たった5歳の少女である。
大人にいくら文句を言っても子供もたわ言だと本気で考えてはくれない。 逆に躾と言われながら叩かれる始末だった。
同じ児童養護施設の子供に親は白騎士事件で両親が亡くなったと一回言っただけで嘘付き呼ばわりされる……
そんなトモカにとって地獄のような環境で唯一、トモカを信じてくれたのが現在身を寄せている男だった。
その当時20台後半だった彼は里子を探しているという名目で児童養護施設に訪れてきた。
彼が来る一週間前に里子登録を終えていたトモカにもこの案件が回ってきて、何人かとの面談のついでにトモカも面談することになったのだ。
児童擁護施設に入ってから嘘つき呼ばわりさえた影響で心を閉ざしたままだったトモカは、いつもの通り彼との面談の際にも心に殻を作ったまま彼を眺めていた。
そして30分ほどの実りのない面談が終わった。
だが、帰り際になって彼はいきなりトモカの耳元で一言囁いてきた。
「君の両親、事故死じゃないよね?」
その言葉がトモカの鼓膜を震わせ、脳がそれを処理した時、トモカの心臓は跳ね上がった。
それと同時にトモカは心の膜から飛び出していた。
トモカは慌てて後ろに振り返ったが、その時にはもう彼は面談室から出てしまっていた。
追いかけようにも既に児童養護施設から出て行ってしまっていたので、
(もしかすると、本当の事を知っている人かもしれない……)
そう感じたトモカは、彼にもう一度会いたいと女性の職員にトモカが頼み込んでいた。
その時、職員や周りの子供にすら無表情を貫き通していたトモカの変わり様に驚いてはいたが、思わぬ変化に児童養護施設の女性職員は喜んで二つ返事を返していた。
だが、彼の時間の都合がなかなか合わず、結局次に会うことが出来たのはトモカが児童養護施設に入って数ヶ月ほど後だった……
◇
数ヶ月後、児童養護施設の職員に連れられて面談室に入れられたトモカは、待ち望んでいた彼の登場に戸惑っていた。
「久しぶりだね」
「あっ、えっと……」
彼が去り際に放った一言の真相が知りたくてここ数ヶ月待っていた。 だが、実際に彼を目の前にするとトモカは動転してしまったが、なんとか彼に質問を始めた。
「あっ、あの……なんでパパとママが事故で死んだんじゃないって知って……」
彼はそれを聞いてにっこりと笑うと、トモカの言葉を遮るように自己紹介を始めた。
「カオルちゃん、その前に自己紹介しよっか! 自分は静間って言うんだ、よろしくね!」
「えっ……うん、よろしくお願いします静間さん? 私は留宮カオルです」
そう言うと、彼――静間は児童養護施設の職員が出ていったのを確認すると唐突に語りだした。
「自分はね、アメリカから君を助けにきたんだよ……」
そうやって唐突に語りだした静間は、5歳の少女にも分かりやすく伝える為に白騎士事件後に起こった事を思い起こし始めた……
◇
トモカの話を遮った彼――静間の元にアメリカからある命令が届いたのは「白騎士事件」が発生してから数日後の事だった。
それは静間が考えていた通りやはり「白騎士事件」関連のもので、アメリカからの命令は日本に対する国際的な評価を失墜させるのに重要な鍵となるものだった。
彼の元に届いたある命令とは、日本政府が隠蔽している「白騎士事件で発生した被害者」をアメリカに協力させると言うものだ。
静間は現在、アメリカのCIAの職員として日本で働いている。
18歳の時に留学で渡米した静間はそのときCIAにスカウトされ、日本に帰国してから日本企業に就職する傍ら秘密裏にCIA職員として活動していた。
そんな中で発生した「白騎士事件」と呼ばれる一つの時代の幕開け。
その時に突如世界に躍り出たISと呼ばれる「戦略兵器」は、一夜にしてパックスアメリカーナと言う名で保たれていた平和を瓦解させ混乱させている。
それを察したCIAは「新しい戦略兵器」を所有する日本国に対するカードの一つとして、「白騎士事件」で存在しないはずの被害者を抱き込んでのプロパガンダを行おうと計画していたのだ。
もしこの計画がアメリカによって実行されれば、日本政府が行った「被害の隠蔽と言う事実」と「ISを賛美する政府プロパガンダ」と言う二つの汚点が世界市民の元に晒されることになる。
その結果として日本国内の反応は言うまでもなく、国際世論も日本に不信感を抱く可能性は高い。
「白騎士事件」から数ヶ月経った現在、高高度核爆発によってアメリカやロシア・中国など先進国では必死の復旧工事が続けられていた。
電子機器や電線などと言った電子機器系統が全滅したので、復旧するだけでも全部の電子機器やヒューズなどの取り替えを行うため莫大な時間がかかる。
それも、ニューヨークや上海など電子機器が多い先進都市ほど甚大な被害を被ったのだ。
放送局は電子機器の塊のような感じなので被害を受けた各国の主要放送局は現在も稼働していない。
更に、ニューヨーク・上海など株式投資市場も四ヶ月たった今も再開される動きはなく、銀行や政府機関も電子データが消えた影響で混乱は続いている。
北米・アジアの先進都市の中で唯一被害を受けていないのは日本ただ一つであり、ISと言う未知の「新型戦略兵器」まで使用したことから、アメリカやロシア・韓国や中国などの周辺諸国が日本政府の出している平和主義方針に不信感を露にした。
そして日本の軍事力を計るために、連日連夜のように爆撃機や戦闘機の編隊が領空侵犯を仕掛けて始めた。
更に艦艇の動きも活発となり、白騎士事件から一ヶ月も経てば中国やロシアから情報収集艦や漁船から原子力潜水艦、果ては空母やフリゲートまでが日本の経済水域を犯し始めたのだ。
自衛隊や海上保安庁は排他経済水域に迫る大量の艦艇や航空機の対応に忙殺され、外務省は各国政府に侵犯への遺憾の意を示したが一切反応はなかった。
日本の頼みの綱であるアメリカは、各国の侵犯に沈黙を保ったまま、逆に米本土から数個の空母打撃群や海兵隊をグワムに向けて移動させ、日本本土から沖縄に在日米軍の撤退を開始させていた。
更に悪いことにISのせいで日本に世界中から不審な目から見られる中で行われた各国の調査団によって日本からハッキングが行われたと発表されたのだ。
そのことを知った各国政府は日本国がサイバーテロを仕掛けた・放置した可能性があると考え、更に日本への圧力を強めていった。
その中でも一番行動が早かったのだ静間が所属するアメリカだった。
日本の兵器と思われるISに、Fー22やミサイル巡洋艦など莫大な調達費用がかかる兵器を大量に潰されて「世界の警察」としての面目を完全に潰されたアメリカは、未知の技術を持つ日本に危機感を抱き全世界に日本制裁を呼びかける事にしたのだ。
国際世論は始め傍観を決め込んでいたが、アメリカなどがプロパガンダを流し始めてから日本に危機感を抱かせることに成功したのだ。
ISと言う新兵器はターミネ○ターの様なロボット兵器可能性があるなどと各国で映画を流しながら宣伝を行った。
更に、政府が公式会見で日本が未知のロボット兵器で世界侵略を起こす可能性を言及するなどして徹底的に市民に恐怖を抱かせたのだ。
それと同時にアメリカが恥を飲んで流したアメリカのF-22(ステルス戦闘機)が撃墜される映像を流すなど涙ぐましい努力により、国際世論に日本が危険だと危機感を抱かせることに成功したのだ。
諸外国が日本の平和主義を虚像と感じ取った昨今、未だにIS技術の開示を一切行わない日本への制裁を行うために、アメリカなどハッキングを受けた国々の呼びかけによって国連の安全保障理事会が開かれた。
そこで開かれた日本問題審議会は、日本の未知の戦略兵器の技術独占による「軍事バランスの崩壊」とISと言う戦略兵器を所有する事による「平和に対する脅威」と言う二つのお題目で審議することとなったが、本音は日本への徹底した制裁措置の決定の場だった。
数週間にわたる協議の結果、国連安保理が日本に突きつける決議内容は以下の通りになった……
・日本国がISを用いたアメリカの戦闘機や戦闘艦に対する軍事的行動への非難。
・日本国に対し、日本国内でハッキングを行われたのを黙認した事に対する非難。
・日本国に対し、被害を受けた都市・兵器の損害賠償の要求。
・日本国に対し、これ以上のIS技術独占の中止とIS技術の開示を要求。
・日本国に対し、平和に対する脅威となるISと呼ばれる兵器を完全な、実証可能な、不可逆的な方法で永久的に放棄することを要求。
・以上の点が飲まれない場合には、国連憲章第7章第41条に基づく経済制裁を実施することの決定(石油や鉄など戦争で使われる可能性のある特定の物資の禁輸と世界銀行及び同様の団体による借款の禁止措置、臨検の実施、日本人資産の凍結措置など)。
・なおISを今後、新規に開発・設計・研究したと言う事実が認められた場合には、日本国による他国の侵略を未然に防ぐために国連軍を派遣し介入する。
結果としてこの決議内容はこの際だから日本の経済的なイニシアチブを潰してしまおうと言う流れや領土問題や面子の回復などを一縷に解決してしまおうと言う流れを汲んで、日本を生贄に捧げた物となった。
常任理事国側ではこの決議内容にイギリスとフランスが少しだけ渋ったが、アメリカや中国が本気で日本を潰しにかかっていることが諸々の演説やスパイによってはっきりとわかっていたので賛成側に回らざるを得なかった。
常任理事国が全て賛成に回ったため、非常任理事国の大半が決議に追従する事となる。
この決議では、日本が安全保障理事会が出した要求を全て飲まなければ、190国以上の全国連加盟国から日本に対して何らかの経済制裁に踏み込まれる事が決定している。
さらに現代の兵器を前に何千対一でも勝てるようなISを増産したと確認でき次第、最悪の場合には戦略核兵器を日本に発射して生産中止に追い込む事までアメリカ・中国・ロシアの3カ国によって議論されていた。
だが、日本は国連の安保理決議を「不当な物で一切身に覚えがないと」と言って一切要求を飲むことはなく、「白騎士事件」が起こって4ヶ月経った現在、日本は半ば鎖国状態に陥っていた。
対日経済制裁が行われている日本国内で活動する静間は、アメリカの更なるプロパガンダの為に必要な駒を手に入れるためにトモカの居る児童養護施設を訪れているのだ。
閑話休題。
そんなことを考えつつ目の前に居る、「白騎士事件」の被害者である少女に思考を戻した静間は、柔らかく微笑んで少女が望むであろう言葉を紡いだ。
「――カオルちゃん、もし両親を殺した犯人を捕まえるのを手伝ってあげるって言ったらどうする?」
トモカは目の前の静間と名乗った男がCIAの職員だとかそんな情報は一切知らない。
だが、目の前に居る静間の目は、病院や児童養護施設でトモカの言うことを聞き流す大人とは違う目をしている様にトモカには見えた。
大人全員がトモカの両親が死んだ原因を知らないのに、なぜか目の前の男性はそれを知ってて協力してくれると言っている。
トモカは復讐を手伝ってくれると言う目の前のチャンスが急に現れて困惑していた。
「わっ、わたしは……」
両親が無くなってから既に4ヶ月の時が過ぎている。
トモカは初めて両親の死の真実を認めてくれて、更に手伝ってくれると言う静間を目の前にして自然と涙がこみ上げているのに気が付かなかった。
嬉しさにポロポロと涙を流し出したトモカに対して静間は、自然と胸を貸していた。
「大丈夫、大丈夫……自分は絶対に君の味方になってあげるからね」
トモカが落ち着くように頭を撫でながら、静間が何度も優しい言葉をかけた。
泣き続けたトモカは、30分ほど経ってようやく落ち着きを取り戻した。 落ち着きを取り戻したトモカは静間の問いに肯定すると、静間の胸から離れた。
「じゃあ、こんなところから今すぐ逃げようね」
泣き腫らした目を濡らしたハンカチで抑えながらトモカは頷いて、静間が差し出した手を自然と掴んでいた……
二人はこの会話の後に児童養護施設から抜け出し、失踪する為に在日米軍の居る横田飛行場に向かった。
アメリカに撤退するオスプレイに乗り、岩国飛行場を経由して沖縄の嘉手納飛行場へと降り立った。
そこで、二人は中国を訪問していたアメリカの閣僚が乗っているVC-25(通称空飛ぶホワイトハウス)に便乗してアメリカへと渡ることとなった……
◇
二人が失踪してから更に数ヶ月後、世界中からの経済制裁によって製造業を中心として日本経済は大打撃を受けていた。
石油が一滴も入らない中でまともな経済活動ができるわけもなく、失業した労働者によって世界一安全と言われてきた治安は地に落ち始めていた。
海外投資家の投資比率の高かった日本株式市場は安保理決議を日本が飲まなかった時から軒並み下落し、日本円も一ドル80円から180円にまで下がっている。
更にベトナム戦争や朝鮮戦争に参加したカルフォニアに司令部を置く第一海兵師団がグワムから沖縄にかけて展開し、横須賀など日本本土に拠点を持つ在日米軍は全て司令部ごと沖縄へと撤退していた。
しかも監視していた「白騎士事件」の被害者までが行方不明となる中、アメリカによって印象づけられた「日本が悪という世界的な風潮」に必死に粘って耐えていた日本政府は結局、国内や国外からの罵声を浴びながら交渉の席に座ることとなった。
それによって一時的に経済制裁が緩和され、その対価として日本国は渋々、開発者が発表した論文を各国政府に公開した。
だが、ISの破棄だけは所有者の行方がわからないために行われなかった。
その後、IS淘汰と言う国際的な流れを恐れたのか、開発者がコアを各国に提供する事でその流れを何とか回避するなどの一幕がある中、各国は運用が女にしかできないと言う欠点のある兵器の所有を認めることとなる。
女しか使用できないと言う情報が民間に流れると、女による男への蔑視が行われた。
その風潮から日本では女性に優位な法案が作られたが、その他諸外国では男性が大半を占める大企業のトップや官僚が一致団結して男女平等を更に強化するなど対策を行った。
これは女性から反発の声が挙がり、アメリカでは試作されたISを操作する女性が反乱を起こすという事態にまで発展した。
それに対してアメリカ政府は、反乱したIS操縦者の家族や友人を全員逮捕して処刑台にあげた後、強引な交渉によって反乱を止めさせるなどと言う事態にまで発展した。
この様に世界がISによって大混乱し、大いに荒れる中で決まったアラスカ条約(IS運用協定)が日本が不利な条件で調印・批准する事になるのは当然の結果だった。
アラスカ条約の批准や各国へのコアの提供……
その結果、アメリカのプロパンダ計画は必要なくなったので頓挫することとなった。
そのため、アメリカ国籍を得ていたトモカは自由の身となり、公安の監視も無しに自由に行動できるようになった。
トモカを扶養していた静間はしばらくCIA本部で仕事をしていたが、その仕事をしている内に浮かび上がった「白騎士事件」の犯人の情報を得た。
篠ノ之束……ISの開発者にして天災とも呼ばれる人物。
浮かび上がった犯人はトモカが復讐するにはあまりにも無謀と言って良いほどの人物だった。
CIAとしてもアメリカの軍事ネットワークにハッキングできる彼女を捕まえる事に躍起になっている。
静間はトモカと一緒に生活を共にする内に、トモカに情が移り始めていた。
そのため、トモカが復讐をしたいなら武器の扱いから裏の仕事で腕を磨くことまであらゆる事を手伝ってやろうとも静間は考えていた。
静間はCIAから情報を持ち帰った後、トモカに「犯人が誰かわかった」と伝えた。
すると、トモカは目を爛々と輝かせてこちらを見つめてきた。
「誰ですか?」
「……ISの開発者の篠ノ之束」
「しののの、たばね? あれがパパとママを……?」
それを聞いた時、トモカの目からはハイライトが消えていた。
それを見て早まったか? と、静間は思ったが既に遅かった。
偶然にも机の上に乗っていたISの特集雑誌に写る篠ノ之束の写真をトモカが目ざとく見つけると、近くに置いてあった折りたたみナイフで滅多刺しにしていた。
幼い子供がありったけの力を込めて雑誌を痛めつけるのを見て、静間は心苦しく感じていた。
なので静間はトモカに諭し始めた。
「そこまで篠ノ野束が憎いのか? でも、今のままだと絶対に復讐なんて出来ない」
静間がそう言うと、トモカはおもむろに雑誌に刺さった折りたたみナイフを引っこ抜くと、静間に刃先を向けながらユラリと足を進めてきた。
「じゃあ……どうすればアレをパパとママと同じ目にあわせられるの?」
トモカは折りたたみナイフを持ちながら一歩一歩静間に近づいてくる。
5歳の子供一人が近づいてくるだけなのに感じる狂気に内心冷や汗をかきながらも静間は答えた。
「復讐したいならそれ相応の力を持たないといけないよ」
静間はそう言うとトモカをギュッと抱きしめた。
(この子をコントロールしないと後々まずいことになる……)
静間はトモカを抱きしめながらどうやってトモカの感情をコントロールするか考え始めた。
静間の暖かさにトモカが身を委ねているうちに、トモカが握っているペーパーナイフを回収すると静間はホッと溜息を吐いた。
「これからが大変だな……」
静間はトモカを鍛え上げて裏の仕事をこなせる力を与え用と考えた。
裏の仕事をしていれば自然と復讐の為に使う力をつける事が出来ると考えたのである。
次の日に静間は、CIAに辞表を出してトモカを鍛える為に二人で紛争地帯に飛んでいた。
◇
それから静間はトモカの身体が銃の扱いを満足に出来るような体躯になるまで、紛争地帯で暗殺の方法や武器の扱い方などを実演を交えながら普通の少女に叩き込んだ。
少女が人の死が普通に感じるようになった頃、トモカの体躯が銃をまともに扱えるようになったので静間と共にトモカは裏の仕事を始めた。
その裏の仕事はテロリストの情報収集から、要人の暗殺、薬の販売など二人は様々な裏の仕事に手を出した。
その中でトモカは様々な組織と関わるようになる。
トモカが関わった組織は、亡国機業からムスリム系のテロ組織、果てはアメリカの軍需企業まで本当に様々だった。
静間はトモカに人の殺し方や組織の潰し方などをCIA仕込みの方法を交えながらトモカに教え込んだ。
◇
そんな日々から更に数年後経ったある日、「第二回モンドグロッソ準決勝」をトモカと静間は生で観戦していた。
観戦しているとは言っても実際は、とある人物の拉致監禁の仕事の下見だ。
その仕事と言うのは、決勝戦に上がる可能性の高い織斑千冬の弟を監禁して決勝戦に上がらせないこと。
依頼してきたのは亡国機業だったが、同じような依頼をとあるヨーロッパの軍隊からも受けていた。
そこでトモカと静間の二人は両方の依頼を受けて、準決勝会場の下見を行っているのだ。
そのおまけでトモカは、圧倒的な強さで相手を翻弄する織斑千冬と言う日本人を観察していた。
初めのほうのトモカは、驚きと尊敬の念をもって織斑千冬を観察していたが、しばらくすると剣の振りや機動の癖が白騎士事件に現れたISの機動と酷似していることに気が付いてしまった。
よく見ると、織斑千冬のISは白騎士事件で現れた機体と似ているような感覚をトモカは覚えた。
「ねぇ、お父さん……あれ、白騎士だよね?」
仕事についている為、トモカの父親が静間と言う設定だ。
トモカが静間にそう問いかけると、静間は静かに答え出した。
「確かに彼女と篠ノ之束は小さい頃から親友だと調査が出てる。 更に篠ノ之束は人を信用しない。
だからアレと白騎士の中身が同一人物の可能性も高い。
……実際にCIA内部でも初代ブリュンヒルデがやったのではないかと疑惑が流れていると、情報を得ている」
それを聞いた時、トモカが織斑千冬に感じていたある種の尊敬の念は一瞬で地の底に落ち込んだ。
疑念に近くてもほとんどグレーに近いのだから黒と見ても良いとトモカは考えた。
トモカは自身の復讐相手が一人増えた事を認識してか自然と笑みを浮かべていた。
「アレも敵……ね。 アレの弟がいなくなって、アレが困惑してもがき苦しむのが楽しみね」
トモカは服の上から両親の形見であるペンダントを触りながら微笑んで、準決勝の試合会場を後にした……
◇
視点は戻り、第二回モンドグロッソの決勝戦会場。
トモカがまどろみの中から現実に戻ってみると、いつの間にか隣に座る静間にもたれ掛かっていた。
(いつの間に眠ってたんだろう……あんな夢を見るなんて結構疲れてる?)
トモカは頭を振るって意識をハッキリさせると、隣にいる静間に声をかけた。
「ごめんなさいお父さん、そろそろ仕事する?」
「あぁ、今が丁度いい……」
静間が指を向けた先にはトモカと同じくらいの年齢の男の子がトイレに向かって歩いていた。
それを見てトモカは心の奥に湧き上がる暴力的な感情を押さえつけながら立ち上がった。
静間とトモカはお互いに見て頷くと両方共フードを被って静間が指差した方向にいる少年に近づく。
途中黒服を着たSPが居たため、クロロホルムを染み込ませた布でSPを無力化すると、トイレに向かっていた一人の少年の目の前に立った。
「キミが織斑一夏くん?」
「誰だよおじさ……」
トモカは静間に一夏の意識が集中している隙に一夏の首に手刀を食らわせて一瞬で意識を失わせ、気絶した一夏をトイレに引きずり込んだ。
そこで一夏を縛り上げてから大きなバッグに押し込むと、二人は平然とした顔をして試合会場から外に出る。
バッグごと一夏を駐車場に止めてある車のトランクに乗せ、ある国から監禁場所として指定された廃工場へと車を向かわせた。
途中、尾行されてないのを確認したトモカは、ホッと息を吐いて車の背もたれに体を預けた。
後ろのトランクからは一切物音がしないので、まだ気絶しているのだろうとトモカは考えて武器の確認をする事にした。
手榴弾やサブマシンガンなどの装備がきちんとあることを再確認したトモカは、廃工場に到着した後に一夏をどう調理してやろうかと夢想し始めた。
トモカは夢想する間、復讐の第一歩が始まると言う実感が心を多幸感に包み込ませ、甘美なその感情が身体を火照らせる。
静間は車を運転しながらそれを見て苦笑していた。
10分ほど車を走らせて指定された廃工場に到着すると、二人はトランクから「一夏入りバッグ」を取り出した。
廃工場の中にそれを運ぶと静間の顔にようやく安堵の表情が浮かんだ。
一方、カオルは更に顔を赤らめながら一夏をバッグから引きずり出していた。
「ドイ……あの国から連絡は来た?」
「あぁ、これで計画は完了だ。 後は織斑千冬に俺ら誘拐犯の陰を見せてから逃げるだけだ」
トモカはそれを聞いて目の前で縛られている一夏には織斑千冬を釣るだけの材料以上価値は無いと判断して、静間にオネダリして見ることにした。
「アレ、今から私のオモチャにしても良いよね?」
一夏を指差したトモカはニコニコしながらサブマシンガンの安全装置に指をかけ、静間の許可を待っている。
「今回は殺すな、ただの暴行程度にしておけ、後々が面倒だ」
そう言うと静間は廃工場の窓に視線を向け、警戒を始めた。
許可をもらったトモカはサブマシンガンを腰に戻すと、息を荒げながら一夏の前に立った。
「はぁはぁ……骨の一本くらいなら……ふふっ」
トモカはようやく両親の復讐の第一歩が始まると実感していた。
これまでやってきた事がやっと実を結ぶと言う事実にトモカは興奮しきっていた。
トモカは足を思いっきり振りかぶると、嬉々としながら気絶したままの一夏の横腹を思いっきり蹴り上げた。
そして、髪を引っ掴むと一夏の顔を強引にトモカのほうに近づけた。
「起きろ、そこのゴミ!」
一夏の耳元でトモカが叫んだが、一夏は呻き声しか出さなかった。
全く反応しない一夏の様子に苛立ったトモカは、パッと手を頭から離して一夏の頭をコンクリートの地面にぶつけさせた。
「うぐっ……な、に……」
やっと一夏の意識が戻って手足を動かそうとしていたので、一夏の頭をトモカの足で踏みつけながらその様子を観察する事にした。
一夏の頭からは血が流れ、トモカの靴裏を濡らしている。
それを見てトモカは、復讐する敵の近親者が苦しんでるのを見て、背筋をゾクゾクと感じながら愉悦に浸っていた。
「悪魔の弟でしょ? みっともない……さっさと抵抗しなさいよ」
「だっ、誰だよあんたは? そもそも千冬姉は悪魔なんかじゃねぇ!」
フードを被った同じくらいの背の人間に頭を踏まれているのがよほど堪えたのか、それともたった一人の姉が悪魔と呼ばれて憤ったのか、一夏は両手両足が縛られているのに無理矢理動いて暴れだした。
なのでトモカは待ってましたとばかりに一夏の頭から足を外すと、その足で一夏の腹や足など顔以外を何度も何度も蹴りつけた。
蹴る動作が何度も続き、トモカが付けていたペンダントが胸元で揺れ動いていた。
「うぐっ、ちふ…ねぇは悪魔じゃ、ねぇ……」
「うっさい、この愚図! ゴミ! 悪魔! よくもパパとママを!」
トモカは罵声を口に出しながら何度も蹴りつけた後、一夏の髪を引っ掴んでコンクリートに一夏の後頭部を再度衝突させた。
その後、何度も何度も一夏の全身を蹴り続け、手を踏み潰し、頭をコンクリートに落とし、これまでの鬱憤を晴らすかのように罵声を浴びせ続けた……
ふと、一夏を蹴る度に脳内で発生するドーパミンの海に浸っていたトモカが意識を現実に戻すと、蹴りを止めた一夏のほうから視線を感じた。
なのでトモカは下に倒れている一夏の顔に目を向けると、なぜか一夏は口をポカンと開けながらこちらを見ていた。
「えっ、女の子……?」
それを聞いてトモカの思考は止まった。
フードを被っているはずなのになぜ一夏が正体に気付いたのか分からなかった。
その時、ふと耳元に風が吹き抜けたのを感じて、ようやくフードがいつの間にか脱げていて、一夏に顔を晒してしまっていたのに気が付いた。
一夏から見て、自分を暴行していたのが同じくらいの女の子で、それも顔に愉悦を浮かべながらいわれもない恨みを口に出しながら身体中を蹴ってくるのはどれだけ屈辱だっただろうか……
それだけならトモカは嗜虐心に燃えて楽しめただろうが、一夏に顔を見られた事で千冬や束にトモカの正体露見することで、復讐が実行できなる可能性が頭をよぎった。
トモカは急に寒気を覚えて慌ててフードを被りなおし、腰につけていたサブマシンガンを抜き放った。
そして安全装置を解除すると、一発一夏の隣にあるドラム缶に向けて発砲した。
軽い発砲音と共に廃工場の床に響き渡る薬莢が床に落ちた時の金属音。
トモカが呆然と一夏を眺めていた隙に上半身を起こしていた一夏は、急に発砲された銃を見て身体を震わせていた。
しかもドラム缶に穴を空けたのを見て、一夏は銃が本物だと確信して恐怖した。
トモカは心の奥底に正体が露見したと言う恐怖を隠しながら、一夏を脅す為にわざと口元をニヤつかせて一夏の恐怖を煽った。
そしてトモカは、サブマシンガンの銃口を一夏の口の中に入れ、引き金に指をかける。
もちろん安全装置は再度かけたので発砲はされないが、一夏はそれを知らないので歯を思いっきり震わせていた。
銃口にガチガチと一夏の歯が当たって鳴るカチカチと言う音が廃工場に響き渡る。
「命乞いしたい? 助かりたい? それとも脳漿を吹っ飛ばして轢かれたカエルみたいに惨めな感じになる?」
まさか同じくらいの年代の女の子にここまでされるとは思わなかったのだろう、不意をつかれた一夏の瞳には完全に恐怖の色が見て取れた。
その瞳からは涙がボロボロと流れ、ズボンを濡らす。 だが、そのズボンは既にアンモニア臭がする液体で濡れていた。
(パパとママを殺した悪魔の弟を泣かせるさせるだけでもこんなに気分が良くなるなんて……ISの開発者とブリュンヒルデの目の前でこれの腹をかっさばいたらどんな顔をするのかな……)
一夏の怖がる様子を見て、先ほどまで感じていた正体露見の恐怖をトモカはすっかり感じなくなっていた。
一夏の恐怖する顔はトモカのカンフル剤となり、再びトモカの加虐心を煽った。
一夏を更に精神的に追い込んでトモカの顔の記憶を飛ばすそうと策をめぐらせようとしたとき、廃工場の鋼鉄製の扉から鉄が軋むような悲鳴が聞こえてきた。
「来たぞ、初代ブリュンヒルデが!」
静間がそう叫ぶとサブマシンガンを鋼鉄製の扉のほうに向けた。 トモカも渋々サブマシンガン引き金から指を離すと、一夏の口から銃口を放した。
「残念ね……ゴミ。 もし私の顔を言ったらいつか君の口の中でコレを発射するからね?」
トモカは銃口で一夏を小突くと、脱出用に鍵をしていない小さな扉の近くにまで一夏を引っ張った。
トモカが一夏の口に安全装置を解除したサブマシンガンを咥えさせた時、閉じた鋼鉄製の大きな扉のほうを見やった。
すると、一閃……
たったそれだけで鋼鉄製の扉は真っ二つに裂け、その隙間からISを纏った織斑千冬が進入してきた。
その織斑千冬の顔は阿修羅のようだった。
「一夏はどこだ!」
獣の様に吼える千冬の威圧感のある声を前にトモカは一瞬びくついたが、すぐに目を細めて千冬の動きを止めることを考え、実行した。
「動くな! それ以上一歩でも近づいたり不必要な行動をしたら、お前の弟の脳が辺りに散らばるぞ?」
それを聞くと、千冬は苦虫を潰したような顔をしながら動きを止めた。
「武器を捨てろ! 織斑千冬……いや、白騎士さん?」
トモカがあえて挑発するように命令する、千冬は一瞬武器を捨てる手を止めたてトモカをみやった。
「お前、なんで知っている?」
一見すると怒り以外の感情はその顔から見ることは出来なかったが、千冬は一瞬だけ口をひくつかせていた……
トモカはまさか本人が白騎士と認めるとは思わなかったので、やっと復讐相手が確定した事に内心喜んでいた。
両者がにらみ合ってしばらくすると、千冬は剣を地面に置いた。
その隙に静間が千冬の剣を回収してトモカのほうに戻ってきた。
その事をトモカが確認すると、一夏の口から銃口をどけて静間と共にじりじりと後ろに下がって裏口から逃げ出した。
その瞬間、視線の端で千冬が動くのが見えたので、四つほどの手榴弾を裏口から一夏のほうに投げて、千冬が一夏を庇うことで逃げる時間を稼ぐ事にした。
千冬が飛んでくる手榴弾に気が付いて慌てて誘拐犯の追跡を中止すると、一夏を覆うようにISを纏った千冬自身が壁を作った。
その瞬間に爆発する4つの手榴弾。
千冬はISを装備しているので問題は無かったが、一夏は至近距離の爆音と恐怖で気を失ってしまっていた。
千冬は他に誘拐犯が残したワナが無いことを確認した後に誘拐犯を追おうとしたが、その頃には既にトモカ達は逃亡していた……
千冬は一夏を守る為に追跡することを諦めてIS越しに抱きしめていた一夏の無事を確認し始めた。
恐怖でボロボロと涙を流しながら身体中を蹴られた痛みに震える一夏を見ると千冬の怒りは膨れ上がった。
その後、まともに口が利けない一夏の様子に誘拐犯に精神的に痛めつけられたであろう事を悟って千冬は吼えた。
「おのれ……決して許さんぞ、アイツらあああぁぁぁぁぁ!」
もしかしたらこの事は一夏の精神に一生ものの傷を付けかねない。 千冬は決勝戦に出なければ、と後悔しながら一夏に一生懸命わびた。
そして千冬は、一夏が拉致された事と拉致された場所を一番に察知して情報を提供してくれたドイツの軍部に感謝した。
ドイツの情報部隊が手回しした救急車が数分後にはやってきて、一夏はそれに乗って病院に担ぎ込まれた。
その時、救急車と共に訪れていたドイツの将校に千冬は感謝の意を述べると、前から打診を受けていたドイツのIS部隊の訓練を受けることを伝えた。
◇
車で逃亡するトモカは千冬が吼えた瞬間、悪寒を覚えた。 安心できる静間の隣に居るのに感じた悪寒にトモカは首を傾げた。
織斑千冬にあてられたのかもしれない、トモカはそう考えて目をつぶった。
すると、あの千冬の阿修羅のような顔が眼前に浮かび上がってきて、動機を覚えながら目を開けた。
その時、もしかすると一夏をいたぶった事に問題があったのではないかと不安に感じて静間に尋ねた。
「ねぇ、静間……オネダリしたのって問題だった?」
「……いや、依頼主の国からの謝礼が増えるはずだから問題ない。 もし、依頼国が迅速に情報提供しなかったら織斑一夏はどうなっていただろうかと織斑千冬に思わせる機会を与えただけ十分だ。
依頼国に織斑千冬は感謝こそすれ、依頼国が仕組んだ誘拐だと思わないだろうからな」
「じゃあ、恨まれる私達はトカゲの尻尾って事?」
「そうだ、だが色々と収穫はあったろ? 織斑千冬が復讐相手と言う事と、ド…依頼国の汚点を一つ握れたから今後の仕事もやりやすくなる」
静間はそう言うと、タバコに火をつけてプカプカと煙を浮かべ始めた……
◇
トモカと静間が車で逃走している頃、一夏はドイツに手配された救急車で病院に搬送されていた。
そこで診断を受けた結果、肋骨の骨折と全身の打撲で治療を受けた。
病院に入院して治療を受ける一夏が精神的に安定し始めた頃、インターポールの依頼で地元警察から犯人の特徴を一夏に尋ねた。
一夏は、誘拐犯の一人が「同じくらいの女の子だった」と話した為、その情報が全世界を駆け巡る事となった。
ブリュンヒルデを激昂させて逃亡に成功した女の子、ワイドショーでは謎の闇に生きる少女として話題を掻っ攫っていた。
そこで付けられた渾名が「闇の少女」。
人々の間でその正体の噂が流れていろんな憶測を呼んでいた。
市民の間ではどこかの国の秘密工作員やクローン兵器、果てはサイボーグではないかなど真偽の分からないものが流れていた。
インターポールも正式に調査に乗り出したが、その犯人の姿を似顔絵にしたいと一夏から情報を聞き出そうとしたが、一夏は彼女から受けた恐怖心からその容姿を一言も話す事は無く、ある意味トモカは記憶をなくす事に成功していた。
そのためインターポールは指名手配することも出来ず、この一件で、裏家業をしているトモカに依頼国の信頼と箔がついた。
その後、何年も裏家業で暗殺や傭兵などの仕事を続け、歳を取る毎に体力や反射神経が上がるトモカの技量は静間のCIAで鍛え上げた技量を凌駕し、トモカのソロ活動も多くなってきた。
静間はソロ活動が多くなってきたトモカに対して様々な種類の仕事の仲介を始めた。
そして、しばらくすると「トモカは一人前になった」と言って裏家業から手を引いた。 だが、仲介や復讐相手の情報収集をメインに行うことに主眼を置いた。
トモカへの仲介料だけで楽な生活ができると静間はトモカに少しだけ自慢していた。
トモカは少しだけズルイと感じたが、篠ノ之束と織斑千冬を苦しめて地獄に落とすという楽しみを無くすのとを比べると、気にならないほどの事だった。
小さい頃のトモカには復讐だけしかなかったが、現在は静間の仲介された仕事で知り合った同業者の友人を得ることが出来て、充実した毎日を送っている。
その友達の一人に、コードネームはエムと呼ばれている女性が居た。
彼女はトモカにも本名は教えてくれなかったので、トモカはエムさんと呼んでいる。
彼女は過去何度も依頼を受けたきた亡国機業という名のお得意様の同業者で、一夏を誘拐する前から何度か仕事を共にしてトモカと仲良くなったのだ。
初めて会ってトモカが感じた印象はクールな感じで怖い印象を受けていたが、話してみると意外と楽しい人だった。
初めてトモカを見た時に最低限の関わりしかなかった頃とは嘘みたいに仲良くなると、悩み事を相談しあったり任務の空白期間に一緒にショッピングに出かけたり、旅行などを一緒に楽しむほどの仲になっていた。
例えば、ヨーロッパ旅行中に滞在したホテルにツインルームに二人で泊った事がある。
その時、トモカが時折「なんでも良いから無性に壊したくなる」とエムに相談したことがあった。
その時、彼女は笑って「監視用ナノマシンを打ち込まれたら無理矢理にでも我慢したくなるぞ」と、即答して笑いながら注射器を取り出してきたのだ。
冗談だと分かっていても注射器を取り出す彼女に流石にトモカは恐怖を感じて後ずさった。
エムは顔を赤らめながら、後ずさったトモカの頬を撫でた。 すると、トモカはビクッと身体を震わせた。
「いれるときだけちょっと痛いだけだ……初めは怖いけど慣れたら気持ちよくなるから、ね?」
「ちょ、ちょっと私達は女同士だよ……」
「いいんじゃないか? 別に女同士でも」
「いや、あっ……ひゃっ…んぁ!」
……と、ナノマシンを注射されることはなかったが二人は刺激的な夜を過ごしたりもした。
◇
そんな事もありながら陽気に裏家業をこなしていたある日、エムが突然トモカが隠れ家の一つとして利用してるホテルの一室に訪れてきた。
何事かとトモカが問いかけると、エムは「ISの余剰機を提供するから亡国機業に来ないか」と誘ってきた。
いきなりの事態に困惑するトモカは、ソロのほうが気が楽だといってやんわり断った。
だがなぜかエムは焦りながら「亡国機業に所属しなくても優先して仕事をこなしてくれるならISを提供する」と、次善案らしい物を提案してきた。
何の意図があるのかが不明だったが、トモカが「それなら考え……」と、安易に言ったのが不味かった。
エムはすぐさま契約書を取り出して来てサインを求めてきたのだ。
その契約書にはISの提供に際して亡国機業の依頼を優先的に受けること、もしも亡国機業の敵対者側についた場合には上手く戦闘の回避を行って欲しいというものだった。
それならとトモカがサラリとサインすると、エムは去り際に「数日で準備できるから」と一言、トモカに伝えてそそくさとホテルから撤退していった。
後からエムから聞いた話だったが、トモカは何度か仕事で亡国機業と敵対したことがあったらしく、そのたびに亡国機業側の拠点を潰したり、無視できない被害を与えていて亡国機業上層部としても無視できる状況ではなかったらしい。
あのことかと苦笑するトモカに、エムは金で動く不安定分子なら同じ陣営に入れ込んで協力させるほうが利益が出ると話していた。
実際は、かのブリュンヒルデの弟の拉致にも関わった人間としてトモカは亡国機業側に評価されていて、様々な国の暗部を握るトモカの利用価値が高いところが、上層部にとって余剰分のISの提供に踏み切らせたのだ。
だからこそかねてから友好関係にあったエムを介して契約を結ぶに至ったのだ。
トモカにとってもこの契約はISを使用することで、復讐する方法の幅が広がるので問題は一切なかった。
◇
数日後、携帯電話でエムに呼び出されて向かった先は中東の紛争地帯にある工場の一つだった。
そこは亡国機業が所有する基地の一つで、そこにある古びた工場の中にトモカは足を進めた。
そこには既にエムが待ち構えていて、その隣に白い布の被った物体があった。
「エムさん、来たよ」
「来たか、トモカ……コレがトモカに提供されるIS、ツィタデレ(城塞)だ」
エムはそう言うと、白い布を引っ張って取っ払った。
すると、そこにはロービジ迷彩と呼ばれるグレーの迷彩塗装がされた重厚なISが鎮座していた。
そのISは各国が開発する機体とは違い、全面が装甲となっていた。
エムがその装甲に指を沿わすと駆動音が工場全体に響き、重たい装甲が開いてISの装着口が姿を現す。
トモカは無言のまま装着口に身体を預けた。
その瞬間ISの装甲が完全に閉じ、数秒で脳内に外の様子が映し出された。
その感覚はまるで人間の枷を解放したかのようで、トモカと言う個人の認識できる領域をはるかに凌駕した情報が脳に流れ込んでくる。
「武装を展開してみな、想像すれば量子化してるデータから武器情報が参照できる」
エムがそう言い、トモカが脳内で意識を武器データにあわせて武器の照会を行った。
すると表示される兵器の名前が100に迫るほどの量が表示され、その量にトモカは唖然とした。
「ISの噂は聞いてたけど、どんな化け物よ……」
「普通のISはそこまで武器は積んでないぞ。 これにはコアが二つ使われてるからそこまで大容量なんだ」
エムはそこから具体的な話を交えながらISの解説を始めた。
その話しを詳しく聞いてみると、このISはドイツの実験機の機体を強奪したものを亡国機業が実用化させた物らしい……
一個でもISを動かせるコアを二つ使うと言うデュアルコアシステムを採用した「ツィタデレ(城塞)」と呼ばれるこのISは、一個のコアを丸々エネルギー生産と量子データの保管に使うことでコアの処理効率を大幅に向上させた。
そのため膨大な武器と強力な出力、堅固な防護機構が売りとなっているこのISだったが、ある意味じゃじゃ馬だった。
強靭なこの機体はたとえ一個のコアが破壊されてもモード変更すれば残ったISコアだけで十分に戦えるほどの強さを誇る。
だがその分機体の性能や兵器の多さに振り回されやすい為、亡国機業の人間ではエムなどのエース級の技量を持つ人間ぐらいにしか乗りこなせない。
しかも亡国機業にとって悪いことに、このISは名前通りツィタデレ(城塞)の様に敵を待ち構えて殲滅するのがコンセプトの機体だったので、守りより攻めるほうが多い亡国機業のエース達はこのISを使うことを渋ったのだ。
エース達が渋ったのは防衛を主眼においている為、近距離戦闘に弱いという点もある。
コンセプトの主眼が近距離戦闘よりも遠距離戦闘に置かれている為、取り回しの悪い巨大な兵器が多いこのISにとって近距離戦闘は不得手なのだ。
もちろんツィタデレでも攻勢に出ることは可能だが、巨大な兵器を出すときに最短でも数秒のラグが発生したり、デュアルコアである為に相互干渉してワンオフが使えないなど実に多くの問題を孕んでいる。
だが、城塞と言うコンセプト通り、武器には質量が多すぎて他のISでは備え付けになるほど大型の兵器までもが大量に量子化されて保管されている。
空中浮遊型に改修されたCIWS(近接防御火器システム)やMK45・5インチ砲などイージス艦がミサイル迎撃に使う兵器から、対戦車攻撃用の30mmガトリング砲や荷電粒子砲、MOABの様な大規模爆風爆弾までもがこのISに搭載されているのだ。
もちろん大量にある中から適切な兵器を選んで使用するには適切な兵器の知識や戦場勘が必要となってくる。
この防勢主眼のゲテモノISの取り扱いに正直困っていた亡国機業の上層部も、ある意味トモカに恩を売る形で不良品を押し付けたとも言える。
だが、厄介な代物を押し付けられたと知らないトモカは……
「へぇ……EMP照射装置まであるの?」
と、ニヤニヤ笑いながらISを操っていた。
「言っとくがそれ、ISには効かないからな。 5km圏内の電子機器を潰せるぐらいの電子パルスは照射できないぞ」
「聞くけど、このISって仕事に使っても問題ない?」
「……何の仕事だ?」
「敵の拠点を潰したりする気軽な仕事よ」
「ばれないなら問題はない」
エムから裏家業にISを使用しても良いとお墨付きを貰ったトモカは、ISの特徴を確かめる為に工場の外に出て色々試すことにした。
移動速度や視認範囲、武器の出し入れから同時に展開できる兵器量の確認などをトモカは行い始めた。
エムはそんな様子を事細かに観察して戦闘能力を計測していたが、次第にエムの額に汗が流れ始めた。
エムの目の前でトモカが展開している兵器は既に20を越えていた。
普通なら展開する量が10を越えれば良いほうのものなのにトモカはその2倍である。
このISの兵器展開能力は操縦者の能力によって大きく左右される為、亡国機業のエースであるエムにとっても20を越える兵器を同時に制御しているトモカに驚きを隠せなかった。
エムでも10を越える辺りで制御が出来なくなるので、その倍の量を精密にコントロールしているトモカが化け物に見えるのだ。
装甲が透明になり、中で兵器を操りながらニヤニヤと笑っているトモカを見て、エムは若干引いていた。
「おい……」
「これで……やっとあいつらを消せる」
トモカがISのマイクを通して呟いたその言葉は、トモカの根底にある感情を露出させていた。
それを聞いたエムはトモカのその思考から引き剥がす為に模擬戦闘の提案をする事にした。
「トモカ、模擬戦闘でもしてみるか?」
「えっ……? まだ私、初心者だし……」
「そこまで扱えてるんだから問題ないよな、トモカ?」
「いっ、嫌! なんでもうISを装備してるの?」
「問答無用だろ?」
「ちょっ、いやぁ……!」
IS初心者のトモカをボコボコにするエムの模擬戦闘は、中東の太陽が沈むまで行われた……
初のISの模擬戦闘でエムに散々いじめられたトモカは、一ヶ月の訓練期間の後に裏家業の仕事にISを活用し始めた。
初めは亡国機業の手伝いでISの強奪や敵対組織への攻撃などで腕を磨き、一人でもISを活用できるようになった頃には生身の人間では厳しい仕事もこなせるようになっていた。
ISを提供されてからずっと亡国機業の仕事を中心に行動していたが、時には国家などに雇われて表沙汰に出来ない汚れ仕事も買って出た。
テロからIS企業の研究データの強奪、銀行強盗に敵対組織のリーダーの暗殺まで金さえ積まれればなんでも行うトモカは、どんな状況でも契約内容を遂行し追加料金を請求し、払われなかったらISを使ってでも取り立ててくる様子から、各国がトモカのコードネームに「金の亡者」と名付けていた。
特にアメリカは金払いのいい相手で、大抵の事がない限りアメリカとは戦う事もなかった。
逆にCIAのツテで兵器提供協定を結んで大量の武器弾薬やシステムの提供の換わりにアラスカ条約で国家的に禁止されているISを使用した実戦データの提供やアメリカ軍のIS操縦者に対地・対空・対艦の戦い方を教練したりもしていた……
◇
様々な任務をこなしてようやく取れた長期休暇、数ヶ月前に15歳になったトモカはさる日本の旅館でゆったりと英気を養っていた。
コタツに入りながらウトウトとしながらお笑い番組を見ていると、突如テロップに「ISを動かせる男あらわる!」と流れたかと思うと、急遽お笑い番組は特番に変わってしまった。
どの番組に変えても通常番組は特番に変更されていて、テレビ東○ですら番組を変更してこのニュースを伝えているほどだった。
仕方無しに適当なチャンネルに合わせて、ゆっくりとみかんを食べていると、トモカの耳に機嫌を悪化させる名前が聞こえてきた。
『本日午後、IS学園試験会場にて世界で始めてISに適正のある男性が発見されました。 その男性は初代ブリュンヒルデの織斑千冬の弟で、織斑一夏と呼ばれている男性です。 この事を受けて日本国政府は臨時の委員会を設置するなど各地で波紋を……』
織斑一夏と言う名前を久々に聞いてトモカは、今まさに口に運ぼうとしたみかんを潰してしまった。
「あーあ、もったいない……アイツのせいでみかんが……」
トモカはみかんを潰したことを一夏のせいにしつつ、ティッシュでコタツの上に飛び散った汁を拭いていった。
汁で汚れた手を洗おうと立ち上がった時。トモカの携帯が鳴り始めた。
トモカは慌てて手をティッシュで拭って携帯を見ると、画面には静間と表示されていたので仕方なしに電話に出た。
《おいトモカ、電話に出るの遅いぞ》
「……みかん食べてた」
不機嫌さを露出させ、冷めた声でトモカが静間の問いに返事を返した。
《そうかご愁傷様……で、テレビは見たか?》
「あのくそったれがISに乗れるって奴でしょ?」
《そうだ、その件でトモカに依頼が結構来てる》
「どんな種類?」
《暗殺から警護、情報収集まで何でもござれだ》
「あいつの護衛とか、偶然の事故で殺しそうだし面倒だからしたくないんだけど……」
トモカのついた溜息に静間は、彼女の弱点を突いた起死回生の爆弾を落とした。
《日本政府が言うには、ISを使って行う一夏の護衛に一年で2億出すと言ってる。 それにかかった諸経費も別途で請求可らしいぞ》
「うっ……」
《それにトモカ、前に密偵とか情報収集系の依頼を受けていたよな?》
「たくさんしてたけど?」
《アメリカやフランスが織斑一夏への調査を依頼してきている、出来高報酬だが同じ情報を各国に流すだけで莫大な金額が流れ込むぞ?》
トモカは金の亡者と言うほどではないが、お金は好きである。
復讐以外の動機でトモカを動かすのに静間はお金に執着するように仕込んでいたのだ。 これは静間がトモカに対して5歳から行ってきたマインドコントロールの成果だった。
「おっ、お金は別にいいんだけど、一夏を消すのってあり?」
《亡国機業は織斑一夏を取り込めるなら取り込みたいが、出来ないようなら暗殺してくれと要求が来ている》
それを聞いてトモカは考え込み始めた……
もし、これで織斑一夏を取り込むことが出来たら篠ノ之束と織斑千冬に対する効果的なカードとなるよね?
誘拐されたときに優勝する名誉よりも一夏を選択した織斑千冬への最強のカードに違いないし。。
私が依頼者から「金の亡者」と言われているのは、どんな状況になっても金を払った人間の言ったことを必ず守るからだもの。
もし、そんな人物が護衛と言う立場にいるのなら織斑千冬は警戒心を多少なりと緩めるはず。
出来る限り護衛として親密に装って警戒心が緩んだところで、織斑姉弟を潰すなんてどれだけ楽しいかな?
一夏が友人だと思っていた私にいたぶられて、ジワジワと精神的・肉体的になぶり殺されている所をあの千冬に見せ付けるなんてしたらどんなに興奮できるかな?
だけどそれにはちょっとだけ懸念がある。 それは誘拐の時に一夏に顔を見られた事。
一夏が誘拐犯の私の顔を忘れてくれていれば問題はないけど……
こればかりは当日の一夏の反応を見ないとわからない。
後は私が感情を殺して一夏と親密になればいいだけだし、コレでお金がもらえるなら最高かも……
やろうと、トモカはそう結論づけて静間にそう伝えた。
《わかった、トモカは今日本にいるんだろ? 年齢は同い年だし、入学手続きも日本政府がバックアップするからゆっくりするといい。 後で連絡する》
静間はそう言って電話を切った。
「あぁ、どうやってあいつ等らを騙して苦しめてあげようかな?」
トモカは携帯を仕舞うと、満面の笑みを浮かべながら入学後の計画を想像し始めた……
これはIS学院に入学する少し前のお話。
改稿済とあるのはきちんと書き換えています。
すぐに改稿するので、IS学園編は待ってて下さい(すいません)
小さいことでも感想があれば嬉しいです!