IS〈インフィニット・ストラトス〉闇の少女とペンダント 作:tamatyann
私はゆったりとした休憩時間を過ごしていたが、一夏と箒さんは休憩時間ギリギリに教室に入ってきた。
二人の様子は対照的で、一夏の機嫌はそこまで悪くないが箒さんの機嫌はすごぶる悪い。
機嫌が悪いせいか、また箒さんは私を睨みつけてきた。
それを見て、一夏は申し訳なさそうな顔をしてカオルを見ていた。
チャイムが鳴り、一夏以外の全員がすぐさま席に着いたが、一夏だけはボンヤリと突っ立っていた。
そして、無常にも扉が開いた。
そこには、ニコニコと出席簿を持った織斑先生が立っていた。
一夏はそれに気付かなかった。
あぁ、南無阿弥陀仏。
トモカは一夏から目を逸らした瞬間、一夏の方向から何かが炸裂したような音を聞いた。
チラリと一夏のほうを見ると、一夏は無残にも頭を抱えたまま床に転がっていた。
大丈夫かな?
そう思って、カオルは織斑先生の無言の威圧をかわしつつ、一夏の顔の前でしゃがみ、頭を撫でながら話しかけた。
「一夏大丈夫?」
「……大丈夫だ。 トモカ、気付いてたなら言ってくれよな」
私が目を逸らした事はとっくにばれていたらしい。
「ごめんごめん。 ほら立って、ね」
「もったいな……いやわかった立つよ」
一夏は顔を朱に染めながらゆっくり私を見ながら立ち上がって席に着いた。
カオルは一夏がなぜ真っ赤になって私を見たのかは分からなかったが、コソコソと席に着いた。
織斑先生の授業なのにカオルは授業そっちのけで思索にふけっていた。
親近感を増させて油断させるためとはいえ、やり過ぎよ……
一夏の頭を撫でるなんて、私自身が驚いてたわよ。
そもそも何で、暗殺対象の一夏なんかを心配してるのかな……
やっぱり、玩具(一夏)を取られたくないから?
……頭を撫でたのは出席簿で叩かれて痛そうだったからだし、私は親近感を増すために行動してるのよ。
だから――
「留宮トモカ、アラスカ条約について説明してみろ」
えっと……何を?
ふと中に向けられていた思考を外に向けると、授業がはじまってから20分ほどたっていた。
黒板にはIS運用条項やらアラスカ条約やら見事なまでに聞き逃した単語が並んでいた。
カオルは左を見ると一夏も首を捻っているのを確認した。
「えっと、特別区以外でのISの展開は刑法で規定されていない場合と生命の危機的状況を除いて禁止されている?」
トモカが教科書に書かれている文を適当に読むと、クラス中でクスクス笑いの渦がわきおこった。
読むところでも違ったかな、と思いつつ織斑先生のほうを見ると苦笑いを浮かべていた。
「読むところが違うし、説明にもなってない……きちんと聞いておけ、馬鹿者」
織斑先生の強烈な打撃が私の頭部に叩きつけられた。
いったいなぁ……ISの勉強をまともに始めて数週間も経ってない私に聞かないでよ、と思いながら織斑先生を見ていると、織斑先生は標的を一夏に変更していた。
[織斑、わかるか?」
「ほとんど全部わかりません」
「……入学前の参考書は読んだよな?」
「コタツの上においてあったはずなんだけど、いつの間にか消えてたんだけどな……」
そう一夏が言うと、織斑先生の口がピクリと引きつった。
「ま、まぁ無くしたなら仕方が無い。 後で再発行してやるから一週間で覚えろ」
「電話帳サイズの大きさを一週間で?」
「つべこべ言うな!」
一夏はそれを聞いて意気消沈してしまった。
「ついでに留宮、罰として一緒に織斑と勉強をしておけ」
「仲間だな、トモカ。 一緒に勉強しようぜ!」
急に復活した一夏は嬉しそうに私を見ていた。
もし一夏の頭の中が株式市場だったら、世界恐慌から一点、バブル景気である。
トモカは、一夏が一人だけ落ちこぼれているのではないと言う証人がいるから喜んでいるのだと解釈した。
「留宮、13ページの5行目からを読め」
「はい、ISは……」
そのような感じで二時間目は終わり、トモカは一夏と勉強が出来ないもの同士で話していた。
「へぇ、トモカは海外に住んでたのか」
「そうよ、小さい頃に移り住んでから最近戻ってきたの」
「どこに住んでた?」
「えっとね……」
休憩時間に楽しく談笑していた二人の後ろに金髪ロールの女子生徒が立っていた。そしてその女子生徒は口を開いた。
「……ちょっと、よろしくて」
「重要な用件じゃなかったら後にしてくれますか、私は一夏君と話してるので」
その女子生徒をトモカは一瞥した。金髪で縦ロールの生徒、トモカは静間が用意したクラスデータの写真を思い出した。
彼女はセリシア・オルコット、イギリスの代表候補生で性格に難有りと書かれている生徒だった。
カオルとセリシアの雰囲気が険悪になったのを察知したのか、とたんにクラス中のお喋りが止まり私たちに視線が集まってきた。
その針のムシロのような視線に負けたのか、一夏が私に忠言してきた。
「聞いてやっても良いんじゃないか、トモカ」
「……嫌よ、せっかく一緒にお喋りして、一夏の事をいっぱい知ろうと思ったのに」
「た、例えば?」
「一夏の好きなものだったり、して欲しいことだったり……」
「へ、へぇ……」
一夏はカオルから視線を逸らせていたが、データ上では一夏はそんな行動を取るとは書いていなかった。
さらなる調査が必要だと感じつついると、痺れを切らしたらしい代表候補生のセリシアが話し始めた。
「話を聞いてます、お返事は?」
「一夏、呼んでるよ」
「トモカじゃないのか?」
「イギリスの代表候補生が話しかけるなら世界唯一の男性操縦者の一夏しかないでしょ」
「知っていましたの……まぁ、当然ですわね」
「一夏、この人知ってる?」
「千冬ね……織斑先生が担任だったことがショッキングすぎて自己紹介を聞いてなかったから知らないな」
「じゃあ、教えてあげるね。
彼女、セリシア・オルコットさんはイギリスの代表候補生で専用機がブルー・ティアーズ。 射撃特化の実験・試作機を専用機にしていて、IS適正がA……これでいい? セリシアさん」
「入試主席が抜けていますが及第点です」
データは正しかったらしい、このデータの続きには出生や家庭環境まで書いてあるのだから静間の情報収集能力は奇人クラスではないかと疑いたいくらいだ。
分かった? と、一夏に聞いたら呆れるような返事を返してきた。
「なぁ、トモカ。 代表候補生ってなんだ?」
その一言でクラスの三分の一がずっこけた。
傭兵暮らしの私でさえその言葉を知っていたのに一夏は何で知らないのか謎だった。
「なんてこと……信じられませんわ。 常識でしょう、それくらい。 極東の島国にはテレビどころかラジオさえ無いのかしら、これだから男は……」
「テレビもラジオもあるぞ、見ないけども」
「やはり男の常識が無いだけですわね。だからISに男が乗るなんておかしいと……」
「一夏、代表候補生はね、国家代表のIS操縦者の候補者、すなわち予備だったり卵だったりする人のことよ」
「そう言う事か、文字通り過ぎて逆にわからなかったわ、トモカ助かった」
「へへへ、どういたしまして」
「……私の話を聞いてましたの?」
「聞く必要はあったのか?」
それについては私も同感だ。
自慢話なんて校長や会長だけで満足だ。 別に聞かなくても問題ないし。
「これだから教養も無い男は駄目なのですわ。 まあ、でも? 私は優秀ですから、猿のような貴方にも優しくしてあげますわよ」
「ISについて無知なようですから、泣いて頼まれたら教えて差し上げても良くってよ。 私はこの入試で唯一教官を倒した、エリート中のエリートですから」
「俺も倒したぞ、教官」
「はっ……?」
「わ、わたくしだけと聞きましたが?」
「女子ではってオチじゃないのか?」
セリシアのほうからピシリと、氷に亀裂が入ったような音が聞こえた気がした。
「つ、つまりわたしだけではないと……?」
あれ、私も教官倒したんだけどな……まあ、時期が遅れたしカウントされてないのかもしれません。
私の場合は一人だけの特別入試で山田先生が相手でしたね。
射撃が強かったですが、私が生身で戦った米軍へのゲリラ戦よりは楽でしたね。 まあ、あの時は何度死になったやら……
「あれ? 一夏、私も倒しましたよ」
「ありゃ、俺のオチは違ったみたいだ。 どんまいだエリート」
「……ど、どういうことですの?」
「知るか、じゃあ連絡ミスだろ」
「ふざけてますの?」
「まあ、落ち着けって」
「こ、これで落ち着ける方がおかしいですわ!」
「受け入れろよ、な」
「受け入れられるわけないですわ」
「えっと、私は別の日に入試したんだけど……」
「そりゃそうだよな、入試で唯一教官を倒したとか言っといてそれを否定するようなことは言えないよな」
「おーい……」
「それとは関係ないですわ。 教官を倒したのが二人だったということに単に驚いただけで」
「でも、間違っていたのは事実だろ?」
次第に二人の会話はヒートアップし始めた。
私の話も聞いてよ……
「な、なんですの? その言い方は! ふざけ――」
二人の罵り合戦が最高潮に達しようかと言うときにチャイムが鳴り始めた。
どんだけタイミングがよすぎるんだろうか、三時間目のチャイム……
「っ……! また後で来ますわ! 二人とも逃げないことね! 良いですわね!」
なんで私まで入ってるのよ、というか何で一夏はうなずいてるのよ?
一夏は少しだけ嫌そうな顔をしていたので渋々だと言うのはわかったけど……
一夏にお小言を始めようかと思ったけど、その前に織斑先生が入ってきたので諦めて椅子に座った。
「この時間は授業の前にクラス対抗戦に出る代表者を決める」
なんか面倒…… そう思いながら織斑先生を見ていると、解説を淡々と始めだした。
「クラス代表はそのままの意味だ。 対抗戦だけでなくクラスをまとめたり、会議や委員会への出席もある。 ちなみに、一年間は変更は無い。自薦他薦は問わないぞ」
その解説にザワザワとクラス中が色めき立った。 クラス中の目が一夏に向いているので私は心の中でアーメンと唱えて一夏を見ていた。
「はい、織斑君を推薦します」
一夏は無反応だった。
「私もそれが良いと思います」
一夏はその言葉を聞いて少し喜んでいるようだった。 やりたいのだろうか?
「では候補者は織斑一夏、他には誰か居ないか? 自薦他薦は問わないぞ」
喜んでいた一夏の表情が織斑先生の一言で、徐々に硬いものに変わっていった。
「お、俺!?」
一夏は感情に任せて立ち上がっていた。そこにクラス中から無慈悲な視線の集中砲火に遭っていた。
もし、視線が銃弾だったら私でも避けられそうに無い。
「織斑、席に着け邪魔だ。 さて、他にいないか? このままだと無投票当選だぞ」
「ちょ、ちょっと待った! やりたくな――」
「自薦他薦は問わないと言った。選ばれた以上、覚悟を決めろ」
「いや、でも――」
一夏は猛反発したが織斑先生には逆らえないみたいだ。 一夏の新たな側面が見れて参考になった。
そう思って見ていると、一夏が私に視線を合わせてきた。
何か嫌な予感がして、目を逸らしたが遅かった。
「織斑先生、誰でも他薦は可能だったよな?」
「あぁ……」
「じゃあ、俺はトモカを推薦するぜ!」
「なっ、何言って……」
トモカも勢い余って立ち上がった。
「留宮を選ぶか。 良い観察眼しているじゃないか」
「いやぁ、まあ……」
一夏、なんで頭を掻きながら嬉しがってるのよ、この裏切り者!
「選ばないでください、そもそも納得できません!」
はぁ、と息を吐く織斑先生は、すごく面白がっているような微笑をチラリとトモカの方へ向けた。
「織斑にも言ったろ、自薦他薦は問わないと。 それに……」
織斑先生は一度言葉を区切ると、クラスメイトの注目を集めてから再度話を続けた。
「試験なのに山田先生のISを大破させるほどだから能力的には問題はなかろう」
ザワザワとクラス中が騒ぎ出す、トモカはニヤリと笑っている織斑先生を見てしまい、コメカミの奥が痛くなってきて頭を抑えた。
「あれは違います。 実技がないと思っていてISに試作品を山のように積んでいたから……」
「試作品なんかで元日本代表候補生が倒せるとでも言うのか?」
「……いえ、何でもありませんでした」
織斑先生はトモカの任務を一夏の護衛と言う風に捕らえているから問題ないとしても、クラスの人間は代表候補生でもない人が元代表候補生を倒すという状況を怪しむだろう。
「納得がいきませんわ!」
その声を聞いてトモカが後ろを振り返ると、セリシアが机を叩いて立ち上がっていた。
ほらね。 グッジョブ、セリシア。
「トモカさんならいざ知らず、男がクラス代表なんて一組をサーカスの一団にでもするつもりですの?」
セリシアは妙に演説会になり始めているが、傍から見ればセリシアこそサーカスの動物みたいだ。
「皆さんは能力にも不確定要素が多そうな極東の猿を頭にして問題ありませんの? わたくしは、このセリシア・オルコットは一年間だけであってもそのような屈辱は耐えられませんわ!」
「わたくしこそ、クラス代表に相応しいのであって……大体、文化としても後進的な国で暮らさないといけないこと自体がわたくしにとって耐え難い苦痛で――」
ふと隣を見ると、一夏が明らかに不機嫌そうな顔をしてセリシアを見ていた。
「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」
「なっ……!?」
「一夏言い過ぎだよ、二人とも止めようって……」
「きっ、極東の猿人種如きがわたくしの祖国を侮辱しますの?」
折角止めてあげようとしたのに、なんでぶち壊すかなぁ……セリシアさん。
トモカは少し目を細めると、一夏の話に割り込んでやった。
「あぁ、言ってやる。おま――」
「セリシアさん、貴方が白人至上主義者だろうと私は構いませんが、クラスでそんな演説しないで下さい。 目障りなので」
「まず、あなたは今の話に関係ないですわよね? トモカさん」
標的を一夏から私にシフトさせたらしいセリシアは、軽く嘲笑を浮かべながらトモカを見ていた。
「関係ありますよ、貴方が侮辱している一夏は私の大切なヒト(標的)ですから」
トモカがその一言を発したとき、クラス中が私を凝視した。
私、何か変なこと言いました?
セリシアに至っては、口をポカンと開けたままだった。
「……付き合ってますの?」
えっ? 一夏とは二時間ぐらいしか付き合いはないけど、それがどうしたのでしょうか?
「どういった意味ですか? やっぱり差別主義者は駄目です、理解不能です。 差別主義者が代表候補生なんてイギリスも落ちたものですね」
「……もういいですわ」
なぜか私に呆れたらしいセリシアは、無言のまま着席した。
事態が混沌と化す前に織斑先生がシメにかかった。
「セリシアは自薦でいいな。 三人だから試合でもして決着をつけろ。 勝負は一週間後の月曜日の放課後、第三アリーナで行う。 三人はそれぞれ準備しておくように。 それでは授業を始める」
織斑先生が手を下に振って座れと合図をしたので、立っていたトモカと一夏は着席した。
トモカが一夏の方を見ると、一夏は一瞬私を見てから急に顔を伏せた。
……何かまずいことでもしたっけ?
トモカは自問自答しながら、自分の教科書を眺め始めた。
その日の放課後、私は一夏と一緒に机の上で屍のようにぐったりとうなだれていた。
一夏とはたぶん考えていることは違うと思うが、私は昼休憩にセリシアに言われた事が気になって仕方なかった。
「あなたには、そこの猿がお似合いですわね」
そうセリシアに言われてから、ずっとトモカは不機嫌なままだった。 単に目障りだったから不機嫌なのか、一夏のことを猿と言われたから不機嫌になったのかがトモカ本人でもわからなかった。
重たい身体を上げて寮の部屋に戻ろうかというとき、不意に教室の扉が開いて山田先生が入ってきた。
「ああ、織斑くん。 まだ教室にいたんですね。 よかったです」
「はい?」
一夏は顔を上げ、寮の番号の書かれた紙とキーを渡されていた。
1025は確か、私の部屋の隣だった気が……
もちろん日本政府に隣になるよう要求しておいたので当然の結果と言えるが、さすがに同室とまではいかなかったらしい。
一夏と山田先生の二人を見ると、耳打ちで何かを話していた。
途中で織斑先生も乱入して何事か話し始めた。
「――大浴場は今のところ、その……織斑君は使えません」
一夏は絶望した表情を浮かべていた。 類測するとさっきまで二人が話していたのは一夏の寮生活のことらしい。
「えっ、何で……ですか?」
「アホか、同世代の女子と一緒に風呂に入りたいのか?」
ずらせばいいじゃん……そう思ったのは私だけでしょうか。
「おっ、織斑君、女子とお風呂に入りたいんですか? だっ、ダメですよ!」
「入りた……いっいや、何でもありません」
一夏と二人の先生の間に鉄のカーテンが下りたように静かになって、春なのに北風のような風の音が聞こえた気がした。
「でっ……では、私たちは会議がありますからこれで。 織斑君、寮にちゃんと戻ってくださいね」
織斑先生と山田先生が出るのを確認してからトモカは一夏に話しかけた。
「一緒に寮に帰えろっか?」
「おぉ、わかった」
一夏と私は立ち上がると外野の声を無視して教室を出て、トモカと一夏はお喋りをしながら寮へと向かっていった。
「一夏、お風呂好きなの?」
「あぁ、好きだぞ」
「じゃあ、女子と入るのは?」
「トモカ、忘れてくれ……」
二人はその場で止まり、無言のままお互いを見ていた。
トモカは少しだけ一夏が可哀想に感じたので話を変えることにした。
「……そういえば一夏ってどんな女子が好みなの?」
この質問は確か、各国から別料金で情報が売れる物だった。
その情報を使って何をするかは大体の予想はつくが、正直関係ないので罪悪感は無かった。
「えっと、言わなくちゃだめか?」
「私、一夏の事を知りたかっただけなの。 でも、ごめんなさい……」
罪悪感が残るようにトモカは下を向いて、トボトボと一人歩き出した。
トモカの必死の演技が伝わったのか、一夏は慌ててトモカの肩を掴んだ。
「わかった、言うから許してくれ」
肩を掴まれ、一夏のほうへ強制的に向かされたトモカは、すんなりと自己開示してくれそうなのですっかり拍子抜けしていた。
そして、一夏の事前データを修正するべきだと感じた。
「改めて聞くね。 好きな女子のタイプはどんなの?」
「うーん、あまり考えたこと無かったな。 でも、活動的そうな子がいいかな……色々とデートできそうだし」
「外国人と日本人だったら?」
「どうかな……日本人のほうがいい気もするけど、大きいむ…は捨てがたいし」
「今、何言ったの?」
「な、なんでもないぞ! だが、好きになれば容姿はあまり関係ない」
一夏は私の質問のとき、一瞬だけ私の胸をちらりと見ていた。
胸、大きい方がいいんだ、女の子はそんな視線に敏感なのに……
一夏が私の胸を見てちょっと落胆したような気がして少しイラッとした。
「ねぇ、アレ見て!」
「うそ、彼、入学初日にナンパしてるの?」
チラリと声の方を見ると、複数の女子生徒がこちらをみて笑っていた。
ふとトモカは、一夏の手が私の肩に置かれていることを思い出した。
これで一夏はこちらに顔を近づけているのだから、傍から見ればナンパに見えても仕方ない気がしてきた。
「か、帰りましょう」
「そう、そうだ。是非そうしよう」
一夏は私の肩から手を離すと、ダッシュで寮の中へと入っていった。
「えーと、ここか1025室だな」
一夏が部屋を見つけたことを確認してから私は自分の部屋に戻ることにした。 まあ、隣だけど……
「カオルは……隣かぁ」
「そうね、じゃあまた明日ね」
「おお! また明日な」
二人はそう言って別れるとそれぞれの部屋に入っていった。
カオルは部屋に入ると、ブラウスのボタンを緩めながらパソコンを起動させた。
政府には一夏と一緒じゃないなら一人部屋がいいと所望したが、元々一人部屋は教員用しかないみたいなので二人部屋を一人で使わせてもらっている。
例え裏切る相手の政府でも味方につけると何かと便利だったりするし心強い。
カオルは机の上で起動したパソコンにパスワードを打ちログインすると、一夏のデータの更新と、さっきの好み女性についてのデータを報告書に入力しはじめた。
数行書いたところで隣の部屋から怒声と何かを突き破るような音が現在進行形で聞こえることに気がつき、報告書を作成するのを止めた。
気になるので椅子から立ち上がり扉を開けると、一夏はなぜかさっき一夏が入ったはずの扉にすがっていた。
一夏の行動に疑問を持った私は、扉から突き出した木刀のようなものを見てからやっと納得した。
また誰かを怒らせたらしい、と。
「一夏、大丈夫?」
「ちょ、ちょっとかくまってくれ」
一夏はそう言うと、私の部屋に入ってきた。
「一夏、そこの椅子にでも座ってて」
「おっ、おう!」
私は慌ててパソコンを閉じると、ポッドの前に立ち、コーヒーを入れ始めた。
「一夏、インスタントだけどブラックとミルク入りどっちがいい?」
「ブラックでいいぜ」
「大人だねぇ……」
カオルは一夏のカップにインスタントコーヒーを入れ、お湯を注いでから一夏に渡した。
私は牛乳と砂糖をたっぷり入れないと飲めないので、砂糖や牛乳をブラックコーヒーに添加した。
カオルは一夏の真正面に座りチビチビとコーヒーを飲み始めた。
すると、一夏はチラチラと私を見るのになぜか私が一夏を見ると思いっきり視線をそらしてきた。
「で、一夏何したの?」
「……風呂から出てきた箒と出くわした」
「バストはどうだった?」
「すげぇ大きかっ……って言わせるなよ!」
二人は少しの間一緒に笑い、一夏はブラックコーヒーに手を付けたが一瞬だけ顔をしかめた。
「どうしたの、一夏。 おいしくなかった?」
「いやいや、おいしいぞ! 絶対にだ」
そう言ってコーヒーを一気に飲み干した一夏は少し無理をしているように感じた。
あんなに熱いの飲んだのに、舌は痛くないのかな……
そういえば、一夏が飲んでいるコップは今朝私が使ったやつだった。 よし、後で消毒しておこう。
一夏と私はそのまま十分ほどまったりとしていると、急にカオルの携帯へ電話がかかってきた。
「お、電話だぞ」
「誰よこんなときに……もしもしって静間?」
《そうだ、そこに誰かいるか?》
「いるけど……一夏、ごめんけど重要な電話だから外してくれない?」
「誰からなんだ?」
「うーん、私の恩人の男の人だけど……」
「そ、そうか邪魔したな」
「また明日ね」
そう言って、一夏は部屋から出て行った。
《トモカ、いや今はカオルだっけ? いったい誰といたんだ》
「えっ、織斑一夏とだけど……」
《そっちの時間だととっくに放課後だよな?》
「そうだけど?」
《どこで話してるんだ?》
「私の部屋だけど……どうしたの?」
《チッ、餓鬼が……》
「静間、どうしたの一体。 今日おかしいよ」
《……すまん、初日はどうだった?》
「えっとね……」
今年で30歳を超えた静間は、カオルの一日の報告や感想を無言で聞いていた。
始めは苛立っていたが、最後の方には落ち着いていた。
《いいな、絶対に変な人間に引っかかるなよ?》
「そんなに心配しなくても大丈夫だから……うん、またね」
そう言ってカオルは電話を切った。
「さて、報告書仕上げますか!」
そう言って、カオルはパソコンを開いた。
一方、一夏は自室に戻ると箒に謝ってからシャワーを浴びていた。
「今日も一日大変だった……」
一夏は勉強のことを思い出しながら、ゆったりと髪をシャンプーで洗っている。
「でも同志がいてくれて助かったよな」
同志とはカオルのことだ。 彼女もまったくISについて勉強してないと言っていたから一緒に勉強をすれば何とか安心はできそうだ。
俺よりも小さい彼女と一緒にいた一日はとても楽しかった。 ある程度意見は言うが譲歩したり助けたりしてくれる彼女の性格は、これまで周りにはいなかったから新鮮だ。
そういえば、俺なんであんなにカオルのことを考えてるんだ?
思い返せば、カオルの態度や行動、一言に何度も感情を揺さぶられていた。
「心と身体が欲しいとか、一夏は大切な人とかは…… ジョークだよな……」
ジョークなのか本気なのか分からず一夏は戸惑っていた。 確かに一夏はその一言一言でドギマギしたのは事実だ。
一夏に直接そのような言葉をぶつけてきた人はいない。 だからジョークだとしても親近感がわいてないと流石にそのネタは出来ないから、好意を抱かれてるのだろうと感じたかった。
しかも、一夏が千冬姉に叩かれたとき、すぐさま心配をしてくれて頭を撫でて大丈夫?と声をかけてくれた。
それは嬉しかったが、その時にスカートの中が見えてドキドキと緊張したのは男の本能だから仕方ない。
頭の痛みとちょっとした罪悪感をを堪えながら見えたのは、黒いフリルつきの下着だった。
小さくて可愛い彼女があんな下着を着けているとは思わなかった。
空想に浸りだした一夏は、さっき部屋にいた時のカオルの姿を思い出した。
さっきのカオルはラフすぎる格好で、完全にくつろぎモードだった。
そんな中に俺は入れて完全に福眼だった。
まるで誘惑するかのように胸元をはだけたブラウス、そこから覗く柔らかそうな双丘。
その丘陵を覆う黒い布と優雅な曲線を描く身体のライン……
まるで襲ってくれと言っているような格好に一夏はその時、部屋にいたカオルを直視できなかった。
だが、チラチラと盗み見てはいた。
そんな姿のカオルを食べたい。 一夏はそう感じた。
柔らかそうな柔肌に跡を付けながら、完全に開ききっていないブラウスのボタンを一つずつ紐解いていく……
恥ずかしそうにしているカオルの口を自分の口でふさぎながらカオルをベッドに押し倒す。
押し倒したら……
その続きを夢想していたとき、ふとトモカが取った電話のことを思い出した。
命の恩人の男、何か嫌な予感がした。 もしかしたらカオルはその男の所有物かもしれない、そう考えるだけで苛立ちが高まっていた。
アレは俺のものだ。
「何考えてるんだ、俺は……」
頭を振って妙な考えを追い払い、髪や身体を洗い終わると、シャワールームから出て行った。
出すのが遅くなりました、もし楽しみにしてくださってたらごめんなさい。
戦闘シーンとかが無性に書きたくなって、セリシア戦とか鷲との戦いを書いてたらその繋ぎのことをすっかり失念してて……
本当に申し訳ない!
書いていくうちに、話がプロットから一部脱線してますが大丈夫だと思います。
でも、鈍感さが一夏からトモカに感染したのはご愛嬌と言うことで……
初期の段階では純愛系になるかと感じたのですが、感想にあった意見から私が夢想した結果、三角関係の昼ドラが頭に出てきて……
現在、プロローグと一話は絶賛改稿中です。
矛盾やらグダグダやらが多かったみたいで……
読み返すと、何度か添削した網を大量にすり抜けた文章が多数に矛盾点が多数……
情報提供ありがとです!
大筋は変えませんが、細かいところが変わります。 もし、「ここへんだなー」とかあったら教えてください!
駄文ですが、どうぞこれからもよろしくお願いします。
追記、感想ありがとうです! 感想が無かったら諦めてました!