IS〈インフィニット・ストラトス〉闇の少女とペンダント 作:tamatyann
「ふわぁ……眠い」
トモカは報告書を仕上げ終えたのが3時前。 数時間だけ仮眠を取った後、欠伸をこらえながら一年生寮の食堂に向かっていた。
あまり働かない頭を動かしながら廊下をフラフラと歩き、食堂のカウンターの前に向かうとカウンターにいるおばちゃんに注文を出した。
「三色の和風サラダセットにご飯と漬物を付けてください」
バイキング形式の朝食だったが、ものによってはカウンターで注文しても問題なかったのでおばちゃんに頼むことにした。
しばらくすると、おばちゃんが大きめの皿に盛り付けたサラダとお茶碗に盛り付けたご飯をトレーに入れてを持ってきた。
「あの、漬物は?」
「今日は搬入の関係で浅漬けと梅干くらいしか無いけどそれでいいかい?」
「少し多めにあれば問題ないです」
「――はいよ」
「ありがとうございます」
おばちゃんは漬物用の小皿より一回り大きい皿に浅漬けと梅干を盛り付けると、トレーの上に乗せた。
それをトモカはありがたく受け取ると、カウンターのそばにあった新聞を小脇に挟んで食堂の中央にいくつかあるテーブルの一つに座った。
ゆっくりと新聞を読みながらゆったりとした時間を味わいながら朝食を取っていた。
「へえ、中東に増援ねぇ……米軍やる気かなぁ?」
新聞を読みながら一人でブツブツと呟いていると、静かだった食堂が急に騒がしくなった。
「きたきたおりむ……って隣の女子って誰よ?」
「あの子織斑君と同室なんだってね、羨ましい……」
「あっ、織斑君って朝は和食セットなんだ、私も同じのにしようかな?」
「でもアレ量が多いよね、太るよ~」
「……やっぱ止めとく」
周囲がざわめくのを尻目にトモカは一人でゆっくりと食事を取っていたが、騒ぎの元凶は静かなトモカの朝食の時間をぶち壊した。
「トモカ、前に座ってもいいか?」
その声に反応してトモカは新聞から目を話すと、目の前には不機嫌そうな篠ノ之箒と一夏が立っていた。
それぞれのトレーの上にはご飯に味噌汁、鮭の切り身と言った和食セットが乗っていた。
「……どうぞ」
トモカはそう言うと、再び新聞に目を落とした。 一夏達を無視するように新聞を読み始めたトモカに一夏は不愉快な顔をした。
「トモカ、マナー悪いぞ」
「ん? そうだね。 それよりも浅漬けおいしいね」
「本当だ……っておい、話を逸らすな」
浅漬けをおいしそうにつまみながら一夏の説教を聞き流していると、いきなり一夏がトモカが読んでいた新聞をサッと奪い取ってしまった。
「返して、四コマ漫画まだ読んでない」
「マナーが悪いから食べ終わるまで新聞は没収するぞ」
「でも……」
「さっきのどこぞの中年おやじみたいに見えたぞ、トモカ」
「えっ、じゃあやめる」
「切り替え早っ!」
急に素直になったトモカを見て、一夏は吹き出してしまった。
「ププッ……中年オヤジは流石に嫌か?」
「当たり前でしょ?」
「まあな」
楽しげに会話を始めた一夏とトモカを無視して食事を続けていた篠ノ之箒が目つきを余計に鋭くして咎めるような視線をトモカに投げつけてきた。
その視線を感じ取ったトモカが篠ノ之箒の方に視点を合わせると、篠ノ之箒は舌打ちをしてそっぽを向いた。
なによあれ? 文句あるなら直接言えばいいのに……
トモカは記憶の中から篠ノ之箒に嫌われるような事を行ったかどうかを探っていたが、舌打ちされる原因が分からなかった。
思い出せないことにストレスが蓄積し始めたトモカは、一つだけ残った浅漬けをプスプスと箸で刺し始めた。
「――でさ、トモカ」
「なに?」
一夏はぶっきらぼうに返事をしたトモカを見て話しかけるのを止めようとしたみたいだが、何かに恐怖したのかオドオドと話を続けてきた。
「あっ、えっとさぁ……俺、ISの事まったく知らないでセシリアと戦うわけじゃん」
「そうだね」
「トモカって教官の乗るISを倒せるほどの実力あるだろ?」
「あれは兵器の攻撃力が高かっただけ……」
「俺ってさ、ISの知識があって実戦経験のある知り合いってトモカぐらいしか知らないんだよ」
「そうだね」
「だから放課後とか手伝ってもらえばありがたいんだけどな……」
「私にメリットは?」
「……デザートでどうだ?」
トモカはその言葉にピクッと反応して、さっきまでブスブスと突き刺していた浅漬けから目を離した。 その反応を見た一夏はニヤリと笑って更に条件を増やしてきた。
「教えてくれるならケーキバイキングぐらい連れてってあげれるのになぁ……」
確かにその条件は嬉しいし、一夏のISの操作の情報も手に入ると言う一石二鳥な条件だから受けても……
そう思ったトモカは椅子から軽く腰を上げて一夏に受け入れることを伝えようとした。
「わかっ……」
「ちょっと待て!」
その時、急に怒気を荒げてきた篠ノ之箒が私に食ってかかった。
「わ、私が教えることになっていたはずだ! 大体、最初の授業でデタラメな答えを言うような奴に任せるより、私が教えたほうが良い結果を生むはず。 そうだろ一夏?」
「箒に頼んだっけな……?」
何よ、この女? 私のケーキパラダイスを邪魔するつもり?
軽く篠ノ之箒を睨みつけながら穴だらけになった浅漬けを口に放り込んでイライラを消すように噛み潰した。
首をかしげている一夏を放置してトモカと箒の舌戦が始まった。
「篠ノ之さん、いきなり割り込むのは卑怯じゃない?」
「貴様が私と一夏の間に割り込んで来たのが最初だ」
「私が一夏にお願いされただけでしょ? 割り込んでないし、貴方には関係ないじゃない!」
「じゃあ、貴様がそのお願いを聞いたとしてISの事を何も知らない一夏に分かりやすくISの事を教えられるのか?」
……確かに私は実技なら出来るけど、ISの理論的なことには無知と言うのは分かってる。
でも、今諦めたらケーキバイキングに行き損ねる上に一夏の身辺を探る時間が減ってしまうのだ。
「来週には代表候補生と戦うんだよ? 今更理論するよりも実践したほうが効率的だと思うけどな」
「私は篠ノ之束の妹だ、ある程度は問題なく教えられる」
その言葉を聞いたトモカは一瞬硬直した。
篠ノ之と言う苗字でもしかすると、とは思っていたが本当に篠ノ之束の妹だとは思っても見なかったからだ。
これ以上舌戦を続けると篠ノ之束への怨嗟の声をぶつけてしまいそうだったので、勝負を降りることにした。
「――わかったわよ、一夏そういう訳だから……」
「お、おう……」
勝ちほこった顔をした篠ノ之箒を悔しそうに見ながらも、トモカはケーキバイキングの為に別の一手を打つことにした。
「放課後に教えるのは無理になっちゃたけど……日曜日、一日全部空いてる?」
「予定は何も入ってないぞ」
「じゃあ、午前中にISの訓練機の使用許可を取って練習しよ?」
「午後はどうするんだ?」
「二人でお昼を外で食べて、その後に遊んでからケーキバイキングってどう?」
「いいな、そうしようぜ!」
トントン拍子に進んだ二人の休日計画に篠ノ之箒が口を挟もうとした。
「えっ……ちょ、ちょっとまて……」
「篠ノ之さんだって休日は休みたいでしょ? 篠ノ之さんは専用機を持ってないし、二人っきりで楽しみたいし……そういうことだから先に行くね一夏」
「おう!」
トモカはお皿をトレーに入れて足早に席を立った。
放課後になって、一夏と篠ノ之箒が剣道場に入ったのを確認すると、トモカはIS学院に存在する射撃場に向かった。
IS学園には射撃場から剣道場、そして陸上競技場など多種多様な施設がある。 その中に普通の高校にはありえない射撃場があるのは、セシリアの主張する様に代表候補生と言う特別な人間が通うからだった。
ISを奪われない為に、IS学園の代表候補生には銃の携帯許可が出ている。
もちろん公安委員会の許可は得た上でだけど。
その火器を使用する為の施設が併設さえるのは当然とも言えた。
トモカは寮から持ってきたガンケースを背負って巨大な射撃場に入った。
射撃場には、CQB(近接戦闘)用の室内訓練施設から、1kmを超える長距離射撃が可能な施設もある。
受付で使う銃の品目と使用する施設を記入してから長距離射撃用の施設に入ると、トモカはガンケースを開けた。
そこには機関部と銃身とスコープ、そしてマガジンが分解され、黒光りする銃が鎮座していた。
トモカは手馴れた手つきで銃を組み立て、欠損部品が無いかなどを調べた。
トモカの手には1m半くらいの長さの銃を抱えていた。
この銃は、M82A1QCと言う銃で、バレットライフルと呼ばれる狙撃銃だ。
この銃の別のモデルの銃は、イラク戦争で1.5km先のイラク兵の身体を真っ二つにするほどの威力がある12.7mmの銃弾を使う。
この銃は、その別モデルの銃身を切り詰めて取り回しやすくしたもので、アメリカのSWATがよく使ってたりする。
取り回しやすいから室内戦闘で遮蔽物ごと対象をぶち抜くと言った荒業にも使われてて……
そんな物騒な銃をトモカが持っているのには理由があった。
この銃(バレット)は重さが13kgを超えるほどの重さがある上に、一つ一つの弾丸の大きさが男のアレくらいの大きさはあるから持ち運びに不便なのだ。
だからこそ、政府に狙撃銃の持込の許可を得るのにも使えたし、トモカ自身この銃の破壊力に満足していた。
だけど、このバレットの特徴である構えて射撃することができると言う特徴を生かした戦いよりもトモカは狙撃にメインを置いている。 立て撃ちを何度か試したけど、長時間持っていると腕が震えて命中力が一気に下がってしまうのだ。
トモカは気を引き締めてからマガジンに巨大な銃弾を入れていき、バレット本体に装着した。
トモカはおもむろにシューティンググラブ(手袋)や耳栓、シューティングゴーグルと言った保護する為のセットを身に付けて、壁で仕切られているブースに入った。
そこでニ脚を下ろし、安全装置を解除するとトモカはスコープを覗き込んだ。
スコープの先には人型のペーパーターゲットが浮かび上がり、照準をあわせた。
憎い篠ノ之束の顔を思い浮かべながら一発一発撃って行くと、心地よい射撃音と共に硝煙の香りがあたりを満たした。
「左……いやもっと右……」
そう言いながら数発の弾丸を撃ち込み、何度も装填を繰り返しながら数十発の弾丸を撃ち込んだ。
「ふぅ……」
ゆっくりと射撃をした為、時刻はとっくに六時を越えていた。
時刻を見て慌てたトモカは、細かい作業がし辛いのでシューティンググラブを外して片付け始めた。
急いで片付けようとして銃身を軽く握ると、トモカの手のひらに激痛が走った。
「アチッ……」
慌てて握った手を見ると、少しだけ赤くなっていた。 銃身はしばらく冷めそうにないので、辺りに散らばった薬莢を回収し始めた。
やることも無いのでシューティングゴーグルや耳栓も外して、本格的に帰りの準備をしていると同じ射撃場で銃声が聞こえてきた。
一応、学生だろうから挨拶しておこうと射撃音のするほうに向かうと、一番端のブースに一人の女性が遠方の的に向けて発砲していた。
使用している銃はたぶんイギリスのL115A3、もちろんそれを使っているのはあの金髪の彼女である。
一定のペースで的に1km以上も離れた的に命中させているセシリアを見て、セシリアの射撃の上手さにトモカが一人で舌を巻いていると、いつの間にか射撃を止めたセシリアがこちらを凝視していた。
「……何、してますの?」
「ん? 同じ射撃場を使ってる人に挨拶に来ただけだけど」
「そうですか……」
少し目を細めてこちらを見てくるセシリアを見ながらトモカはフウ……と息を吐いてから話を続けた。
「セシリアさんって火器の扱い上手いね。 何年くらい?」
「大体3年くらいでしょうか……」
「3年かぁ……代表候補生なだけあるよね。 どれくらい鍛えたらそこまで集中出来るやら……」
軽く褒めて見ると、セシリアの警戒が少しだけ緩んだ気がした。
「いえ、そこまでではありませんわ。 それより少しだけ留宮さんの射撃も拝見させていただきましたが貴方も結構お上手でしたわよ。 ……そういえばこの射撃場は12.7mmって使用可能でしたっけ?」
「受付で確認したら遠距離なら良いけどCQB(近接戦闘)で使っちゃだめって言われたのよ……」
「留宮さん、あれでCQBするつもりだったのですか?」
「鍛えないといけないんだけどねぇ……それとトモカでいいよ、そのかわりセシリアって呼ばせて」
「……特別ですわよ」
軽く微笑んだセシリアとしばらく談笑した後、トモカはバレットの片付けが残っているのを思い出してセシリアに別れを告げて帰ることにした。
「じゃあまた明日ね」
「えぇ、また明日」
二人はそう言うと、それぞれ片付けに入り、一緒に寮に帰った。
次の日から、セシリアとトモカは良く話すようになった。 話題は相変わらず銃器関連がメインだったが……
8/20改稿 まさかの主人公の名前を……
8/21改稿 箒の主人公の呼び方を留宮さん→貴様、奴に変更!
この作品の投稿が遅れてすいません……
実は、書く気力があったのに指が動かなかったんです!
頭から納得いく文章が出てこないと言うか、なんと言うか……
言葉選びにえらく迷ってしまいまして、はい。
後半はなぜかアレだったから、早く一夏と箒の閑話をはさんでデート回? を書きたい。
今日は、今からでも悪いと言われた内容をカイゼンしなくてはいけないです……
初めのプロローグの一部ですし、説明回ですからあまり問題は無いと思われます。
(ISのGETの仕方をもっとリアルにしないと……)
えっと、感想くれた方に感謝です。 数人返せてない人がいたので今からでも返します!
後、くださいましてありがとうございます。
ご意見、ご感想、ご要望はこちらにお書きください。
あとR-18版(まだ薄いですけど)よろしくです。