IS〈インフィニット・ストラトス〉闇の少女とペンダント   作:tamatyann

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注意 一部甘いかも


トモカと一夏の日曜日 午前編

 セシリア達との対決の前日の日曜日。

 

 事前に学園のIS使用の許可やアリーナの使用許可を入手したトモカは、一夏と一緒にアリーナのピットの中にいた。

 ISスーツと呼ばれるパイロットスーツを着込んだ二人は、訓練機の準備が出来るのを待っていた。

 トモカは、朝だからかボンヤリとしていた一夏に話しかけてISが届くまでの時間を潰すことにした。

 

「山田先生に監督は頼んでるけど、まだ時間じゃないから訓練機もまだ来そうにないかな」

「そういえば、今日の訓練で俺が使うISってどんなのだ?」

「前の授業で言ってた打鉄よ? 防御重視の機体ってやつだけど……」

「聞いた記憶はあるんだけどな。 放課後は箒とずっと剣道の稽古して疲れていたから復習なんてしてなかったからなぁ……」

 

 一夏のあり得ない発言にトモカは聞き間違えたんだと解釈して聞きなおすことにした。

 

「一夏、もう一度言ってくれる?」

「えっ、あぁ…… 放課後は箒とずっと剣道の稽古をしてたんだよ」

「ちょっと詳しく教えてくれるかな? 一夏?」

 

 顔を軽く引きつらせたトモカは、この後に続いた篠ノ之箒の放課後の特訓の内容を聞いて愕然とした。

 一夏が言うには、月曜日からずっと、放課後は剣道ばかりやらされていたらしい。

 そのため、篠ノ之箒がIS以前の問題と言い放ったと一夏から聞いたとき、トモカは頭を抱えてしまった。

 

 あの人って馬鹿なの……剣道、剣道ってアレの趣味じゃないの?

 

 篠ノ之箒の馬鹿さ加減に心底あきれ果てていたトモカに、一夏はダメ押しを食らわせるような発言を続けた。

 

「本当に剣道ばかりだったの? 剣道の稽古が終わってから、セシリアの武器の特性とか教えてもらったり、ISの操縦法を教えてもらったりしたんだよね?」

「いや、箒は剣道だけしかしてくれなかったぞ、だからISの事なんて授業以外はさっぱりだ」

「あの能無し……」

 

 トモカは篠ノ之箒が篠ノ之束の妹で、同世代の人間よりISの知識があるからと言う理由で一夏の訓練を譲ったのだ。 ケーキの為、日曜日だけは教えると言う事で手を打ったが、まさかあの能無しがISの事を一個も教えないとは想定もしなかった。

 トモカだったら一週間もあれば最低限の操縦方法などを一緒に訓練するだけでなく、ISを使った事が無い上に参考書すら読んでない一夏の為に教科書を一緒に読みながら最低限の知識を叩き込んだり、セシリアの戦い方などを調べ上げるなどと言った簡単なことでも手伝ってあげたはずなのだ。

 やろうと思えばIS初心者でも考えて実行できそうなことをあの能無しは一切せず、貴重な一週間をふいにしたのだ。

 トモカからしてみれば、一夏の行動パターンなどを調べられる絶好の機会を一週間分全て無駄にされた事になるのだ。

 

 あの女、姉も姉なら妹も妹よ。 傲慢で自己中心的、他人への配慮なんて一切考えてないじゃない……

 ケーキバイキングは諦めないけど移動時間とかにISの話をしたほうがよさそうね。 いや、夜も一緒にセシリアの情報をまとめたもので対策を練ったりしたほうが一夏の為になるだろうし……

 

 一夏の訓練計画を一から変更することを迫られたトモカは、一夏に計画変更のお知らせを伝えた。

 

「一夏、今日は午前中にやろうと思っていたセシリア戦対策は中止して、基礎を鍛えることにするね。 セシリアの対策はお昼ごはんの時とかに資料を交えながら説明するからそのつもりでいてね」

「そうか、なんかすまん……」

「良いのよ私にも実利があるし…… 遊んで寮に帰ったら、二人っきりでISのお勉強しようね?」

「でも、夜には箒との剣道の稽古があるんだが」

「私より篠ノ之さんを取るんだ…… そうよね、数日間の遅れを何とかしようとした私が馬鹿だったんだよね……」

 

 能無しは前日の後詰にまで剣道で時間を潰す気だったのかと、トモカは半ばあきれ果てながら溜息をついた。

 そのトモカを見た一夏が、慌ててフォローを始めた。

 

「い、いやトモカは馬鹿じゃないぞ……あっ、そうだ! 箒も呼んで一緒に勉強すればいいんだ」

 

 あの能無しを呼んでも空気が険悪になる上に剣道をしてないとか言われて中止にされそうなので、トモカは一夏に誤認させる形で誤魔化すことにした。

 

「ちょっと悪いけど、篠ノ之さんにはご遠慮頂きたいな……」

「なんでだ?」

「一夏だから内緒にしてくれると信じていいかな?」

「いいぞ」

「私、篠ノ之さんが怖くて……一夏にも暴力振るうし、私も睨み付けられたりして……もし私に暴力を向けられたらって思うと……」

 

 トモカは小さな身体を震わせながら上目遣いに一夏を見た。

 

「何かされたら助けてくれる?」

 

 傍目からは怯えている子鹿が一夏を信頼して秘密の打ち明けている様にも見えるだろうが、実際にトモカがしているのは、トモカの性格を一夏に誤認させてイニシアチブを握る為なのだ。

 少しだけ罪悪感を感じながらもトモカは一夏をみつめていた。

 

 一夏はトモカの言った無いように驚いたような顔をしながらも、震えているトモカの頭を優しく撫でた。

 

「あぁ、箒がそんなことをするやつだとは思えないけど、何かあったら助けてやる」

 

 急に頭を撫でられてビクッと身体を震わせたトモカは、一夏の行動に驚きつつも頭を撫でられる気持ちよさに身体を委ねていた。

 

 お父さんが亡くなってから頭を撫でられた事なんて一度もなかったし……

 

 一夏の行動に亡くなった父の面影を感じてしまい、トモカは無性に人の温もりを感じたくなった。 トモカは、親が亡くなった後からずっと人を殺すような訓練ばかりを受けていた為、人の温もりに飢えていた。

 トモカを精神崩壊から救ってくれた静間には感謝しているが、流石に生きる手段を見つけてくれた師匠にベタベタするのは間違っていると感じていたのでそういったスキンシップはあまり取れなかった。

 

 そんなトモカだからこそ、一夏に頭を撫でられても抵抗しなかった。 普通の女子なら、一週間くらいしか交流の無い男に頭を撫でられたらビンタの一つをお見舞いする可能性が高い。

 トモカが一夏の突然の行動に抵抗しなかったのはそれだけが理由でなく、一夏の生殺与奪の権利を握っていると言う安心感と、久々のスキンシップを楽しみたいと言う気持ちがあったからだ。

 

 頭を撫でられるのだけでは満足できず、トモカは怯えているのを演出するためだと言い訳をしつつ、一夏の胸元に顔をこすりつけるように抱きついた。

 

「トモカ、どっ……どうしたんだ?」

「ごめん……少しだけこうさせて……」

 

 腕や頬で感じる一夏の温かな体温は、長年両親が居なかった寂しさを紛らわすのには十分な物だった。

 トモカの鼻腔に入り込んできた一夏の香りに昔感じた父の香りを連想させ、小さい頃の暖かな家庭の記憶に浸りながら一夏の体温で至福な時を堪能していた。

 

 数十秒ほど一夏に抱きついていると、一夏は急に頭を撫でるのをやめてしまったので、トモカは名残惜しそうに一夏から離れた。

 困惑した顔をしている一夏を見て、いきなり抱きついた理由を言わなくてはならないとトモカは感じたので一夏にポツポツと昔の出来事を語り始めた。

 

「一夏、本当にごめんね。 いきなり抱きついたりなんかして」

「いや、正直うれっ……じゃなくて何で俺に抱きついたりしたんだ?」

「頭を撫でられるのが凄く懐かしくて、つい…… 私の両親ね、小さい頃に両方とも私の眼前で交通事故を起こして亡くなっちゃって……」

 

 トモカが暗い話をし始めたとたんに一夏の表情が硬くなった。 トモカはそれを見ていないフリをしつつ話を続けた。

 

「両親が死んでね、身寄りも無いから実家で生活をしてたんだけど、民生委員の人とか市役所から人一度も来てくれなくて……結局、ある人に連れられて海外に出ることになったんだよね」

 

 一夏が固まったままだったので聞いているのか不安になりながら、トモカはチラチラと一夏の顔を見ていた。

 

 うん、大丈夫よね? 一夏ちゃんと聞いてるはずだし……

 

「その……一夏が頭を撫でてくれた時、お父さんがしてたみたいで懐かしくて…… ごめんね……」

「お父さんか……俺も両親知らないから人の体温を感じたいって言うのは共感できるな」

 

 硬かった表情を少しだけ和らげた一夏を見て、トモカは言い訳出来たと安心した。

 

「ごめんね、シリアスな話なんかちゃって」

「いや、大丈夫だ。 と言うよりトモカ、何か胸元に付けてないか? 抱きついた時に少しだけ痛かったぞ……」

 

 シリアスな内容から急に言われた内容が可笑しかったのでトモカは少しだけ驚きつつも、ぴったりとしたISスーツの中からペンダントを一夏に見えるように鎖の部分を握って引っ張り出した。

 

「あ、これ? 唯の親の形見よ」

 

 にこやかに笑いながらペンダントを見せたトモカは、一夏の顔が少しだけ歪んだ事に気がついた。 何事かと不安になっていると、一夏がブツブツと呟き始めた。

 

「……いや、まさかな……どっかの店で買った? そもそも性格が……」

「どうしたの?」

 

 不安げに一夏の顔を覗き込んだトモカに一夏は慌てて言い繕い始めた。

 

「いや、なんでもないぞ! と言うより訓練機はまだなのか?」

 

 トモカは挙動不審な言葉を発した一夏を訝しげに見つつペンダントをしまうと、腕時計を見た。

 

 時刻は9時31分。

 

 ある真面目な先生と約束した時間から優に30分は過ぎていた。 

 

「一夏、一応頼んだ先生は真面目な人だったから遅れているのにも何か理由があるはずだろうから、しばらく待ってよ?」

「真面目な先生って誰だ? 千冬姉のわけはないし……」

「正解は後のお楽しみ。 一夏座ってまっててよ」

  

 二人は近くにあった椅子に腰掛けると、談笑しながら先生とISの到着を待ち始めた。

 一夏はたまに携帯を弄りながら話していたが、楽しく会話していた。

 

 

 

-----

 

 

 IS学年1年1組の副担任こと山田真耶はアリーナの監視室に向けて慌てて走っていた。

 時間は9時26分、事前に留宮トモカさんと約束していたピット解放時間を大幅にオーバーしていた。

 

「やってしまいました……まさか昨日、織斑先生に深夜まで深酒に付き合わされた挙句に寝坊したなんて言えませんし……」

 

 アリーナの監督室前の廊下、あと少しでたどり着くと言うところで山田真耶は苦笑を浮かべた。

 

 数分後に監督室に飛び込んだ山田真耶は、監視カメラのモニターを付けた。

 しばらくして監視カメラの映像がモニター上に広がっていくと、一つのピットの中に二人の人影が見えた。

 

「あそこですか、だからBのピットに打鉄を一つっと……」

 

 山田真耶はピット搬入口にISを出すようにアリーナコントロール用の機会の操作を始めた。

 細々とした設定や承認作業をした後、山田真耶は一息ついてピットにいる二人の様子を見ようとした。

 マイクを持って話しかける準備をしながらピットの監視カメラの映像が流れるモニターを探し出した。

 

「あの二人はどうしてますか……って、はい?」

 

 監視カメラの映像には、頭を撫でている織斑君と留宮さんが映っていた。 しばらくすると顔を真っ赤にした織斑君にいきなり留宮さんが抱きついて……

 

 頬を朱に染めながらその映像を凝視する山田真耶は、マイク越しに呼びかけようとしたのを止めて慌ててマイクを戻した。

 

「はわわ、まさか織斑君が一週間であんな事を……」

 

 山田真耶はさっきのを見なかったフリをしてピット・ゲートの解放などと言った残りの作業を済ますことにした。

 

 作業が終わり一息をついた山田真耶は、監視カメラで二人が抱き合ってないのを確認すると、ピットにマイクの音声が伝わるように設定してからマイクに口を近づけた。

 

 

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 椅子に座って数分後、いきなり天井についていたスピーカーから声が響き始めた。

 

《遅れてしまってすいません、留宮さんと織斑君。 打鉄をピット搬入口から出すので、ピットゲートが解放し次第出ちゃってください》

 

 山田先生の声が聞こえたと同時に、斜めにかみ合っていたピット搬入口の重厚感のある扉がイメージ通りの駆動音を立てつつ開きだした。

 数十秒ほど時間をかけて開ききると、そこには黒色が鎮座していた。

 武者鎧の様な格好で黒色のフォルムをしたISを見て一夏が興奮したのか軽く飛び跳ねながら打鉄に近づいていった。

 

「どうやって乗るんだ?」

 

 さっきの悩ましい姿はどこに言ったか、ペタペタと打鉄に触っている一夏がそこにいた。

 

「開いてる所に入ったら身体を楽にしてISに身を預けるだけで十分よ」

 

 一夏が嬉しそうに打鉄に乗り込むと、打鉄はすぐに装甲を閉めてフィッティングを始めた。

 打鉄の駆動音を聞きながら待っていると、フィッテングが終わったのか一夏は打鉄の手に相当する部分を動かしたりしていた。

 

「大丈夫? 頭が痛くなったりしてない?」

「おう! 問題ないぞ」

 

 楽しげにしている一夏を見てトモカはクスクスと笑いながらみていた。

 

 やっぱり男子は機械好きが多いって言うのは確からしい。

 

 トモカも自身のISを展開すると、一夏を引っ張ってピットから出ることにした。

 

「軽く傾ける感じにすれば飛べるはずだけど……動かないでね、一夏ごと運ぶから」

 

 そう言ってトモカは打鉄ごと一夏を抱え込んで、ピットからアリーナ・ステージへと飛び立った。

 

 

 アリーナの中央部まで飛んだトモカは、地面に着地すると一夏を解放した。

 

「じゃあ、歩行訓練からやろうか。 そのまま身体の延長みたいな感じに動かしてみて」

「こうか?」

 

 一夏は筋は良い、でも少し挙動がロボットみたいだった。 

 きっと一夏がISの機動をロボット見たいに動くと勘違いしているから変な動きになっているはず。

 一夏の動作の悪さを感じたトモカは、一夏に向けて指導を開始した。

 

「脳と電気信号で動いてるような感じだからもっと自然に……そう、そんな感じ。 一夏には専用機が来るって話だったけど基本は同じような感じだからね」

「普通に身体を動かすって感じなのか?」

「そうよ、とにかく歩いたり走ったりして感覚を掴むのよ」

 

 トモカのアドバイスを受けながら一夏は走らされた。

 走る作業だけで20分も使ったら一夏のISの使い方も良くなってきたので、トモカはみっちりと浮遊時機動などの基本的な機体制御と教え込んだ。

 

 その訓練は結局、数時間続けて行われたので一夏はぐったりとしてしまった。 一夏が「昼だからもう止めよう」と懇願してきたので、トモカは一夏にピットに戻って着替えておくように言ってから山田先生のところに向かった。

 

 監督室に近いピットに入りISの展開を解除すると、少しだけ小走りしながら監督室の方へ足を向けた……

 

「――失礼します。 山田先生いらっしゃいますか?」

 

 アリーナの監視室のドアをノックしてから中に入ったトモカは、椅子にもたれかかって寝入っている山田先生を見つけた。

 飲みかけのコーヒーが冷めていることから一時間以上寝ていたと予想したトモカは、疲れているのだろうと感じ取って起こさなかった。

 

「一組の副担任だもんね……イギリスの専用機持ちに世界唯一の男性操縦士、篠ノ之束の妹……そして急に決まった決闘の為の資料作りやら、初日に部屋の扉を穴だらけにした生徒の指導とかねぇ……」

 

 考えて見ると山田先生に負担が集中している気がしてならなかった。 織斑先生は問題ごとを増やしておいてそれを山田先生に押し付けそうだし、一組は問題を多発させそうだし……

 せっかくの休日に山田先生を呼び出してアリーナを開放させたことに多少罪悪感を持ちながら、トモカは書置きを残してピットに帰ることにした。

 

「起こさないのも問題な気もするけど……」

 

 備え付けのメモ用紙に先に帰る旨を記入すると、冷めたコーヒーの横にそれを置いてから監督室から立ち去った。




8/24訂正しました、前と同じ主人公の名前と言う大ミス 
対策にIMEの単語をかおると売ったらトモカと出るように指定したのでカイゼンできるようにしました。 本当に申し訳ない。
まだありました・・・・・・セリシア→セシリア
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 ども~tamatyannです!

 いよいよ始まりました、休日の二人っきりのシーン。
 
 今回は午前編と午後編で、一夏の視点を閑話でぶち込みたいと思いますl

 午前編は少し薄い感じもしますが6千字。

 午後編は、周りから見れば一夏とデートみたいな感じです。

 カオルは久々の遊びで楽しみつつ、一夏は謎の行動を取る?

 閑話で色々回収しながら進むので楽しみにしておいてください(笑)

 誤字、脱字、ここおかしい、感想を書きたいとかあれば『お気軽に』←ここ重要! お書きください。
 
 まだまだ未熟でド下手な作者ですが、今後ともどうぞよろしくお願いします。 

 
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