ソードアート・オンライン~紅葉きらめく双刃~   作:セウト

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二話そろそろ投稿します

ソードスキルは正直この時点でどこまで手に入れてるのか分からないので勘で書いてますので悪しからず。

あと、主人公アキの簡単なプロフィール(身長とか見た目)を活動報告あたりに書いておくので良ければ見てください。


一層~距離~

 コボルドから振り下ろされるハンマーを後ろに引いて避ける。が、経験値の効率を図るためにMobを大量に引きつけての戦闘なので囲まれていることを忘れてはいけない。四体ほどに囲まれているが、うまいこと四方に囲まれた。普通の人がこの状況を考えれば絶望的なのだが頭の重要なネジが外れている≪Aki≫に限って言えばその状況は好機であった。一対多数を有利に進めたいのならばまずは敵の機動力を削ぐことは必須、であれば最初に狙うべき場所はMobの足だ。だからアキは身を低く、そして薙ぎ払うように相棒の≪アニールブレード+5≫を振りかざす。怯んだ敵の隙を見逃さず、単発ソードスキル≪ホリゾンタル≫で二体ほど範囲内に収め、消し去る。残った背後二体にスキル硬直による大きな隙を与えてしまうことになるが…俺のもう一人のパーティメンバーが短剣範囲系ソードスキル≪サイド・パイト≫でMobたちを四散させてくれた。

 

つまるところ今、俺は迷宮区にシノンと共に潜り込んでいるわけである。

 

 

 

 

さかのぼること数時間前…俺たちキリト、アスナ、シノン、そして俺で四人パーティを組むことになったわけなのだが、ディアベルに『ボスの取り巻き、コボルドにつぶし残しが出ないようにE隊のサポートをお願いしたいんだけど…いいかな?』と爽やかに雑用を任されて、決戦を明後日に控え会議は終了モードに突入した。

 

俺は別段ボスと直接手合わせしたかったわけではなかったのでノータッチ、空気としてその話題には踏み込まず(はやく、終われ~)と、意識を違うところに飛ばしていた。しかし、アスナは言葉にしなかったが(態度には出てたが)明らかに不服そうで、それを察したキリトはアスナが何か言いだす前に制止した。

 

『ああ、重要な役割だな。任せておいてくれ』という言葉を添えてこの場を切り抜けようと模索した。

 

ディアベルは鈍感なのではないか、天然なのではないかとこの時は本気で疑ったが、ボスを直接叩けないことに不満を抱いているオーラを出しているのはどうも二人いる。アスナと…

 

「雑魚討伐隊のサポートって…もうサブのサブじゃない。何が重要な役割よ」

 

あきれたようにシノンが言う。

 

「いやいやフィールド内で二手に分かれるとして2人組…そこからのスイッチとPOTローテするのにも、二人じゃきついものがあるから」

 

どうどう、シノンさんはお怒りのようだ。ボスなんて言う危険・リスクの塊と手合わせしないで済むかもしれないことに安堵こそあっても、憤りを感じるなんて…。(「スイッチ?POTローテ?」とアスナさんから疑問形のWordがチラホラ聞こえるが)俺は少しだけシノンという人間がどういう人間なのか気になった。

 

「シノンはボスと戦いたかったんだ?」

 

「まあ、そうね…強くなるにはボスと戦った方がいいってガイドブックにも書いてあるし、熟練度?かしら、それも高レベルのモンスター相手の方が上がりやすいって…」

 

「でも、そんなことしなくてもシノンのレベルじゃあまり…この層のモンスター程度じゃあまり成長は見込めないよ?」

 

そうなのだ、しっかりレベルを上げているシノンのレベルはこの層では安全マージンもいいところ。やはり一か月ちょっとという長い時間この層にプレイヤーたちが留まり続けたことで比較的β時代とは、フロアを攻略する慎重さ(+レベルも)が違う。

 

「ええ、そうね…たしかに数字を見れば、そんなことは初心者の私にも分かるわ…。でも、私は目に見える強さじゃなくてもっと…いえ、今喋るようなことではなかったわ」

 

(なーんか一枚岩では収まらないような物言いだな…)

 

シノンの言葉の真意とは何なのか追求したい気持ちはあったが、話の途中で引き上げるような言い方をしたという事はこれ以上喋るつもりはないという意思表示だろう。俺もボス戦前にパーティメンバーと険悪になるのだけは勘弁なのでこの話は終わらせる。

 

「とにかく私はボスと戦わずに勝利するなんて考えてないから。ちょっとディアベルに抗議してくる」

 

 

 

「まだどんな敵かもわからないのに、勝利することを前提にしたかのような言い方…こりゃ確かにアルゴの言ったような性格に間違いないね」

 

シノンがディアベルのもと歩き出して、彼女の耳に聞こえないような音量で独り言をする。ボス戦大変そうだなと溜め息が同時に出るが、彼女の戦いに挑む姿勢は俺がβ時代初めてこの世界に来た時の情熱を少し呼び覚ましたかのような感覚がして不思議と嫌な気持ちではなかった。ほんの数か月しかたっていないが、あの時この世界に潜っていられた間だけはこのSAOの世界こそが俺の“居場所”だったのだ。

 

そのような感傷に浸っていると我がパーティメンバーであるキリトとアスナが、何やら明日の予定やらスイッチはどうのこうのとしゃべっている。仲のいいことだ。

 

「おい、アキ!(仲のいいことだ)みたいに思っているような顔でこっちみている暇があったら、この細剣使いさんを説得するの手伝ってくれよ!」

 

「おわっ、なんで俺の考えてること分かったの?もしかして、システム外スキルか?お前チーターかよ~」

 

「いや、そんな顔してたから!ってかそれは今、マジでいいから!この細剣使いさん“スイッチ”も“POTローテ”も知らないのに明後日のボス戦に挑もうとしてんだって!」

 

「マジでか。君パーティ組んだことないの?」

 

「ないわ」

 

それが?みたいに、冷や水を与えるかのような目線でこちらをジト目で睨み利かせてきた細剣使い(フェンサー)さんことアスナ。ちなみにこの時初めて彼女としゃべったのだが会話時間わずか0.5秒、会話のキャッチボールは剛速球で終わった。

 

「それで教えてあげようとしてんだけど、全然聞く気がないんだよ」

 

「聞く気がないんじゃないわ!説明するのになんで酒場に一緒にいるところを晒したり、一緒の宿に行かないといけないのよ!」

 

「ちがうって!練習用の簡単な朝限定のクエストがあるから、今日のうちに一通りレクチャーしたいだけなんだって!」

 

「だいたい、人目につかないところならフィールドにたっくさんあるでしょう!」

 

「君が初心者じゃなかったらMob倒しながらでも片手間に教えられるけど、わんさかMobが出てくるフィールド内でちゃんとした説明ができるか!」

 

「だからって鍵付きの宿に連れ込んで何するつもりよ!」

 

「何もしないよ!!」

 

「君たち仲よいね」

 

「「よくない!!」」

 

何だか空気になりかけていたよ。いやなっていたネ。まあ、正直そこまで初心者であるならばキリトの言う通りレクチャーを受けるべきなんだが…まだ一層の時点でフィールド内で気を散らしながらの戦闘は危険だし…かといってアスナの気持ちをないがしろにするのも…ここは…仕方がないなぁ…

 

「かくやす、フロ付き宿屋ぁ~~(ダミ声)」タラリタッタッタラ~

 

「格安、風呂付き宿屋?」アスナ首カシゲ

 

「…ああ!あそこかミルク飲み放題の。でもあそこだってフツーの宿屋じゃないk…」がしっ

 

「そこに、しましょう!」

 

「い、いぇすあいどぅー……お、おいアキえもん、これはどういう状況なんだ?」

 

「いや~こんなに簡単にうまくいくとは…ま、説明を受けると言うついでなら、その宿に泊まるということに大義名分もどうにか立つんじゃないかと思ってね」

 

「そうか、女の子だもんな…ミルクたくさん飲みたいんだろうな…」キリッ

 

「ちげぇーよ!」という言葉は面白いので言わないことにした。まあ、女の子だし風呂とか入りたんじゃないかなと、思ったので密かに目を付けていた宿屋を紹介したにすぎない。

 

「じゃあ俺は今からあの細剣使いさんをその宿屋に送りがてら明後日のボス戦の準備に取り掛かるけどアキはどうするんだ?」

 

「俺は…まだシノンが帰ってこないからここで待ってるよ」

 

「そうか、じゃひとまず解散という事で。また明日な」

 

「う~す」

 

互いに右手を挙げて別れのあいさつをする。なんだか、久しぶりにこんなに喋ったが案外疲れなかったように感じる。まあ、SNS上でリアルとは性格が変わる人がいるように、ここもある意味でリアルではないのだからちょっと性格に変化が起きているのかもと考察してみる。キリトたちの背中が見えなくなったぐらいで、シノンがやっとディアベルのもとから帰ってきた。

 

「何よあいつ!こっちが女だからって話半分に受け流してッ」

 

「戦果はどうだった?」

 

「別に特に何も?フルでボスを叩きたいなら、今回のボス戦で取り巻き相手の立ち回りを見て判断させてほしいって、遠回しに拒否られたわ」

 

足を組んで段差に腰を置くシノン。この世界で生きるには自分のパラメーター、数値がすべてであるとみんな知っているはずなのだが、やはりというか…みんなの共通意識の奥深く、自分でも認知できないようなところで「シノンのような可憐な女の子に過酷な戦いはさせられない」という見栄のようなプライドがあるのだろう。そういう意味ではディアベルの言う「今回は我慢」というのも仕方ないかもしれないのだが…。

 

「最後には『お姫様には騎士の護衛が必要だ。彼にちゃんと守ってもらわないとね』とか!うすら寒いにもほどがあるわよ!」

 

「ははは(ディアベル絶許)」

 

「アキが嫌なわけじゃ全然ないんだけど…こうも明らかな門前払いを受けたとなると愚痴の一つや二つ…」

 

「まあまあ、ボス戦はこの一層だけじゃないんだし、シノンが本当に攻略に不可欠な存在だと認識されれば向こうからお願いしに来るさ。今はとにかく技を磨こう」

 

「…そうね、それもそうだわ。……あんた、なだめるの上手ね」

 

ふふっと笑いかけてくれたシノンの顔はエンカウント数時間に及んで初めて見せてくれた顔だった。正直ドキッとしたのは秘密だ。

 

「そういえば、キリトたちは?」

 

「今、アスナにパーティでの戦い方をレクチャーしてるとこ。あいつらのところに行く?一応、ボス戦までとはいえ協力するわけだし」

 

「いいわ、私これから迷宮区に潜るつもりだし」

 

「まじで?今から?」

 

「そうよ。短剣の熟練度をもう少し上げておきたいの。それに技も磨かないといけないしね」

 

「くうっ」

 

先ほど俺の言った言葉を反芻(はんすう)されてしまった。俺の方が確かにこの世界では先輩かもしれないが、先ほどのセリフはちょっと気取ってしまった感が否めない。当のシノンはクスクス笑っているがめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。

 

「ふふっ、いいのよ多分アキはいろんなVRゲームを体験してきたんでしょう?あなたは間違いなく私の先輩なんだから恥じることはないわ……そうだ、アキも一緒に行かない?連携の確認をすることも含めて、ね?」

 

「へ?」

 

 

 

 

そうして、今≪トールバーナ≫から迷宮区へ場所を移して連携の確認、ひいてはシノンの熟練度上げを手伝っているのだった。

 

「ふう…短剣はほんとダメージ量が少ないわね。コボルド相手でもソードスキルなしじゃ、倒すのにも一苦労って感じ」

 

「まあ短剣は手数が多いこと、素早さ、あと回避。それが長所だし、正直ダメージ量はこの先武器のレアリティで補うことができる…はず」

 

危ない、あまり断言したことを言ってしまうとβ出身だとバレてしまう。

 

「短剣は身軽さ命の、ガリガリ敵HPを削っていくっていう考えをした方が気が楽かもね」

 

「はあ、やっぱりそこらへんの知識はちゃんとした人に聞いておくんだったわ」

 

こんな感じの会話をちょくちょく挟みながら迷宮区タワー下層をうろつく。彼女とコンビを組んで行う戦闘は、まさにβの時組んだ廃人ゲーマーと遜色ない。なんだかイメージしにくい言い方だがとにかくほしい時に彼女の攻撃が来るので、俺がメインのサブダメージに彼女を置くことで戦闘の効率が上がりまくりだ。

 

「シノンはどうして短剣にしたの?なんだかこう、大ダメージとか与えてた方が性に合ってる気がするけど」

 

「その考えは間違いじゃないわ、私も大ダメージ狙いに大剣を手にしたこととかもあったけど…ま、優先順位ってやつね。私、狙った所に攻撃が通らないことが大ダメージを与えられないことよりも耐えられないみたいなの。短剣だと狙いが定まりやすいじゃない?そういう単純な理由」

 

「なるほどね、つまりは接近戦はCQCってやつだね!」

 

「しーきゅーしー?…って何かしら、それ?」

 

「…なんでもないです」

 

「そう」といって俺の渾身のギャグ?をスルーしていくスタイルのシノンさん。俺は先ほどから機会をうかがってはユーモアかつバラエティーに富んだギャグを挟むが、ことごとく撃沈、俺のメンタルポイントは0に近い。それにしても「狙いを定める」か…何だか言いえて妙だがシノンが言うと何だかしっくりくる。

 

「じゃあ、シノンはクリティカルボーナスを狙いに行くのがこれからの戦闘スタイルになるかもな~」

 

「クリティカルボーナス?つまり相手の急所を狙い撃ちするってところかしら?」

 

「そう、まさにそれだ!器用さを上げていくことで狙いが定まる、あとそれにスキル硬直時間の短縮にもなるしまさに一石二鳥↑」

 

「ふふっ、なに?どっかのテレビショッピングみたいよ、アキ」

 

「実のところ、俺は片手剣なんだけど器用さ中心に組み立ててるんだ。よく強さと耐久値に目が行きがちなんだけど…確かにそれはシステムでしか上げられないし、器用さは生来生まれ持った感覚次第である程度のアシストが出来るものでもある。それでも、俺が持つ感覚とシステムによる向上された器用さが相乗効果的に敵のダメージとして出る確率は、最早レイピアとの違いはないんじゃないかって思ってるんだ」

 

「なるほどね~、正直武器の強化で何に振ろうか迷ってたんだけどその話聞いたら吹っ切れたわ」

 

「そいつは良かった。それにしてもシノンがいきなり狙い定めるだとか狙い撃つとか言うから一瞬ここが違うゲームなんじゃないかって勘違いしちゃったよ〜」

 

この時、俺は何でもないこの会話をとてつもなく後悔した。

 

「たとえばFPS系の洋ゲーとか」

 

会話にあわせるように手で銃の形を作ってシノンに向けようと…したところで彼女の異変に気が付く。

 

「…っあ……ぅあ」

 

そこには血相を変え、急に頭を抱えてうずくまったシノンが

 

「シノン!?おいっ、大丈夫か!頭が痛いのか!?」

 

「い…やぁ、ごめんなさいごめんなさいごめん…」

 

急に謝りだしたかと思ったらこと切れたように眠りについた、いや気絶した。ここはまだ迷宮区で人を運ぶにはまだSTR値が足りない。こんな時に不幸は重なるもので周りにはコボルドたちがリポップするのであった。

 

 

 

 

ああ、またこの夢だ。辺りを見渡すとそこはこじんまりとした地方の郵便局。私が人を―――した日。私の運命が変わった日。私の地獄が始まった日。

 

どうやら局員のヒトが私のお母さんを読んでいる。

 

「そんなことどうでもいいから!ここから離れようよ!お母さん!」

 

そんな簡単な言葉ですら口から出ていかない。体が動かない。よく見たら体中に血で染まった無数の腕が絡まりついている。私のお母さんのすぐそばまで死神が近づいていく…。ああ、今回も夢の中ですら運命を変えることはできなかったみたい。私はこのまま変われないまま……。

 

 

 

 

「おかっ……!」

 

「っ!…おはようございます…」

 

「?なんて格好で椅子に座っているのよ」

 

「シノンがいきなり起き上がってくるからでしょっ!もう…」

 

シノンがいきなり飛び起きたことによって、びっくりした俺はロッキングチェアに体育座りという少々みっともない格好になってしまっていた。手にしていた本も勢いで投げてしまったし、ホント無様である。ちなみにここはトールバーナの宿屋、風呂付きだ。コボルドの群れはなんとか殲滅し、少々手荒な方法ではあったがシノンの移動も支障なくことが進んだ。

 

「それよりもシノン大丈夫?いきなり倒れちゃったりしたけど、頭まだ痛かったりしないか?」

 

「ええ、苦労かけたわ。もう…大丈夫」

 

「まだ大丈夫そうじゃないね…今日はもう12時近いし寝ちゃおう。明後日にはフロアボス戦が待っているんだし…今は休息をとって回復を待とう?」

 

「…そうね、じゃあお言葉に甘えさせてもらうわ、少し横になってる…。眠りにつくまでお喋りに付き合ってちょうだい…」

 

「うん、いいよ…。と、その前にごめんなシノン。まだよく分かってないんだが、おそらく会話の中で俺が間違いなく君を傷つけてしまったんじゃないかと思ってる…。本当にごめんなさい」

 

「なに?別にそんなことで怒ってなんかないわ。これは自分の弱さが招いたことなんだから、アキが謝る必要性なんてどこにもないわよ」

 

力のない笑みで笑いかけてくれたが、俺としてはそうはいかない。原因は何だったのか、なにがシノンの身に起きたのか、それが分からないと俺はまた過ちを犯してしまうのではないかと不安になる。と、そんなことを考えていると顔に出ていたのか

 

「ほんとに大丈夫だからそんなに気にしないで」

 

「でも、また不用心に傷つけちゃうかもしれないし…せめて何か…」

 

「そうね……深く追求しないでくれるなら、ちょっとだけ教えてもいいけど…」

 

「うん…約束する。だから、教えて欲しい」

 

「ふぅ、まったく…さっき出会ったばかりのヒトに喋るようなことじゃないんだけど……」

 

そこで1,2分ほどの間をおいてシノンが口を開く。

 

「銃よ……私の前では銃の話を一切しないでほしいの…あと手も…あまり…その」

 

「OK分かった。絶対にしない。神に誓って、シノンにそういう話題を振ることをしないことをここに誓います」

 

「別に神様に誓い建てするようなことでもない気が…うん。でも、理由は聞かないでくれるのね…ありがとう」

 

「いや、こちらこそ。そんな大事なことを俺なんかに……今度なんでもお礼でもお詫びでもするから!聞きたいこともあったら、何でも聞いてくれ!」

 

「ふふっ、ありがとう。期待して待っとくわ」

 

その時ベッドから顔をのぞかせ、見せた笑顔はとても暖かくておそらくSAO全プレイヤーが見惚れるような輝きで…あのようなミスを犯してしまったのは、若さゆえだろう。

 

「あ、あ~そうだ!第二層のウルバスっていう主街区に≪トレンブル・ショートケーキ≫っていう超絶品のケーキがあって、第一層が攻略出来たらそれをシノンにおご…あっ」

 

「…ん?」

 

…やっべぇええええええ!!俺は今までβ出身だという事を隠し通してきたのにこんな青臭い(実際ガキ)ことでバレてしまうなんて!…いや?まだ行けんじゃね?シノンが気づいてないってワンチャンあんじゃね?

 

ちらりとシノンの方を見やる。そこには

 

「ふふふっ、ふふっ、あははは!」

 

気づかないわけないデスヨネ~。ああ、これからみんなの前でつるし上げられて、身ぐるみはがされ、路頭に迷う未来が見える…。

 

「あはははっ!はあ~あんた本当にあり得ないわ!ただでさえ初心者とβテスターの間には溝があるのにこんな簡単にばらしちゃうなんて!命が何個あっても足りないわよ」

 

仰る通りです。はやく…わたしを裁いて、ほしいッ(ここ伝わる人いるかな?)

 

「まあまあそんな悲しそうな顔しないで私はキバオウみたいに敵対したいわけじゃないし、むしろ感謝してる。だからあんたをあいつの前に差し出すことなんて永久にないから安心なさい」

 

「ほんとですか!シノン様!」

 

「様とかいらないから!やめてよね?」

 

シノン神っ!とか言うと気が変わって血祭りにあげられるかもしれないので言わないが、ここは本当に彼女に感謝すべきところだと思う。本当にお騒がせボーイな俺だがリアルなラックが作用したのかお咎めなしと下されたので改めてシノンに宣言しておく。

 

「シノン、改めて言うのも躊躇(ためら)われるけど俺はβ出身だ。威張って言う事ではないけれどこの世界に関する知識ならそれなりのことは言えると思っている。そんな俺を君は匿ってくれると言ってくれたことは本当に感謝の言葉しか出ない。だからここに誓う。今日はシノンに借りを作ってばっかだけど本当に困ったときは俺を呼んでくれ君のために出来得ることならなんでも手伝うし、なんでも教えてあげる。だから……だから、これからもよろしくシノン!」

 

「ほんとに改まって言う事ではないわね。ふふ、でもありがとアキ。これからもよろしくね」

 

知り合ったのは今日の夕方だったがとても濃い一日だった。俺に秘密の一部を預けてくれたこと、俺の秘密を預けたこと。起きたことが目まぐるしく記憶の中をたゆたう。本当に大切な時間だった。俺はこの心に生まれた感覚を覚えている。暫く居場所をなくしていた俺の現実では大分昔に失くしたもので、失くした時間が長すぎて麻痺しかけていた心が再び動き出した感覚。

 

「もうそろ12時回るな。俺隣の部屋で寝てるから何か用があったら…」

 

「ええ、そうね。おやすみアキ」

 

「おやすみ、シノン」

 

この言葉を発したのはいつぶりだろうか、たいした事でも、何でもないような事だったが、俺にはなんだかとても大切なもののように感じられた。願わくばこの時間が続きますように…。

 




8000文字達成です。
まだ考えていることがあるのでこれからも暇があったら書いていきます。

もし何か気づいたことがあれば感想お願いします。


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