ラブライブ!~10年後の奇跡~   作:シャニ

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16.南青山、女三人

昨日と同じく、今日も通常業務を効率よく片付けた真姫は、職場を後にして自宅の部屋で洋服を選んでいる。南ことりが招待してくれたセレモニーに参加するため、自室のクローゼットから洋服を引っ張り出し、身体に合わせては戻すという作業を繰り返す。

 

病院では清潔感のある身だしなみ以外には必要ではない上に、研修医として日々多忙である真姫は、休みの日も買い物に行くことが億劫になっており、学生の頃に比べてファッションに興味が持てなくなっているのだが、それでも手持ちの洋服をクローゼットから引っ張り出して、何とかさまになる格好を仕上げることにした。

 

30分ほど迷った結果、真姫は、赤いボウタイをあしらったシルク素材の白シャツに黒いレザーのスカートを合わせ、黒いタイトなジャケットを羽織り、足元は網タイツに赤のピンヒールという服装を作り上げた。

 

「地味にならないようにしたつもりだけど・・・大丈夫かしら」

 

ピアスやリングもルビーをあしらったものを使って、黒の中に赤をアクセントとして利かせたつもりだが、おしゃれな人間が集まるセレモニーの中で、悪い意味で浮いてしまわないか、真姫の負けん気がつい出てしまう。

 

(まあ、いいわ。私は私。それに、花陽や海未もいるし)

 

音ノ木坂学院を訪れた際に、真姫はことりに会ったことを海未に告げ、セレモニーのことも伝えたのだが、海未は既にことりから連絡をもらっており、気恥ずかしいが参加すると言っていた。

花陽はやはり服装に自信がないらしく、ことりの店の洋服を借りると連絡があった。セレモニーが始まるよりも前に会場に向かうとのことで、今頃は会場で洋服を選んでいる頃だろう。

ことりを驚かせようと、真姫はにこと凜も誘ってみたが、にこはμ‘s復活に向けて準備に忙しく、凜は公演に向けた稽古で忙しいため、参加はできないとの返事をもらっている。

 

洋服を選ぶのに疲れた真姫は、着替えたばかりの服装で自室のベッドに腰かけ、彼女にとって最大の懸案である、まだ再会できていないメンバーたちのことを考える。メンバー全員が揃ってこそのμ’sであるという思いが真姫にはあるため、復活させるのであれば全員揃っての復活が望ましい。しかし、高坂穂乃果、絢瀬絵里、東條希には未だに会えていない。絢瀬絵里はロシアにいるため、連絡を取ることは難しい感があるし、高坂穂乃果と東條希については所在すら分からない。海未も穂乃果が何処にいるかは分からず、一年前にカナダから絵ハガキが届いただけだと言っていた。海未によると、穂乃果の両親や妹の雪穂も、彼女がどこにいるかは把握していないそうだ。

 

(うーん・・・いまは考えても仕方ない。それよりも今いるメンバーをその気にさせられるか。それが大事よね)

 

心の中でそうつぶやくと、真姫はクローゼットから黒のショールカラーコートを取り出し、セレモニーに向かうため自室を出た。

 

セレモニー会場である南ことりのブティックは南青山にある。大通りから路地を進み、奥まったところにある洋館を改装した建物がそれである。大通りでタクシーを降りて、会場まで徒歩でやってきた真姫は、洋館を一目見て、アンティークを好む彼女らしいセンスだと思った。店の入り口には受付の店員が立っており、真姫はことりの名刺を示して自分の名前を伝え、店内に入る。店の壁側にはアンティークな洋館に相応しい什器が並べられており、それぞれの什器には奇抜なデザインの洋服、つまりはことりの作品が配されていて、素人でもわかるコントラストを醸し出している。

 

真姫は、ことりのデザイナーとしてのセンスに驚嘆しつつも、ことり、海未、花陽の三人を探すべく、店の中を見渡す。テレビで顔を見たことがある若手女優、モデルと思しきスタイルの良い女性たちに、ファッション業界の人間らしき人々が、いずれも街では見かけることの少ないモード系のファッションに身を包んで、ドリンクを片手に談笑している。

 

(こんなところに来て、海未も花陽も大丈夫かしら・・・)

 

真姫の心配は的中した。海未も花陽も、ことりの作品らしき奇抜な洋服に身を包んではいるが、店の隅で怯えがちに立っている。奇抜な洋服を着なれないということと、スクールアイドルを引退してからはこういう華やかな場所に来ることがないのだろうと真姫は思った。

 

「こんばんは。似合ってるわよ、その衣装」

 

真姫は二人に近づいて、声をかける。すると、海未と花陽は安心した表情を浮かべた。

 

「真姫ちゃん!待ってたよう・・・こういう場所、初めてだから、どうしていいのか分からなくて・・・」

 

心細い声で花陽が言うと、海未も口を開く。

 

「私も・・・こういう洋服も場所も・・・まったく馴染みがなくて・・・待っていました、真姫」

 

「別に何かされるわけじゃないんだから、普通にしていればいいのよ。気後れすることなんかないんだから。ところで、ことりはどこにいるの?」

「さっきまで他の方と話していたんですけど・・・見当たりませんね。どうしたんでしょう」

 

店を見渡しながら、海未が応える。すると、店の入り口から一人の女性が入ってきた。

 

濃い青のロングコートを羽織った、スタイルの良い金髪の女性。

 

「あれは・・・」

 

驚きを混ぜた海未の口調。真姫も花陽も、入り口のほうを見る。

 

「絵里・・・」

 

真姫も驚きの声を上げた。女性は、ロシアにいるはずの絢瀬絵里だった。




えりちーーーー!!俺のえりちーーーー!!
私、実はえりち推しなのですが、ようやく登場させることができました笑。残りは穂乃花と希ですねえ。アイデアはあります。読んでくださる皆様が納得できるような、もしくは面白いと思って頂けるような形にしたいと思います。
読んで頂き、ありがとうございました。ご意見ご感想、お待ちしております。

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