羽田空港のロビーで、いきなり真姫を抱きしめてきた女性、星空凛。μ’sにいたころから顔も声も雰囲気もまるで変っていない。
「真姫ちゃん、本当に久しぶりだにゃー!こんなところで会えるなんて思ってなかったにゃー!嬉しいにゃー!」
「ちょっと、凛、なんなのよ、こんなところで止めなさいよ!」
真姫は強引に凛の腕をほどく。これまで、大人として太田に接していた真姫の調子が、一気に高校時代に引き戻された。真姫は凛に向き直る。
「んー、真姫ちゃん、久しぶりなのに、つれないにゃー」
「そうじゃないわよ!こんなところで恥ずかしいのよ!それにいきなりなんなのよ!」
「さっき、日本についたにゃ。そしたら真姫ちゃんがいたにゃ。もしかして凛のお出迎えかにゃ?」
凛はわざと照れたような素振りで言う。真姫は茶化されたことに少しだけいらついた。
「そんなわけないでしょ。ただの偶然よ。それより、なんであなたが日本にいるの?アメリカにいるんじゃなかったの?」
「んー、アメリカには住んでるんだけど、あれでしばらく日本に滞在することになったにゃー」
そう言うと、凛はロビーの天井からつるされている超大型の広告を指さした。広告には、真姫も名前を聞いたことがある、アメリカの有名なミュージカルが日本で公演を行うことが記されていた。
「凛、あなた、ダンスの勉強しに行ってたわよね?もしかして・・・」
「そう!そのもしかしてだにゃーー!」
そう言いながら、凛は誇らしげな顔をした。
凛は高校卒業後、ニューヨークに渡り、語学学校に通いながらダンスの学校にも通った。在学中から様々なミュージカルのオーディションを受け続け、アメリカ国内の大小様々なステージに立ち、今ではミュージカルの本場であるブロードウェイにおいて、新進のミュージカル女優へと成長していたのだ。
アメリカでの凛の事情など全く知らない真姫は、ちょっと意地悪をしてみたくなり、次の言葉を投げかけた。
「大道具さんか何か?」
「ちがうにゃー!!ちゃんとセリフのある役で出演するにゃー!ダンスも踊るにゃー!」
凛はムキになって応えた。その様子が面白かったので、真姫はもう少しからかいたいと思ったが、凛が本気で怒り出すと面倒なので止めた。
「ごめんごめん・・・おめでとう、凛。でも、今日はあなたを迎えにきたんじゃないのよ。別の人のお出迎えで来たの」
「へ?別の人?それはどこにいるのかにゃ?」
凛にそう言われて、真姫は太田のことを思い出した。辺りを見回すと、太田は数メートル先に腕組みをしながら立っていて、真姫と凛のじゃれ合いを苦笑いしながら見ていた。真姫は気が動転した。
「お、太田先生、お待たせしてすみません、彼女、私の高校時代の同級生で・・・」
「知っています。星空凛さん、でしょ?」
「なんで凛のこと知ってるにゃ!?あー、この人、μ’sのTシャツ着てる!もしかしてμ’sのファンの人かにゃー!?」
そう言うと、凛は太田のほうに走り出そうとした。真姫は凛のコートの襟首をぐいっと捕まえ、彼女を止めた。