Metal Gear Fate/ Grand Order 作:daaaper
「……っぁあ、…………フランス……なのかな?」
「大丈夫ですかマスター?」
「ああうん、………すごい目眩がするけど………」
「おいおい、そんなんで大丈夫かよホントによ」
七つの特異点のうち最初の特異点、フランス。
人理修復のための第一歩として2人の少年少女は歩み始める………まぁそのうち片方はレイシフトによる急激な浮遊感と加速感覚によって酔った為に足取りはあまりよろしくなかったりするが、酒による酔いでは無いためすぐに治ると思われる。
「それにしても随分と広い場所に出たな」
「確かにな、こっちは見えんがお前の弓兵の目からしてそっちに敵はいるのか?」
「・・・少し先に砦らしきものがある、そこから数人の兵士がこちらに向かってきてるな」
「斥候か、距離は」
「行軍速度からして十分ほどだが?」
「おい坊主……は今は無理か、だが今はとにかく情報だ。
俺の独断ですまんがエミヤ、周辺偵察を兼ねて先行してくれ、あいつのの守りはマシュにランサーのクー・フーリンもいる、斥候からは俺が情報を引き出すから手は出さんでくれ」
「……私が言うのもなんだが、相手は人間とはいえ武装した兵士だ、まともに取り合ってくれるとは思えないのだが?」
「心配するな、お前が知らないだけで敵と語り合うのは慣れている、俺の組織のほとんどが敵地にいた連中だ、ナイフを向けられようが話は出来る」
彼が組織していた軍事組織は極めて異様だった。
カリブ海の海上プラントを拠点としたソレは、コスタリカに居座っているアメリカ人を追い出して欲しいと言う依頼から始まり、囚われた現地人はもちろん敵であるアメリカ人を中心とした組織だった。
当然隊員たちは元敵同士、中には実際に敵対した同士がいるのもざらだった……が内乱は一切起こらず、むしろ結束していた。
なぜなら彼ら全員にとってスネークの組織に、仲間に、家族に成れたことが誇りでありその誇りを汚す行為を誰もがお互いに許さなかったのだ。
……まぁ、実際には他にも隊員たちが作り始めた憲兵隊が強すぎたり、戦闘担当の隊員たちより研究畑の連中の方がむしろクレイジーで副司令を色々と苦しめていたり、それ以上に総司令官が無茶ばかりでそれを全員でバックアップしていたから等々、理由はあったりする。
「そうか、まぁあんたがそう言うなら私も異論は無いがね、ならとりあえず周辺の偵察は任せてくれ」
「ああ頼む、何かあったら……そう言えば無線が無いが、坊主とはパスが繋がってるんだったか?」
「もっとも今のマスターは魔術師としては毛も生えて無い、彼と直接のやり取りのしようが今の所無い」
「そうか……まあ何かあれば矢文でも飛ばしてくれ」
「ふっ了解した、なんなら風車もつけておこう」
「お前はいつから黄門様の忍びになったんだ?」
「…………何であんたがそのネタを知ってるんだ」
「人生楽ありゃ何でもあるだろ」
「……行ってくる」
「ああ頼んだ」
この弓兵の涙の後に虹が出るのかはさておき、スネークはだいぶマシになって来たマスターの世話をしているマシュとその周りにいる他のサーヴァントに声をかける。
「とりあえず……五体満足でフランスに来れた訳だが坊主、カルデアと通信を取らないか」
「そうですね、では私がマスターの代わりに連絡します、それまで寝てて下さい」
「ごめんねマシュ、もう少しで多分まともになれるから」
「フン、情けないぞマスター、アレくらい耐えられない様ではこれからの旅はやっていけないぞ」
「まあ見た感じ、俺らのマスターは本当に素人みたいだからなぁ。
魔術に関してもそうだが、体つきも体さばきも素人だ、全くもって戦いには向いてねえな」
「ハハハ、これでも毎日鍛え始めたんだけどね……」
「まっ、そう一朝一夕に強くなられちゃ俺らの立つ瀬が無えしな、そう焦んな」
「フォウ!」
「フォウも来てたの!?」
何だかんだで調子が戻って来た藤丸。
ちゃっかり来ていたフォウに驚きつつもカルデアに連絡を取っていたマシュが連絡が取れたらしいのでそちらを対応する事にした。
「先輩、ドクターと連絡が取れました」
「うんありがとう……ところでみんなさ、アレって何だろ?」
「アレって…………!?」
突飛押しもなく空を指差した自分たちのマスターに可笑しさを感じつつも空を見ると
そこには極大な光輪があった
《やぁ藤丸君、どうやら無事フランスに………ってみんなしてどうして空を見上げてるんだい?》
「ドクター、映像を送ります、あれは何ですか?」
「ん?・・・アレは——何らかの魔術式か?しかも衛星軌道上に・・・」
「おいおい、あんなの俺の師匠でも無理だぜ……」
「そもそも、宇宙に魔術式が書けるのか?」
「それは……問題無えな、さすがに本職ほどの力は無えけど今の俺も空中にルーンを固定することは出来る。
別段空に術式を組み込むこと自体は出来るぜ」
「だが上空10,000メートル以上の高高度にどうすれば描けると言うんだ?」
「……そこなんだよなぁ」
「マーリンなら……大方女だけを盗撮する様なロクでも無いものに違い無いだろう」
「よりにもよって盗撮ですか!?」
《さすが宮廷魔術師だ、趣味が悪い。
もっともあれが盗撮目的だとは思えないけど……詳しくはこちらで調べる、間違いなく未来消失の一端だろうけど幸い君達に害がある訳では無さそうだ、君たちはまずは霊脈を探してくれ》
「……かの花の魔術師が盗撮魔だとは信じたくありませんが——」
「マーリンはイタズラ好きで女好きのクズだ、はっきり言って英霊となったこの身でも関わりたく無い」
「・・・とにかく、ドクターの言う通り私たちがすべき事は多いです。
周辺の探索、この時代の人間との接触、召喚サークルの設置、……何よりこの時代が特異点となった原因の調査と解決です」
「改めて言われると……結構やることが多いんだね」
「はい、それでも出来ることから一つずつ片付けていくしかありません」
「まぁ千里の道も一歩からだからね、着実にやっていこうか。
………クー・フーリンさんやオルタさんにスネークさん、それにマシュも。
俺に出来る事は少ないけど、人類のために……って言うと壮大だから、俺たちのために力を貸して欲しい」
「…………先輩」
未来消失、人理焼却、
普通そんなことが起きれば、そもそんな事態に巻き込まれれば何も認識することも無く実質的に死ぬだろう。
だがここにいる少年は運良く生き残り、そして世界と歴史を相手に戦うことになった。
仮にこの戦いに優秀な魔術師や守りの要が加わったとしても、たかが1人や2人では決して戦えない。
「任せろっ!それが本来俺らサーヴァントと役回りだっつーの!
むしろ前線に進んで出て行って俺らと渡り合えるマスターって方が可笑しいんだ。
……それでもお前は俺らのマスターだ、んなら俺らが手を貸すのもお前がやれる事をやるのも当然だろ?」
「そこの犬に同じだ、召喚された時から私はお前のサーヴァント、なら私が剣を取るのは当然だ。
マスターはマスターらしく後ろでそこのマシュマロの後ろに隠れて居ればいい」
「今更何を言う、もっとも俺はせいぜい奇襲をかけるか逃げるかの二択くらいしか選択肢は無いがな。
……それでもここに呼ばれたならやれる事をするしか無い、なら今から始めるしか無い、何ならお前の稽古も付けてやろうか“マスター”?」
「・・・みんな」
若干過去の愚痴を混ぜ、皮肉を交え、当然のことの様に、3騎のサーヴァントは答えた。
まずマスターとしてこの少年に呼ばれ、応じた時からとっくに決まっていた。
そんなある意味感動的だったりする訳だが。
黒い騎士王は何か思いついたらしく、いつもより幾らか可笑しそうに笑いながらマスターに言ってやった。
「ふっ悪いがマスター、最終回を飾るにはまだ早いぞ?それにアーチャーの事を忘れてはいないか?」
「・・・・・・あ」
「ハッ!あいつにはお似合いだ!!」
「……すっかり私も忘れてました……」
「……すまんエミヤ、俺が独断専行で偵察に行かせた所為だ……」
「だ、大丈夫だよ!エミヤさんも力貸してくれるし!むしろ今も力を貸してくれてるってことでしょっ!」
《藤丸君……それはいくら何でも見苦しい言い訳じゃ無いかなぁ……》
「フォー………」
「フォウさんも、“何をやってるんだ”っておっしゃってます」
「アハハハ……」
アーチャーエミヤ
思ったよりあっさり自分のマスターに存在を忘れられる、南無。
「ついでにマスター、早速私たちの仕事の様だが切っても良いか」
「・・・えっ?」
「っ周りを囲まれています!数10!!」
《いつの間にッ!?ってか喋りすぎててこっちも周辺を見てなかった!!》
「とりあえずドクター、これって倒しちゃっても大丈夫なの?」
《まっまぁそこは隔離された世界だから倒しちゃってもまずタイムパラドックスは起きないから戦っても問題はないと思うけど……って流血沙汰はマズイと思うなぁ〜!?》
「ですよね……オルタさん、それとクー・フーリンさん、峰打ちで仕留められる?」
「造作もない、ただ少々手間だ」
「まぁ心臓貫かなきゃ良いだけだろ?」
《発想が物騒な2人だ!?》
「ま、待ってください!相手は人間、ヒューマンです!まだ話し合いで解決出来るかと——」
「Ennemi attaque!!!」
「……話し合いが何かと言ったか?」
「・・・何でもありませんアルトリアさん。
そうでした、1431年のフランスの地で英語が通じる訳がありませんでした」
「そういう問題じゃないと思うけど……」
《こ、こうなったら僕の小粋なジョークで………が、凱旋門で自害せんもーん!》
「……………………………………………………………………………………………………」
「「「「…………………………………………………………………………………」」」」
『……………………………………………………………………………………………………』
《……あっアレ?》
「Tout manquer l'épée!Je pense que ma mère-pays a été insultée‼︎Veuillez joindre!」
(総員抜剣!何か我が祖国をバカにした声が聞こえた気がするぞ!!)
ドクターは普通にフランス語なんて喋れない。
当然フランス兵にもロマンが言った言葉を一言一句理解できた者はいない……が、馬鹿にされた気がした。
突然現れたこの集団に対する警戒度はマックスとなり、当然剣を抜いた。
「……ドクター、後で話があります」
《アッハイ》
「……それよりどうすんだマスター、あの軟弱男のせいでこうなっちまったわけだが」
「流石に現地人を傷つけるのはマズイけど……抑えるためにも一旦戦うしかないかな」
「それが一番早いだろう、もっとも私たちにしてみればいささか手間だが」
「っ来ます、マスター!」
そう言いつつも、黒い聖剣を構え相手にする気の黒い騎士王。
その横に同じく、得物である紅い槍を構え集団を相手取ろうとする青い槍兵。
どちらも一級のサーヴァントであり、集団戦にも慣れている、1分もあればフランス兵らしきこの集団を完全に沈黙させられるだろう。
それでも、向こうはこちらの戦力を正当に認識できていない。
故に2人が構えた時点で向こうも完全な戦闘態勢に入り、彼らに迫ろうとしている。
それを悟ったマシュが盾を構えマスターを守りに入る。
「お前ら、構えを一旦解け」
「何?」
「あん?」
「坊主、30秒くれ」
「えっ、ッスネークさん!?」
一言二言、完全にヤル気になっていた2人と自分のマスターに声をかけ、マシュが驚くも気にせず、スネークは1人前に立った。
当然警戒していたフランス兵はそちらに最大限の注意を向け、剣を構えつつジリジリと近づいて行く。
だが、
「Je suis désolé.Nous sommes des voyageurs, il n'y a aucune intention d'accueillir.
Excusez-moi si vous me faites un malentendu, car diverses choses étranges se produisent.
Vous ne connaissez pas non plus?」
「………え?」
「C,C'est notre ligne!En premier lieu, d'où viens-tu⁉︎」
「... Malheureusement j'ai abandonné le pays,Maintenant, je suis membre d'une petite brigade.」
「……おいセイバー、あいつが何言ってるかわかるか?」
「……お前も召喚されたなら多少はわかるだろう」
「まあなっ、だが訛りが無さすぎじゃねえか?俺には早過ぎて聞きとりにくい」
「生憎私もだ、旅人だと言ってるみたいだがな」
「...... OK, nous ne sommes pas très occupés maintenant, mais je ne veux pas me battre.」
「J'apprécie votre compréhension, heureusement, nous sommes des brigades.
Nous pouvons également fournir des fournitures.」
「...... OK, guide-moi vers notre fort, alors parlons en détail.」
「Merci」
最後に誰もがわかるフランス語をスネークが言うと、周りを囲んでいた騎士らしき者たちは多少警戒しながらもその剣を下ろし、砦に向かって歩き始めていった。
サーヴァントや管制室で状況を把握しているロマン、カルデアに来ることが出来る程度には英語が話せる立香
そして勉強熱心なマシュ、その場に遭遇した全員にそれなりの言語能力がある。
だが唐突な流暢なフランス語に対して滑らかに対応できた者はいなかった。
それだけ雰囲気が一触即発で、戦闘体勢だったと言うのもあるが、わかりやすい……英語と似た発音の……単語以外わからなかっただけでもある。それだけスネークのフランス語は現地に馴染んでいた。
「おい坊主、とりあえず交渉で戦闘は回避した。
俺たちは旅人で旅団ということにしておいた、何だか変な事が起きてるとカマをかけたが思ったよりアッサリ俺の話を受け入れた、どうや……随分と静かだが、俺を見てどうした?」
「いっいえ、何というか……素晴らしいフランス語だったなと」
《う、うん。僕がやらかした事だから何とも言えないけど……それにカルデアの自動翻訳を起動する前に話が終わっちゃったから全部は把握して無いけど、それでも随分と流暢なフランス語だった。
あの状況で話しかけるスネークもだけど、よくフランス語が話せたね》
「現地語調達は諜報の基本だ、生前……と言ってもつい最近の話だが、大体の言語は話せる。
もちろん日本語もな」
「……傭兵というイメージは筋肉だらけのガタイのいい方達ばかりだと思ってましたが……」
「まぁならず者のイメージが強いのは否定しないが、実際に脳筋のやつはあまり生き残れない。
強いやつは大体自分で考え状況把握ができる奴だ、バカは早く消えるだけだからな」
「その通りだ、考え無しはすぐにやられてしまうぞ、マシュ、マスター」
「あっ、エミヤさん」
「「………………………………」」
「……マスター、そしてスネーク、どうして私から顔を背ける?」
「まっ気にすんなアーチャー」
何故か、本当に何故か珍しく、同情的に声をかけ肩を叩いてきたクー・フーリンに妙な感じがしたものの、たいした事では無いと判断し、エミヤが簡単な報告を続ける。
「とりあえず周辺には他に拠点は無さそうだ、もちろん敵らしいものも居ない。
……まさか本当に話し合いで解決させるとは思わなかったが」
「わざわざ戦う理由も無いだろ、それに連中も戦う意思はあまり無いらしいしな」
「? それはどういう事でしょう?」
「あの者らの纏う雰囲気でわからないかマスター、あれは敗走した兵たちが纏う物だ」
「えっ?」
「どちらかと言えば疲弊している兵士たち、だがな。
どちらにしろ坊主にはわからないだろうが……連中、未だに“戦ってる”」
「それは……まだ百年戦争が続いてるって事?」
《それは無いよ、1421年なら既に休戦協定がイギリスとは結ばれている。
多少の小競り合いならまだしも、兵士たちが疲弊するほどの戦闘が起こるとは思えない》
「前方にある砦は随分とボロボロだったがね。あれでは最低限寝るだけの場所としか言えない」
それはつまり、砦としては全く機能してないという事だ。
それだけの被害を今もなお受けているらしい。
「……とりあえず事情を聞こう。
今何が起こってるのか、それだけでもわかれば聖杯が関わってるある程度の目処も立つだろうし」
「先輩の意見に賛成です、とりあえず今はフランス軍の兵士さん達について行きましょう」
素人であれ戦士であれ英雄であれ、全くの情報も無しに暴れまわろうとするほど愚かでは無い。
まずはスネークが作ってくれた足がかりを頼りに、一行はフランス兵に着いて行き、砦へと向かった。
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