Metal Gear Fate/ Grand Order 作:daaaper
スネークが瓦礫の街に潜んで1分ほど経った後、再びトレニャーが反応した時、それらは上空から現れた。
一人は黒い貴族服をまとった男、一人は刺々しいドレスを纏い仮面をつけている淑女、一人は随分と露出度の高い修道服を着た女、一人は羽帽子を被った剣士……だが中性的だった。
そして一人はカルデア一行と共にいるフランスの救国の英雄、ジャンヌ・ダルクにあまりにも似ていた。
だがその表情は、乗って着たワイバーンを飛び降り見上げたジャンヌ・ダルクの無表情とジャンヌ・ダルクはとても似ても似つかないものだったが。
「……っ!」
「・・・ああ、なんて事かしら。
まさかこんなことが起こるなんて一体誰が想像したかしら」
「…………………………………………」
「ねえお願い、誰か水を、誰か水を私の頭にかけてあげてちょうだい。
ヤバいッ、ヤバいの!本気でおかしくなりそうだわ!あまりにも滑稽で笑い死んでしまいそう!!」
(そのまま死んでも構わんのだがね)
(やめとけ、後ろの連中も警戒してるぜ、今じゃねぇ)
(……………………)
今まで何かと関わりのあったこの三騎士、いつもは互いに いがみ合い皮肉を言い合っているが戦闘となれば話は別だ。
それぞれ思うことはありながらも、アイコンタクトで意思疎通を図る程度は造作もなかった。
そんなやりとりの中で黒いジャンヌ・ダルクは笑いながら話し続ける。
「ハハハハハ!……本当に…………本当にこんな小娘にしかすがるしかなかった国とか、ネズミの国よりも劣ってたのね。ねえジル、あなたもそう——って、そうだったわ、ジルは連れて着てなかったわ」
「貴方は……貴方は一体誰なんですか!?」
「・・・はぁ、それはこちらも同じですよ。
……ですがそうですね、そちらより上に立つものとして答えてあげましょう。
私はジャンヌ・ダルク、この地で処刑され再び蘇った救国の聖女ですよ、“もう一人の私”」
「……馬鹿げたことを、私は聖女では無い、故に貴方も聖女であるはずがない。
ですがそれは過ぎたこと……私が知りたいのはただ1つ・・・なぜこの街を襲ったのです」
「……何故?
逆に聞きますけど、わざわざ貴女がすでに理解していることを何故私にまで言わせるのです?」
「わかる訳が無いでしょう!
なぜ何の罪もない、ここに住んでいた人々を襲ったのです!!」
「……白々しい、それとも属性が変転しているとここまで鈍くなるのでしょうか?
そんなもの、単にフランスを滅ぼすために決まってるでしょう、私はサーヴァントなのですから物理的に潰して行くだけでこの国を滅ぼせるもの、当然でしょ?」
「バカなことを……!」
「・・・ジャンヌ・ダルク 、お綺麗な心をお持ちの聖女さま?バカなのは 愚かなのは私たちでしょう?
何故、こんな国を救おうと思ったのです?何故、こんな愚者たちを救おうと思ったのです?」
「それこそ決まっているでしょう!私は人々のために——」
「人々!それはただ裏切り、唾を吐いたニンゲンと言う名のクズでしょう!?」
「っそれは——!」
「私はもう騙されない!裏切りを許さない!!……そもそも、もう主の声も聞こえない。
主の声が聞こえない、と言うことは主はこの国に愛想を尽かしたと同じことでしょう?
なら私がこの私が滅ぼします、主の嘆きを私が代行します」
「っそれのどこが代行なのです!?」
確かに無茶な道理だ。
神の啓示を得ていたこの国の聖女が神の声を聞かなくなった、つまりこの国に救う価値などない。
だからこの国を滅ぼす代行者となる……まるで筋が通りそうもない。
だが彼女の意思は本物だと言うことはこのやり取りを外から見ていたサーヴァントは、特に一般人である藤丸には理解できた。
「マスター!」
「……うん、ジャンヌさん、これ以上は無駄だよ、あの人は……あのジャンヌ・ダルクは本気だよ」
「っですが——」
「あら、もう一人の私よりそっちの人間のほうがよっぽど理解が早いじゃない。
そうよ、私が、私こそが成長した私なのよ、
そしてこれが死んで新しい私となったジャンヌ・ダルクの救済方法、この主に愛想を尽かされた価値もない国を死者の国として作り変える……まぁ貴女には理解できないでしょうね!いつまでも聖人気取りで憎しみも喜びも見ないフリをして人間的成長を全くしなくなったお綺麗な聖処女さまには!!」
「な……!」
《いやっサーヴァントに人間的成長を求めて良いものなの?せめて英霊的霊格アップとか……あっでもしょj——》
「殺す」
「えっ・・・ファッ!?ちょっ、コンソールが燃えだしたぞ!?
あのジャンヌ・ダルク睨むだけで相手を呪うのか!?」
「いやっ今のはロマンが悪いと思うけど……」
『………………………………………』
何とも言えない空気が流れる。
見ると向こうのサーヴァントも何とも言い難い雰囲気を醸し出している。
本人たちは…………顔が赤いのはきっとそれぞれの怒りとかそんな感じのが表情に出てるのだろうきっと。
「…………貴方は本当に“私”なのですか?」
「……呆れた、なんて醜い正義心かしら、この憤怒を理解する気が無い。
ですが私は貴女を理解しました、今の貴女の姿で私と言う英霊の全てを知った。
所詮貴女はルーラーでもなければジャンヌ・ダルクですら無い、私が捨てた単なる残り滓よ!」
「……!」
「ええそうよ、貴女は単なる田舎娘。
何の価値もない、ただ過ちを犯すために歴史を再現しようとする亡霊よ!
・・・バーサーク・ランサー、バーサーク・アサシン、その田舎娘を始末しなさい。
他は残りのサーヴァントを相手しなさい、ああそこの理解の早い人間は見逃してあげても良いわ、そいつは私のことを理解してるみたいだしそもそもフランス人じゃないもの」
「マスター!」
「うん……ジャンヌさん構えて、来るよ」
「っはい!」
無論ここで見逃して貰おうなどと他のサーヴァントは当然ながら藤丸も考えていない。
戦わざる得ないなら戦う、当然の理屈だ。
それぞれのサーヴァントが構え、ジャンヌ・ダルクには確かに2体のサーヴァントが付いていた。
「・・・ふん、舐められたものだ、わざわざそこの田舎娘に二人も割き、こちらには数的不利で挑むか。
確かにそこの田舎娘も馬鹿かもしれんがお前も大概バカだな」
「・・・ハァ?」
黒いジャンヌの顔が赤いのは怒りで間違いないだろう。
「聞こえなかったのか?
貴様の随分と長い思想や感想などどうでも良いが、指揮官としては二流……いや、つい最近まで素人だった私たちのマスターよりも酷いものだな」
「・・・バーサーク・ランサー、こちらに加わりなさい、特にあの黒い騎士を八つ裂きにしなさい!」
口角が思いっきり上がってる黒アルトリアをみて若干引くクー・フーリン。
一体どっちが悪役なのかわからない……確かにラスボスではあったが。
「……よろしい、ではアサシンよ、彼女の全てを食らって構わない、余はこちらを頂こう」
「まぁなんて贅沢かしら。
かの聖女の美しい血を浴び、その臓を潰し喰らう……一体どれほど私を美しくしてくれるのかしら?」
「おいおい、カニバリズムかよ……」
「そう嘆く暇はないぞランサー、どうやらこちらにもわざわざ差し向けて来るようだ」
「へっ、そいつは良い……こっちから仕掛ける手間が省けるってもんだぜ」
「マシュはジャンヌさんのカバーもお願い」
「了解ですマスター!」
「アラ良いの?今からならそこの騎士さえ残せば見逃してあげるわよ?」
「……仲間を置いて逃げれ無いし、それに俺たちはこの時代を修復しに来たんだ、逃げに来た訳じゃない!」
「・・・そう、良いわよ、なら私が相手してあげる」
状況が動く
ジャンヌ・ダルクはアサシンの相手を、
アルトリアはランサーの相手を、
クー・フーリンとエミヤには剣士と修道女が、
そして藤丸とマシュは黒いジャンヌ・ダルクを相手にする。
「マシュ、とにかく耐えて、時間さえ稼げば他の人がカバーに入ってくれるから」
「了解しましたマスター!マシュ・キリエライト、対サーヴァント戦に移行します!」
「ふーん……貴方のサーヴァントが随分なことを言ってくれたけど、あいにく貴方もバカじゃないの?」
「マスターは馬鹿正直なだけです!」
「!?」
まさかの後輩サーヴァントからの発言に驚く立香。
マシュの発言からして恐らく自分のフォローをしてくれたのだろうが……彼女は素直なだけだ。
深い意味は無いだろう、無いったら無い。
「ハハハッ!馬鹿は馬鹿でも馬鹿正直ですって!?…………なら私がその正直な心を折ってあげるわよ」
すでに他のサーヴァントたちはそれぞれ離れて戦闘を始めている。
バーサーク・アサシンの相手をするジャンヌは相手の攻撃を回避しつつ機会を狙っている、向こうは宝具を使おうとしてるのか接近を試みているが、リーチの長いジャンヌの旗によって防がれている様だ。
アルトリアは一番遠くでランサーの相手をしている……が思った以上に相手も上手いらしい。
かの騎士王の剣撃をその手に持つ槍で受け流し、お返しと言わんばかりに薙ぎ払う。
もっともその程度で隙を晒すほど反転した常勝の騎士もまた弱く無い、だが膠着状態ではある。
一番激しいのはエミヤとクー・フーリンの2人だ。
エミヤは最初の一撃は弓を使っていたものの、修道女がキャスターの様に手に持つ十字架で遠距離攻撃を仕掛けて来ることから、すぐに夫婦剣に切り替え切りかかった。
そこを相手の剣士に邪魔されるも構わず突撃、脇を貫くかと思われた剣士の一突きは紅の槍によって弾かれる
「っテメェそんぐらい自分で避けろっ!」
「お前なら十分間に合う間合いだっただろう!」
「お前なんざを助ける意図はねえっよ!!」
と軽口を叩いてはいるものの、その連携は卓越したもの。
一方が前衛・後衛ではなく、常に相方の攻撃の間を埋める様に相手に仕掛けていく。
その相手もそれなりに連携が取れている様に見えるが、長年(?)の因縁ある2人には及ばない。
「……まあ大口叩くだけはあるみたいね、今の所拮抗してるみたいだし」
「…………………」
「けど・・・それって貴方達を助ける暇も無いってことよ?」
「マシュ」
「ハイッ!」
そしてマスターとマシュも戦闘に入る、相手は黒いジャンヌ・ダルク、竜の魔女となった救国の聖女。
その素肌は病的に白く、反対に着込み装備する装束と旗は黒い。
頭数は二対一だが実質的には一対一。
それでも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・勝機はあった
「覚悟はできたかしら?まあ覚悟が無くてもどのみち容赦しないけれど——」
「・・・全く、結局はあの嬢さんとあんまり変わらんな、まずは周辺警戒から始めろ」
「ッ!?」
背後から突然かけられる声
だが未だに気配を全く感じない
当然の様にジャンヌ・ダルクは背後を振り返る
「とりあえずまぁ……アレだ、頭を冷やせ」
「・・・えっ?」
そしてフリーズした
何せ目の前には見覚えのない眼帯のオッサンが立っているのだ
・・・違うそうじゃない
そのおっさんが手に持つ物がおかしかった
その手に持つ物は
単純に赤く、
丸く、
取っ手があり、
上部が解放された円筒状で、中に液体を入れるやつ
「えっ、なんでバケt——」
バッシャアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
俗にバケツ……ジャンヌは読めなかったが、黒く達筆な文字で《消火用》と書かれたバケツ
中身にはなぜか氷まで入っている氷水をそのおじさんは躊躇なく竜の魔女の頭からぶっかけた
「どうだ、お前最初に頭に水かけろとか言ってだだろ?
まあお前さん随分とおかしいことを口走ってたからな、ちょっと頭冷やせ、冷静になれば大体の事はわかる」
「………………………………………………………………………」
「「…………………………………………………………………」」
『………………………………………………………………………』
《……………………うわぁ、場が冷え切ったよ本当に》
もはや衝撃映像である。
あまりの衝撃に戦闘中だった全サーヴァントが一旦止まった、いや固まった。
何せ背後から容赦なく消火用バケツいっぱいの氷水を本人の要望通り頭へぶっかける人間がどこにいようか?
「・・・あの、スネークさん・・・一体なにを……?」
いた
と言うかここにいた、サーヴァントではあるが実行してしまう人間が
「ん、わからないかマシュ?この聖女……いやジャンヌ・ダルクと名乗ってる黒いのが白いのに向かって言ってだだろ〈頭から水をかけてほしい、おかしくなりそう〉ってな」
「ええ、聞いてました、私もマスターもみなさん全員聞いてました。
……ですが、私の少ない人生経験を持ってしても、あれは冗談というか皮肉といいますか、そう言った類のものかと思われます」
「いやマシュ……突っ込む所そこ……?」
「……なるほど確かにそうかもしれん」
《いやそうだと思うよ……》
どうにかこの場にいないおかげで固まってはいないロマンが辛うじて突っ込む
「だが俺はこの黒いのがおかしいと思った、だからキンキンに冷やした水をかけてやった」
「誰が……誰がおかしいですって!?」
「お前以外に誰がいるこの馬鹿が!」
「チョッ———!?」
バッシャアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
再び竜の魔女を襲う氷水。
もはや何も言うまい、と言うか言えない。
ポタッポタッと水が滴る音がこのフランスの廃墟で響いた。
おかしい、本来屋外で、ましてや戦闘中なのであれば水の滴る音など聞こえるはずが無いのだが。
「……先輩、これが水の滴るいい女、と言う奴でしょうか?」
「絶対違うし、ここで使う言葉じゃないよねマシュ!?」
『………………………………………………………………………』
再び膠着する戦場、いや固まる空気。
コレどうしようかと誰もがわからず、とりあえず目の前で相手をしていた自分の敵を見る……が、その相手もどうしようかと敵なのにアイコンタクトで聞いてくる始末である。
とりあえず今は動かない方がいいだろうと敵味方問わず全会一致で決まり、構えてるフリだけして様子を見守ることにした。
「……どうやら冷え切ったみたいだな」
《この場の空気がね……》
おかしい、こんなはずじゃなかった、一体誰が原因だ。
「…………何ボサッとしてるのよ」
「ん?」
一体誰が原因だ?
「…………さっさと!さっさとこのジジィを捕まえなさいよおおぉっ!!」
「ジジィ?・・・一体誰の事だ」
その叫びが命令だったからだろうか
黒いジャンヌ・ダルクに従う五騎のサーヴァントは一瞬にして
オッサン……スネークの元に、召喚主ごと囲む形で転送された
かくして、オッサンVSサーヴァント5体という構造が出来てしまった。
「「ッ!!」」
いち早く気付いたジャンヌ・ダルクとクー・フーリンが駆け出す。
だがその俊足を持ってもまず間に合わない間合いだった。
少なくともスネークに一撃を加える猶予はあたえた。
「マシュッ!」
「ハッハイ!」
続けて一番近いマシュが駆け出す……が、気付くタイミングが遅すぎた
藤丸の令呪発動も間に合わない
「さて……死になさい」
単純で明快な殺害宣告
他のサーヴァントも駆け出すもやはり出遅れた
紳士が
淑女が
修道女が
剣士が
魔女が
容赦なく蛇を仕留めんと中心に向かって一撃を放つ
だが相手は接近戦において最強の傭兵だった
「遅い」
手に持つバケツを前にいる剣士へ
そのまま目の前に迫る旗を右に避ける
「マズッ」
「ッ!」
そのまま旗は背後にいる黒い紳士の眼前で止まる
そのまま槍は黒い魔女の胸で止まる
互いに相手を仕留め損ね固まる
「くっ付いてろ」
固まった魔女を一瞬拘束
旗を落とし槍をもつ紳士へ投げ飛ばす
「 」
ナイフを取り出し振り向きざまにナニカを弾く
同時にハンドガンを取り出し撃つ
放たれた弾丸はまっすぐ……サーベルの持ち主である剣士の顔めがけ飛ぶ
だがそれも一瞬、すぐに回避される
構わず追撃
相手もサーベルで高速で二撃・三撃とカウンターを狙う
だが何処ぞの両手持ちで魔力放出のよりぶっ飛んで来る聖剣と比べれば重くない
突きをナイフで右肩へいなし接近
CQCの間合いに完全にいれた
右足で相手の膝を蹴る
傾いた体はそのまま吸い付く様にスネークの胸へ
右手で相手の肩を押す
サーベルを落とさせ拘束する
「ッ!?」
「どうしたッ」
マジックでも見た様な顔をして、と最後まで言わずその場で拘束をキャンセル
地べたに寝かせ十字架を持ったまま突っ込んできた修道女に構える
「セェッ!」
十字架が眼前を通り越す
本来ならありえない光景だが驚く暇はない
そのまま間合いに入った修道女
突っ込んで来た勢いそのまま剣士の腹の上に叩きつける
「ガアァッ!?」
「ッチ!」
これで4人 残るは
「……気配遮断なら上手くやれ」
背後へ振り向きハンドガンの全弾を撃ち込む
当然の様にまっすぐ飛ぶ弾丸
だが何も無いはずの空中で潰れる
見ると人を模した像が現れ、次に淑女がその背後から現れる
それを気にするでもなくスネークは駆けつけてくるマシュの方へ駆ける
それでスネークの役目は果たした
だがいち早くやられた黒ジャンヌがいち早く復帰しスネークに肉薄する
「さっきのお返しよっ!!」
「さっきと同じ言葉を返す」
「ッ!」
背後から迫る気配
すぐに振り返り迷わず旗を振り下ろす
その振り下ろされた穂先が純白の旗と交わり火花を散らす
「大丈夫ですか!」
「今度からはもう少し早くカバーに入ってくれ」
「ええそうですね、“おじさん”」
「……よしてくれ」
「何を悠長に話してるのかしらっ!」
一旦下段に構え相手の旗をかち上げ、距離を取る黒いジャンヌ・ダルク。
その勢いのまま滑りながらも下がるジャンヌ・ダルク。
その隙を追撃しようと敵のランサーが動く・・・が
「させねえよッ!!」
「……さすがに甘くは無いか」
同じ様に横合いから紅い槍が突き込まれる、敵ランサーは追撃を断念し紅い槍を払う。
紅い槍の操者……クー・フーリンはそれ以上の追撃をする気は無いらしく、そのままスネークらと合流、マシュが盾を地面に突き立てることで藤丸・スネーク・クー・フーリンと敵の間に壁を作り、そのマシュの隣に旗を掲げ同じ様に境界線をジャンヌが作る。
「すまんな坊主、少しアドリブを入れた」
「いや……うん、けどまぁ……問題はない、かなぁ……」
「……アレをやって、そりゃねえよ」
「そう言うな、それともう少し時間はあるか?」
「うん、それは問題無いよ……けど何をする気?」
「おいおいそう怪しがるな、別に変な事はしない、ただ言いたいことを言ってやるだけだ」
「……まあそれなら、けど煽りは無しだよ」
「了解だ」
再びこちらと構えんとする五騎のサーヴァント。
バーサーク・ランサーと呼ばれていた紳士と修道女は姿が見えない他のサーヴァントを警戒しているらしい。
その他のサーヴァントはまるで仇でも見るかの様に歩み出てきたスネークを睨む。
「……今更敵だどうだと言うつもりはないが……そこまで睨まれる様なことをした覚えはないぞ」
「「え」」
「なんだ、マシュとお前はわかるのか?」
「………スネークさん、後でお話が」
「了解だ、だが今はあっちのお前の方だ」
「・・・私に何よ」
何故心当たりがないのか謎だが、とりあえずそれは置いておき。
訝しげながらも黒ジャンヌは聞いてきた……イライラしているのかもしれないが。
「とりあえずもう一度言っておくが……頭を冷やせ、今のお前は何もかもが空っぽだ」
「何を言うかと思えば……私の何が空っぽだと言うの?」
「そんなことを一々敵である俺が言うと思うか?
まあ誰にでもわかるのはお前の頭が空っぽだと言う事だろうが」
(スネークさん!?)
つい先ほどマスターと了承したことをあっさり破る伝説の傭兵。
こちらのジャンヌも驚いているが向こうのジャンヌ・ダルクは……口角が引き攣っているが先ほどまで一方的にやられた事を学習したのか、その場で事を荒げず、スネークに言い返す。
「ハッ!そんな売り言葉に私が買い叩くとでも思ったの?
私そもそも文字も読めないのよ、頭が悪いと言われればその通りよ」
なお手とか足とかはプルプル震えている模様、きっと武者震いだろう。
「いや、頭が悪いかどうかは知らん、ただ“空っぽ”だ」
「……どう言う意味よ」
「なら一つだけ聞いておく、お前が街を破壊するのは、フランスを蹂躙する理由はなんだ」
「・・・ハアァ?そんなのそこに居る私の絞りカスにも言ったでしょう?
もうすでに私に主の声が聞こえない、これほどの悪業をして居るのに……つまりこの国は主から愛想をつかされた、この国に価値など無い、鼻からこの国に救済される価値など無かった、故に破壊します」
「……お前は気付いていないのか?」
「・・・何を」
「いや、気付いて居ないフリか?」
「だから何よ!?」
「……まあどちらでも構わんが、ただ自分の憎しみだけで中身の無いその振る舞いはお前自身を殺すぞ」
「……一体誰が殺すのかしら」
「さあな、少なくとも俺じゃ無さそうだ。
……俺が言えることは言った、あとは自分自身で見つけてみろ」
「何を言ってるか私にはさっぱりわからないのだけれど……まあ良いわ、どうせこの国は終わりよ。
私が全てを蹂躙してこのフランスを沈黙する死者の国に作り変えるだけです」
そして帰りますよ、と自分たちのサーヴァントたちに命令する、どうやら撤退する気らしい。
それでも何をしでかすかわからないジジィが居るため背中を晒したりなどの隙は無い。
「なっ逃げるのですか!?」
「逃げる?何を言うのです?
これから別の街を焼くだけです、ここに長居して居ても無駄ですし居る意味もありません。
私自身の収穫はありましたが、それも絞りカスがいたと言うだけの話。
それにここで決着を付けるには少々戦力不足ですから」
「っ!!」
違う、撤退ではなく次の街へ移動するらしい。
確かにここで争っても向こうは戦力が減るだけ、目的が言っている通りフランスの蹂躙ならここで争う意味は一切ない、ここを離脱し別の街を襲った方が良いだろう。
その意味を理解したジャンヌが駆け出そうとするが、その前にスネークが肩に手を掛け留める。
「落ち着け」
「っですが!」
〔もう坊主が手を打った、とりあえずマシュと宝具の準備をしておけ〕
「……わかりました」
駆け出しそうなジャンヌにだけ聞こえるように言うと、スネークは踵を返しマスターがいる方へ戻って行く。
そのマスターもゆっくりと頷いていた。
「アラ?見逃してくれるのかしら?」
「追撃したいのは山々だが……あいにくマスターからの命令だ、俺はここから動けん」
「あっそう……なら失礼させてもらうわよ」
「ただ伝言だ」
「……何よ」
スネークはマシュから一歩程下がった所で振り返り、最後の伝言を伝える。
「まずお前らが乗ってきたワイバーンな、全てこいつが処理した」
「素材が大量ニャ!!」
そう言うなり、スネークの足元からヘルメットがポコっと現れる。
そこからピッケルと大量の鱗やら牙やら爪やらを掲げたネコ・・・トレニャーが飛び出てきた。
「・・・だから?私はいくらでもワイバーンを呼べるのよ」
「らしいな」
スネークはそう言って懐から葉巻を取り出し、ライターに火を点け、おもむろに吸い出した。
その余裕そうに一服している姿にイラつきながらも、なにをされるかわかったものじゃない黒ジャンヌはおとなしく待って居た。
その姿を見てスネークは、口に咥えた葉巻を指に挟み、煙を吐く。
……何故かため息も混じった煙を吐いて、一言吐いた
「ならあの闇に飲まれろ」
スネークが指をさす方向……スネークから見て左の方向に一筋の光が立っていた
いや違う
アレは一筋の“闇”だった
「っ宝具!?」
規模からして対城宝具
いま黒ジャンヌらは一纏まりになって居る
このままなら全員まとめて座に帰るだろう
すぐに危機的状況だと判断したジャンヌは宝具を展開し威力を相殺する
「
「
同時に連続した爆発が黒ジャンヌらの周りで巻き起こる
当然宝具は開帳できず、その代わりに放たれる光を飲む闇の奔流
「卑王鉄槌、極光は反転する……光を呑め!
敵に迫る最強の聖剣が放つ魔力の粒子は正に魔力の塊
カルデアが今放てる最大火力
その一撃が光を呑み、一帯を敵味方関係なく呑み込む
「偽装登録完了……宝具展開します!」
「我が旗よ、我が同胞を守りたまえ!
その余波をマシュとジャンヌの宝具によって完全に無効化する。
それでも当然ながら直線上に存在した瓦礫は闇に消され、余波で粉砕されていく
「飛ぶ飛ぶ飛ぶニャ!!飛んじゃうニャハ!?」
「おうっと、捕まえた」
「ニャー……死ぬかと思ったニャ」
その余波をモロに受け、吹っ飛んで言ったトレニャーをクー・フーリンが危なげなくキャッチする。
そんな中で、スネークはマスターの命令通りその場から動かず立っていた。
……やがて暴風は止み始め、膨大な闇はたち消え、粉塵が舞い、あたりは静寂に包まれて行く。
再び懐を探り、携帯タバコ消しを取り出し咥えた葉巻を仕舞う。
「やったの……でしょうか?」
「マシュ、それフラグだからやめようか」
「あれを喰らって生きてたらどうしようも無いがな」
「スネークさんはわざとやってるよね?」
何故だろうか、藤丸のツッコミスキルがここ数十分で格段に上がった気がするのは。
もっとも、その対象のほとんどがスネークだったりする訳だが。
そんな「やったか!?」とか「あれを喰らって生きてはいまい……」などと定番を口にした所為だろうか。
粉塵が晴れると、そこにいたであろう五騎のサーヴァントは消えていた。
それこそ微塵の痕跡も無く。
「……おいロマン、これは倒したのか?」
《……いいやこちらで観測した限り、エクスカリバーの光には呑み込まれたけど五騎のサーヴァントは全員無事だった、その後4騎のサーヴァント反応が消えて残った一騎は何かに乗ってその場を離れて行った。
多分なんらかの宝具で短時間だけ攻撃を無効化したんだと思う、その後に令呪で他のサーヴァントを転移させたジャンヌ・ダルクがワイバーンを召喚して逃げたんじゃ無いかな》
「……敵に防御様の宝具を持ったサーヴァントなんて居た覚えが無いですけど……」
「可能性があるのは修道女格好のサーヴァントだが……まあ取り逃がしたのはしょうがないな」
どうやら完全に撤退したらしい。
だがロマン曰く、聖杯があるとはいえルーラーが何体ものサーヴァントを何回も令呪を使って転移させたなら相当な消耗があっただろうと言う、とりあえず今日は追撃は不可能だろうと推測されるらしい。
その間に締めを飾った黒い騎士王とナイスアシストをした赤い弓兵が合流した。
「どうだったマスター、最大火力で放ってやったぞ。
……まあ生憎あまり手応えはなかったがな、せいぜい1人かすった位か、一体でも仕留めたかったが」
「けどありがとうアルトリアさん、多分しばらくは派手に向こうも動けないだろうし」
「……貴様の力になれたならそれでいいがな、そう悠長に構えても居られないのは事実だろう」
「だな、向こうは聖杯持ちだ、一時的な休戦状態にはなるんだろうが——」
「休戦は次の戦いの準備期間だ、大方向こうも戦力増強に走るぞ」
「うーん……やっぱりエミヤさんに追加で宝具を使ってもらった方が良かったかな……」
「そこまでにしておけ坊主、反省点ならそこの騎士王にも俺にも沢山ある。
だがここで止まる暇は無い、今は初陣でここまで指揮を取れた事を自身にして前を見ろ、お前は十分指揮官として優秀な部類だ、まだまだ半人前だがな」
「……そうだね、今は特異点の解決だもんね」
「そうだぞマスター。君はまだ未熟だが、少なくとも私が君と同じ年だった時より遥かに優秀だ、もっとも私から言わせてもらえるなら……少々不気味な位だがね」
「えぇ……何でエミヤさんから気味悪がられなきゃいけないの……」
「そういじめてやるなエミヤ」
「そうだな、ほどほどにしておこう」
こうして初日の戦闘は敵の撤退という形で終了した。
得られた成果は敵もまたジャンヌ・ダルクであることと、敵の目的、そして藤丸のマスターとしての力量と言ったところだろうか。
「ニャー!?素材がばら撒かれたニャー!!」
「・・・そういえば、何だかんだあのネコ、とんでもねえ活躍じゃねえか」
あとトレニャーがいつの間にかやってのけたワイバーン狩り(?)による素材だろうか。
「おいトレニャー、何もそんなに必死にならなくても大丈夫だろう、素材は逃げたりしない」
「オイラ、バックパックにワイバーンの新鮮なお肉を入れたから早く食べたいのニャー!」
「よし探すか!!」
「私も手伝おう」
あと肉、ついでに食欲。
どこかの王妃様のセリフを奪っていくスタイル、そのせいでスネークにとばっちり。
何かご意見・ご感想があれば作者の参考にも励みにもなります。
何かありましたら感想欄にてお知らせ下さいm(_ _)m。