Metal Gear Fate/ Grand Order 作:daaaper
このお話は、去年の2月に完成していましたが、
実生活のいろいろで本当はお蔵入りにしようとも考えたのですが、
新しく二次創作の小説を書き始めたので、生存報告がてら、こちらの方を投稿させていただきます。
後日、新しい小説も投稿しますので、首を長ーくしてお待ちください。
では、本編をどうぞ
1431年 6月〇〇日
フランス ロワレ県 オルレアン,現地時間 11:30
オルレアン城下にて
「……攻撃が、飛んでこない?」
「みたいだな、向こうは籠城するのを選んだか」
《冬木で検知した同じ反応がある、間違いなく聖杯だ。その反応と同じところにサーヴァントの反応もある》
わずか数分のドライブを経て、カルデア一行はオルレアンに突入し竜の魔女であるジャンヌ・ダルクらが拠点としている城元へとたどり着いた。全員が車を降りるのを確認するとスネークはiDroidを取り出し、車を回収させた。
……その方法が車の真上にワームホールが開き、車が浮き上がって物理的に消えていくという近未来どころかいつの技術だと突っ込みたくなるアレだったが、誰一人突っ込まなかった。初見であろうエリザベートですら『あ、金ピカと似たことできんるんだこのオジサン』程度の認識である。
そして、そんな結構な質量のある物体がどこかへと吸い込まれる光景よりも気になることがあるのか、ジャンヌ・ダルクは手を顎に当てあからさまに首を傾ける。その光景にマシュが突っ込む。
「えっとジャンヌさん?何か変なことでも……?」
「あっいえ、大したことでは無いのですが……らしく無いなぁ〜と」
「らしくない、とは?」
何か隠している、というよりは理解しがたいと感じているらしいジャンヌ
ダルクにマシュは続けて首を傾けた。
「えーとですね、こんなこと私が言うのも変なのですが、“私”なら籠城なんて絶対にしないなぁ〜と」
「そ、そうなんですか?」
「はい、たとえ数的不利でも敵陣に突っ込んでさっさと逃げるのが私ですから」
「そ、そうなんですか……」
史実のジャンヌ・ダルクが実際に敵陣に向かって突撃、先陣を切っていたという記録は残っている……そして奇襲・夜襲は当たり前、捕虜となった敵兵の殺害命令、そして15世紀から本格的に普及し始めた城壁を破るための大砲を世界で始めて火器として対人に向けて使用したという過激な実績。あと並行世界というか外典のような世界では敵の根城を攻撃するために魔術の秘匿など御構い無しに戦略爆撃機やミサイル、さらには米軍が保持している『神の杖』……文字だけで説明すれば『運動エネルギー爆撃』……の使用を提案するという割と結構周りがドン引きする強硬派である。
そんな割と脳筋な彼女に言わせて見れば。
「ええ、橋の上にサーヴァントを配置させ時間を稼ぎ、その間にジルに大量の海魔を召喚させて、私自身も聖杯を持っているなら追加の戦力を召喚して決戦を挑みます。その追加戦力が私たちに宝具を撃ってきた一体だけだとはとても思えません」
という話だった。
「で、では私たちは罠にハマっていると!?」
「あっそれはありえません。わたし、罠にかけるなんて難しいことできませんから」
そして至極もっともな疑問から焦るマシュをよそにあっさりジャンヌは否定する。
……それはそれでどうなんだろうと思うマシュと藤丸とその仲間たちだが、スネークはあえて当然の疑問を訪ねることにした。
「……先程から気になる話をしているが、なら“お前”ならこの状況でどうするんだ?」
「単純です、室内での戦闘に向いているサーヴァントを用意するか——」
「よく来たわねあなたたち!!」
と、そこで上空からよく通る声が聞こえてきた。
全員が上を見ると、どこから登って上がったのか城の一番上にある三角形みたいな屋根を片手でつかんで堂々と仁王立ちをしてこちらを見下す黒い姿が見えた。
「……室内じゃなく、屋根の上で宣戦布告するのか?」
「い、いくらなんでもこんな事まで想像できません!憧れますけど!!」
(憧れるんだ)
彼女の素直な感想に若干わからなくもない藤丸だったが、そうじゃないよなと思い直しこちらをカッコよく見下ろしている竜の魔女を再び見上げる。
「…チョット無視するんじゃないわよ!」
そんなカルデア一行が私を無視して何かやってると感じたのか、若干キレ気味に竜の魔女であるジャンヌは吠えた。
「……それで、竜の魔女様がそんなところから何の様だ」
「ふっ、貴方達に最後の言葉をわざわざ掛けに来たのよ」
「ハッよくほざく、こっちはお前をわざわざ倒しに来たのだが?」
そんな竜の魔女に対して、黒い聖剣を肩に担いで思いっきり煽るアルトリア。まるで不良である……学校の窓ガラスを跨ぎ、窓のヘリで威張っている黒服で銀髪の聖女と黒く輝く聖剣を肩に担いで構える王さま・・・うんレディースかな?
それにしたって、随分と若干黒いジャンヌ・ダルクにあたりが強いアルトリアオルタである。
「あっそ、けど残念ね“女王様”?どう頑張ってももう無駄よ、だって私の計画はもうとっくに終わってるのよ!“あなた達のおかげ”でね!!」
「・・・えっ?」
その言葉に藤丸は驚く。とっくに終わっているという話もそうだが何より自分がいつのまにか手を貸したという事が信じられなかった。それはマシュも同じだったようで、他のサーヴァント達も表情に出すほどでは無いがその言葉を耳にし訝しんでいる。すぐにスネークは無線を起こす。
「おいロマン、この特異点はもうとっくに崩壊してるのか」
《い、いや特に変化は無いよ!?それ以前にこれといった変化も無い!》
「なら嘘、っていう訳でも無いだろう……それで、お前ならどうするんだ」
スネークは地上にいるジャンヌに尋ね、その答えは至ってシンプルだ。
「……先程は言えませんでしたが、私なら“もっと強い“のを出します」
「それって——」
「ファヴニールよりも大きい竜ってこと!?」
「……恐らくは」
「…………」
ジャンヌの発言に、実際にファヴニールをみたゲオルギウスやジークフリートは驚きを隠せない。あれ以上の竜など想像がつかないからだ。タラスクを知っているマルタや、竜を見たことのない他のサーヴァントの面々も少なからずヤバいのが出てくることを察した。
……その一方でスネークはどこか納得している。
「……今さら気づいたってもう遅いわよ、すでに召喚は終わってるわ、あとは私が言葉を紡げばそれで終わり」
「で、ですが私たちはそんなことに協力した覚えなど——」
「ああソレ?……そうねどうせこの場で終わりだもの、1から丁寧に説明してあげるわ」
そんな中、マシュが当然の疑問を問う。
そんな特異点の解決が目的である自分たちが、逆に崩壊の方へ、敵の手伝いをしていたなど思い当たる節もなく到底信じられないのだ。だが実際に敵であるジャンヌ・ダルクはここから彼らに感謝している。
そして何一つ嘘を言ってはいない。
「そうねぇ……あなた達にはむしろ感謝してるわ、ここまで材料が揃うなんて思わなかったもの」
「材料……?」
「ええそうよ?まず最初に私が竜の魔女であること、そのおかげか知らないけどワイバーンや竜にまつわるサーヴァントを私は召喚したわ……まぁそこにいる聖女様が死んでないことには驚いたけれど、正直どうでもいいわ」
「・・・あーアレ知ってるわ僕……まじでヤバいやつだコレ」
「?どういうことアマデウス?」
「……良いかいマリア、普通サーヴァントが寝返ったら大きな戦力ダウンだ。
ただでさえ十人以上のサーヴァントがこっちに居て、向こうは彼女ともう1人だけだぜ?なのにあれだけ大口叩けるのは現実逃避で頭がやられたか本命があって本当に余裕があるときだけさ」
「じゃあ彼女は本当に余裕があってあなたは頭がやられたことがあるということね!」
「……ウン、そうだ」
せっかくシリアスな低い声で発言したのに、自分の信用値が低すぎるせいでいらぬ真実をまたマリーに知られてしまったことを諦めながら、それをもきにする余裕がないレベルでヤバいとアマデウスは顔を歪ませる。その顔が本当に余裕がないと悟った王妃様も、微笑みながらも周りに様子を気にしてキョロキョロし始めた。
「ちょっと待ってください!竜にまつわるとはどういう意味です!?たしかにマルタさんはそうですが——」
「そのままの意味よ、最初に倒れたバーサーカーは竜殺しの逸話が。
あなた達がさっき倒してくれた4体のサーヴァント、ヴラド3世とデオンは竜騎兵とドラゴン騎士団でしょう?それもカーミラとアタランテには化け物の因子、つまりモンスターよ」
「アタランテ……?」
「エミヤ達が相手してた奴だろう」
スネークはそう答えながら屋根に立つ竜の魔女を見る。
今の一行で有効に遠距離攻撃ができるのは銃を持つ彼だけ。一応アマデウスや同じライダーであるマリー・アントワネットも出来ないことは威力など無いがたかが知れている。火力の点ではスネークも一撃必殺の武器を持っているわけでは無いが、膝を狙えば屋根から相手を落とすことくらいは自信があった。
だが、彼女を撃ち上げる形でクイックショットするには条件が厳しい。何より外せば即戦闘になる。確実に狙えるタイミングか、せめて外した際の退避手段が揃わなければ迂闊に手が出せない。
そんな算段をスネークはつけながらも、彼女は余裕そうに歩き語り出す。
「そしてあんたがどんなタネでやったのか知らないけど、そこの男が倒したファヴニールは幻想種、それも竜。
……それはそれで腹立たしいけど、これは全部原料でしかないわ。野菜を放っておいてもただ枯れて、腐って、消えるだけ。私が召喚したサーヴァントも所詮魔力の塊に竜に関わる逸話が付いてるだけ、所詮放っておけば倒されようが何されようが、魔力が切れてただ消えるだけ。けど加工すれば触媒と燃料になる」
「触媒と燃料……?」
意味がさっぱりわからない藤丸は、どういうことなんだろうと少し考えるもさっぱりわからない。魔術については一般素人ではないマシュでもあまりピンと来てないようだが、勘の鋭いサーヴァントや、カルデアでモニタリングしている者たちは嫌な予感と予想が立った。
《……藤丸くんたちが倒したサーヴァントの魔力を聖杯に注いで竜を召喚する気か!?》
「だからあの女、ファヴニールで味方ごと俺らを焼き払うのにも躊躇しなかったわけか」
「っそんなことできるの!?」
「た、たしかに聖杯は万能の願望機、しかもファヴニールの召喚も成功してますから——!」
「そういうこと、しかも本来なら7体のサーヴァントの魔力が聖杯に注がれることで願望機として機能するそうじゃない」
《藤丸くん達が倒したサーヴァントは……バーサーカー・ヴラド三世・シュヴァリエ デオン・カーミラ・アタランテの5体、それとファヴニール・・・6体しか居ないぞ!?》
「・・・ああ、忘れてたわ。サンソンとかいうアサシンも居たわね。もっともそこの王妃様に散々やられたせいで仮初めの肉体しか残ってなかったからそのまま魔力に還したわ」
「っ」
「……あいつ」
竜の魔女の説明に一瞬マリーは顔をしかめそうになり、わずかに口元を誤魔化すようにズラした。そのわずかな変化を見逃せなかったアマデウスは、竜の魔女への嫌悪か、はたまたどこかの執行人に対しての愚痴なのか。ただ、少なからず隣にいる彼女が反応したから彼もそんな言葉を漏らしたのは間違いない。
「そういうわけで、あなた達のお陰で私はファヴニールより強い竜を……いいえ!竜の王をここに呼ぶわ!!」
「……あれはもうダメですわ、完全にふっ切れて全部破壊する気満々ですよますたぁ?」
「じ、じゃぁわたし達このままじゃヤバいじゃない!?」
《君たちどころかこの国、いや特異点が崩壊だ。そのままカルデアに戻れないついでに人理も崩壊する……!》
そんな中、たった1人勘の鈍いサーヴァントはやっと今自分たちが置かれてる状況がやばいことに気づいたらしく慌てふためく。同時に藤丸もとっくに決めていた覚悟をさらに踏み込み、そこにアルトリア・ベンドラゴンが後押しする
「命令を出せ、マスター」
「っ令呪解放!ジークフリート!アルトリア!それぞれ宝具を解放!!」
「私にあわせろ竜殺し、外せば殺す」
「だろうな……!」
急速に膨れ上がる魔力が全てそれぞれが持つ魔剣へと注がれる。
それにより二柱の魔力は天を貫き、あたり一帯を暴風で包み込みながら急速に広がり、さらに魔力を増強させていく。
事前のプランでは各個撃破、その後聖杯回収だったがそんな悠長なことを言ってる場合ではない。
ゆえに令呪を二画切り、速攻で城ごと敵をぶっ倒し、聖杯の回収は後回しにする。この場で最悪なのは聖杯を破壊してしまうことでは無く、この特異点もろとも人理が崩壊してしまうこと。そのことについてマスターはよく理解していた。
「っ今よジル!」
だが、邪魔されることくらいジャンヌ、といよりも元帥であるジルは分かっていた。
だからこそ姿も現さず、カルデア一行が仮に対城宝具を放とうとも竜の魔女だけは生き残れる程度に威力を減衰させる程度の海魔を大量に召喚できるよう準備していたのだ。
「ここであの化け物か!!」
まるで塔のように突如オルレアンの城の目の前に築かれた……いや、積まれた海魔は竜の魔女の姿をカルデア一行から完全に隠す。その竜の魔女と一行の直線上には二振りの魔剣が構えられており、完全にジルの思い通りになった。
このままでは最悪の事態竜の王の召喚を招くだろうとその場の誰もが察した。
「っただで済ます気なんてサラッサラ無いのよッ!星のように!『愛知らぬ哀しき竜よタラスク』!」
だが積まれただけの海魔は文字通り肉壁でしか無い。キャスターであるジルの宝具によって召喚された生物とはいえ、その宝具の出典・性質上、一個一個の個体が強力なわけでも硬いわけでも無い。そんな肉壁の塔に風穴を開けることはサーヴァントも万全であれば宝具を使えば余裕だ。
タラスクによって塔に一つの大きな穴が開く。
すぐに塞ごうと、穴の周囲にいる海魔がモゾモゾと動き出すが、肉塊ごと潰すことなど造作もない。
「・・・?・・・ッ!!?」
「っマスター・・・?・・・先輩ッ!?」
サーヴァントとマスターが万全の状態であれば、だが。
「汚らわしいモノですね、私も焼き払いま——」
「!? ちょ、っアンタストップ!ストーーップ!!」
「……何ですかトカゲ」
「子犬の様子がおかしいのよ!」
「え……」
清姫はエリザベートを睨むジト目から、見開いた両眼を後ろにいるはずの藤丸の方へと変えた。
すると胸を思いっきり押さえつけ前のめりに倒れこむ彼の姿があった。
《魔術回路に異常値ッ!それとバイタルも不安定になってる!!》
「先輩っ!!」
「落ち着けロマン、マシュもだ。坊主、痛いのはどこだ」
「む、むね……」
「OKだ、喋れるなら致死性のものじゃない、呼吸も苦しいわけじゃなさそうだ、ゆっくり呼吸しろ」
「ッッ!二人ァ宝具ッ!!」
「喋るな」
ここで仕留めなければいけないと感じている一般人は、胸痛に耐え大声で頼みの2人に指示を出す。そのせいでさらに痛みが増し胸を押さえスネークに怒られる藤丸。
だが、そこまでやられて、頼られて、なにもしないで何が英雄か。少なくともマスターが倒れている前で魔剣を握る2人の英霊はその期待に全力で応える。
「まだ未熟なマスターだ、無理はさせられん、ここで決めるぞ」
「元からそのつもりだ、長引かせる気は元からない……!」
「ほお……ただ謝るだけの奴かと思っていたがそんな顔もできるか」
「ただ苦しむ顔を見たくないだけだ、俺のせいでそうなるならなおさらだ」
「……そうか」
それだけ答えると輝きを増した二柱は2人の英雄が余力を考えず自前の魔力も注ぎ込み全力でたたきつけることを示していた。
「邪悪なる竜は失墜し、世界は今落陽に至る。撃ち落とす!」
「卑王鉄槌。極光は反転する。光を呑め!」
『『
聖剣であり魔剣ともいえる二振りが、
それぞれの魔力を帯びたまま、目の前に立ちはだかる肉塊ごと全力でオルレアンに叩きつける
「反動くるぞぉ!!」
《宝具は使っちゃダメだ!藤丸くんの状態が悪くなる!!》
「なら対ショック姿勢!」
「ソレどんな姿勢だい!?」
「地べたに張りつけ!!」
「ッマスターは私の後ろに……!」
「我が旗よ。我が同胞を守りたまえ!」
「ニャニャッ!」
叩きつけられた青と漆黒の光は暴力的にフランスの大地を抉りながら竜の魔女が立つ城へと襲いかかった。
スネークはすぐに匍匐姿勢になり五体投地するように腹ばいになり、頭部両手で守る。ほかのサーヴァントもそれぞれの持つ得物やスキルで自分の身を守り、藤丸の周囲はマシュとジャンヌが固めた。
直後、周辺に圧倒的な暴風と粉塵とが混ざり合った嵐を巻き起こり、カルデア一向にも襲いかかる。
その嵐の元は肉塊へとも襲いかかり、さらに二色の柱が追撃する。
最初は真正面から受け切ったものの、肉の壁はやがて吹き飛びながら蒸発していき、そのまま形を崩していきながらオルレアンの城へと激突した。城と二本の柱に挟まれ何か奇声をあげる海魔だったが、暴風によって誰の耳にも届かず、そのまま潰され、蒸発していく。さらに二柱の勢いは止まらず、そのまま城の外壁を破壊する。
片方は竜特攻を持つ対軍宝具、もう片方は対城宝具であり、その威力・相性は今置かれている条件下において発揮できる最大火力となる。その分類名の通り、漆黒の光は城を完璧に攻略していた。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
やがて嵐はやみ、スネークはマスターの様子を確認する。
「マシュ、マスターの様子はどうだ?」
「い、一応安定、しているように見えます!」
周りのサーヴァントも他のサーヴァントを確認しながら、周囲を確認する。かの聖剣使いの2人の姿は確認できたが、まだ前方の城があったであろう場所の様子は砂埃で分からない。そんな中、ロマンが藤丸の状態を説明する。
《多分魔力欠乏症だ。サーヴァントを運用するための魔力は全てカルデアの発電によって賄ってるから召喚者の魔力量に依存しない、あくまで藤丸くんは君たちを繋ぎ止めるパイプだけど……》
「パイプでも過剰に流れれば損傷する、それが慣れてない状況下での連続運転ならなおさら、か」
《幸い、少しでも休めばすぐに復帰できる。バイタルもさっきまでは不安定だったけど今は安定してる、君たちを現界させるくらいなら問題はないよ。流石に宝具を撃たせるわけにはいかないけど》
「ですが、その心配は——」
「よせ、まだ仕留めたか分からん。おい、そっちは大丈夫か?」
「……ああ、私は問題ない」
「……すまない、正直私は休みたい、これ以上の戦闘は難しい」
マシュはまだよくわかっていない因果律の調整方法の定番をしようとしたところでスネークは冷静に止めに入り、前線で宝具を全力で放った2人の確認をする。竜殺しは本人も申告した通り、剣を地面に突き刺しながら肩で息をしており、弱点である背中を晒している状態だった。仕留めるなら絶好の瞬間だろうが、それをわかっている周り……といってもフリーで動けるのはゲオルギウス・マルタ・スネークの3名のみだが、その背中をカバーしいつでも攻撃を防ぎ、すぐはんげきが出来るようになっている。
一方のアルトリア・オルタはそれと比べると余力があるように見え、自力で立っており息も上がっておらず、ジークフリートと同様に地面に剣を刺してはいるものの、両手で柄を持ち構えているだけだ……が、実際は宝具を撃つのはもちろん魔力放出でかっ飛ぶ余力も残っていない。もちろん自衛やジークフリートの背中を守る程度は出来るが、そのジークフリートの背中を気にする余裕が無いお陰で、今その背中をカバーすることができていない。
「まあ無理はするな、坊主の側に居てやれ、ここから先は俺らが出張る」
「……すまない、頼んだ」
「私は頼んでいない」
「お前もだ騎士王、無茶して無駄に魔力を消費してあいつに迷惑かける方がお前にとっては癪だろう」
「…………フン」
そう言ってジークフリートは素直にゲオルギウスに付き添われながら、騎士王は不機嫌そうにゆっくりと後ろに下がり、代わりにスネークとマルタが前に出る。
2人の前方に広がっていた土煙は晴れていき、暴力的に通り過ぎた光の柱の爪跡が現れた。
城はほぼ全壊。
一柱ではなく二本による同時攻撃だったため、左右末端は全て消し飛び、城の中央部は衝撃波で砕け散り、中央にあった土台の一部、それも宝具が直撃した方とは真逆の最後方の部分だけが原型を留めているだけで、他は全て瓦礫と粉塵になっている。
だがそこに肉塊や血の跡はなく、死んだり倒れたりした痕跡は残っていない。
「……あいつはどこかしら」
「正しくはあいつら、だが……そういえばもう1人はどこにいる?」
《さっきの宝具のお陰でそこの空間の魔力量がすごい、おかげでこっちのレーダーでもサーヴァント反応がわからない、もちろん君たちの位置も正確に把握できてない。けど、聖杯の反応は確かにあるよ、どうやら君たちの前方みたいだけど……》
「ならアレの後ろよね」
そう言ってマルタが指差すのは、唯一残った土台。
そこ以外に姿を隠す場所などなく、何よりワイバーンを誰も見てはいないが、あの嵐と衝撃波の中ではワイバーンもろくに飛べない。そのワイバーンの死体も見当たらないとなれば隠れているに違いない。
「……おかしいな」
「何がよ?」
「……嫌な予感がする」
「え、ちょっ、ちょっと!」
スネークは敵が投降してくることも、制止を待つこともなく、M16を構えながら急ぎ残った土台部分の裏側を確認する。すると、やはりと言うべきかそこに敵の姿はなく、ただのスペースしか無かった……が、代わりに一人分幅がある穴が空いていた。
深さを確認することもなく、スネークは腰から下げているグレネードのピンを引き抜き、時間差で2個投げ入れる。
「一体なん——穴?」
「離れろ、爆発する」
「ん」
慌ててマルタも付いてきたが、すぐに離れるように促す。
爆発という言葉に驚きもせず、かの聖女はさっさと穴から離れ、手に持つ得物……ではなくて杖を構えいつ敵が出ていてもいいよう備えた。それはスネークも同様で、銃の狙いを穴の付近に固定する。
だが穴からは何も出てくることはなく、数秒がたったあとに小さな爆発が2回続いた。
「おかしい」
「だから何がよ、それこそ彼女が消えたのはこの穴に逃げ込んだんでしょ」
「よく見ろ、この穴は湿っていない、少なくとも掘られてから1日以上は経っているだろう。それに俺たちが感じたグレネードの爆発があまりにも小さい、お前も揺れは感じなかったよな?」
「え、ええ」
「だとすればこれは単に縦穴を掘った代物じゃないといことだ。日本ではタコツボと言ったか、少なくともそういった簡易的な塹壕ではなさそうだ」
そう言いながらスネークが銃を構えながら穴を覗く。だが穴の奥底は視認することが出来ず、陽の光は途中から途切れ、グレネードが爆発したのは確認できる範囲外だとしかわからなかった。
「そうなるとこの穴の中に入る……わけにはいかないわよね」
「地下に要塞、は言い過ぎだろうが、いわゆる工房が作られてるだろうからな……こう言う時にドローンでもあればよかったんだが」
《そうだねぇ、索敵用のツールはカルデアでも用意してなかったなぁ、検討の余地ありだね》
《けど確実にその先に敵である竜の魔女であるジャンヌ・ダルクはその先に……》
「問題ない、この手の専門家が俺たちの仲間にいるからな」
「専門家?」
「おいトレニャー 」
「ニャニャッ!」
そうスネークが地面に向かって呼ぶと、ポコっと土が盛り上がり、バサァとトレニャーが黄色いヘルメットをつけたまま、地面から顔だけを出して現れた。
「すまんがそこの穴の先を見てきてくれないか、俺たちじゃ入った瞬間にバレるが、お前ならバレずにこの穴の先がどうなってるかわかるはずだ」
「わかったニャ!みて戻ってくればイイニャ?」
「頼む」
「ニャッ!」
ビシッと背筋を伸ばした猫(のように見える)はそう言って再び地面に潜っていった。
トレジャーハンターでありアイルーでもあるトレニャーは、別に爆発部設置のプロではない。独自のルートで探索することが可能で、かつ静音率・生存率が100%なのだ。もっともこのスキルをスネークの様な方法ではなく、宝物をゲットするために使っているわけだが。
「……本当に大丈夫なの?」
《うん、あまりにも自然な流れで止めなかったけど、僕も心配になってきだぞ……》
「問題はない。あいつには無線機も渡してある、それにモノを発見する、案内することに関してあいつはプロだ。すぐに連絡が来るはず——」
「タイヘンニャアアアァァァァ!!!!!!!」
「……思ったよりも早かったな」
《早すぎじゃない?》
「どうしたのネコさん?そんなに慌てて?」
すぐに連絡が来るどころかもう戻ってきたトレニャー。
流石のスネークもこれには何も言えず、ロマンもこれってどうなのさと言わんばかりの表情をしている。とりあえずマルタは、はじめてのおつかいで家を出発できない子を相手する様に優しく声をかけた。
「すぐ逃げるニャッ!!」
「・・・なに?」
「あのお姉さんデッカイモンスターといたニャァ !!」
《デカいッて、ファヴニールよりも!?》
「おミャーも逃げるニャ!!」
トレニャーは早々に地面に潜り、その場から逃げ出し始めた。
やり取りを無線を通して聴いていたメンツは、その大きさに驚いていたが、スネークはトレニャーをよく知っているからこそ、言葉の本質を見抜き、すぐに車を藤丸の近くに呼び戻した。
「坊主!すぐに撤退だ!!」
《ッ地下から超強力な反応!?彼女がいっていた竜の王か……!》
「とにかく城から離れる!」
「ここで仕留めきればいいんじゃないの!?」
「無理だ!トレニャーがデカいと言った、つまりあの女が召喚したのはファヴニールより強い!!」
《そりゃデカいなら強いよね!!》
「違う!!野生の本能でデカいと言っただけだ!ファヴニールを見て素材としか思わなかったあいつが逃げた!そういうレベルだ!!」
トレニャーはこの世界とは別の世界からやってきた生物であり、極めて生命力の強い動植物がそこかしこにいる自然界でサバイバルしてきた一族の一員である。ハッキリ言ってファヴニール程度の化け物ならいくらでも見慣れているし、素材でしかない。
だが素材どころか生き残ることすら難しい化け物もまた見慣れている。
敵わない時は逃げる、トレニャーはわかっているのだ。
「……すまない、余力を残しておけば」
「そう言ってる暇はありません!すぐに車に!!」
「霊体化できるやつはそうしろ!他は車に乗れ!」
「わ、わかった!!」
一時的に体調が悪くなった藤丸だが、どうにか復帰した。
だが誰かが魔力を大量に消費すれば、またすぐに状態は悪くなるだろう。だからこそスネークはこの場にとどまらず、一旦距離を置くことを選んだ。
車には藤丸やマシュ、ジャンヌに体力を消耗しているジークフリートが乗車した。
「ここに救世の旗を再び掲げよう!ここに集え!ここで率いられよ!ここで統べられよ!!なぜなら彼女がここにいるのだから!!」
「ジ、ジルの声!」
「全員乗ったな!?出すぞ!!」
車を一旦ワームホールで返していたのが幸いし、宝具の荒らしの被害にあうこともなかった軍用車両はスムーズにエンジンがかかり、アクセルを一気にベタ踏みされても急発進した。
《・・・ハアアァァァ!?》
「どうした!」
《こっちの計器の異常を疑いたいくらいだよ!!生命反応がもはや測定不能って!?》
《ッ観測は維持!絶対に藤丸くんとマシュの存在証明は途切れさせないでよ!》
その間にも事態は悪くなる一方らしく、ロマンは叫び、ダヴィンチはまじめに指示を飛ばしていた。その超巨大な生命力はサーヴァントを始め、藤丸ですらわかる代物になってきていた。それに比例する様に、地面が揺れはじめ、城があった土台部分が盛り上がりはじめた。誰が見ても城があった場所から何かが出てくるのは明白だ。
「い、一体何が出てくるの!?」
「分からん!いくらか検討はつくが、どれも面倒な相手だ!!」
「検討がつくんですか!?」
「トレニャーが逃げたならトレニャーの世界にいるモンスターで間違いない!」
「そ、そんな別世界の生き物を彼女は召喚できたんでしょうか!?」
「触媒と聖杯さえあればできるだろうな!それでも竜に関わるサーヴァントだけで召喚できるとは考えにくいが……」
「ニャア!」
「と、トレニャーさん!?」
「こっちに乗った方が安全だニャ、どうにか間に合ったニャ!」
ここで、車体のドア部分からトレニャーが這い上がってきた。
野生の勘は自力で逃げるよりも、スネークらが乗る物体に張り付いた方が安全かつ確実だと判断したらしく、地面を潜って早々に合流していたらしい。
「車の下に張り付いてたか……お前、あのモンスターの正体わかるか?」
「真っ暗で何にも分からニャかったケド、とにかくデカかったニャ!!」
「リオレウスと比べるとどっちがデカい?」
「オイラがさっき見た方がまだデカいニャ!!」
「そうか、なら——」
「すまないが何か出てくるぞ!」
後部座席で座らされているジークフリートがそう報告する。
いまだ魔力が回復しきっておらず疲れてはいるが、ただならぬ気配から無意識に剣を握る力が強まっていた。なによりファヴニール以上の竜の気配がそうさせていた。姿はまだ盛り上がった土で見ることができないが。
「……何だろう、アレ」
《間違いなく竜の反応だけど……なんなんだこの反応……!?》
「これほどまで強力な竜がいるのか……」
「悪いがファヴニールは確かに強い、だがトレニャーの世界からきたモンスターは、あの竜よりも強いのがもっといる」
そう言いながらも車はさらにスピードを上げながらも、大きく弧を描くように城の外周を走る。ここで離脱した場合、召喚された竜は好き放題に暴れ始めるだろう。そうなれば打つ手がない。急いで離脱したのは様子見もあるが、藤丸の体調を考慮したのと、距離を取った方がまだ柔軟に対応できるために過ぎない。
決して逃げるためでは、ない。
「……倒せるんでしょうか」
「倒すしかない、ただでさえ今のフランスはワイバーンで荒らされてる。そこに竜の王が放たれてみろ、それこそ終わりだ。ましてやトレニャーの世界の竜はさっきも言ったが厄介な性質を持つ奴が多い、聖杯によるバックアップもそこに乗っかればもはや手がつけられない」
《……安全を考えれば今すぐ藤丸くんを一旦帰還させたいけど》
《ダメ、そうしたらもう聖杯回収どころか人理修復も失敗する、ここで決めるしかないよ》
カルデアの観測チームもここで逃げれば全て手遅れになることを見抜いていた。
なにせ、ロマンが計器の異常だと信じたいと言ったように、いま竜の魔女が召喚したと見られる竜の生命反応は、カルデアのあらゆる情報を拾う事象記録電脳魔・ラプラスのデータを基に、霊子演算装置・トリスメギストスによって観測データを分類しているにもかかわらず、測定不能を示した。
それはつまり、地球上で今まで同等のものが観測されたことがないほどまでに生命力にあふれているのだ。
その事実に気づいているマシュは、弱音を混じらせながら呟くのも無理はない。それに対してスネークも励ますことはなく、為すべきことを言うだけだった。一方で藤丸はマスターとしてどうしたらいいのかを彼なりに考えていた。
「こんなこと聞いたら怒られるかもしれないけど……ジークフリートさん」
「……何だろうか」
「ジークフリートさんの宝具で倒せる?」
「……致命傷は与えられるが倒しきることは難しい、それはかの騎士王でも同じだろう」
「貴様、勝手なことを言うな」
「事実だろう」
「…………」
霊体化した状態でアルトリアは抗議するも、深く追撃できない、つまりはそう言うことだ。だがそれをあまり気にすることなく、藤丸はさらに考える。
「……クー・フーリンの即死宝具で仕留められる?」
「悪りぃなマスター、そいつの期待にはちと答えられそうにねぇわ」
「随分と久しいなマスター」
「あ、クー・フーリン、エミヤさんも」
そこに斥候二人組が走りながら合流し、エミヤの方は車のドアに手を引っ掛け体を車の外で預けていたがクー・フーリン。
どうやら2人ともやや着ているものがボロがあったがそれほど消耗はしていない様子で、余裕そうな雰囲気を醸し出していた。だがマスターの提案に対して随分と消極的な意見を出したのはクー・フーリンだった。
「え、それでクー・フーリンの宝具じゃダメなの?」
「ダメ、じゃぁないがな?俺の知ってる限りあの手のバケモンは心臓ぶっ刺したところで死なねぇんだわ」
「そうなの!?」
「それは貴様ぐらいだ……と言いたいが、私も同じ見立てだ。まだ全容は把握できてないが、これほどの力を持つ竜ともなれば即死する可能性は低い。もっとも、十分致命傷は与えられると思うがね」
「……令呪でジークフリートさんの宝具を撃ってもらった後に、クー・フーリンの宝具のコンボでいける?」
「おっ、最初の騎士王様の作戦通りになったな?」
「何が言いたいランサー?」
「別に?」
そう言って挑発的に何もないところへ向けて喋るアイルランドの御子。
しかし、その場にいる誰もがその何もないはずの空間で黒いライオンがいるのを幻視したとかしないとか。
「ちなみにだがマスター、エクスカリバー・モルガンを使わない理由は何かね?」
「え、多分ジークフリートさんはこのまま戦わせるのはきつそうだけど、宝具なら令呪のバックアップさえあれば撃てそうだから。アルトリアさんに宝具を撃ってもらってもいいけど、ジャンヌ・ダルクを倒さないといけないから、その時のための戦力温存……って、なんで笑ってるの!?」
「いいや、中々に考えていたようだからね」
「…………」
だがすぐにライオンは大人しくなったとかなんとか。
「イイぜ、そういう流れに任せていく感じは嫌いじゃない、むしろ好ましいぜマスター」
「私も異論はない、まだ戦おうとしている邪魔をするほど私は落ちブレてもいない」
「プランは決まったな、なら気分良く宝具がぶっ放せるよう他全員でバックアップだな」
作戦、というよりやる方法と流れが決まってしまえば、あとは勝手にやれる程度に戦いに慣れている英霊たちが具体的にプランを決め始める。
その一方で藤丸は一般人らしい心配を投げかけた。
「仮に……ここで決められなかったどうしよう?」
「坊主が心配する……ことだろうがその時はそのときだ、できることをやる以外ない。もし心配なら見届けながら考えろ」
「……わかった!」
「とにかくジークフリートの周りを固めろ、宝具を撃った後には回復させるために離脱だ」
「ならあらかたのサーヴァントは彼の背中を守りましょう、私の旗は癒しの効果もありますすし」
「じゃあ彼を私の馬に乗せればいいわね!」
「追撃は俺も付いていく、ほかにいるか?」
「私もいくわ……ちょっとあの娘ぶん殴んないと気が済まなくなってきたし」
「ニャニャ!姿が見えるニャ!!」
作戦は決まった、ジークフリートの宝具で致命傷を与え、クー・フーリンの呪いの朱槍でとどめを刺す。双方ともに狙いを外すことは許されないが、外すことはまず無い。問題になるのはこの二段階の攻撃で1匹の竜を仕留められるのかということ。
その相手となる竜は——
「……黒?」
「いや、紫色と黒だ、大きさはファヴニールの方が高さがあるが、全長で20m以上はありそうだが——」
「トレニャー、アレは……」
「……ニャ、オイラは見たことないニャ」
「だが居たよな、伝承で伝わる伝説で、“黒龍”が」
「ニャア」
「何、黒竜って?」
「……分からん、だがこいつの世界ではこういう伝説がある」
そう言ってスネークはとある伝説の一節を暗唱しだした。
それは運命の戦争、あるいは避けられぬ死を意味する伝説の黒龍。
数多の飛竜を駆逐せし時
伝説はよみがえらん
数多の肉を裂き 骨を砕き 血を啜った時
彼の者はあらわれん
土を焼く者
鉄【くろがね】を溶かす者
水を煮立たす者
風を起こす者
木を薙ぐ者
炎を生み出す者
その者の名は
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なお、本文中の黒龍・黒竜の違いは誤字ではありません。
※活動報告にて、今後のdaaaperの活動について書きました。
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