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追伸。みなぎ先生ご結婚おめでとうございます!
八雲紫は福太郎の記憶と自身の意識の境界を操作し、自身の意識を福太郎の記憶に潜り込ませていった・・・・・
記憶は比較的つい最近、彼が住んでいた足洗邸を始めて訪れた時の様子と住人達との交流から始まっていた。
その屋敷は少し古びた二階建ての大きな屋敷。二階の屋根には小さな小屋のような踊り場がある特徴的な屋敷だった。
「人間が住むにはアレだけど、妖怪には住みやすそうね・・・・」
そんなことを思いながら福太郎の経験を追体験していた。
『ここかぁ、「足洗邸」、ど、どうも今日からお世話になりま。田村です。よろしくおねがいしま。』
『あ!田村・福太郎さんニャ!こちらこそよろしくニャ。』
管理人の竜造寺こまは七本の尾を持つ猫又だった。橙と比べモノにならない妖獣だということが紫は経験から分かった。
「竜造寺というとあの鍋島騒動の化け猫かしら、結構な有名な妖怪じゃない・・・秀真国はこんなのがいくらでも、居るのかしらね?」
こまに案内されて、福太郎は屋敷を歩いていく。すると、屋敷住人に出会った。
五号室の住人 須美津・義鷹。気ままに怪異を倒し、探偵業をしているらしい。
『ん?オマエ人間? 人間のくせに「
屋敷の古井戸から腐乱死体を釣りながらそんなことをいう彼は、大妖怪の鵺だ。
「・・・・鵺まで居るの・・・もう何が出てきても驚かないわよ・・・・」
住むことになった七号室。悪趣味な光る骸骨のキーホルダーの付いたそれで部屋の鍵を開け、足洗邸で初めての夜を過ごしていた。そんな夜、ふと目を覚ますと天井から逆さまの頭が涙を浮かべながらこちらを見ていた。それは天井下がりの妖怪少女、笠森・仙。彼は臆することなく話しかけた。
『恨み言の一つでも聞いたるからそう怒りなや。』
『私、笠森・仙ホントに聞いてくれんの?』
それから福太郎はわざわざ脚立を借りてきて彼女の身の上を始めとして様々な話をした。
その後は断片的に住人達とのやり取りが続いていた。
何かと気にしてくれる六号室の望月・玉兎。彼女はエロ小説家兼探偵の助手
『なンの特殊能力も無い一般(パンピー)市民が賞金(ハンター)稼ぎにケンカ売ってど———すんのョ、このバカ!死ヌ気か?あ?あ!?』
一号室の住人、悪魔のメフィスト・へレス。彼は万魔学園で英語教師をしている。
『ンン!!いや———君達がいて、あ、ミーがいる。そして帰るべき家がある!良いデスなぁ———』
「メフィス・トフェレスってあのファウストの!?間違いなく本人よね・・・・足洗邸っていったい何なのよ・・・・」
二号室の住人、元極道で狂骨の味野・極楽
『オゥ!ワレ!新入りかい。ワシの長ドス知らんケェ?』
この老人は足洗邸に現れる怪異の大足に潰され死亡、義鷹が井戸に放り込み、妖怪狂骨になったらしい。先ほど義鷹が井戸で釣り上げていた腐乱死体だ。一部白骨化している。
「まあ、愛嬌のあるおじいさんね」
ある日、メフィストの趣味で取り寄せられた、守るべき民と村を失った「マサライの神像」の守護精霊マサライ。ファーストコンタクトは良くなく、福太郎は殺されかけていた。
しかし、彼は薄ら笑いを浮かべただけで気にも留めなかった。マサライは義鷹にこれされそうになったが、福太郎のとりなしで事なきを得た。
『私(コレ)は今カラ、オマエの痛みをウケル「楯」トナル。』
幻想郷よりも混沌としたそこの名は「足洗邸」人生の交差点。0からやり直せる変更点。黒は白へ。死は生に。悪人は善人に。無から有を作り出す、諸国民の家。
遠く隔たれた異界の邸を、八雲紫はどこか愛おしく思えた。
招かれざる客もやってきた
『申し訳ありませんが、足洗邸の住人の皆さんには、一時退室していただきます。』
ピジョル・大石率いる秘密工作員からなる中央の調査団、そのことごとくが邸に部屋に家神として覚醒したお仙に撃退された。しかし、大石はまたやってきた。
『何のゴヨウだと~~~~!仕返しに来たに決まってんだろ!ボケェェ!』
今度はハンターを連れて。なかでもチャンドラー「大イナル眠リ」バロネス・オルツイは強敵だった
『オレ達が依頼されたのは「二点」。「ヨシタカといゆ名の妖怪退治」「千束という名の妖怪退治」。』
これを義鷹が迎え撃った。
『昔からな、「化け物」は「人間」に「退治」されるんだょォ!』
『クソ肉ごときががッ!粋がる無ッ!』
だがチャンドラーの口撃に飲まれて負けそうになった
だが、福太郎の言葉で乗り越えた
『義鷹。人間にマネできひん「戦い方」見して』
『ヒャハ。わかった。ヒャハ。』
チャンドラーを地獄に通じる井戸に落として勝利した。
オメ―には。休みが必要だ。 福太郎殺してねーからな。
福太郎との人の姿をしたものを目の前で殺さないという約束を果たして。
それから何気ない日常が過ぎた。
『まいど。』
『まいど。』
『どっか行くのか?こんな朝早くに。』
『あーーー絵ェーーー描きに行ってきま。』
義鷹と二人で中生代の自然が復活している白亜の森に行った。というのも
『ここでオメェと別れたとして、その森でオメェが死んだとしたら、このオレ様は「足洗(アイツら)邸の住人たち」に、どーいった非難、中傷を受けると思う?あ――――見える見える、うらめしそーにオレを見るヤツらの顔が。』
足洗邸に越してきて、それほど長い時間がたったわけでもなかったが、住人たちは福太郎のことが好きだった。ある者はlikeの、ある者はloveの意味で。
途中、夢見長屋によりそこの住人と出会った後、白亜の森についた。
『フツ———に!見た目がスゲェ!!数年前まで滅んでいた大昔の木々や、植物や、動物が、ここにはフツーにあるのがスゲェ!』
『ヒャハ! そうか・・・俺だけじゃなかったか。非力な関西人でも、この場所は、心躍るのか。』
一人の非力な人間と正体不明の大妖怪が心を通わせていた。
ある日、メフィストが突然切り出した
『田村クン。今日ヒマですね。(断定)。』
本当に突然だった。
『キミ、教師になりなさい。美術の。』
福太郎は断ったか、彼の一番嫌な「アスファルトで頭ケズられたキン消し」にされ、一生そのままか美術教師になるかの二択を迫られ、メフィストが英語教師を務める万魔学園に行くことになった。
まぁ、学園長に会って話だけでも聞いてみてください。やるかやらないかは、それから決めてみても、良いでしょう。
そこには出会いが待っていた。
『はじめまして、田村・福太郎君。』
『はじめまして。』
『私は、数学とオカルトを教えている、黒瀬・誄歌といいます。あなたの教育係を申し付かりました。これからよろしく。』
彼女に案内され学園長にあった。
『やぁ、よく来てくれたね。私がこの「万魔」の学園長をしている、バアル・ゼブス=ベルゼビュートとゆう者だ。』
『「蠅の王」ゴールディングのベルゼブル?「大召喚」を起こした、「十支王」の一柱。』
彼が生き、彼が憎む世界を作った者と会話し、彼の意図を知った。
『人間であるキミに一つ聞きたいのだが、「大召喚」に加担した私が憎いかね?』
『イイエ。』
かつての世界を取り戻すべきだとする、学園長の事を福太郎は知っていた、だからこそ疑問だった、正すべきとする世界を肯定する、多人種、多種族学園を作ったのか。ベルゼビュートは答えた。この混沌とした世界を利用し、学園を作り、異人種を集わせ、それぞれの個性を活かし、より良く、この世界を生き抜くための強化と人間の歴史、文化、知識を忘れず伝えるためだと。もはや自分一人が異を唱えても如何しようもないからだと。
彼は彼の手を取って彼の頼みを受け入れた。
学園長室を後にして自分の教育係である黒瀬・誄歌に問うた。自分に名乗った名前は人間としてのモノなのかと。彼女はからかいながらも答えた。
『そうですよ。私たち「魔神」もこの世界を学ばなきゃならないから、まずは「形」から。「ヒト」としての「名前」をもってね。』
この世界に混乱してるのは「人間」だけではなかった。彼は教室の前で急に不安に駆られたが、その手を優しく引いてくれた。
『大丈夫だよキミなら。オモチロイし。ね。』
初めての授業は、いろいろあったが(主に黒瀬先生のせい)スムーズに進んだ。生徒たちにお互いの似顔絵を描かせるというたわいないものだったが、福太郎自身にとっては、大きなことだった。
『そっか。キッカケはエライ、アレやったケド、オレは今、教壇に立って、オレの一言で、色んな人種、人達が動いてくれる。そっか。こーゆーのも、有りかな?』
できれば出会いたくない、出会いもあった。昔なじみの双子。彼がおいてきた過去。目をそらしたい過去。昔、姉の方の上池田・美奈穂の夢を否定した。彼女の夢は強くなって体の弱い弟もみんなも守るという夢。自分を大事にしてほしくて、彼女のことを心配して否定した。
だが、彼女は頑固でテレビの中の正義のようになってみせると。
『ほんなら、なってみいや!誰にも負けへん、強い女になって、オレも助けてくれ———!』
そんな福太郎のいい加減な一言が彼女の一生を運命付けた。それを知っている弟の上池田・実歩は、それでも忘れた振りをする福太郎に言った。
『まぁ、ええよ。どっちゃでも、忘れてよーが、忘れてなかろーが、オレはな、良ェんやけどな、昔、あんたの言うた事、真にうけて、バカ正直に、正義のミカタやっとる、アイツ美奈穂のことぐらいは、思い出したってくれや・・・・。』
彼は過去と向き合えずにいた。大切なものが増えるのを避けていた。大切なものができる前に、足洗邸を出ようとした。
荷造りをしていたある日、義鷹に声をかけられた。福太郎の持っている安全靴を貸してほしいという。その代わりに義鷹の持つ「風雷棒」からもぎ取った珠を預けられた。
『ヒャハハ。良———い、日ヨリだなァ!なァ。』
『ああ、空の高いこんな日は、鳥がうらめしい。』
『ヒャハハ、良いだろう。面白いモン見せてやる。』
それは、真実よりもウソくさく、暗闇の中に白々しく、混沌の中に型創る、醜いそれを、ぼくは、美しいと思った。
『目が潰れんへんのはこの「玉」のおかげか?』
『ヒャハ!それとも慣れか?』
当初は紫は福太郎の記憶を覗くだけで、冷静なツッコミを入れることができたが、あまりにも強烈な福太郎の経験を直接感じていくうちに、田村福太郎の記憶と紫の意識は同調し、その感覚のまま、流されて行っていた。
義鷹は「中央」の知り合いの元に飛んでいった。その後にとてつもない大事件が起きるとは夢にも思っていなかった。
その日はあまりにも多くのことが起きた。先ず、近隣の悪夢館、夢見長屋、春雲楼から客人がやってきた。客人たちが帰る降り、悪夢館の吸血鬼であり館主ラウラ・シルヴァー・グローリーが日傘を忘れたため、夢見長屋の管理人、羽生・累、住人の久木・初音、二ツ岩・魔魅とともに後を追ったが、その折、怪異に襲われた。ラウラによって撃退されるも事件は起こり続けていた。足洗邸への帰り道、それは起きた。
ダイダラの鬼、血の鬼、飛縁魔・於七による足洗邸への攻撃だった。虚大神ダイダラを復活させるため、ダイダラの鬼たちは悪夢館、夢見長屋、春雲楼、足洗邸など各所の封印を解いていた。足洗邸には「右足の鬼」登美能那賀須泥毘古命が封じられていた。ダイダラとの戦いの中、何の力の無い自分にできる事を探し、行った。義鷹の「玉」でこまをパワーアップさせ、戦い、傷つく住人たちを激励した。そんなことしかできない自分に嫌気がさした。そしてもう一つできる事をした。それは対話だった。「右足の鬼」とのコミュニケーションだった。結果それは成功した。
『あなたが、大和・・・邪馬台国国王、那賀須泥毘古命。』
『そう。今は亡き、抹殺された国の王よ。』
彼は於七と比べればはるかに友好的だった。
『まぁ、座ろうゼ。な。オレ、こっから動けねェし。立ち話もなんだし。な。』
那賀須泥毘古は福太郎との会話し、質問に答えた。ダイダラのこと、国津神のこと、「中央」の神々とダイダラとが作った壮大なウソの事。そして、那賀須泥毘古は住人に力を貸してくれた。
『笠森・仙!私の力を受けし娘よ。嬢には、家に関する、全てに影響する力を与えた。「家神の力」!「足洗邸」にある限り、笠森・仙は神をもしのぐ!もっと大胆に、つっ走れッ!!』
那賀須泥毘古は親として、福太郎に己の思い語り、一人の人間として、住人としてどうするか、問うた。戦うことのできない福太郎に問うた。
『「親」ってのはな。』
『はい。』
『「見て」りゃあ良いのよ。自分の立てた木が、どんな形に育ち、どんな花を付けるのか。その木が立派に親を超えた時、親は自分の進化を確信して老いて行ける。安心して死んでゆける。』
『ところで・・・今から、私が、佐用津姫の側に立ち、虚神長髄と合体し、「足洗邸」を破壊するとしたら・・・・・・田村・福太郎。私を止める為に・・・私と戦うかね?』
『戦闘訓練もしていない僕は、あなたには勝てないでしょう。』
だから?
せやから僕は、皆を連れて逃げましょう。
逃げて?
逃げのびて、今日の出来事を、細かく絵や文にして後世に伝えますよ。それをヒントに勇者ッポイ人が、何とかしてくれるかもしれませんから。それがきっと、絵を描くことしか取り柄のない、僕が「
「生きて」「描く」か。
はい。せめて、この気持ちを、僕は信じたいですね。
那賀須泥毘古の問いに、福太郎は自信が見出した、自分のあり方を示した。自分のできる事を。なぜかその姿勢を那賀須泥毘古は大層気に入ったようだった。
良し!於仙との交際を認めよう!
は!?
これで我が家も安泰だ!!
各所で戦闘に決着が付いていた。住人たちと居合わせた者たちによって。那賀須泥毘古は再び眠りについた。
親はなくとも子は育つ。人は神を超える存在となるぞ!はははは。 神を超え、さらに強くなれ。そして、造れ、望む世界をッ! いつか又・・・いつか又・・・その日まで・・・少し眠りにつこうか・・・次に目が覚めた時、今日よりもっと笑うために・・・
眠りにつく那賀須泥毘古は笑顔だった。住人達+αは足洗邸を守り抜いた。でも、別れもあった、味野さんは心残りがなくなって、成仏した。こまは泣いていた。それを見て福太郎は意識を失った。あの時、大召喚の時がフラッシュバックして。
泣いている。十歳に満たない小さな男の子だ。その周りは全て崩壊していた。家も、世界も。ありとあらゆる場所と物、生き物に魔法陣が出現し、異形の者たちが現れていた。神、妖怪、悪魔、妖精、UMA、名状し難きあらゆるものが現れ、壊し、殺し合い、死んでいた。一言でいうならば地獄絵図。そんな中に小さな男の子が泣いていた。あらゆるものが灰燼に帰し、血の匂いが漂う。
この男の子が福太郎であろうことはすぐわかった。そんな彼の右肩にも魔法陣が現れた。しかし、現れたそれは福太郎を異形のものから護った。幼い彼には余りにも辛すぎる記憶を抜き取り、仰天しつつも泣き止んだ福太郎に話しかけていた。
僻邪の獏、莫奇だ。まだ白澤に神化する前の獏だ。
『子供さん、子供さん』
『うお!なんやオマエ!ゾウか!ゾウの怪獣か!カッコええな!』
この出会いは彼らにとって幸運だった。多くのものが夢を見なくなったことで飢え、姿を減らしていた獏たち。絵を描くことが好きで、将来絵を描くか、物を作るものになりたいと強く望み、強く夢見る子供である福太郎。福太郎の中でなら莫奇は飢えることなく眠ることができる。代わりに福太郎は夢を叶えるために生きることを望み、護ってもらうことを望んだ。
『オレのこと守ってくれや!』
『良いね。この出会い必然かもしれない。』
獏は後に大召喚と呼ばれた「大災害」から福太郎を守り抜いた。それから福太郎は災害孤児として生きていくこととなった。いくつのもの出会い、別れ、死を見ながら生きていった。あまりに辛いものは莫奇が食べ、福太郎を守ったが、福太郎が17歳の時にそれら全ての記憶を、福太郎のために返した、未来に向かって歩んでゆくために。しかしそれらの記憶は彼のここを圧し潰してしまった・・・・。
そうして、過去の記憶の夢から目覚めた福太郎は絵を描くことにした。足洗邸と住人たちの絵を。その時、義鷹が帰ってきた。福太郎を見て彼は言った。
『三カ月、もって半年、オマエは死ぬ。』
福太郎は笑い、泣いた。そこには喜びと悲しみ、怒りがあった。ずっと苦しんでいた。それまで住んでいた世界が滅び、友達も家族もみな失った彼には、辛すぎた。だからこそ死を望んだ。
『せやな、何して残り生きたろうか思ったけど、結局、オレは絵を描くんやろうな。』
そう言って絵を描く福太郎に義鷹はいった。
『「足洗邸」ココから出るなら、一声掛けろよ。オマエの最後を看取るヤツが、一人ぐらい、いても良いだろ。』
今度は、嬉しくて泣いた。
元の日常が戻ってきた。万魔学園に行き、置いてきた過去に向き合う覚悟を、昔なじみの双子に伝えた。同僚の黒瀬・誄歌に悩んでることを余命が僅かなことを見抜かれた。彼女は突然関係ない蘊蓄を聞かせ、突然キスして、言い放った。
『あはははははははは、おもしろーい!面白いでしょ?』
『え?!』
『生きられるだけ生きて、最後まで確りと生きる!呪われてるって、呪われてないかもしれないじゃない!』
『え?でも・・・』
彼女に勇気づけられ、新たに歩んでいく覚悟を決めた。しかし、時を待たずに、もっと大変な大事件が起きた・・・・。
意識の上ではかなり長い時を過ごしているようでも、この間僅かに数分、紫の異変に気付いたのはその場に居合わせた者たちだった。始めは紫の百面相に笑いをこらえていたが、暫くして異変に気付いた。それは八雲紫という妖怪の賢者を知る者にとっては、あまりにも信じられない光景だった。
ポタリ、ポタリ、ポタリ
ハラハラと大粒の涙をこぼし始めたのだ。その状況に霊夢は何事かと白澤に問うた。
「紫に何をしたの!こんなの普段の紫じゃないわ!正直に言わないとただじゃ置かないわよ!」
「落ち着け霊夢。」
「萃香、あんたは心配じゃないの!紫の友達でしょ!」
「萃香殿の言うとおりだ、落ち着け、彼は何もしていない。」
憤る霊夢を宥めながら、慧音と萃香は静かに諭し、言葉を続けた。
「霊夢忘れたのかい。妖怪は精神に重きを置く。多分、福太郎の記憶が強烈だったのさ。しかし、顔に似合わずなかなかハードな人生を送ってきたんだねぇ。」
萃香の言葉に慧音が続けて霊夢に話しかけた。
「おそらく、記憶を読む上で意識がシンクロしてしまったんだろう。大丈夫だ、彼女は妖怪の賢者、心配はいらない・・・・筈だ。」
慧音はそういうと白澤を見やる。白澤は豊かに蓄えた髭を撫でながらうなずいた。
「彼の人生はおそらく、この世界、外の世界でも類を見ないだろう経験であふれている。皆の言う通り、福太郎の経験は彼女にとってショックが想像以上に大きかったのだろう。」
「バァクバクバク~。そうだね、福さんはそんじょぞこらの人間や妖怪には想像もつかないような人生を歩んでいるといえるからね。仕方ない。」
白澤の言葉に霊夢は皆の顔を見回してから、福太郎と紫を見て言葉を零した。
「福太郎さんはどんな経験をしてきたの・・・・・」
廻りの動揺が伝わったのか、福太郎が目を開けた。
「ゆ、紫さん⁉どないしたんですか⁉」
「ハッ❕❕はぁ、はぁ、はぁ・・・ちょっと席を外すわ・・・・」
福太郎の言葉で気が付いた紫はそういうと、スキマの中に入り、少しして戻ってきた。鼻をかみ、涙を拭いたのだろう。鼻と目が少し赤い。しかしながら、凛として真っ直ぐ福太郎を見据えた。そこには胡散臭さなど微塵もなかった。
「田村福太郎。あなたはどうするつもり?辛い・・・悲しい人生を歩み、あらゆるモノ達に出会い、ようやく前を向いて歩み始めたのに・・・あなたはどうするつもり?」
その真剣な問いかけに福太郎は静かに答えた。
「そうですね、帰る方法を探します。」
「もし、見つからなかったら?」
「そうですね、何時ものように絵を描きます。」
「絵を?」
「そうです。そうして死ぬまで生きることにします。」
「そう・・・・貴方らしいわね。」
「そうでしょ?」
紫は静かに笑っていた。その笑みは母性に溢れたものだった。
「田村福太郎、幻想郷はあなたを歓迎しますわ。改めてようこそ幻想郷へ。」
「はい。いろいろご迷惑かけると思いますが、ようろしくお願いします。」
紫は手を差し出し、微笑みながら福太郎はその手を握った。
その様子に見守っていた霊夢たちはほっと胸を撫でおろした。
「はぁ~、どうなるかと思ったわ。」
「結構面白かったけどなぁ。紫の泣き顔なんて滅多に拝めないし。」
「萃香殿・・・」
萃香の言葉にさっきの凛とした雰囲気はどこへやら、途端に顔を赤くした。
「す、す、萃香!さっきのは忘れて頂戴!」
「嫌だね、文屋にでもこの話をしようかね。『妖怪の賢者、夜、外来人の男に泣かされる』明日の見出しは決まったね。写真が無いのが残念だねぇ~」
「萃香!とっておきの外の世界のお酒上げるから、それは勘弁して~」
妖怪の賢者の悲鳴にも似た声が夜の博麗神社に響いていった。
萃香が外の世界の酒で手を打つことを決めると、その場にいる者たちは皆今夜の事は秘密にすることを約束した。
「それで、今夜はどうするの?」
霊夢は福太郎と白澤、慧音たちに聞いた。
「私は福太郎の中に戻ろう、そうすれば場所は取らぬし、迷惑も掛からん。」
「そうだねぇ~。何時もどおりに過ごせば問題ないけど、福さんはどうする。住む場所ないだろ。」
「せ、せやな・・・どないしよ!」
慌てる福太郎に慧音は笑って、安心しろという。
「このことを予見していた阿求が、このような場合は屋敷に連れて来いと言っていたからな。暫く厄介になるといいだろう。」
「ホンマですか!よかった~。」
その様子を見て、紫は立ち上がり、スキマを開く。
「話は決まったようね。それじゃあ私はもう帰るわ。・・・・それと福太郎、そのペンの扱いはくれぐれも気を付けなさい。また会いましょう。」
そう言い残し、紫は消えた。その夜、萃香と福太郎はそのまま神社に泊まることにし、慧音はいったん家に戻り、午前中の授業を終えた後に福太郎を迎えに来ることになり、福太郎の長い一日は終わった。
「紫様、あの男・・・・何者ですか?紫様があのようなお顔でお戻りになるとは、思ってもみませんでした。」
「藍、彼は、田村福太郎は普通の人間の絵描きよ、それ以上でも以下でもない。ただ、少々稀な体験と力を持っているだけ。・・・・幻想郷はなんでも受け入れる。彼もね。・・・・・楽しみね、彼はどんな風を吹き込んでくれるのかしら?」
ようやく本編を始めることができました。サクラコードもルート3も更新が始まっているし、原作の方も楽しみですね。
皆さんのご感想、ご意見、ご要望お持ちしています。
最後に、論文なんてコリゴリだ!!