人間の絵描きの幻想郷見聞録    作:信州のイワ

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 福太郎が人里で準備をしているころ射命丸は・・・


 皆様、お久しぶりです。さぁ、射命丸たち妖怪の山の動きになります。

 今回は独自設定盛りだくさんです。


烏天狗旅人の来訪に備える事

  

 田村福太郎の取材許可を獲得したは良いが、その来訪の準備に追われていた。

 いざ、福太郎が来て不審者侵入者として排除されてしまっては約束を守れない上に人里の勢力だけではなく博麗神社とも事を構えることに成りえる。

 当然それを避けるために各所へ連絡や根回しを行わなければならない。

 しかしそれは苦難の道でもある、白狼天狗たちへの連絡や河童たちへの面通しや根回しより難しい事をこなさねば成らない。

 新たに上司となった飯綱丸龍の説得である。説得の場には山の安全にかかわるため、相談役として飯綱三郎も同席していた。

 

 近年、これまで上役であった大天狗飯綱三郎はその勢力を保ったまま娘の飯綱丸龍に家督を譲り引退をした。

 

 曰く、「古きが生き、新しきを殺してはならない。若者に舵を譲るべきだ」

 

 との事である。

 

 飯綱三郎はかねてより革新派に身を置き成功を収めてきた。そもそも、飯綱三郎を筆頭とする信濃出身の天狗は極めて真面目なものが多く、正義と秩序を重んじるものが多く、山や集落を守護し治安維持を担ってきた。その為、多くの妖怪たちに信頼され、政敵にすら尊敬されていた。

 故に、新聞の普及に関しても「信濃天狗がいう事なら」と信頼され速やかに広がっていった。

 各種新聞の発行を後援し、自分たちの存在を喧伝するだけでなく、情報を収集し勢力を拡大する事により名声を欲しいままにした。そしてその考えは多くの賛同を持って迎えられた。その為に守矢神社による新たな統治にも柔軟に対応できたのである。

 仮に、飯綱三郎の革新派が勢力を伸ばしていなければ、保守派の頑強な抵抗を受け戦乱の戦火が妖怪の山を包んでいただろう。

 

 「さて、射命丸よ。その人間の絵描きとやらに自由に我らの山を歩き回らすことは果たして得策かな?」

 

 「はい、その男は外来人。脅威はありません。」

 「果たしてそうか?奴をそこまで侮って良いか報告によれば八雲や博麗、人里の名家とつながりが深いという。密偵の類ではないと言い切れる?」

 

 

 射命丸や犬走椛が集めた情報を飯綱丸に伝えたは良い物の、あまり良い反応はなかった。田村福太郎の職業が問題だった。芸術家ひいては絵描きとして地形や防備に対する諜報活動をやりやすいという事が問題であった。

 古くは松尾芭蕉が公儀隠密として河川なとの地形調査を行っていたことは有名であるし、ダンサーのマタ・ハリは優れたスパイであった。

 

 

 「田村福太郎は決してそのような方ではありません。好奇心が強いことは認めますが、それは個人的なものであります。それに、地形や防備の観察では無く自分の目に映ったものを描くことに主眼を置いており、記録の為では・・・」

 

 「とはいえ、それを可能としている能力がある事は否定できぬ。おいそれと密偵と分かっているようなものを入れるわけにはいかぬ。日常的に出入りしている参拝客や魔法使いとは違い、この山を知るために止まるのだぞ。」

 

 「ですが、彼はとても面白い人間です・・・・」

 「お前の新聞の為に山を危険にさらせと?」

 

 

 説得は難航していた。田村福太郎のいかなるもの共打ち解ける人の好さが裏目に出ている結果だった。飯綱丸の説得は難航している。八雲紫と昵懇の絵描きという事実が心証を悪くしていた。

 

 

 「許可してやれぃ。龍。」

 「これは、三郎様ご機嫌麗しゅう。」

 「親父殿・・・」

 

 もはやとん挫するかというところで思わぬ助け舟がやって来た。先代大天狗飯綱三郎。日本三大天狗の一角であり、天狗を滑る天魔の懐刀。今や楽隠居の身とは言えその発言は重い。

 

 「ですが、親父殿。密偵の可能性がある限り許可は・・・」

 「密偵が必要かよ。あの八雲だぞ、それこそもっと適任が居るだろうし、あ奴の前では我らの秘密などあ奴の能力の前では張り紙同前よ。」

 「しかし・・・」

 「なあ、龍。疑うのは大事だ。上に立つものは常に最悪の事態を想定すべきだ。だがな、事実を正しく認識できぬではそれこそ敵の欺瞞にも容易くかかる。この絵を見ても密偵だというなら、絵描きも詩人も皆密偵よ。心動かされたままを表す者を疑うでは、品の無いならず者と同じぞ。」

 

 

 そう言いながら、是非にと言って射命丸が借り受けてきた『白亜の釣り人』の軸をしげしげと眺めていた。 

 

 「親父殿、その荒唐無稽な軸を見てそうおっしゃるのですか?」

 「だからいいんじゃねぇか。描いた田村福太郎の眼には心にはその荒唐無稽な世界が絵にするぐらい素晴らしい物として映ってたんだよ。お前はもちょっと情緒というやつを学べ、出ないと他者の心はつかめねぇぞ。」

 

 「しかし、これは・・・」

 「それにな、いざホントに密偵ならその場で証拠を押さえて叩き斬ってしまえよ、それくらいしても問題ねぇ。」

 「な!!」

 「三郎さま!そんなあんまりです!!」

 

 軸をめでる目から一転、大天狗としての鋭い目に切り替わり、バサリと言ってのけた。その言葉に飯綱丸も射命丸も驚愕した。

 

 「それに、田村福太郎なる者は密偵では無いのだろなら問題ない。他に二三条件を付けてこの件は終わりだ。田村福太郎の入山と滞在を許可する。この飯綱三郎坊の名のもとにな。手形は俺と龍の連名で出せば文句はでねぇだろうさ。」

 

 密偵なら斬るを条件に話が進んだが、福太郎は密偵でないのは間違いないため、それでよいという事になったが射命丸は疑われる行動はくれぐれも控えるように言い含めねばならないと肝に銘じていた。

 しかし、それでも飯綱丸龍は引き下がらなかった。

 

 「ですが、長期間しかも自由行動を許したうえで人間の立ち入りを認めるとは前代未聞!」

 「バカ丸、前例がねえからと上が潰してたら何も育たねぇし、何もならねぇ。他の爺共とおんなじことを言うんじゃねぇ。いいかすべては終わった後にいい悪いを判断しろ。」

 「でも、何かあったら・・・」

 「何かあった時にどうにかして、いつでもどうにかできるようにすることがオレ等の仕事だ。教えたろ。」

 「・・・はい。」

 

 こうして田村福太郎の入山と滞在の許可が出たのである。

 条件として、常に山の天狗が同行し、密偵として怪しい動き有れば斬り捨てることが加えられた。

 

 

 

 最大の難関を突破した射命丸は、次に福太郎が山に来る為めの準備として当日非番あるいは休日の知り合いの天狗の犬走椛と姫街道はたてを妖怪の山の酒場に呼び出した。

 

 「で編集で忙しい私を引っ張り出した訳を聞こうかしら?」

 「私は数少ない非番なのですが・・・」

 

 二人の機嫌は決して良いものではなかったが、店で一番高い酒と飯をおごるというとその機嫌は良くなった。

 

 「実は二人にはお願いがありまして。」

 「それはあれか、例の絵描きの事か?」

 「ご明察です。」

 「なに?絵描きって?」

 「それはですね・・・」

 

 射命丸は田村福太郎の取材許可を取り付けたこと、飯綱丸龍と飯綱三郎から許可を得て連名の手形を入手したことを伝えた。

 

 「良く許可出たわね。」

 「三郎様が頑張ってくれました。これは足を向けて寝られません。」

 「『田村福太郎、右の者の入山及び滞在を左記の者が認めその行動の自由を認める者也』かすごいな花押に印まである。こんなの前代未聞だぞ。」

 

 椛は、手形をしげしげと見つめていて、はたてはその内容に驚愕した。

 

 「はい・・・この手形の他に密命もあります。もしも妖怪の山に対して敵対行動。具体的には諜報活動を行った場合はその場で斬り捨てよとも・・・」

 「こわっ!」

 「・・・田村氏はこのことは?」

 「知りません。」

 「だろうな。」

 

 知らないところで生殺与奪の権を握られている事を椛とはたてはろくに知らぬ田村福太郎に同情した。

 

 「滞在中は基本的に私が一緒に居ますが、滞在は10日以上になります。私がそばに居られない時はお二人にお願いしたいのです。飯綱様たちの許可もありますし、特別手当も出ます。これは福太郎さんの山での行動資金も含んでいます。」

 「何から何まで、準備されてるのね・・・分かったわ協力するけど、あんまり期待しないでね。」

 「・・・まあ、イイだろう手当も出るし。」

 

 

 スッと差し出された命令書を見て二人は上役たちと射命丸の用意の良さに舌を巻きながらも出るであろう特別手当に期待し、噺を進めた。

 

 「で?飛べない人間をどうやってここまで連れてくるの?」

 「それはですね。私も頭を悩ませましたが、このように・・・」

 

 

 酒場で三人の天狗は計画を詰めていく。

 

 

 

 

 

 今宵は此処に栞を挟み噺の続きはまたいつか。




 

 福太郎が山で行動する場合を考えた時、高度な自治が引かれている妖怪の山にどうやって立ち入り、行動するかを考えた結果がこれです。

 前から、飯綱三郎は出てくる予定でしたが、公式で飯綱丸龍が出ましたので早速の登場です。

 さて次回からは物語が進みます。はてさてどうなりますことやら作者も分かってません。
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