え~先日、最新話を投稿しましたが、誤字脱字や、ループしているなどおかしなとこなどがありましたので改めて投稿しました。
最近は転職と転居やらで忙しかったのですが、再始動です。
できれば、週一か遅くても月一の投稿を目指したい所存です。
当作はあくまでも二次創作としてお楽しみください。
・人間の絵描き、白狼の家にて寛ぐ事
福太郎は、もはや墜落とも言えるような着地の後脳震盪の為に倒れてしまい、暫くの宿泊先となる犬走椛の自宅に運ばれた。
犬走椛の自宅は天狗たちの集落から外れた場所にあるが非常に見晴らしの良い立地にあり、勤務地である「九天の滝」を望むことができる場所である。
家は、妖怪の山にあるというよりも厳密にはその南の麓近くにある。周囲は簡素ながらも塀で囲まれており、小さくともしっかりした門が構えられていて、さながら武家屋敷といった様式である。眼前には「九天の滝」より流れる清い水が川となって流れている。背後は妖怪の山の絶壁がそびえており、見る者が見れば小さな砦の様にも見れる立派な屋敷である。
敷地内には、蔵や納屋、井戸もあるが植木の類はほとんどなく、代わりに弓や射撃の練習を
一人で暮らすには少々広すぎる家である為に、今回の福太郎の宿泊先として選ばれた。
当初は、天狗の集落の飯綱家の屋敷に招くという話もあったが、(ちなみに射命丸の家は人を招ける有様ではなかったし、姫海棠の家は手狭すぎたため)飯綱や射命丸たちは良くとも、他の天狗がいい顔をするとは限らず、衝突や嫌がらせの可能性があった為、集落の外にある椛の自宅が選ばれた。
人間と妖怪とはいえ、男と女をひとつ屋根の下に住まわせるというのは、どうかとも思われたが、武芸者として申し分のない腕のある椛を福太郎がどうこうしようともでも足も出まいという事で落ち着いた。(その逆は考慮されなかった。)
福太郎は、用意された部屋に寝かされていたが、暫くすると目を覚ました。
「う~ん。これは知っとる。知らない天井ってやつや。」
などと、割と鉄板ネタを言いつつも周りの天狗たちにとっては訳の分からんことを言いながら周囲を見ると、射命丸と福太郎の見知らぬ天狗らしき女性が目に留まった。
「元気になりましたかね?福太郎さん。」
ニコニコと笑いながら覗き込んでいた。
射命丸は、福太郎の体調に問題が無いことを確認すると、二人の天狗を紹介した、
全体的に細い印象のある天狗は姫海棠はたて、白い犬のような大きな耳のある天狗は犬走椛、白狼天狗というオオカミから変じた天狗だという。
「私の他にこの二人が福太郎さんをご案内しますので、どうぞ自己紹介を。」
「田村福太郎いいます。気軽に福太郎と呼んでください。先程は助かりました。ありがとうございました。どうぞよろしくお願いします。」
射命丸に促され、福太郎は笑って自己紹介をした。
はたては、朗らかで、明るい印象から当初の射命丸に言いくるめられた妖怪の山に興味を持っている変な外来人という印象を改めた。
対して、椛は以前から千里眼で見ていた事もあり、思った以上に良い人間であると感じていた。そんな椛の顔は自然とほころんでいた。その笑みは普段では決して見せない物であった。
そんな椛の様子をニヤニヤと射命丸とはたては見ていたが、そんなことは当人たちは気付かずに話を進めていた。
「すんまへん。最初に謝らんと。実は最初見た時に犬かなんかの妖怪かと思ってしもうて・・・ホントすみません。」
「いえいえ、この見た目ですし、あなたはちゃんと謝ってくださいましたから気になどしませんよ。こちらこそうちの射命丸さんがご迷惑を・・・」
「いえいえ、そんなことは・・・」
正体面ながらも、楽し気に話す二人を見ながらこそこそと射命丸とはたては話していた。
「ねえ、椛、今日は随分しおらしくない?」
「普段なら犬呼ばわりしようものなら烈火のごとくなんですがねぇ・・・(これはもしかして、もしかする?まさかねぇ?)」
そんな話も大きな耳には筒抜けで一瞬ギロリと大きな目で睨んで牙をむいたが、それも束の間、直ぐに福太郎に笑みを向け楽しく話していたが、二人の烏天狗はそれがさらに面白く感じてクスクス笑っていた。
そのような事をしていると、次第に夜も更けとりあえずお開きとなった。
射命丸たちは椛の好意で福太郎以下全員で夕飯を食べた。
この日の夕食はイワナの塩焼きに、野沢菜とキュウリの浅漬けと蕪と
皆なんだかんだ忙しく一日を過ごしたため腹が減っており、会話もそこそこに、たちまちペロリと平らげた。(この日、椛は5合の飯を炊いていたが皆で残らず平らげてしまった。ひとえに椛の料理が旨かったためでもある。)
食後に、皆で椛の入れた茶を飲みながら、はたてが福太郎に今後の希望を訪ねた。
「あの、そのどこか見てみたい所とかありますか?まぁ、そんなに名所とかあるわけでもないんですけど、強いて挙げるなら、近場の九天の滝とか守矢神社なんですけど。」
「そうですね。その辺は勿論行ってみたいですけど、ぶっちゃけ皆さんがどんなとこで生活してるか気になりますんで、集落の方にも行ってみたいですし、色々許可でしてくれたっていう、飯綱様にもご挨拶に行きたいですね。まぁ、後は少し適当に見ていければいいかと。行き当たりばったりで恐縮ですが・・・まぁ、それも皆さんのご都合次第ですが。」
はたての質問につらつらと答える福太郎。
そんな様子を見て、お茶を飲み干し、ホッと一息つきながら射命丸は「福太郎さんらしい。」と笑う。
福太郎も笑いながら、「それともう一つ二つ見たいものが」と続けた。
何だろうと、二人の烏天狗と身を乗り出し、一人の白狼天狗は皆の湯飲みに茶を注ぎながら聞く態勢をとった。
「実は天狗の皆さんが使ってます、武器、武具を見てみたいです。あと、せっかくなんで、はたてさんと射命丸さんお宅にも遊びに行きたいですね。」
福太郎の希望に、二人の烏天狗は気まずそうにし、白狼天狗は笑いだす。
三者三様の反応に、福太郎は流石にまずかったかと思って、様子をうかがっていると、椛が笑いながら福太郎を安心させるために話しかけた。
「ご心配なさらずとも大丈夫ですよ。飯綱様の御屋敷に行けば頼まなくても見せて下さいますよきっと。それよりも二人が心配しているのは自分の家の事ですよ。自宅兼職場なのですけど、あんまりかたずいてなくてお見せできる有様でないだけなので。」
椛は心底愉快そうに笑っていたが、すかさず、はたてが抗議した。
「射命丸と違って、私の家はそんなに散かってないわよ!その、あんまり誰かを呼ぶ事とかないから、その、なんというか味気ないというか、お客の用意が出来てないだけよ!」
「失敬な!私の家はちょっと雑然としてるかもしれませんが、使いやすいようになっているのよ!!」
はたての言葉に射命丸がむきになって反論する。その様子が可笑しくてたまらずに笑う椛。実のところ人間一人の言葉に烏天狗が二人も翻弄される様が、可笑しくてたまらなかったのだ。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。夜も更けてきたため、今日の所はひとまず、お開きとなった。
帰り際、射命丸は福太郎にザっと今後の予定について話した。
「ご希望の場所の見物については大丈夫なので、ご心配なく。とわ云え、既に許可の類は取ってはありますが、福太郎さん到着と訪問の旨を各所に伝達する都合で、3日程お時間いただくことに成ります。この周辺については問題ありませんがくれぐれも手形は肌身離さずお持ちください。外出に関しても、椛の同伴は必須ですし、範囲に関しても、椛の職場である九天の滝とはたての自宅周辺までとしてくださいね。・・・私の自宅に関しては気が向いたらという事で。では椛、あとは宜しくお願いします。では後日、お伺いしますので。それでは私たちはこれで。」
そう言って2人ぎゃいぎゃいと騒がしくしながら、椛と福太郎を置いて飛び去った。
二人を見送ると椛は、福太郎に眼を向けて静かに笑った。
(福太郎さん。私はあなたに会って話をする事が出来て心底嬉しい・・・)
椛は実を言えば、この日を楽しみにしていたのだ。田村福太郎に会えるこの日を。
椛は福太郎を見つめながら、福太郎を見つけた日の事を思い出しながら笑っていた・・・
その日、普段のと変わらない仕事の中で見かけた、ここ何年も見ることのなかった彩を目にした。
立哨に巡回、立哨と巡回、立哨と巡回、立哨と巡回、立哨と巡回、立哨と巡回、立哨と巡回、立哨と巡回、立哨に巡回、立哨と巡回、立哨と巡回、立哨と巡回、立哨と巡回、立哨と巡回、立哨と巡回、立哨と巡回・・・代り映えのしない毎日、与えられた役目を果たす。緊急時などそれこそ異変が起きたときぐらいで、そうでもない限り同じ事を繰り返している。日付が進んでいる事すら怪しく感じるときがある。同じ一日を繰り返しているのでは?そう思う時すらある。時折訪ねてくる河城にとりとの将棋ぐらいが仕事中の息抜きであり、一日、一日が違う日なのだと教えてくれる、大切な時間だった。
千里眼の能力で時折人里を覗くことはあるが、自分たちの存続の為に、人間を守る必要のある妖怪にとって重要な任務ではあるが、さほど変化があるわけでもない。時折異変や騒動の予兆を見ることもあるが、上役に丸投げするのが関の山・・・自分が関わることなど、妖怪の山つまるところ自分たちのテリトリー、それも自分の管轄内に関係しない限りほとんどない・・・
そんな中で、ある時、人里を覗いてみたら、霧雨道具店の店先に人だかりが見えた。なにか事件でも起きたのか、それとも新商品でも出たのか・・・良く見れば人々の視線の先には二つの絵があった。鮮やかな色で描かれたそれは、見たことのない風景だった、見たことのない人物の姿が描かれていた。見覚えのある人物の姿も描かれていたが、絵の中では違って見えて・・・自分の目に映る世界と違う世界が、絵から覗けた、そんな気すらした。
あの絵は、幻想郷に流れ着いたものであろうか、それとも誰かが描いたのだろうか?記憶する限り、絵描きの類などは幻想郷に居るというのは聞いた覚えがない。昔は、知識人が手慰みにやる程度で生業にする人などいなかったと思う。
目を凝らしてみれば、霧雨道具店の主、12代目霧雨仁左衛門が一人の男性を人々に紹介しているように見えた。黒い短髪の前髪には一房白い髪が見える。背は六尺近いかそれ以上、人里の人々よりも高い、蓮化しそうに笑っている。
察するに、あの男性があの絵を描いたのだろう。風体からして外来人だろう、見慣れぬ道具も持っている。余興なのか、実演なのか、三脚を取り出し、板のようなものを置き、そこに紙をはさんで、幻想郷では珍しい鉛筆でサラサラと見物人の一人の、中年の人のよさそうな女性を描きは始めた。
さっきまでの恥ずかしそうな表情とは打って変わって、真剣そのもの、目つきどころか顔が変ったようにすら見えた。手元を見ればたちまち目の前の女性が描かれていく。絵に表された女性からは今にも朗らかな笑い声が聞こえてきそうで快活な雰囲気が感じられた。黒い鉛筆で描かれてるにもかかわらず、温かさや、色合いが感じられる不思議な感じがした。
描き終わると、外来人の男性は絵の左端に倒福、逆さの「福」の字を書き、その下に名前を書いていた「田村福太郎」。倒福は彼のシンボルで、きっと田村福太郎が彼の名前なのだろう。
全て書き終わると、笑って、女性に渡して何事か語り掛けていた。すると女性は恥ずかしそうに笑い田村福太郎の肩をバシバシ叩いていた。どんな会話がなされていたかまでは、想像できなかった。
暫くして、店先には小さな机が置かれ、霧雨仁左衛門仁左衛門が、白紙の紙と墨を摩った硯を置いた。
人々は、店先に並び、白紙の紙に住まいの場所と名前、そして「人物画」「風景画」などの絵の種類を書いて行き帰って行った。
これ以降、椛は福太郎の行動を目で追うことになる。
千里眼で観察した結果、稗田の屋敷に寄食していることを知った。毎日人里の内外を歩き回り、鉛筆や筆を走らせる姿をみた。里の人々の注文内容によって様々なことをする。外の世界の様式の絵、油絵を描く時には自ら木枠を組み、紙を貼り準備ををしている姿を見た。絵に接する時の表情に目が離せなかった。
里の外へこっそり言って絵を描いていて怒られているのはちょっと微笑ましかった。
見ていると、人の姿を描くのは余り好んでいないように見えた。頼まれれば渋々という感じで引き受けて描いているが真剣なまなざしは決して曇る事はなかった。それでも渡すときはどこか不本意のような、妙な感じで渡していた。
彼は時折、香霖堂で買い物をする。物好きしか行かない上に、店主は偏屈なのにニコニコと談笑している。時には店主の方から訪ねてくることもある。外の世界の画材や鉛筆を届けるだけでなく絵の装丁も請け負っているようだ。二人で妙に細長い紙巻き煙草を吹かしながら・・・動かない古道具屋が聞いてあきれる。
稗田の当主も家主である為当然だが、絵を描いている姿を見に来るし、お茶を一緒に楽しんでいる姿を見ることができた。
香霖堂の店主と稗田の当主が実に羨ましい。田村福太郎の描く絵をまじかで見ることができる、絵を描くときのあの眼差しも、そして何より、語り掛ければ振り向いて笑いながら話すことができるのだ。
千里眼で見つめても、声だけは聞こえない。読唇術など心得ていれば、何を話しているか分かるかもしれないが、それでも声は聞こえない。どんな声で話すのだろうか?どんな風に笑うのだろうか?想像しながら観察を続けていた。
自分に課された役目には、誇りもあるし今迄は不満などは終ぞなかったが、今回ばかりは、こればかりは不満に感じた。役目がある限りここを離れられない。まるで、鎖に繋がれた犬だ・・・普段なら犬だ犬だと言われれば、余程の相手出ない限り「白狼であると」吠えて噛みつく所であるが、今の有様を鑑みれば犬と言われても返す言葉もない。
現に先日、気心知れたカッパの河城にとりが将棋を持参して「一局どうだい?御犬様。」などとからかい交じりに将棋に誘ってきた。普段ならばさすがの私も冗談の類だと百も承知だから「私は白狼です。今日こそはその減らず口も叩けぬように、思い知らせてやりましょう。」などと言って、将棋に興じるものだが、この時ばかりは「結構です。」などと素っ気なく断ってしまいまった。
普段と違う様子に面食らったのか、「気に障ったなら謝る」「具合でも悪いのか」「何かあったか」などひどく動揺していたし、随分心配してくれた。結局「大丈夫、また来てくれ」などと適当なことを言って追い払ってしまった。心配そうに何度も振り返りながら帰って行くのを見て少し悪いことをしてしまった気がしたが、あくまで個人的なことだからしょうがない。
そんなやり取りのあった後日、福太郎さんの姿を目で追っていると、うるさい烏が射命丸文やって来た。
表向きは上役にあたるが、道楽兼諜報を目的とした新聞取材と刊行に力を入れていて、実質的に無役である為出会えば、挨拶か会釈くらいはするが、ほぼ対等であるから気兼ねなどしない。
そんな彼女が、何か新聞のネタはないかとやって来た。
こんなことは別段珍しいことは無い、時折煮詰まると訪ねてきて何事かないかと聞いてくる。仕事の一環だなどというが、その実暇つぶしに過ぎないのだから。
だが、思わず福太郎さんの事を教えてしまった。なぜなのか分からない。自分の心のうちに収めておけばよかったのに、何故か教えてしまった。もしかしたら、あの素晴らしい絵を描くあの人の事を他の人にも知って欲しいかったの知れない。それとも、この自由な烏天狗があの人の事を記事にする事を期待していたのかもしれないし、もしかしたら連れてきてくれるかと思ったのかもしれない。
勝手に教えてしまった手前、福太郎さんに迷惑をかけるかもしれないと勝手な理由を付けて見ていた。
福太郎さんは、寺子屋で授業をしていた。大勢の里の人々が見る中で、子供たちに素晴らしい授業をしていたようだ。誰もが福太郎さんを褒めている様子が見て取れた。
その後、寺子屋の教師と福太郎さんに、射命丸が少し話していたが、その後、寄食している稗田亭で稗田の当主を交えて話していた。
暫くして、射命丸が帰ると、福太郎さんはとても楽しそうに笑っていた。
後日、大天狗の飯綱様に呼び出された、そこには射命丸文も同席していた。
聞くと、人間の絵描きである外来人の田村福太郎を客人として御山に招くというのだ、その滞在先として自宅を提供してもらいたいという話だった。いかんせん御山には宿泊施設なぞ無いし、福太郎さんの事を知らぬ天狗や妖怪ともめごとになっても良くないという事だった。私は一藻にもなく承諾した。滞在中、他の場所に寝泊まりすることも提案されたが、断った。ようやく福太郎さんとお話しできる折角の機会だ、みすみす逃すつもりなどなかった。
椛がそんなことを思っていたらば、福太郎は不思議そうに椛の顔を覗き込む。
「?どうかしましたか?」
「!すみませんちょっとボーとしてました。」
「お疲れでしたら、早めにお休みになった方が・・・」
「ご心配なく。私タフですので。それよりお風呂などいかがでしょう。ご用意いたしますので少々お待ちください。」
「ありがとうございます。なんかじっとしているのも悪いですから、なんかやることありますか?」
「そうですね・・・でしたら食器を洗っておいてもらえますか?洗ったものは流し台に伏せておいてもらえれば大丈夫です。」
「わかりました。まかしといてくだいさい。」
そうして椛は風呂を沸かしに、福太郎は食器を洗いに台所へと向かった。
四人分の夕食の食器を洗い終わる頃には風呂の用意も済んだ。
福太郎が今に戻ると、椛が浴衣や手拭いを持って待っていたい。
「それでは、どうぞ先におはいり下さい。私は外で湯加減の調整を致しますので、いつでもお声がけください。」
「そんな悪いですよ。家主より先にお風呂頂くのは・・・」
先に風呂を勧められるも、遠慮する福太郎だったが椛は恥ずかしそうに福太郎に先に風呂を勧めた。
「それがですね・・・大変お恥ずかしながら・・・そのどうしても・・・その、先に入っていただけると。」
そう言いながら椛は、美しく白く長い毛の生えた尾や大きな耳を恥ずかしそうにいじっていた。
その様子を見て、福太郎は仔細を察して申し訳なさそうに
「あ!!それは大変失礼を!!それじゃ先にお風呂頂きます!!」
と言って浴衣や手拭いを受け取り風呂場へ向かった。
脱衣所で衣服を脱いで風呂に入ると、そこには見事な総ヒノキ造りの風呂があった。風呂場には壁に小さな行灯があり、ほのかな光が風呂場を照らしていた。湯船の上には少し広めの格子の窓があり、そこから月や星の光が入り込み、とても美しかった。一人暮らしにしては幾分広い風呂にたっぷりと湯が張られ湯気が立っている。手桶で湯を掬い、体を洗って湯につかれば、一日の疲れが溶けていくようであった。
「福太郎さん、湯加減はどうでしょうか?」
外から椛の声がする。福太郎は心底心地よさそうに答えた。
「え~湯加減です。」
「そうですか、よかったです。ぬるくなりましたらお声がけください。」
そうして、暫く湯につかり、体を洗って、椛に声を掛けてから風呂から上がった。
浴衣を身に着けて居間に移動すると、椛は既に風呂場に移動したようで姿は見えなかった。代わりに茶菓子と良く冷えた麦茶が用意されていた。
「ほんに、良くしてもろうて、ホンに頭が下がるわ。」
そう言って、外の風呂の釜口に向かった。
椛は、何時ものように好みの火加減になるように薪を足し、用意していた井戸で冷やした麦茶を居間に用意して、かりんとうなどの茶請けを机の上に出して、風呂場に向かった、
脱衣所で着物を脱いで、風呂場に入り体を洗って湯に入る。ちょっと熱いぐらいだが、これくらいが好みだ。
「・・・やっとお会いできた。」
ようやく念願かなって、福太郎と会話できた。想像してたのとは少し違った。幻想郷ではちょっと珍しい上方訛りが心地よかった。夕食のときは射命丸ばかりが話していてあんまり話せなかったが、その後は話すことができた。優しく話してくれた。こちらに分かり易いように鉛があまり出ないように意識して話してくれているようだったが、想像したように良い人の様で嬉しかった。
「・・・楽しく過ごしてくれると良いのだけど。」
滞在予定は一週間程度を予定されている。とはいえ、御山には様々な妖怪が居て人間を快く思わない妖怪もいるからいささか不安ではあるが、そこは何とかカバーしよう。しかし、今日の移動は良くなかった、気を悪くしてなければ良いのだがなどと思っていると不意に外から声がした。
「湯加減どうです~椛さん。」
福太郎の声だ。
椛は、びっくりして、飛び上がり思わず格子戸から外を見ると、福太郎が格子窓を見上げていたが、たちまち顔が赤くなっていった。
「も、椛さん。その見ちゃいますから、中に入ってももろうて!!」
「!!し、失礼しました!!」
椛はドプンと湯船につかると、思わず窓に背を向けた。自分の顔が赤いのが分かる。たちまち自分の体温が上がっていくのが分かる。
「その、湯加減どうです?」
そとからまた福太郎の声がする。
「えっと、その、もう少し薪を足してもらってもよろしいでしょうか!!」
「分かりまし!もうちょい薪を足しますね!!」
外からカラン、カランと薪が足される音が聞こえる。だんだん湯が熱くなってくるが、恥ずかしさから、そんなの感じなくなっていた。
(福太郎さん、居間で待っていて下さればよいのに・・・福太郎さん気配りの出来る方でしたから、想像できたことでしたよね・・・とはいえ、見えてしまったでしょうか?・・・というか、さっきまで福太郎さんがこの湯船に・・・)
「ブクブクブク」
外の福太郎がいるという事実に、福太郎の入っていた湯船につかっていると余計に意識しさらに体温が上がっていった。
「少し薪足しましたけど、どないです?」
「もっと足してもらってもよろしいでしょうか!!」
あっという間に湯の温度は上がり、椛はたちまち茹で上がってしまった。
髪から大きな耳に尻尾までくまなく洗い上げ、風呂から出る際には、風呂場の行燈を消した後、湯冷めしないように、念入りに髪や耳、尻尾を拭いて湯から出る。
上がる前に、福太郎に声を掛けていたから既に、居間で待っていた。
「その、お待たせしました。」
「大丈夫です?随分熱いお湯に浸かってたみたいですけど・・・」
「大丈夫です!私、熱めのお湯が好みですので!!」
「さ、さいですか・・・」
「さいです!!」
そう言って二人で居間の机に座る。熱い湯に長く浸かっていた椛はほんのり赤くなっていたが、行燈と月明かりに照らされる白い肌と、美しい毛並みが美しく映えていた。
(・・・目のやり場に困る!!)
福太郎がそう思うのは無理もない。武人として鍛え挙げられたその体には無駄な肉は無く、すらりとした手足にはチラホラ傷跡が見えていたが、しっかりとした筋肉がついており、彫刻の様だった。
それでいて、女性らしい体のラインははっきりとしていて、
お仙程ではないが豊かな胸が浴衣の上からも見て取れた。
福太郎は、若干目をそらしつつも大ぶりの湯飲みに麦茶をたっぷり注ぎ勧めた。
「すみません。ありがとうございます。」
「いえいえ、これくらい・・・」
椛はコクリコクリと、喉を鳴らして麦茶を飲み干す。長湯で火照った体には実に心地いい。
福太郎に目をやると、一寸気まずそうに椛を見ている福太郎と目が合ったが、椛は静かに微笑みかけた。
(さっきの湯船の事気にしているのかな?)
無自覚な椛に対して。当の福太郎というと。
(無防備な上に、色っぽ~!!)
などと思っていた。
そんな福太郎に、椛は静かに、語り掛けた。
「先ほどは、失礼しました。その、驚かせてしまいましたね福太郎さん。」
「いえいえ、こちらこそ、その、結構なモンを拝ませてモロウタと言いますか!!」
「ふふふ、嫌ですよ、福太郎さんたらwww」
福太郎は顔を赤くしながら、椛はちょっと楽しそうに笑った。
椛は、月を少しばかり、見上げてらか福太郎の方を見つめていった。
「今日は大変でしたね。そのうちの射命丸さんがご迷惑を・・・」
「いや、こちらも無理行って招いてもらってますから贅沢は言えません。ハイ。」
福太郎は頭をかきながら答えた。
そんな福太郎の言葉に微笑みながら困ったように椛は語り掛けた。
「嫌なら、嫌とちゃんと言わないとだめですよ福太郎さん。あれは流石に無茶です。射命丸が横着しなければよかっただけです。」
そう言って、たわいのない会話が続く。福太郎にとっては何気ない会話だったが、椛にとっては夢にまで見たものだった。
「さて、今日はそろそろこの辺で休みましょうか。」
「はい、それでは、また明日。」
「また明日。」
こうして、福太郎の妖怪の山の見物は始まった。
絵描きは念願かなって人里の外の世界へ。
白狼は念願かなって絵描きと逢った。
今宵は此処に栞を挟み、噺の続きはまたいつか。
、
今回はこんな感じになりました。どうも信州のイワです。
当初の予定では椛はあくまでも案内役というかちょい役の予定でしたが、やっている内に活躍させたくなり、気づいたらヒロイン枠になっていました。
その結果なんか椛によるストーカー日記みたいなのが出来上がってました(笑)なんかすみませんという気持ちの反面、楽しかったというのが正直な感想です。
椛の家は、当初は剣客商売の秋山小兵衛宅のようなものをイメージしていました。ちょっと大きな、隠居が住んでいる辺境にある民家という感じでした。
ですが、立地やら設定やらを考えて言ったら、今回のような武家屋敷のような形となりました。その辺はまた別の話でやる予定です。
予定としては、椛の家で3日ほど過ごしてもらい、守矢神社や天狗の集落など見物していく予定になっています。
初めに投稿したものはちょっと問題がありすぎたので、一度削除して、一部加筆修正して再投稿することにしました。
先だって投降したものを呼んでいただいた皆様お見苦しい物をお見せしました。この場でお詫びとさせて頂きたく存じます。
また、誤字等ございましたらご指摘いただけると幸いです。随時修正致します。