人間の絵描きの幻想郷見聞録    作:信州のイワ

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 阿求たちが博麗神社へ向かっていた頃、田村福太郎は宴会の準備が着々と進む様子を見ながら、宴会の主賓として来客たちに挨拶をするなどして暇をつぶしていた。


博麗大宴会、準備中。

  博麗神社~境内

 

 「しっかし、えらいことになったな~。」

 

 博麗神社の境内に一人の男が境内の様子を眺めて、独り言をつぶやいていた。

 この男こそ今回の宴会の主賓である田村福太郎その人である。

 福太郎がそのような独り言を呟くのも無理はない。

 そこには、元いた[[rb:秀真國 > ほつまのくに]]でも信じられないような、普段は閑散とした博麗神社からは想像もつかない光景があった。

 広い境内にはまるで、縁日の屋台のように調理台が境内を囲むように並び、中央には敷物が所狭しと敷かれ準備が着々と進んでいた。

 すでに調理台では到着した人妖が調理を始めていた。

 至る所からいい匂いがするが、特に夜雀のミスティア・ローレライの調理台からは八目鰻の焼けるいい匂いがする。

 しかし、驚いているのはそこではない。

 酒だ、酒樽が山のように積まれているのだ。

 

 「これ、みんな今日飲むんかいな・・・。」

 

 実は、これらのほとんどが八雲紫の提供なのである。

 流石は妖怪の賢者が気合を入れて用意しただけの事はあり、その種類は豊富である。

 日本酒の酒樽は勿論のことだが、ビール、ウイスキー、ワインなどの洋酒の酒樽や外の世界の酒もかなりの量が用意されているのがわかる。

 

 「あっ、萃香ちゃん、もう飲み始めとる。」

 

 見ると、大きな二本の角を持った小鬼が木製のジョッキでビールを飲んでいる。

 周りに用意された調理台に目をやれば、他にも準備にいそしみながら酒を飲んでいる者の姿、要するにキッチンドリンカーの姿もあった。

 

 「一輪さん、今からお酒飲んだらあかんでしょう。」

 

 命蓮寺の尼僧、守り守られし大輪の花こと雲居一輪である。

 

 「あぁ?福太郎?いいじゃない今日ぐらい好きに飲んでも。それに、これは、用意している料理に使う料理酒よ、いや~ね、料理に加える分量を間違えて余っちゃって、捨てるのもったいないから飲んでるのよ~。」

 「ゆうても、だいぶ飲んどりませんか?」

 

 調理台の方に目をやると、酒の小瓶が2,3個転がっている。

 

 「いいの、いいの、今日は姐さん公認で飲めるんだから。」

 

 確かに、今日は田村福太郎の引っ越し祝いということと宴会という酒の席であり、自分たちだけ酒を断っては、場の 空気を悪くしてしまうから、ということで聖白蓮が特別に許可したのである。

 というのは建前で、いつも頑張っている皆に今日ばかりは羽目を外しても良いという白蓮の親心であった。

 

 「まあ、ほどほどになぁ~。まだ、本番前なんやから。」

 「はいはい、わかってますよ。ほら主賓はおとなしく待ってなさい。」

 「ゆうても、暇でしょうがないんやけど。」

 「宴会が始まったら、どうせ、そんなこと言ってらんないだから、今のうちに休んどきなさい。」

 「はいはい、分かりました。」

 

 一輪に追い払われると境内を少し歩き回った。

 というのも、周りに準備を押し付けてしまう形になり、どうも心苦しいためであった。

 

 

 「まあ、ありがたい事なんやけどなぁ~。」

 

 そういって、せめて主賓らしいことをしようと到着したゲストに挨拶をしに行こうと思い歩き出した。

 実は始めは共に博麗神社に到着した新居の住人たちとともに準備を手伝おうとしたのだが、神社の主である博麗霊夢に

 

 「福太郎さんは今日は主賓なんだから、今日ぐらいゆっくりして下さい。人手は足りてるし、後からくる連中にも手伝わせるんでおとなしくしてて下さい。」

 

 と言われてしまった。

 今日ぐらいの所を強調した当たり、日ごろ心配をを掛けている意趣返しであることがわかってしまったのでおとなしくしていることにした。

 そうは言ってもじっとしていてはヒマな事この上ないので境内をうろうろしていたのである。

 心苦しいというのも所詮、自分の気が休まらないというよく言えば他人思いで、悪く言えば自己中心的なものに過ぎなかったのだ。

 

 

 この宴会が開かれる旨が福太郎に伝えられたのは一週間前の事である。

 新居に引っ越し、新しい生活にも慣れてしばらくしてのことだった。

 

 「うーん~いい天気やな~。」

 

 福太郎は背伸びをしながら縁側でそんなことを呑気に呟き、どこに絵を描きに行こうかと考えている時の事だった。

 

 「お元気~?福太郎~?あなたのゆかりんが来ましたよ~。」

 

  ビックッ!

 

 「・・・・・。」

 

 突然、隙間から現れ、かなりフランクかつ、砕けた口調で現れた紫に驚きを通り過ぎ、ドン引きしていた。

 

 「何か反応してくれないと流石の私も来るものがあるわよ、福太郎さん・・・。」

 「・・・今日は何の御用でしょうか、紫さん?」

 

 福太郎は単刀直入に用件を尋ねた。

 

 「今日来たのは他でもないわ、年末年始に博麗神社で宴会をするのだけれど、・・・そこでね、あなたを主賓として、招待したいのよ・・・。」

 

 「へ?」

 

 ニュースは八雲紫と文々。新聞などの天狗の新聞などによって幻想郷中に広まった。

 これに対して、幻想郷全域から参加の意思が伝えられ、様々な酒や食料が事前に博麗神社に運び込まれるに至った。

 余談ではあるが、当初、博麗神社が会場として使われることを渋っていた博麗霊夢であったが、事前に大量の食糧と 酒が運び込まれたことにより、そのおこぼれに与ることのできたため、歓喜の叫びをあげ、小躍りして喜んだという。

 

 

 そんなことを思い出している内に、新たな宴会の参加者が到着したようなのでそちらに向かった。

 

 「レミリアさん、咲夜さん、今日はおいで頂いてありがとうございます。フランちゃんも来てくれてありがとうな。あ、パチェリーさんまで来てくださったんですか、ホントありがとうございます。」

 「ご挨拶どうも。どうやら主賓らしくしているようね。」

 「どうも、ごきげんよう福太郎。」

 「ご招待ありがとうございます、田村福太郎様。」

 「こんにちは、福太郎!招待ありがとね!」

 

 紅魔館の住人達はそれぞれ挨拶を交わした。特にフランドール・スカーレットは福太郎にあえて嬉しそうである。

 

 「挨拶も済んだし、私は先に休ませてもらうわね。」

 

 パチェリーはそう言うと、持ってきた本を小脇に抱えてどこかに行ってしまった。

 

 「パチェリーさん、遠いところありがとうございました。どうぞごゆっくり。そうれはそうと美鈴さんとこあさんの姿が見えませんが、お留守番ですか?」

 

 紅美鈴は紅魔館の門番であり、こあこと小悪魔は大図書館の司書であるため留守番もかわいそうだが、仕方ないと思った福太郎は仕方がないと思い申し訳ないと思ったが、レミリアが否定した。

 

 「いや、今日はボブゴブリンとメイド妖精に任せてきたから、後からくるわ。ほら、来たわ。」

 「え?後から?」

 

 すると、鳥居の方から大きな荷物がうめき声を上げながら歩いてくるのが見えた。

 

 「うぉぉぉ、重いぃぃぃ~~。」

 「こあさん、あともうちょっとです。あと少しですから、頑張って下さいぃぃぃ。」

 

 よく見ると、何かが入った大きな包や樽が見えた。

 それを二人で運んでいるのである。

 美鈴は、特に大きな荷物を運んでおり、はた目には人間だが、やはり妖怪であると実感させた。

 小悪魔の荷物は美鈴に比べれば量は少ないが尋常ではない量を運んでいる。

 

 「「つっ着いた~~~。」」

 

 福太郎は、神社の方にすっ飛んでいき、大きなジョッキに水を汲んで戻って来た。

 

 「お、お疲れ様ですーー!」

 「あ、福ちゃん、ありがとうございます~。」

 「ありがどうございます、福太郎ざん。」

 

 二人は福太郎から水を受け取ると、ゴクゴクと音を立て忽ち飲み干した。

 

 「はしたない上に、情けないわよ、二人とも。」

 「咲夜の言う通りよ。紅魔館の一員たるもの、常に淑女でなければ。」

 

 そんな、疲れ果てた二人をレミリアと咲夜は窘めた。

 

 「そういわんといてあげて下さい。二人とも頑張っとったみたいですし。」

 

 見れば二人とも大粒の汗を流し、かなり疲れているようだった。

 

 「二人ともご苦労様、もしかして紅魔館からこれ、担いできたん?」

 

 福太郎は大荷物を示しながら聞いてみた。

 

 「いえ、石段のところまでは荷車で、はぁ、はぁ、はぁ。」

 「紅魔館に馬車馬なんていないから、こあちゃんと引いて来たのよ。はぁ、はぁ、はぁ。」

 「うん、二人とも頑張ってたんだよ。私、手伝おうって言ったんだけど、お姉さまと咲夜に止められちゃったし、二人にも断られちゃった。あ、私、他の人たちに挨拶してくるね。」

 「文字通り、馬車馬のように働かされたんやな。すまんな、ホンマ。」

 

 福太郎は二人の様子を見てますます、心苦しくなった。

 

 「なんの、なったって福ちゃんの為ですからね、これぐらい、安いとは言えませんが、度ってことないです。」

 「そうですよ、福太郎さんにはあんな素晴らしい絵を描いてもらったんですから、これぐらいしないと、してもらってばっかりでは悪魔の名折れです!」

 

 そういうと二人はそれなりに立派な胸を張った。

 福太郎は先日、紅魔館の皆のために絵を描いて贈ったが、そこまで喜んでもらうとは思ってもみなかった。

 福太郎は足洗邸の住人たちにも絵を贈ったことがある。

 その時はみんなかなり喜んでくれたが、それ以上の喜びようであると思う。

 

 「それじゃ、その調子で後、十往復ぐらい頑張ってもらいましょうか。」

 

 咲夜はさらりとキツイ仕事を言い渡した。

 

 「えぇぇぇ!咲夜さんも手伝ってくださいよ!」

 「そうですよ、咲夜さんばっかり楽してずるいですよ!」

 

 二人は抗議の声を上げた。

 というか、まだ荷物があることに福太郎は驚いていた。

 

 「まだ、あるんですか!?」

 

 というか、まだ荷物があることに福太郎は驚いていた。

 

 「まだ、あるんですか!?事前に運んで置いたら良かったのに。」

 「ああ、それもそうだが、食材新鮮な方が、料理は出来立ての方が上手いに決まっている。

それに、ワインは品質管理が命だ、野晒しにされては台無しになりかねないからな、当日運び込むことにしたのだ。それに、福太郎には良い絵を描いてもらったしこれぐらいは当然だ。何より、宴会に持ち込む酒や食料が少なくては、紅魔はこれ程しか用意できなかったのかと、舐められる。それでは我が紅魔館の恥だ。」

 「そういうわけですので、期待していてください田村様。」

 

 レミリアと咲夜の気持ちはありがたいが、かえって恐縮してしまった。

 

 「それに、追加報酬をまだ受け取って貰っていなかったしな。」

 「うっ。」

 

 というのも、レミリアは福太郎の絵の出来に大層満足し、予定されていた報酬の倍額を支払おうとしたが、福太郎が固辞していた。

 しかし、当のレミリアはそれでは気が済まず、いずれ何らかの形で報酬を払うということにして、はぐらかしていたのである。

 福太郎は、まさか、こんな形になるとは夢にも思っていなかったのだ。

 

 「それにしてもひどいですよ、私たちが何したってんですか!咲夜さん!!」

 「そうだ!そうだ!横暴だぁ~!」

 

 福太郎は二人の言い分ももっともだと思ったが、咲夜は目を細め、二人を見やると。

 

 「・・・昼寝とサボリ。」

 「うっ。」

 「・・・楽しみにしていた私のワイン。」

 「ギクッ!」

 「許してあげるから、運びなさい。」

 

 福太郎はどうやら、助け船は出せそうに無いと思っていると二人は力なく返事をした。

 

 「「はぃ。」」

 「はははぁ、そうは言っても時間かかりそうやな、少し手伝ったろうか?」

 「田村様は今回の主賓です、おとなしくしていて下さい。とは言え、仰るように、時間が掛かれば、宴会に間に合わないかもしれませんね。」

 「そうですね、誰かに手伝ってもらいましょう。」

 

 福太郎自身は流石に二人が哀れに思え、手伝いを申し出たが、断られたが、幸いにも他のものに助力を乞うことはできそうである。

 すると、すでに出来上がりはじめている伊吹萃香を見つけ声を掛けようとしたが、一人の背の高い少女が近づいてきた。

 赤と白の法衣をまとい虎柄の腰巻を巻いた、命蓮寺の本尊、虎柄の毘沙門天こと寅丸星であった。

 

 「おや、おや、情けないですね。まあ、仕方無いでしょうね、紅魔館の居眠り門番ですからね。」

 

 それを聞いた美鈴は先ほどまで疲労困憊していたにも関わらず、にこやかに笑いながらも、その整った顔に青筋を浮かべながら言い放った。

 

 「ハハハ、何を言っているんですか、たったこれだけの荷物、福ちゃんの為と思えばへっちゃらです。まぁ、宝塔をすぐ、どっかに無くすドジッ虎本尊様には到底、無理でしょうね~。そこで、大人しく見ていてください。」

 

  カッチン!

 

 「言ってくれますね、居眠り門番!」

 「何ですか?ドジッ虎本尊様?」

 

 二人は笑いながら睨み合い、バチバチと見えない火花を散らしていた。

 寅丸星は鑓を手にし、紅美鈴は腕まくりをし臨戦態勢に入り、まさに一触即発という様子であり、福太郎は困惑してしまった。

 

 「二人とも落ち着いてぇな、喧嘩は良くないで。」

 「「福太郎さん(福ちゃん)は黙っててください!!!!」」

 「はいぃぃ!!」

 

 福太郎は二人の剣幕に圧倒され、慌てて返事をするしかできなかった。

 周りに助けを求めようと周囲を見まわすが、みな面白がるばかりで止めようとしない。

 むしろ、喧嘩を煽ってきそうだ。

 

 「お、喧嘩か?いいぞ、いいぞ!!ヤレ、ヤレェ!!」

 「喧嘩は華だよ、いっちょ派手にやんな!!」

 

 そうこう思っている内に、鬼の星熊勇儀と伊吹萃香の二人は喧嘩を早速煽っていた。

 しかし、そこに思わぬ援軍が現れた。

 

 「二人とも、福太郎さんの言う通りですよ、およしなさい。」

 

 命蓮寺の住職にして、八苦を滅した尼僧こと、聖白蓮その人であった。

 ここまではカッコイイ白蓮の登場であったのだが、皆、その右手、というか白蓮に首根っこを掴まれ、力なく引きずられている人物に目が行ってしまった。

 

 「うぅぅ。」

 

 先ほど、料理酒を煽っていた一輪である。

 見れば、頭に大きなこぶができている。

 どうやら、宴会が始まる前に飲んでいるのが見つかって鉄拳制裁を受けたと見える。

 

 「あら、いけない。」

 

  ドサッ

 

 白蓮は思い出したように一輪を離したが、随分と扱いがぞんざいであり、喧嘩を煽っていた周りは少し引き、喧嘩を煽る声は収まった。

 一輪が鉄拳制裁された理由を察することができた福太郎は自業自得な気がしていたが。

 

 「今回の宴会は福太郎さんの引っ越し祝いということで開かれています。その主賓たる福太郎さんを困らせてどうするんですか。それに、二人とも口が悪いですよ、それに、ここは祝いの場ですよ、少しは控えなさい。二人とも子供ではないんですらから。そんなでは田村さんに嫌われますよ、わかりましたね。」

 

 二人はお互いの顔と福太郎の顔を見るとお互いに頭を下げた。

 

 「・・・はい。すみませんでした星さん。」

 「・・・いえ、私こそ。すみません。」

 「うん、よろしい。」

 

 白蓮に福太郎の名前を出されると二人ともあっさり引き下がった。

 その様子を見ていた見物人たちは、もう終わりかと引き上げていった。

 名前を出された福太郎は喧嘩にならず、ホットしながらもこの様子を不思議そうに首をかしげていた。

 その姿を見て白蓮はため息をつき、二人にいった。

 

 「では、二人とも協力して、荷物を運び込みなさい。こうしている間にも宴会が始まる時間は迫っています。早く運び込んでしまいましょう。このままでは、他の方の迷惑にもなってしまいますから。一輪にも手伝わせますので。」

 

  ビクッ!

 

 「気が付いているんでしょう。わかってますよ、一輪。今日はこれで勘弁してあげますから、二人を手伝ってきなさい。」

 「・・・わかりました。姐さん・・・。」

 「では、行きましょうか星さん。」

 「そうしましょう、ほら一輪も。」

 「言われなくてもわかってるわよ。てか、何なのあの量!?あれ運べっての!!」

 「・・・私たち二人で、アレを引いて来たんですけど・・・お嬢様たちも乗せて。」

 「・・・美鈴さんたちも大変ですね。」

 「わかってもらえたら嬉しいですよ・・・。」

 

 三人は話しながら荷物を運びに石段を下りていく。

 その様子を見て小悪魔はソロリ、ソロリとその場から抜けだろうとしたが、そうは問屋が卸さなかった。

 

 「どこに行くつもり?小悪魔。まだ、仕事は終わってないわよ。」

 「さ、咲夜さん・・・。」

 

  バッ!!

 

 あんな重労働はもうごめんだ、とばかりに小悪魔は一目散に逃げ出したが、行く手を白蓮が塞いだ。

 

 「あら、どちらへ?小悪魔さん。」

 「ひ、聖さん。」

 「先ほどの話、聞いていましたよ。人のモノを黙って盗るのはいけませんよ、さあ、仕事を終えてしまった方がよろしいですよ、咲夜さんはそれで許して下さるとおっしゃっているんですから。」

 「は、はぃぃ!!」

 

 白蓮は静かに笑ってこそいたが、有無を言わさぬ迫力があった。

 小悪魔は慌てて返事をすると、フラフラと飛んでいった。

 その様子を白蓮は見送ると、レミリアの方を向いた。

 

 「先ほどは、うちの星が美鈴さんに失礼な事を言いました。改めてお詫びします。」

 「いや、気にするな。それに、うちの門番も無礼な事を言った。たとえそれが事実でもな。私からも謝罪しよう。どうも、すまなかったな。」

 「いえいえ、・・・事実ですから。」

 「・・・ククククク。」

 「・・・フフフフフ。」

 

 二人は皮肉を軽く言い合いながら、静かに笑っていた。

 

 

 「しかし、仏教徒のお前があんなことを言うとは思わなかったぞ。」

 「でも、ああ言うのが一番効果がありますから。」

 「まあ、福太郎はこの手の事にだいぶ疎いと見える。・・・あえて、気づかないフリをしているのか分からんな。」

 「・・・そうですね、それは福太郎さんしか分からないです。では、私はあの子たちが運び上げた荷物を奥に運ぶとしましょうか。」

 

 そう言うと白蓮は美鈴と小悪魔が運び込んだ分を運びだした。

 身体強化の魔法を得意とするだけあり、二人が苦労して運んだ荷物もやすやすと持ち上げる。

 そんな、様子を見て、レミリアは微笑を浮かべながら話しかける。

 

 「あいつらに運ばせればいいのに。お前は、なかなかのお人よしだな。」

 「いえいえ、今回はうちの星が喧嘩を仕掛けたようなものですからね、これぐらいはしないと。」

 

 このやり取りを見ていたフランが二人の元にやって来た。

 

 「フランも手伝うよ。いいよね?お姉さま?」

 「・・・いいだろ、元々うちの荷物だし、うちの門番が無礼を働いたのだ、うちからも誰か手伝わせるのが筋だろう。咲夜は宴会の準備を手伝ってくれ。私は霊夢に挨拶をしたらどこかでおとなしくしていよう。」

 「受け給わりましたお嬢様、では直ちに。」

 

 他の来客の元に行っていたフランが手伝いを申し出、レミリアはそれを許可し、咲夜には宴会の準備の手伝いを命じた。

 

 「フフフ、ではお願いしますね、フランさん。」

 「うん!任せてね!」

 

 白蓮はフランと共に荷を運び、咲夜は次々に料理や酒の用意を始めていった。

 こうしている間にも次々に参加者は訪れ、待ちます神社の境内はにぎやかになっていった。

 その様子を見て、レミリアは艶やかな微笑を浮かべながら一言つぶやいた。

 

 「今宵は良い宴会になりそうね。」

 

 

 宴会が始まる前からにぎやかな博麗神社は、心地の良い喧騒に包まれていた。

 そんなやり取りがなされている中でも次々と宴会の参加者たちが到着していた。

 

 「こんばんは、福太郎。今日はお招きありがとう。」

 「こんばんは、福太郎。」

 

 動かない古道具屋、森近霖之助と名無しの本読み妖怪、朱鷺子である。

 その後から白上沢慧音と慧音に担がれた本居小鈴と稗田阿求がやってきた。

 

 「む、もうだいぶ集まっているな。何人かはもう、もう飲んでいるのがいるな。阿求の言う通りだったな。」

 「こんばんは、田村さん、少しぶりですね。」

 

 主賓である福太郎は、五人に声を掛けられると挨拶を交わした。

 

 「いやぁ~、皆さん今日は来てもろうて、ホンマありがとうな。しかし、パチェリーさんもそうやけど、霖之助まで来るなんて思うとらんかったわ。」

 「そうかな?」

 「そうやよ。」

 「そうか。」

 「そうや。」

 

 福太郎は親しい男友達と短い会話を交わした。

 この二人別段、仲が悪いわけではないのだが、趣味や関心のあること以外であると交わす言葉は存外少ないが、二人は親友であると二人は口をそろえて言う。

 余談だがこの二人の様子を見た魔理沙と慧音は実に不思議なものを見るような目で見ていたという。

 以前も福太郎が香霖堂を尋ねた時も一言二言、言葉を交わすと二人は本を読んだり、紫煙を燻らせていた。

 その様子を少し不思議そうに見ていると、阿求が話しかけてきた。

 

 「確かにそうですね。しかし、石段の所の荷車の荷物すごいですね。どこから運び込まれてきたんですかね。」

 「そう、そう、まるで夜逃げだね。」

 

 阿求の質問に朱鷺子は相槌を打った。

 

 「夜逃げって・・・朱鷺子ちゃんもいうな~。あれは、紅魔館から美鈴さんとこあちゃんが引いて来たんやよ。」

 

 阿求たちはどうも、石段の登り口にあった荷車が気になったようだ、当然と言えば当然だが。

 

 「そうか、だったら、もっと早く来て手伝えばよかったか?」

 

 慧音は美鈴たちが荷物を運び込んでいる様子をみて、少しすまなそうに言った。

 

 「大丈夫ですよ、慧音さんレミリアさんたちもさっき来たばかりですし、みんな、手伝ってくれとりますし。それに、まだ、時間ありますから。それはそうと、担いでるの小鈴ちゃんですよね、具合でも悪いんですか?」

 

 福太郎は福太郎で慧音に担がれた小鈴が気になるようである。

 

 「それは、気にするな福太郎。少し失神しているだけだ。」

 「慧音先生の頭突きでね。まあ、理由を聞いたけど、自業自得だから仕方がないけどね。」

 「そうなんかいな、まあ、とにかく奥で寝かしときましょう、慧音さんこっちです。」

 

 福太郎は慧音の説明に若干引き、朱鷺子の言葉に小鈴が何をしたのか疑問を持ちながらも、小鈴を奥で寝かせるために小鈴を担いだ慧音を案内した。

 

 「それじゃ、霖之助、私はミスチィー達に挨拶したら適当に準備、手伝ってるから。」

 「わかったよ、行ってらっしゃい。」

 

 朱鷺子がミスティアたちの所に行くのを見送ったあたりで阿求が霖之助に声をかけた。

 

 「ですが、本当に霖之助さんがいらっしゃるとは思いませんでしたよ。目的は田村さんの引っ越し祝いだけでは無いですよね。」

 「まあね、そういう阿求もそうだろう?」

 「私は田村さんに少しお願いがあるだけですよ。まあ、慧音さんも似たようなお願いがあるようですが。」

 阿求の話を聞くと霖之助は顎に手を当て、考察を始めた。

 

 「ふむ、阿求と慧音が福太郎にお願いか。さしずめ、挿絵の依頼と言ったところかな。慧音は日ごろ寺子屋の教師や歴史の編纂に携わっている。そこから考えれば、慧音の授業で使っている教科書か編纂している歴史書の挿絵と考えるのが普通だ。阿求は幻想郷縁起を編纂しているのだから同様だ。それに、普段から言われているが、慧音の授業はお堅いことで有名で、子供たちが退屈して居眠りしまうというし、事実に教科書を見ると、文字ばかりの上に小さくて読みにくい、よほど興味がなければ子供たちがすぐ居眠りしてしまうだろう。おまけに・・・」

 「霖之助さん、その通りなんで、慧音さんが戻ってきて頭突きを喰らう前にその辺で辞めといてください。」

 「む、そうだな、小鈴のようにされてはたまらない。」

 

 流石の霖之助もこれはしまったと思ったようである。

 

 「それに、その回りくどい説明をする癖、直した方がいいと思いますよ。そんなんだから、皆さん、何か見つけるたり、分からないことがあると田村さんを頼るようになっちゃたんですよ。」

 「・・・最近、客どころか冷やかしすら来ないのはそういうことか・・・。」

 

 阿求の指摘に霖之助が少しへこんでいると、パチェリーが二人の元にやってきた。

 

 「あら、霖之助じゃない。出不精のあなたが來なんて珍しいわね。」

 「それは君だけには言われたくはないな。」

 

 まさに、動かないとまで言われた二人が博麗神社に来ているのである。

 間違いなく、滅多にない事であるが、阿求には二人の目的の察しがついた。

 

 「二人とも田村さんの<アレ>が気になるんでしょ。さしずめ、酒の勢いで詳しい話を聞こうって魂胆でしょう。」

 

 阿求は福太郎の持つ不思議なアイテム、いつも首からぶら下げている<夢想実現之事(むそうげんじつのこと)>と記されたプレートが施された少し太めのペンの事であろうと予想していた。

 阿求自身は福太郎が使用しているところをあまり見たことがない。

 一度だけ見たことはあるが、ペンとしてではなく望遠鏡として、遠くを見るのに使っていた。

 

 「その通りだ、阿求。普段あのペン事を詳しく聞こうとしても、いつもはぐらかされてしまうからね。」

 「ええ、そうよ。福太郎の持つあのペンは今まで聞いたことも見たこともないマジックアイテムよ。そんなものを魔法使いであるこの私が放っておくわけがないでしょう?」

 

 二人の目的は阿求の予想通りのものだった。

 しかし、霖之助は友人であるはずだが、この時ばかりは興味の対象として福太郎を見ているようである。

 阿求は以前、福太郎自身から福太郎の持つペンの事は少し聞いたことはあったが、友達の妖怪にもらった便利アイテムだと説明されただけで、それ以上の事は阿求もほとんど知らない。

 

 「やっぱりですか、私も興味はありますが、霖之助さんの能力でわかるんじゃないですか?それなら、私にも是非教えてほしいですね。実は今、幻想郷縁起に書き加えていましてね、是非お願いしますよ。」

 「それもそうね、私からもお願いしたいわ。」

 

 阿求とパチェリーの申し出に霖之助は少し困ったように目をつむり、首を傾げた。

 

 「僕の能力を評価してもらえるのはありがたいが、あくまで道具の名称と用途がわかるというものだ。その上で言うが、福太郎の持つあのペンはかなり特殊なものだ。」

 

 霖之助の言葉に二人は顔を見合わせた。

 

 「そうだな、この話は少し長くなりそうだから、あっちで座りながら、飲み物でも飲みながら話そうか、誰かさんが言っていたが、僕の話は長くて退屈で、回りくどいらしいからね。」

 「・・・私そこまで言っていませんよ。」

 

 霖之助は阿求の先ほどの発言を引き出してささやかな意趣返しをして、すでに準備の終わっている飲み物が置かれた敷物を見つけ座り、二人もそれに従った。

 

 「まあ、適当に座ってくつろいでくれ。」

 「別にあなたが用意したわけではないだでしょうが。」

 「パチェリーさん、そういわずに寛ぎましょう。」

 

 霖之助は用意されていたお茶を入れ、二人に渡した。

 

 「さて、福太郎の持つあのペンは、先ほども言ったが、かなり特殊なものだ。あれは、なんというかな、造られたものではない。僕の見立てでは、おそらく、生み出されたものであり・・・生きている。」

 「「生きている。??」」

 

 二人は霖之助の言葉に疑問符を浮かべた。

 

 「厳密には意思があるといった方が正確かな。以前、福太郎が香霖堂に来た時にこっそりと触れてみた。だが、瞬時に結界が張られ、僕に触れられることを拒絶した。だが、福太郎に頼んで見せてもらったんだが、そうしたら触れることができた。おそらく、福太郎が許可したことで、ペン自体も触れられることを許可したからだと思う。」

 「だとしたら、それは相当、興味深いわね。」

 「ええ、私もただの便利アイテムだと思っていましたが、興味がわきました。」

 

 二人は霖之助の話に知的欲求を刺激されたようである。

 霖之助は普段このように話をせがまれることはないため、ますます饒舌になって話始めた。

 

 「では、続けようか。福太郎の許可によってペンに触れることができた。それにより、名称と用途がわかった。名称は<夢想現実ノ事、萬念筆(むそうげんじつのこと まんねんひつ)>用途は、田村福太郎が問題なく絵を描く。だ。」

 「ますます、興味深いわね。まさに、福太郎のためのアイテムということね。」

 「そうですね。意思があるということもですが、田村さんのためということも気になります。ですが、以前、田村さんがアレを使っているところ見ましたがペンとして使っていませんでしたから。」

 「そうなの?それは初耳だったわ阿求。私は以前、福太郎が紅魔館に来た時に調べさせてくれと頼んだのだけれど、断られてしまったわ。」

 

 それもそうである、その時のパチェリーの目はさながらマッドサイエンティストが実験対象を見るそれであり、ペンを壊されてしまうのではないかと福太郎が恐れたためである。

 

 「そうか、実はその辺り事は話してくれた。あのペンは友人である妖怪の武器のコピーなんだそうだ。そしてその武器は如意器といい、持つ者のイメージに合わせて用途を変える事が出来るのだそうだ。どうも阿求の話から推察するに、その特性があのペンにもあるようだな。」

 

 三人は福太郎のペンについて情報を交換し、考察を深めていった。

 

 「そうなると、その友人の妖怪と所有するその如意器とやらも気になるわね。」

 「そうですね、一体どんな妖怪なんでしょうか?」

 「その辺りもある程度聞き出せた。どうやらその妖怪は同じ足洗邸の住人で、なんと鵺であるようだ。」

 「!!!それは、驚きですね。命蓮寺の鵺でないにしても結構な大妖怪じゃないですか。でも、良く考えたら不思議じゃないわね・・・。」

 「確かに、メフィスト・へレスやらクローセル、果てはベルゼビュートとも面識があるみたいだから、しかも、小悪魔も福太郎が面識があると言った者たちは本物であるだろうと言っていたし、文献でも調べたけど本人で間違いないみたい。」

 「それは本当か!だとしたらますます興味深いな。」

 

 福太郎の元居た世界の交友関係を驚愕しながら霖之助は話を進める。

 

 「では、この話はますます信憑性を増すな・・・。」

 「どんな話ですか霖之助さん。」

 

 そう言うと、霖之助はすっかり冷めてしまったお茶で喉を潤すと、話を続けた。

 

 「福太郎によれば、その友人の持つ如意器は<生玉(いくたま)>がベースになっているという。」

 「生玉!それは本当ですか霖之助さん!!」

 「・・・その反応からすると相当なモノみたいね。」

 

 生玉というワードに阿求は強く反応した。

 

 「ええ、十種神宝(とくさのかんだから)の一つです。」

 「パチェリー、三種の神器は知っているね。」

 「ええ、知っているけどそれがどうかしたの?」

 

 阿求と霖之助はパチェリーに十種神宝について説明した。

 

 「十種の神宝というのは『旧事本紀(くじほんぎ)』に記述がある。

沖津鏡(おきつのかがみ)辺津鏡(へきつのかがみ)八握剣(やつかのつるぎ)生玉(いくたま)死返玉(まかるかへしのたま)足玉(たるたま)道返玉(ちかえしのたま)蛇比礼(おろちのひれ)蜂比礼(はちのひれ)品物之比礼(くさぐさのもののひれ)

が存在するとされていて、これらの総称を十種神宝という。だが、外の世界を含む、こちらではその存在自体が確認されていなかった。」

 

 霖之助の説明に阿求が補足を加えた。

 

 「その上『旧事本紀』自体が偽書とされていました。しかし、成立が古く、多くの伝説や伝承を記していることには変わり有りません。」

 「まあ、これはあくまで、僕たちの世界の話であって、福太郎の世界では、恐らくだが、状況がことなるのだろう。」

 「でも、それと、三種の神器に何の関係があるの?」

 

 パチェリーは聞いたこともない十種神宝が出てきたことが疑問であるようだ。

 

 「大いに関係あります。この十種神宝は三種の神器と同様に、天孫降臨の際に邇邇芸命と共に天下ったとされています。三種の神器の代わりにです。」

 「十種神宝はそれぞれ鏡の名を持つものが八咫鏡(やたのかがみ)に、玉の名を持つものが八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、剣と比礼の名を持つものが天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)にと、それぞれが三種の神器に相応すると言われている。つまり、十種神宝は三種の神器と同等以上の力を有しているといえるのさ。」

 「つまり、三種の神器に相当する武器のコピーを福太郎は持っているってことなのね。」

 

 三人はこの情報交換によって田村福太郎の持つナゾの片鱗を知り、その探求心をますます高めていた。

 

 「おそらく、生玉はその名称からして、生命力をつかさどるのだろう。それによって生み出された代物だ、きっと更なる力があるのだろう。」

 

 霖之助は力強く持論を展開した。

 

 「霖之助さん、このことは知っていますか?彼の右肩に潜んでいるモノのこと・・・。」

 「ああ、アレのこと・・・。」

 

 阿求とパチェリーは福太郎の秘密の一つを知っているかと霖之助に尋ねた。

 

 「右肩に潜んでいるモノ?それはなんのことだい?あまり、そういったことは福太郎と話さないのでね。是非、教えてくれ、彼のペンについて情報を提供したのだから、教えてほしいものだね。」

 「実はね、福太郎の右肩には・・・」

 

 三人の考察と情報交換は宴会が始まる前から進んでいた。

 

 「・・・・・あの三人は一体何を話とるんやろ?」

 

 福太郎は親友と知り合い二人が何やら真剣に話し込んでいるその様子を不思議そうに眺めていた。

 この後、三人に質問攻めにされることになろうとは、福太郎は夢にも思っていなかった。

 

 

 「フフフ、いい宴会になりそうね、福太郎。」

 「うわぁ!紫さんじゃないですか、脅かさんでください。心臓に悪いじゃないですか。」

 「・・・うわぁ!は無いと思うわよ、うわぁ!は。私とあなたの仲じゃない・・・。ゴキブリじゃないのよ私。」

 

 そこには、スキマから身を乗り出し、福太郎の反応に少しへこんだ妙齢の妖艶な女性がいた。

 妖怪の賢者こと、八雲紫だ。

 紫としては、フランクに接しているつもりのようだが、胡散臭い笑みと共に突然現れるため、どうしても福太郎は少し冷たい反応をしてしまうのだった。

 しかし、それはそれ、これはこれ、何かと気にかけてくれているため紫の事は福太郎自身は嫌いではないのだ。

 

 「それはそうと、どうも、今回はありがとうございます、オレなんかの為にこんな盛大な宴会を開いてもろうて。」

 「いいのよ、別に。私が開きたかっただけなんだから。それに、ここまで大規模になったのは、私の呼びかけに幻想郷の住人たちが、あなたのためにと、応じたからよ。」

 

 福太郎は困惑したような、照れくさいような笑みを返した。

 

 「ははは、宴会の口実が欲しかっただけな気もしますがね。でも、ありがたい事ですわ。」

 

 そうゆうと福太郎は境内が見渡せる神社の縁側に腰を下ろし、紫はスキマから出てくると、福太郎の横に座った。

 

 「あなたがこの幻想郷に迷い込んで・・・もう、二年になるのね・・・。」

 

 紫は福太郎の横で感慨深そうに言った。

 

 「そうですね。随分いろんなことがありました。」

 「ええ、あなたが迷い込んで、本当に色んなことがあったわね・・・。」

 

 そう言って、紫と福太郎は幻想郷に迷い込んだ日から今日まで過ごしてきた幻想郷での日々に思いをはせた。

 

 これは幻想郷に迷い込んだ人間の絵描きの物語である。

 

 

 

  ドンッガラガッシャンッドッパッン!!!!!

 

 「あ‘‘、あ‘‘づいー!!!」

 「ギャー!!すみませーん!!!」

 「ワ―!星さん!!何やってんですか!!こあちゃん大丈夫!!鈴仙さん火傷の薬を!!!」

 

 二人が和んでいると、そのムードをぶち壊すかのように、大きな音と声が聞こえてきた。

 見ると煮え立った鍋を運んでいた星がつまずいて、小悪魔に中身を掛けてしまったようで、宴会会場はにわかに大騒ぎとなっていた。

 

 「・・・あなたが、幻想郷に迷い込んでから色んなことがあったわね~。」

 「・・・そうですね、本当に色んなことがありました。」

 

 ・・・・・改めて紫と福太郎は幻想郷に迷い込んだ日を今まで過ごしてきた幻想郷でのに思いをはせることにした。

 

 

 二人は見なかったことにした。

 

 「ムードが台無しじゃなの・・・ねぇ?」

 「アハハハハハ。」

 

 紫は扇で口元を隠し、福太郎は苦笑していた。

 




 ようやく、本作の主人公が登場しました。
 今回も、いくつかの伏線を引いていますが、今後はこれらを回収したいと思っています。
 次回から本編に入っていきます。
 

 それでは皆さん失礼いたします。また、お会いしましょう。
 
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