人間の絵描きの幻想郷見聞録    作:信州のイワ

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 博麗神社へやって来た田村福太郎と上白沢慧音。果たして、田村福太郎は秀真國へ帰れるのか!!


絵描きと博麗神社の住人たち。

 上白沢慧音は一人の外来人を博麗神社まで案内していた。稗田邸で発見された田村福太郎を外の世界へ返すためだ。

 しかし、その道は決して短いものではなかった。博麗神社までの道には大したものはない。せいぜい聞こえてくるのは鳥の声ぐらいである。慧音は妖怪などの襲撃を警戒しているが、まだ日は高く、襲撃の気配はなく、有体に言えば暇だった。

 慧音は外来人の男に目をやった。慧音にとってこのタイプの外来人に遭うのは初めての事で気になってもいた。慧音など幻想郷の住人からすれば外来人は4つのパターンに分けられる。何が何だか分からず混乱する者。自分の身に降りかかった不幸に憤り、当り散らす者。妖怪に襲われるなりして死んだ者。ごくごくまれにではあるが、自らの意思で幻想郷に来た者。しかし、この田村福太郎はどれにも当たらない。極めて特異な存在である。おまけに最後の阿求の言葉。まるで、福太郎が外の世界へ帰れないことを想定しているかのような口ぶり、何がそう判断させたのか、あまりにも気になることが多すぎた。慧音は質問をせずにはいられなかった。

 

「しかし、福太郎。お前は変わってるな。」

「?何がでしょうか。」

「阿求からこの幻想郷の事は聞いてるだろうに、取り乱す様子もなく理解している。普通の外来人では考えられないことだからな。妖怪がいることを不思議だとは思わないのか。」

「いいえ、別に。普通やないですか。阿求さんもそうですが、なんでそんなことを聞くんですかね」

 

 普通。この男はそう答えた。ますます分からなかった。聞くところによれば、外の世界では妖怪や神などの存在は幻想の存在とされ、かなり生きにくく、存在を保つのが難しくなったと聞いている。だからこそ、妖怪の為にこの幻想郷が生まれたのだ。なのに普通と答えた。なぜなのか。

 

「聞くところによると外の世界では妖怪などは生きにくいと聞いているのだが。」

「そうでもないですよ。今じゃ隣近所に妖怪の人やらなんやら色々いるのが普通ですし。現に旅に出るまで住んでた邸のには、家神やら化け兎やら、悪魔やらいろいろ住んでますし、管理人はこまちゃんいう猫又ですしね。」

「そ、そうなのか。」

 

 慧音にとって予想外の答えだった。隣近所が人外であることが普通であり、自身もそうした者たちと生活していたと言っているのだ。聞けばまだ、外の世界には妖怪はいると聞く。そうしたこともあるだろうと、慧音は理解しようとした。現に外の世界で、それもつい最近まで、神々と生活していた守矢神社の例もあったからだ。

 

「福太郎は外の世界では何をしていたんだ?」

「そうですね。一応、絵描きしてますけど、最近は万魔学園いう、とてつもなくでっかい寺子屋みたいなところで、美術教師をしとりました。」

「ほう!それは意外だな。まさか同業者だったとは。」

「いや、オレは自分から教師になろうとしたんじゃなくて、教師してはる同居人に学園長に紹介されて、気に入られましてね。直接スカウトされたんです。色々大変なこともありましたが、まあ、楽しくやってました。」

「そうか、でも、確かにそうだ。楽しい。子供は実にいい。生意気だったり、悪戯したりと手も焼くが、成長していく姿を見るのは、本当に楽しい。私は昔から教師になりたくてな。どんな子供でも教えられる教師になることが夢だったんだ。昔はそれぞれの家や奉公先で勉強するのが普通でな。それだと色々差が出るし、この幻想郷の事を正しく教えられるかどうかも大きく分かれていた。寺子屋で、この幻想郷の歴史や読み書き、計算そうしたことをちゃんと教えられれば、子供たちの未来は大きく開かれる。そう思っていてな。はじめは苦労したが、今では多くの子供が通ってくれる。」

「・・・俺にはまねできませんなあ。しかし、オレのとこの学園長もそうですが、人にモノを教えようとする人は、みんな立派な志を持っとりますね。」

「・・・自分の事が立派かは分からんが、福太郎がそういうなら、きっとそうなんだろうな。だがな、福太郎。きっとその学園長は福太郎の事が気に入ったということもあるんだろうが、きっとお前が必要だと、子供たちにとって必要な存在になると思ったんだ。だからお前をスカウトしたんだと思うぞ。」

「・・・・そうなんですかね。」

「ああ、きっとそうだ。」

 

 

 慧音はこの男が同業者と知り、かつて自分が教師を志した時の事を思わず話してしまった。福太郎は月並みな言葉ではあるが、自分の知る学園長と同様に立派だと言ってくれた。その言葉に嘘は感じられなかった。慧音はこの田村福太郎という男もきっと素晴らしい教育者なんだと慧音は思った。なぜなら、元々教師で無かったにしても直接スカウトされたのだ。学園というのはよくわからないが、大きな寺子屋のような所らしいからきっと教師も生徒も多いに違いない。そこのトップに認められたのだ、ろくでもない奴だったら教師にするはずはない。

 道中、慧音は自分の経営する寺子屋の事を夢中になって話した。思わず愚痴を言ってしまったが、福太郎は嫌な顔一つせず、話を聞き、相槌を打ち、自分のいた学園の事を話してくれた。福太郎の口ぶりからすると妖怪なども学園に通っているらしく、とても興味があった。   

 時間が許すなら、もっと様々な事を聞きたかった。話したかった。学園のこと、生徒のこと、他の教師のこと、自分の寺子屋の事、通っている子供たちの事・・・しかし、慧音の眼には博麗神社へ続く石段が見えてきてしまった。別れの時は近い。

 

「ほら、福太郎。見えて来たぞ。あの石段を登れば、博麗神社につくぞ。」

「え、ホントや!いやあ、話に夢中なっとて気付かなかったわ~」

 

 

 二人は博麗神社へと続く石段を登る。慧音が福太郎の方を見ると、心なしか足取りが軽くなったように見える。旅の途中にしても、元居たところへ帰る算段が付くのだ。嬉しくないはずがない。だが、慧音にとっては少し寂しくもあった。初めて出会った自分と同じ教師ということもあり、会話が弾んだし、知りたいことも色々とあった。正直残念でならなかった。

 

 博麗神社

 幻想郷を大きく包こみ、守っている大結界、博麗大結界を管理する神社。この神社の唯一の新職である博麗霊夢は妖怪退治の専門家であり、幻想郷に起こる異変解決のスペシャリストである。また、歴代の博麗の巫女の中でも特に才能があり、誰もが認める天下無敵の巫女なのだ。天下無敵の巫女なのだが・・・・

 

「あ“あ”~今日もいい天気ね~、お茶が美味しいわ~。」

「霊夢~掃除終わったよ~」

「それじゃ萃香、洗い物お願い~」

「鬼使いの荒い巫女だな~ホント」

「居候なんだからそれぐらいしなさい」

「分かったよ」

 

 この体たらくである。彼女を見たことがなく、話だけしか聞いたことの無い者が見れば、まさか、この縁側でババ臭く、日向ぼっこしながらお茶をすする若い女性が博麗の巫女とは思えないだろう。しかし、その実力は数々の異変解決で示され、誰もがその実力を知る所である。現に今、顎で使っているのは幻想郷最強の種族である鬼、しかも、その頭目、酒呑童子こと伊吹萃香である。だが、神社を訪れるのは、霊夢の人徳?故か妖怪ばかり、そのため人間は一向に寄り付かず、信仰も賽銭も集まらず、最近新しく移って来た守矢神社にただでさえ少ない信仰のほとんどを持っていかれ、万年貧乏巫女、妖怪神社の異名をほしいままにしていた。

 

「・・・霊夢」

「なに?萃香。洗い物終わったの?」

「今、分身がやってる。それよりも誰か来たよ。」

「参拝客かしら!」

 「違うと思うぞ?慧音と外来人みたいだし。」

 「なあ~んだ。参拝客じゃないんだ~」

 「そんなんだから参拝客来ないんだよ。」

 「あ“?なんか言った?」

 「もう少し、愛想よくした方が参拝客来るよって言ってるんだよ。」

 「嫌よ、めんどくさい」

 

 おまけに、生来の面倒くさがりが参拝客離れに拍車をかけていた。

 そんな博麗神社に慧音と福太郎はやって来たのである。

 

 「ここが、博麗神社だ。」

 「お~、意外と広い境内ですし、立派な神社やな~」

 「・・・幻想郷の要ともいえる神社だからな、それになりに立派なんだ。神社だけは・・・・」

 「・・・・なんか、奥歯にものが挟まったような言い方ですね。」

 「今に分かる。」

 「まあ、神社に来たわけですし、参拝ぐらいしときましょ。」

 「まあ、そうだな。その方が霊夢の心象もいいだろうしな。」

 

 鳥居の前でそんな会話を交わすと、二人は鳥居を潜った。慧音はおもむろに鳥居を潜ったが福太郎は鳥居を潜る前に一礼をした。慧音は目を見張った。外来人のこの男は参拝の作法を心得ている。これまで幻想郷に迷い込んだ外来人を何人も博麗神社まで案内したことがあるが、このようなことは初めてだった。

 福太郎はそんな慧音をよそに、一礼を済ませると鳥居を潜るが、鳥居の左側を通り、手水まで進み、左手、右手と手を清め、口を注いで身の内を清め、柄杓に残った水で柄を清めて戻した。そして、拝殿の前にまで進み、賽銭を入れ、鈴を鳴らし、二礼二拍手一礼をした。一般的に言われている参拝の作法を誤りなくこなしたのだった。

 

 「驚いたな。」

 「何がでしょうか?慧音さん。」

 「いやな、これまで迷い込んだ外来人はちゃんと参拝をしようともしなかったんでな。おまけにちゃんと作法に則っていたんでな。正直、作法を知っているとは思わなくてな。」

 「いや、元々物事の意味や成り立ちや用途とかに興味がありましてね、鳥居や手水、参道とかの意味とか調べとったら、作法に行きついただけで、別に大したことじゃないですよ。それに、神社とか行って作法どころか、ちゃんと参拝一つできないんじゃあ、そこの神様に失礼ですし。」

 

 祟られたり、呪われたりしたら、怖いですし。福太郎はそんなことを言った。まるで、神などの存在がいて、祟りや呪いがあることが当たり前のように言っている。

 

 (もしかしたら、福太郎は・・・・だとしたら・・・。)

 

 慧音はある推測が頭をよぎった。阿求が言っていたのはおそらく、この事だとも思えた。

 

 「今、お賽銭入れたのはあなた!!」

 「どあ!ビックリした!」

 

 賽銭の音を聞きつけたのか、紅白の装束を着た少女がすっ飛んできた。

 これが、博麗霊夢と田村福太郎との出会いであった。

 

 「あら、慧音じゃない。じゃあ、萃香の言ってたのはアンタたちね。まあいいわ、あがってちょうだいお茶でも出すから!!」

 「えらいテンションの高い子やな~あの子が巫女さんですか?」

 「ああ、彼女が博麗の巫女、博麗霊夢、この神社の巫女だ。たぶん、最近ろくに参拝客がいなかったから嬉しかったのだろうな。」

 

 二人は霊夢のテンションに圧倒されながら社務所の方に向かっていった。

 

 「大したものは無いけど、寛いでちょうだい!」

 「霊夢、嬉しそうだね~」

 

 二人が社務所に入ると、霊夢がお茶の用意をして待っており、そばには小柄ながらも立派な角を備えた少女がいた。福太郎は驚く風もなく言われるがままに社務所に入っていった。その様子を見て慧音は先ほど浮かんだ疑問が確信に変わるのを感じた。

 

 「いらっしゃ~い。私はこの神社に居候してる鬼の伊吹萃香だよ~」

 「私は、この神社の巫女、人呼んで楽園の素敵な巫女!博麗霊夢よ!」

 「自己紹介どうも。オレは田村福太郎いいます。どうぞ、よろしゅうに~」

 

 三人はそれぞれ自己紹介を済ませると慧音が本題に入った。

 

 「自己紹介はすんだようだな。それじゃあ本題に入るが、こちらの福太郎は外来人でな、外の世界に返してやって欲しいんだ。」

 「・・・慧音、ホントにそいつ外来人なわけ?」

 「ああ、そうだ萃香殿。今日、稗田邸の庭に落ちてきたところを阿求が保護してな、私がここまで道案内と護衛をしてここまで連れていたんだ。」

 「いやさ、そいつ福太郎って言ったけ?あたしが鬼だって自己紹介したのに大した反応してないからさ。」

 「そういやそうね。」

 

 二人が福太郎に疑問を抱くが、福太郎は何のことなしに答える。

 

 「いや~これでも驚いとるよ。こんな可愛らしい鬼や巫女さんに会うのは初めてやし、霊夢さんは闕腋(けってき)なんて古風で珍しい装束着てはるし。」

 

 可愛らしいなんて言っても、お茶ぐらいしか出ないわよ~などと言ってくねくねしている霊夢をよそに、またも、慧音は驚かされていた。鬼の事に驚いていないこともそうだが、霊夢の服装を一発で言い当てたのだ。

 霊夢の装束は所謂、闕腋の袍(けってきのほう)と言われるものである。これは大きく脇を開けることにより、動きやすくした服装で、平安時代に武官などが用いた動きやすい服装で、狩衣などはこれに分類される。古く、唐代に中国で流行していたペルシャ風の服装が日本に取り入れられ、変化した由緒のあるものだが、多くの者はそのことを知らず、脇巫女と呼んで憚らないのだが、この福太郎はそのことを知っていた。慧音はそのことに驚いたのだ。服飾史や有職故実に興味がなければ知り得ないことだが、先ほど物事の成り立ち、用途に興味があると福太郎は言った。それにしても様々な事を福太郎はよく知っている。これほどの知識を持つ者にはなかなか出会うことは難しい。ますます慧音は福太郎に興味が出たし、このまま返すのが少し惜しくなってもきた。

 

 「これ、闕腋って言うのね。知らなかったわ~。」

 「・・・霊夢、私ちょっと出かけてくるね。たぶん、遅くなるから夕飯は要らないよ。」

 「そう?まあ、いいけど。いってらっしゃい」

 「・・・ああ。」

 

 霊夢は自分の巫女装束をまじまじと見ていると、萃香はそう言って急に霞になって消えていった。その様子を慧音は静かに見ていた。

 

 「そういえば、田村さんは、」

 「福太郎でええよ。」

 「じゃあ、福太郎さんは萃香が鬼だって言っても驚かなかったし、福太郎さんって妖怪に会ったことがあるの?外来人なのに。」

 「いやな、同級生に牛丸いうのがいてな、そいつが鬼だったんよ。それに、それ以外の鬼にもおうたことあるし、別に珍しいとは思わんな。」

 「ふ~ん、珍しいわね。」

 「・・・・・・」

 

 霊夢は興味ないわ、とばかりに、長く親しんでいるにも関わらず、今の今まで名前を知らなかった自分の装束の事が気になっているようである。その様子を黙って見ていた慧音はが口を開いた。

 

 「巫女装束の事が気になるのは分かるが、そろそろ本題に戻ってくれ。」

 「そうやった!霊夢さん!」

 「!!」

 

 突然思い出したように、大声を出すと福太郎は霊夢の手を取り、霊夢はあまり男性に対する免疫がないために突然の事に気が動転してしまった。

 

 「オレは、旅の途中やけど、帰らなならんところがあんねん!隔離された世界じゃあ、帰ろう思うてもすぐ帰れん!オレをもとの世界に、自力で帰れるとこならどこでもええから、この幻想郷から帰してくれ!!どうか、お願いや!!」

 

 そう言って、手を放し、その場に土下座して懇願した。度重なる予測不能の事態に、霊夢は顔を赤くしながら返事をするしかなかった。

 

 「わ、分かったわ。分かったから顔をあげて頂戴!」

 「そうだぞ、福太郎。霊夢もこう言っているし、そう易々と男が土下座をするもんじゃあない。霊夢も困っているぞ。」

 「うん、そうやな、つい焦ってもうてな。エライすまねんな。」

 「もう、いいわよ、もうじき暗くなるし、すぐ準備するから待ってて頂戴。」

 「ホンマありがとうな~霊夢さん。」

 「さん付けなんてしなくていいわよ、私より年上なんだし。」

 「じゃあ、ありがとうな霊夢ちゃん。」

 「~~と、とにかく待ってて!」

 

 そう言うと霊夢は足早に部屋を出ていった。その様子を慧音は笑いを堪えながら見ていた。

 

 「霊夢ちゃん、エライ顔、赤ぁなっとたけど、具合でも悪いかいなぁ?」

 「違うぞ、福太郎。霊夢は急にちゃん付けなんぞされて照れていただけだ。なんだ、可愛いところもあるじゃないか。」

 「聞こえてるわよ!!福太郎さんに余計なこと吹き込んだらただじゃあおかないわよ!!」

 「おっと、聞こえていたか。」

 「地獄耳ですな~」

 

 慧音は、こいつは霖之助と同類かと思いつつ微笑んでいた。

 

 「何笑っとるんです?」

 「いや、私の知り合いによく似ているなと思ってな。気を悪くしたなら許してくれ。」

 「いいえ、気にしとりませんよ。しかし、無事帰れそうで良かったですわ~」

 「・・・そうだな、霊夢の準備にまだ時間が掛かるだろうから、それまでの間でいいから、福太郎がいた所について聞いてもいいか?」

 「それぐらい、お安い御用ですよ。」

 

 霊夢はその間、外来人を外の世界へ還すのに必要な呪符を用意していた。

 

 「まだ、顔赤いかしら・・・」

 

 霖之助以外の男性に触れたことの無い霊夢は、先ほどの事を思い出していた。それと同時の不思議な外来人とも思っていた。帰りたいと懇願するのは分かる。しかし、変に冷静だとも思った。どうも、妖怪と面識があるらしい。妖怪などの存在が希薄な外の世界から来たはずなのに。気にはなったが、すぐ呪符の用意に集中した。どうせあと少しで別れるのだ。もう会うこともないだろう。

 

 「・・・なかなか、ぶっ飛んだ事をする同居人だな。」

 「ホンマ、あん時はどうなる事かと思いましたわ~でも、お蔭で、美術教師やることが出来ましたし、今じゃ感謝しとります。」

 「準備できたわよ。」

 「うん?もうか。話に夢中になってしまったな。」

 「そうですね~あっという間でしたな~。まさに光陰矢の如しですな。」

 

 どうも、二人は世間話に花を咲かせていたようだ。しかし、別れの時がやって来たのだ。

 三人は鳥居に向かった。

 二人の前で霊夢は祝詞をあげ、鳥居に呪符を貼り付けた。

 

 「準備できたわよ。」

 

 霊夢は福太郎を鳥居の前へ促した。

 

 「この鳥居を潜って、帰りたい場所を思い浮かべて、右の方へ三度、この神社の周りを歩けば帰れるわよ。」

 「急に押し掛けたのにホンマ、ありがとうな。霊夢ちゃん。なんもお礼もできへんで。わるいなぁ。」

 「別にいいわよ、お礼なんて、ちゃんとお賽銭あげてくれたし、それにこれは博麗の巫女役目だしね。」

 「ホンマ、ありがとうな。それに慧音さんも。本当に短い間でしたけど、ここまで、ありがとうございました。阿求さんにもよろしく伝えて下さい。」

 「こちらこそ。短い間だったが、私も福太郎と話すのは楽しかった。阿求にもちゃんと伝えておく。旅路の無事を祈っている。」

 

 別れの挨拶を済ませると、福太郎は荷物を担ぎなおすと、鳥居へ向かって歩き出した。やっと、秀真國へ帰れるのだ。嬉しくないはずはない。福太郎は鳥居を潜る前に、霊夢と慧音に手を振り、鳥居を潜った。

 

 「行ったわね・・・」

 「ああ・・・」

 

 残された二人は名残惜しそうに佇んでいた。

 

 「変わった外来人だったわね。」

 「ああ・・・。」

 

 霊夢は神社へ戻ろうとしたが、慧音はその場に立ったままだった。

 

 「・・・・・どうしたの?」

 「いやな、気になることがあってな。」

 「???」

 「ほら、私が気になっていることが歩いて来たぞ。」

 「え!?」

 

 霊夢は思わず慧音が指さした方を見た。霊夢の眼に映ったのは、意外!それは外の世界へ帰ったはずの田村福太郎だった!

 

 「えぇぇ、と。どうも、さっきぶり?」

 「えええええええええええ!!!!!!」

 

 不思議そうに首をかしげる福太郎と驚愕する霊夢の側で、慧音はポツリと呟いた。

 

 「やはりな・・・・」




 外来人の返還の儀が失敗した!今までなかったことに落ち込み、動揺する霊夢!意外と冷静な福太郎と慧音!
 そこに、出掛けて行った萃香が戻ってきた!意外な人物を連れて・・・

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