人間の絵描きの幻想郷見聞録    作:信州のイワ

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 外来人返還の儀の失敗、元の世界に帰れない福太郎は一体どうなる!
 そんな福太郎の元にある妖怪が現れる・・・。


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幻想郷の住人たち、秀真国の住人たち。

 外来人返還の儀。博麗霊夢はこれまで一度も失敗したことはなかった。元来、博麗霊夢は才能に恵まれ、様々な儀式儀礼、術式、呪法など失敗したことなどほとんどなかった。これまでは。

 しかし、目の前にいるのは紛れもなく先ほど外の世界へ還したはずの田村福太郎その人だった。

 

 「ど、どうして!なんで!あなたがいるのよ!!!」

 「どうして、言われても・・・俺にもさっぱり。」

 

 霊夢は声を荒らげながら福太郎に迫った。しかし、福太郎は困惑するばかりで、事態は何も変わらなかった。

 

「・・・霊夢、もう一度試したらどうだ。」

「そうやで、霊夢ちゃん。たまたま上手くいかなかっただけやもしれん。もう一回試してみようや」

「・・・・・わかったわ、もう一度試してみる・・・」

 

 霊夢はこれまでなかったことに意気消沈しながらも改めて、儀式に取りかかった。しかし、結果は変わらなかった。

 三度目の正直と改めて臨むも失敗。

 

「なんで、なんでなんでなんで・・・失敗するのよ!!!!術式は完璧!呪符も正常!なのに!なんでなのよ!!!」

「霊夢、いったん落ち着け。」

「うっさい!慧音は黙ってて!!今、福太郎さんを外の世界へ還せるのは私だけなの!なのに・・・どうして失敗するのよ・・・何がいけないのよ・・・」

「霊夢ちゃん。慧音さんの言うと通りや、いったん落ち着こう。焦っても仕方ないで。」

 

 慧音と福太郎は霊夢を落ち着かせようと声をかける。儀式に失敗した霊夢をなだめるように。しかし、それは却って逆効果だった。

 

「・・・なんで、そんなに落ち着いていられるのよ・・・・なんでよ、私のせいで・・・私のせいで!!帰れないかもしれないのよ!福太郎!なんで怒らないのよ!!いっそあんたのせいだとか!いっそのこと罵ってよ!怒ってよ!なんか言うことあるでしょが!!何とか言ったら!!私を責めなさいよ!福太郎!!!!うぁ、うあああああ!!!!」

 

 霊夢は福太郎に掴みかかり、揺さぶり、叩き、怒声をあげ、そして、泣いた。

 福太郎の優しい言葉がかえって、霊夢の心に突き刺さってしまったのだ。それによって霊夢の心に、これまでにない失敗によるショック、真摯に帰りたいと願う者の思いに応えらない口惜しさ、何よりも博麗の巫女として役目を果たせない不甲斐無さが、いっぺんに押しかかってしまっていたのだ。そこには、異変解決のエキスパートでも、妖怪退治の専門家でも、博麗の巫女でもなく、己の無力さを呪って涙を流す一人の少女の姿があった。

 その姿に慧音は面食らってしまい、ああ、あの博麗の巫女も一人の少女に変わりないのだなと思い、福太郎は自分たちの言葉が却って目の前の少女を傷つけてしまったことに、しまったと思い、済まない事をしたと後悔する、それぞれ異なる心境を持った二人がいた。声をあげて涙を流す霊夢に、二人は再び声をかけた。

 

「霊夢・・・」

「霊夢ちゃん、ちょっとええか?」

 

 慧音が声を掛けようとしたとき、福太郎はチラリと慧音の方に、ここは任せてほしいと目くばせし、言葉を続けた。

 

「うぅぅ・・・何よ、早いとこなんか言いなさいよ・・・」

「霊夢ちゃん、落ち着いて聞いてな。オレは別に霊夢ちゃんを責めるつもりはないし、責める権利もない。」

「そんなことない・・・私の責任なのよ・・・・慰めや同情なんかいらない・・・・」

「そうかもしれん。けどな、オレは突然押し掛けて、元の世界へ還してくれようと頑張ってくれてる、霊夢ちゃんを責める事なんてできひん。それに、頑張ってる子に、これ以上頑張れなんてことも言えへん。」

「・・・・・・」

「人間だれしも失敗する。それは、人間でなくてもそうや。でも、そっから成長できるや。それに、オレは生きてて現にピンピンしとる、時間はたっぷりあるんやから、ゆっくりやっていけばええねん。」

「・・・・でも。」

「それにや、オレが帰りたいいうのはホントけど、別に急ぐ必要も用事もないんやし、大丈夫やで、そら不安がない言うたらウソになるけど」

「でも、私は博麗の・・・」

「巫女かもしれん。けど、その前に一人の人間や、無理して物語のヒーローみたいなことやって、霊夢ちゃんが潰れてももうたら、そっちの方がつらい。せやから、無理せず、やってけばええんよ。」

「・・・うん」

 

 福太郎はそう言いながら、霊夢の頭を優しく撫でながら、優しく諭していった。霊夢は福太郎の胸に顔をうずめながらも泣き止み、落ち着いたようである。

 慧音は福太郎と霊夢のやり取りを見て、正直驚いていた。福太郎に出会ったのは今日が初めてだが、本当に驚かされてばかりだった。儀式の失敗に取り乱し、涙を流す霊夢をこんな風になだめることが出来るとは思いもしなかった。もし、自分だったら同じことができただろうか。霊夢をなだめ、落ち着かせることができただろうか。慧音はこの外来人の男に敬意を払おうとそう思った。

 

「・・・でも、ホント冷静ね、福太郎さん。」

「まあ、オレも今まで色々あったんよ、これぐらいじゃ動じないぐらいにや。こう見えて、そんなにやわな人生送っとらんのよ。ただ、色んな人に迷惑かけて、色んな人に接して、色んな人に格好つけようとしとるだけやけどな。」

 

 ふいに霊夢が落ち着きを取り戻し、口を開くと、福太郎は微笑みながらそう返した。

 慧音は自然と口元が綻ぶのがわかった。それと同時に、この田村福太郎という男はどんな人生を送ってきたのか、自然と興味が湧いて来た。

 しかし、この二人の様子を見ていると、まるで親子か兄弟のようにも思えて仕方がなかった。

 

「霊夢、落ち着いたか?」

「ええ、みっともないところ見せたわね。」

「ああ、本当にな。ほら、これで顔を拭け、結構ひどい顔だぞ。」

 

 そう言うと、慧音は霊夢に手ぬぐいを渡した。

 霊夢は福太郎から離れ、自分の顔をぬぐった。

 

「ありがとう。」

「いや、構わん。それにしても、珍しいものを見れたしな。」

「え?」

「成人男性にしがみ付きながら、泣いている博麗の巫女なんてそうそうお目に掛かれんということさ。おまけに、やさしく頭を撫でられながら、諭されるのは、なかなか微笑ましかったぞ。」

 

 慧音にそういわれると、今までの一連の行動が霊夢の頭の中にフラッシュバックした。

 

「お、お願い・・・今の忘れて。」

「わはははははは!!!!!」

「慧音さん、あんま、いじめんとって下さい。霊夢ちゃんあんな赤なっとりますよって。」

 

 慧音がひとしきり笑い、霊夢が赤くなっているところで、福太郎が慧音に釘を刺した。

 

「いやいや、すまん。ついからかいたくなってしまった。」

「ほどほどにお願いしますよ。それに大分、暗くなってきましたし。そろそろお暇しましょう。」

 

 二人はそういって博麗神社を後にしようとすると、霊夢がそれを引き留めた。

 

「ねえ、もう暗くなってきてるんだから、泊って言ったらいいわ。一応、来客用の布団とかあるし、福太郎さんに万一の事があるといけないし。それに・・・」

「それに?」

「福太郎さんの服、私の涙とかで、汚しちゃったから、洗って返したいし。」

「うお、確かにべちょべちょや、けど、気にせんでええで、ほっときゃ乾くし。」

 

 霊夢の涙やらなんやらで汚れた服など、気にすることはないと福太郎は言うが、霊夢の乙女心がそれを許さない。

 

「そ、それぐらいさせてよ・・・私の気が済まないから。(私の涙とか鼻水まみれの服を着たまま帰られてたまるもんですか!!!)」

「それも、そうだな。霊夢の好意に甘えるとしよう。」

「え、でも、若い女性と男が一つ屋根の下というのは、外聞が悪いんじゃあないですかね。」

「うら若き乙女の体液で濡れた服を喜んできている変態と思われるよりはいいと思うぞ。この幻想郷にはその手のネタを求めるパパラッチカラス天狗がいるからな。」

「・・・・・確かに。」

「では、決まりだな。」

 

 結局、一晩博麗神社に泊まる事となった。

 福太郎は汚れた服を霊夢に預け、荷物から着替えを取り出し、それに着替えた。その間に慧音と霊夢は簡単な夕飯を作り、三人で食べた。本当の事を言えば、材料が乏しく簡単なモノしか作れなかっただけである。

 後片付けは福太郎も手伝ったため、すぐに済んだ。

 そうして、三人はお茶を飲みながら静かな夜を過ごしていた。

 

「静かなもんですな~ひさびさですわ、こんな穏やかな夜。」

「そうね~異変がなきゃこんなもんよ。」

「なあ、福太郎。」

「なんですか、慧音さん。」

 

 何ともなしに福太郎が口を開き、霊夢がそれに答えていた。そこに、慧音が福太郎に問いかけた。今まで疑問に思っていた事を聞くために。

 

「色々聞きたい事があるんだ。」

「オレで答えられることなら・・・・」

「私も聞きたいわ福太郎さんのこと・・・」

 

 二人は静かな夜に、福太郎に話を聞くこととした。しかし、この時霊夢は単なる暇つぶしとして、慧音は自身の疑問の答えを見出すために、福太郎の話を聞こうというのであった。

 

 「そうですね。最近住んでたんは、足洗邸て言いましてね。秀真の国の中央、外区、不思議町にある邸に間借りしとりました。そんで、仕事は万魔学園ていう学園で美術教師したりしとりました。邸の管理人も、七つの尾を持った猫又で、他に住んどったのは、同じ学園に勤めとる悪魔のメフィストさん。妖怪の鵺の義鷹。化け兎の玉兎に守護精霊のマサライ、元天井下がりの家神の於仙。あ、あと、地獄に繋がっとる井戸から、味野さん言うおじいさんが出たりしますね。」

「ちょ、ちょっと待って!」

「なんや、霊夢ちゃん?」

 

 福太郎の発言に、霊夢は混乱し、慧音は静かに考えに拭けっている。

 

「外の世界って、もう神や妖怪の存在が信じられなくなって、存在が難しくなったんじゃ・・・幻想郷以上にごちゃ混ぜじゃない!」

 

 霊夢の言葉に福太郎はごく当たり前のように言葉を続ける。

 

「やっぱし、そういうことになっとんねんな。実は二十数年前、オレが子供の頃に大召喚いう大災害があってな、色んな隠れ里やら幻想世界が人間の世界と融合してもうてな、妖怪や悪魔とかギョーさん出てきてな、まあ、略すに略しきれない色々なことあったんだけやど、人間がエライ減って、人外が多くなったんよ。せやからご近所に妖怪やらなんやら、色んな人がいるようなったんよ。そんなもんやから、オレの勤めとる万魔学園なんか人外の方が多い、多種族の学園なんよ。」

「なんか・・・信じられない・・・」

「福太郎、もしかしたら・・・・」

 

 慧音が口を開こうとしたその時だった。

 

「そのあたりも含めて、私たちもお話に混ぜてくれないかしら?」

「ただいま、霊夢」

 

 空間に空いた大量の目のようなものが見える空間から、昼間出会った鬼の伊吹萃香と妖艶な美しさを醸し出す妙齢の女性が現れた。

 何者か、と福太郎が訝しんでいると、霊夢がその人物を紹介した。

 

「この妖怪は、通称スキマ妖怪、名前は八雲紫。この幻想郷を作った妖怪よ。」

「妖怪の賢者とも言われて居りますわ、田村福太郎さん。」

「何しに来たよの紫。いつもはこんな時間に顔を出さないのに。」

「私が呼んだんだよ。」

「萃香殿が?」

 

 突然の紫と萃香の来訪に福太郎は困惑し、霊夢と慧音は訝しんだ。

 

「・・・・・紫、私、福太郎さんを外の世界へ還せなかったの。いつものアンタの悪戯?」

「いいえ、違うわよ。私は今回は関与していない。そもそも、萃香に聞くまで何も知らなかったわ。」

「あのすいません、萃香さんは紫さんとお知り合いで?どうして、お二人はこちらにいらしたんでしょうか。」

 

 己の分からないところでどんどん話が進み、何が何やら分からないため、福太郎は二人がなぜ、この時間になって博麗神社に来たのかを問うた。

 

「福太郎の事さ。」

 

 萃香は短く答えた。

 

「私はさ、最初は福太郎のことただの外来人だと思ってたんだよ。だけど、妖怪の事にも驚かないし、知り合いに鬼がいる、ていうじゃないか。どうやら、それは嘘じゃないみたいだし只者じゃないと思ったんだよ。」

「そんな、オレはタダの人間ですよって~」

「・・・・・十種神宝(とくさのかんだから)の眷属を持っているような奴が普通とは思えないけど。」

「・・・・・・」

 「なに!!!」

 「十種神宝って何?」

 

 萃香の指摘に三者三様の反応があった。福太郎は少し驚いた上で沈黙し、慧音は驚愕し、霊夢は何のことやらと疑問符を浮かべた。

 

 「そのことも含めてだけど、あなたは何者なのかしら?先ほどの話を少し聞かせてもらったわ。私は境界を操る程度の能力を持っていますの。ですから、外の世界へは自由に出入りできる。ですから、外の世界の動静も知っている。ですが、二十数年前にあなたの言う大召喚なる事象は起こっていない。起こっているとしたら、幻想郷も間違いなく影響を受ける。ですが、そのようなことはなかった。ですが、あなたの首から下げているペン、それは明らかに十種の眷属。何らかの強力な力を秘めている。十種は本来天津神たちが持っているモノ。なのにあなたはその眷属を持っている。それにあなたは他にも何かある。いったい何者なの?」

 「・・・・・・そうですか・・・」

 

 福太郎は紫から告げられた事実に、少し驚きつつも、どこか覚悟していたような眼差しをした。萃香と紫は真剣なまなざしで福太郎を見据えている。

 霊夢と慧音は三者を黙って見据えていたが、その内、慧音が口を開いた。

 

 「賢者殿。」

 「何ですか、慧音さん。」

 「おそらくだが、福太郎は全くの別次元、異世界から来たのではないか?ここには人間の嘘に敏感な鬼の萃香殿がいる。その萃香殿が福太郎の言葉に嘘が無い事を感じている。だとしたら、福太郎の言葉は真実だ。何もそこまで、警戒することはないのではないだろうか。」

 「・・・・オレも、薄々そんなことは思っとりましたけど、そんなことはないと信じようとしとりました・・・・やっぱし、異世界なんですね。」

 「福太郎さん・・・・」

 

 慧音は自身の懸念を口にした。福太郎はその言葉を聞き、最も恐れていた事態であることを自覚した。そのことを口に出した福太郎はひどく悲しそうに顔を歪め、その顔を片手で押さえつけるようにしていた。霊夢はあの、飄々としていた福太郎がこんな辛そうな顔をするのを見て言葉を失ってしまっていた。だが、福太郎は、深く息を吸い、改めて言葉を続けた。

 

 「スー、ハ~。そうですね。一つづつ答えていきましょうか。まず、オレのいた世界の事は霊夢ちゃんたちに話したと通りです。其れで、このペンですが。これは、友達で同じ邸に住んどった、妖怪で生玉を所有している鵺の義鷹にもろうたもんです。詳細は省きますが、オレの中にいた獏が揚力を過剰に吸収してもうて、それで神化して獏王・白澤になりました。そいつの力と、生玉からオレの為に作ってくれたコピーの生玉とが融合してこのペンになったんです。オレのことが何か変に感じたのは多分、オレの体に白澤がいるからだと思います。この白澤になった獏はオレが七歳の時に起きた、大召喚の時にオレの左肩に召喚されたんです。あの時、世界各地に魔方陣が出現して、至る所、あらゆる場所に、人外や異世界のモノが召喚されました・・・・人間や動物の体にもです。この左肩にある、渦巻きがそうです。」

 

 そう言って、福太郎は襟首から左肩を覗かせた。そこにははっきりと渦巻きのような模様が、はっきりとあった。明らかに、生来のモノでも、刺青のような人工のモノでもないものでもないものが、そこにはあった。その場にいた者たちは皆、福太郎の言葉に驚愕を隠せなかった。特に慧音はその身に白澤を宿す半人半獣であったが、自分と限りなく近い存在がいることに驚いたが、どこからどう見ても、目の前にいる福太郎は人間である。似ているようで、違う存在に心底驚いた。

 そんな皆をよそに福太郎は言葉を続ける。

 

 「もし、もしオレのいうことが信じられないのなら、証人を立てましょうか?」

 「どういうこと?」

 「まあ、できるかどうか分かりませんけど・・・・霊夢ちゃん。」

 「な、なに、福太郎さん。」

 「霊夢ちゃんがお札を作るときに使う紙が有ったら、持ってきてもらえるか、できるだけ大きい奴が有ったらそっちの方がええな。」

 「わかったわ、ちょっと待っていて。」

 「まて、福太郎、証人を立てる?どういうことだ?」

 「まあ、慧音さん、ここは見ててください。」

 

 霊夢はそういうと紙を取に行く為に席を外し、慧音は何事が始まるのかと福太郎に問い、大妖怪である紫と萃香は静観していた。

 しばらくして、霊夢が大きめの半紙を何枚かと墨と筆を持って戻って来た。

 

 「ありがとな、霊夢ちゃん。でも、半紙だけで大丈夫やで。」

 

 そう言って霊夢から半紙を受け取ると、その半紙を確認し、首に下げたペンを持ち、さらさらと絵を描いている。皆、自然と描かれていく絵に目がいった。そこには見たこともない妖怪が描き出されていった。

 皆、絵に目が行っていて気付いていないが、そのペンで書かれる線は微妙に太さが自在に変わっているいた。普通のペンでは有り得ないことである。

 

 「ほい、でけた。」

 

 そう言って、ペンを止めた。そこにはその場にいる福太郎以外には馴染みがない妖怪が描かれている。豊かな髭を蓄え、智的かつ、しっかりとした眼差しをした人間の老人の顔とごつい人間の手を持ち、横の腹部には象のような顔が描かれている世にも珍しい妖怪が描かれており、半紙の端には「獏王・白澤」と書かれている。何とも今にも動き出しそうな躍動感とリアリティーを持つ絵である

 

 「妖怪画なのは分かるし、件の白澤の絵のようだが、それとお前の言う証人と何の関係があるんだ?」

 

 慧音は福太郎の絵を見て聞いたが、福太郎はどこかすました顔をして、絵を持ち、皆から少し離れた場所に立った。

 

 「ご紹介しましょう。こいつが、オレに宿っている白澤です。」

 

 そう言うと、福太郎はペン尻を押す。

 

  カチッ!!

  ズッォオン!!!

 

 するとどうだろうか、紙から大きな妖怪が現れた。それは福太郎の描いた妖怪であった。

 その妖怪は周りを見渡し、口を開いた。

 

 「ふむ、結界で隔離された異世界か・・・実に面白い・・・」

 「イヤイヤ、福さん、大変なことになったね~ぇ。」

 

 人間の口と象の口から異なる声色の声が出て来たのである。

 その場に居合わせた全ての者が驚愕し言葉を失っていた。

 ただ一人福太郎だけは、どこか悪戯が成功した子供のような微笑みを浮かべていた。

 




 さて、面白い事になりましたね、獏王・白澤の登場です。原作が分からない方には分からないかもしれないんで、説明しますと、大召喚の折、至る所から人外が出現し、人間や動物と融合する者が続出しました。これらの者たちは完全に体が融合してしまい、多くの者が互いを否定しあい、傷付けあってほとんどが死亡。これらの状況に冷静に対処し、共存していった者たちは勝利者の塔にいるといわれる、ア・バオ・ア・クゥーになぞらえられ、ダブルマンと言われるようになっています。福太郎は数少ない一人です。

 さあ、どうなっていくでしょうか、続編を乞うご期待!!
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