この話は重要な前置きのつもりです笑
次回からがロールキャベツ系男子高坂京介が顔を覗かせます笑
回りから音が徐々に消え始める。
木が風に揺られる音。車の排気音。遂には自分の呼吸音さえも聞こえなくなる。
しかし、目の前にいるバケモノ、もとい俺の親父が発する音は反比例するが如く大きくなる。
息を吸う音、血が脈動する音。
相手の一切の初動を見逃さないように目を見開く。
俺と親父の間は約2m強。
どちらにとっても必殺の間合い。
互いに手の内がバレている以上、相手の思考を読み間違え他方が必然的に負ける。
(・・・ふぅ、ままならねぇな。)
このような場合は基本集中が切れた奴が負ける。
この緊張感に焦って初手を放てば、受け流され一撃を貰う。
集中力を磨耗すれば、それだけに初動に気付かなくなる。
俺が親父に勝てるとすれば、若さの一点だろう。
この緊張感を保てる体力がある以上、俺から動き出すのは愚の骨頂だ。
一瞬が数分、数分が数時間に感じるこの空間も唐突に終わりを告げる。
(っち、汗が・・・・!?)
額から流れた汗が目に入り、瞬きする間にバケモノは動き出した。
(結局後手になんのかよ・・・!)
思考する暇もなく俺は親父が繰り出した右拳に遅れるタイミングで左拳をクロスカウンター気味に放った。
(親父のリーチは俺と比べて拳半分短い、更に俺は肩を伸せてるから相討ちにはなんねぇなぁ!!)
刹那の思考を担保に迷わず、左拳を親父の右頬にめり込ませた。
・・・・・はず、だった。
しかし、事実と反し俺の拳は親父の右頬数㎝を手前にして動きを停止した。
(っくそ、親父は何をしやがったって、マジかよ!? っぐはぁ!!)
俺の意識が刈り取られる寸前見えたのは、俺の左クロスに合わせるように、親父が右肘で軌道を反らしながら俺の左頬に拳をめり込ませる親父だった。
(なんで、親父が、ブラッディ・クロス・・・・)
タネが解っても後の祭り。
俺の意識はそこでブラックアウトした。
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「ってててて、おい、親父。」
「あぁ、なんだ京介。後今は修行中だから、親父じゃなくて師匠だ。」
「はいはい、じゃぁお師匠さんよ。なんであんたがボクシング漫画のネタを知ってんだよ!」
不満そうな顔をしつつ、顔を冷やしながら俺は聞いた。
「ん? あぁ、これか。これは少し前の事件でな、居酒屋で酔った客がいたんだがコイツがプロボクサーで、周りの客と喧嘩をし始めたんだよ。」
親父はそう言うとタオルを俺に投げて寄越した。
まぁ、有り難く受け取っておいた。
「俺も止めようとしたんだが相手が中々いいパンチを俺にくれやがってな。そのときにプチンと来て、相手のパンチにクロス気味で合わせた時に偶然肘で相手の軌道が反れたんだよ。」
言い終わると親父はペットボトルに入った水で喉を潤した。
(マジかよ、このバケモン。自分で編み出したとか。)
聞き終えると、俺はすっと立ち上がり帰宅の準備をした。
「京介、家に帰ったらしっかりと冷やしておくんだぞ。寸土目しようにもお前のパンチに気圧されて本気で殴ってしまったな、すまん。」
「へいへい、かすってもねぇのに要らぬお世辞は良いよ。飯は食って帰んの?」
「いや、家で食べるさ。母さんに宜しく言っといてくれ。」
「分かったよ。」
俺は週に三回親父から虐待じみた稽古を受けている。
息子には強く逞しく育ってほしいという親父の願いから物心付いた頃には何かしらの武術武道を教えられていた。
今となってはもう慣れたし、小中学生では県や全国大会にも出れた。
そこまで嫌じゃなかったし、やりがいも感じた。
まぁ、柔道で反射的に相手を殴った時は幾らなんでも今のルールに合わせろと監督から怒られたし、親父からお前は総合格闘技部でも創れと笑われた。
「ただいまっと。なんだ桐乃も帰ってんのか。また靴を脱ぎ散らかしやがって。」
自分の靴を揃えるついでに桐乃の分も揃える。
手洗いうがいをし終え、リビングのドアを開けようとすると中から妹の桐乃の声が聞こえた。
次回桐乃登場です。
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次回は早めにします。
人気の高い順にキャラを書きたいと思います。
読者様のニーズに合わせたいので笑