「……」
「……」
無言のまま階段を降り顔を見合わせる。
「本当に良かったのか?部活サボって。」
「うん。最近お茶会ばっかりであまり練習もしてないし。」
「唯に限って見たら最近ギターすら触ってるところ見たことないぞ。なんか唯にみんな甘いような気がする。」
「あ〜まぁ唯はお菓子目当てに入ったところあるからなぁ。」
「ところでどこ行く?晩飯つくらないって澪の母さんがいってたんだろう。」
澪は電話してる最中澪が焦っているのをみて苦笑してしまった。
「でも春ちゃんたち大丈夫?」
「弟は友達と勉強会にいくって言ってたし、春も友達の家に泊まりにいくらしいから大丈夫だと思う。まぁ合格祈願だけはしときたいから初詣に行った神社辺りだと助かる。」
「じゃあファミレスに行く?」
「そだな。」
互いになんか距離感があるように感じる。
ってか澪とどこか二人きりで出かけるって初めてのことだよなぁ.
なんか緊張するっていうかこれデートじゃないのか。
互いに無言ながらもファミレスにはいりドリンクバーと適当に食べ物をたのむ。料理がきても気まずいままだしなにか話題ふるか。
「なぁ澪、」
「ひゃい。」
澪から変な声が聞こえる。
すると顔が真っ赤になっていく澪に
「ぷっ。」
「……」
「クスクス。アハハハ。」
つい笑ってしまう。
「かい、忘れて。」
「いや、無理だろ。こんな返事漫画でしか聞いたことねぇよ。」
「かい!!」
「わりぃ。なんか変だなって。」
俺は笑うのをやめ澪の方を向く。
「なんか意識しすぎっていうかなんでこんな緊張しねぇといけないんだよ。いつも軽音部で話してるのにさ。」
「かいも緊張してたの?」
「してた。ムギ以外の女子と二人きりで歩くことすら初めてだしな。」
少し笑う。
「律がいたら絶対にニヤニヤしていたから律をいじれたんだけどさすがに逃げ場ないしな。俺から言ったのもあるけど。」
「私も男子と二人きりになることパパ以外ないなぁ。」
「パパ?」
「お父さん!」
顔を真っ赤にする澪に苦笑する。
「でも、なんかこの一年楽しかったよな。」
「えっ?」
「律が作った軽音部にまず俺が入部して、その後にムギと澪、あと唯が入部して。合宿行ったり、学園祭は最後のなければかなり楽しかったよな。」
「だね。もう絶対ボーカルはしないけど。」
「……たぶん新歓ライブでやることになりそうだけどな」
唯最近ギター弾いてないからコード忘れてるだろうし
「それってかいだけボーカルっていうのは。」
「俺ボーカルの歌基本的にお前サブボーカルだぞ。」
「……」
「そんなに絶望したような顔するな。あんなこともう二度と起きないって。」
俺は澪の頭を軽く叩く。
「うぅ、やらないとダメ。」
「他のやつでもいいけど俺は澪がいいけどな。」
「えっ?」
「なんか歌いやすいんだよ。ムギと一回やってみたことがあるんだけど本当にひどくてさ。個別同士なら普通なんだけどな。なんかぎぐしゃくしてて両方に合わせようとして大変だったんだよ。」
俺は苦笑してしまう。
「唯も俺が書いた歌詞より澪が描いた歌を歌った方が生き生きしてるし、律は気に入ってるらしいけど、ドラムだと歌うことが難しいしな。澪は歌っているときすごく楽しそうに歌ってくれるからな。やっぱり歌詞を書いてると歌っている人が楽しそうに歌ってくれるのがいいよ。」
俺は苦笑してしまう。
「俺の勝手だけど澪にやっぱり歌って欲しいかな。」
「……そうなんだ。なら私も頑張ろうかな。」
「そうしろよ。どうせ次のライブで当分の間は5人で演奏することなんてほとんどないしな。」
「えっ?」
「次の演奏は新歓ライブだぞ。新入生が入って来たらさすがに5人だけで歌うってことはないだろうしな。」
「そっか。もう一年なんだね。」
「そうだな。」
あの時入部してなかったら今は俺は何をしていたのだろうか。
楽しくやってきたけど長くて後2年したらこの関係は終わる。
そしたら……
胸が急に苦しくなる。
「……いやだなぁ。卒業。」
ふと声に漏れる。
思った以上にあの空間が好きで居心地がいいと思ってるみたいだ。
「ずっとあのメンバーでお茶飲んだり、演奏したり、しゃべったりしたいよな。」
「……かいは卒業したら大学に行くのか?」
「たぶん行くな。一応N大の音楽学部志望。」
「凄い名門じゃん。」
澪がびっくりしたように言う。
「まぁ推薦枠で取れるからだけどな。」
「そうなんだ。凄いね。」
「澪は進路はどうするの?」
「N大は推薦とれないからK大しようと思ってる。」
「それでもレベルが高いな。」
俺が言うと澪が少し迷ってから
「ねぇ。かい。」
「なんだ?」
「かいのすきな人ってどんな人?」
「えっ?」
澪の問いに少し困る。まさか直接聞かれるとは思ってなかった。
俺が好きなのは澪だから本人を前にいうのはさすがにきつい。
……ってか告白になるしな。
「……悪い。さすがに。」
「そうなんだ。」
あきらさまにショックを受けている澪。
そんな顔されると
「あぁ。ここじゃあ無理ってこと。帰りに公園とか人気がないところで話すから。」
「あっごめん」
いくらなんでもここで告白とか雰囲気がなさすぎる。
「そういや私詞を書いたんだけど。」
「了解。」
ルーズリーフ一枚を渡してくる。いつも澪の詞を曲にするかは俺が決めていた。
チェックが入るようになったのは、まぁ過去に澪がメルヘンすぎる曲を書いてきたから律が俺に懇願してきたからだ。
俺はそれを受け取り詞を見ようと紙に目を通すが書かれていたのはたった二言
私は松井海斗くんのことが好きです。私と付き合ってください。
その文字を見た途端顔が熱くなる。
ルーズリーフの中心に小さく書いていた文字は今まで見て来た澪の文字だった。
澪の方を見ると顔が真っ赤になっている。しかしどこか不安そうな顔でこっちを見る。そのことから本心で書いたんだろう。
澪は告白するには勇気がなかったんだろう。だから紙に書いて気持ちを伝えた。
詞を書いたっていえば絶対俺は見るからな。
シンプルで簡潔なラブレターは何よりも嬉しかった。
「澪ありがとう。」
「うん。」
目を瞑り俺の答えを待つ澪、俺も言わないとな。
「俺も秋山澪さんのことが好きだ。だから俺でよければよろしくお願いします。」
「えっ?」
ありえないものを見るように俺を見て
「本当に?」
「本当だよ。たぶん文化祭のライブから。」
すると澪の目には涙が見えた。俺は席を隣に移り頭を撫でる。
これが正しいのかしらないがただ嬉し泣きをしている澪を見て幸せになる。
これから先もこんなしあわせが続いて欲しいと思った。
翌日の部活動。
「よう。」
「あら、かいちゃんお茶入れるわね。」
「あぁサンキュー。」
「かい、どうする?」
澪は俺に小声で聞いてくる。たぶんメールで報告したけどちゃんとみんなに言わないといけないだろう。
「全員が集まってからでいいんじゃないか?まだ唯が来てないし。」
「かい、澪と付き合うことになったんだって、おめでとう!!」
と眠そうな律が祝福してくる。
「律眠そうだな。」
「ちょっと澪ののろけに夜中の4時まで付き合わされたからな。」
「……律、ごめん。」
律が澪の幼馴染で本当によかったと思った。
「かいも眠そうだけどどうしたんだ?」
「ムギに徹夜で澪のことを根掘り穴掘り聞かれた。」
「……ごめん。」
似た者同士の幼馴染を持っている俺たちは同時にため息をついた。